書籍レビュー: 60Pに濃い内容『科学発見シリーズ』 著: アイザック・アシモフ

★★★★★

 

SFの巨匠アイザック・アシモフ(1920-1992)による、こども向けの科学読み物です。1冊あたり60Pほどしかありませんが内容は濃く、これを読めるのは中学生以上程度でしょう。大人でも十分楽しめる内容です。

 

原著はここにあります。how we find out…? というシリーズです。日本語訳は20冊ですが原著では32冊もあるようです。

私は8冊目まで読みましたが、理由があってここで読むのを打ち切りました。おすすめは電気と細菌です。

 

ここのところ時間が無く、しばらくの間雑なレビューになりそうです。

 


書籍レビュー: ツッコミ多すぎ『カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第4巻 進化生物学』 著:デイヴィッド・サダヴァ他

★★★★☆

進化論中心の1冊

1~3巻は「LIFE」という教科書の翻訳でしたが、4・5巻「PRINCIPLES OF LIFE」という教科書の翻訳だそうです。4巻は進化生物学と題して進化のメカニズム~系統樹~種分化~生命の歴史~動物の進化までを扱います。

進化のメカニズムの章でははダーウィンの論が中心となって展開されます。中心概念は「自然淘汰」です。まとめると次のようなことです。

環境に適さない動物は生き残れなかったり子孫を残せず、適応した生物だけが生き残り子孫を残し、特定の形質を持つ者だけが生き残る。遺伝子は突然変異するが、その変異がより優位なものであればさらに生き残る確率が高まる。こうして有利な形質が次々と生まれていき、環境特有の生物種が生まれる。

中立進化と人工進化

この章で一番驚いたのは「中立進化論」です。遺伝上の変異は、ほとんどのものが淘汰上有利でも不利でもない、という論です。我々の性格やこだわり、先天的な体の大小などは、言われてみれば子孫の有無などに全然関係していないように思えますので、言われてみれば納得がいきます。この論は1968年に日本人の木村資生(もとお、1924-1994)によって提唱されたそうです。本書では2Pくらいの軽い紹介にとどまっていますので、他の本も読みたくなりました。

また、簡単な進化は実験室上でラクラクと実行できる、ということも驚きました。「試験管内進化」と呼ばれるものです。例えば「リガーゼ活性(DNAをつなぐ能力。遺伝子修復などに使用する)が高いRNAが欲しいなぁ」と思ったら次のようなプロセスを踏むと臨んだ結果が得られるというのです。

  1. 適当にRNAを用意する
  2. 最も活性の高いRNAを選抜
  3. 選抜したRNAを逆転写でDNAにする
  4. PCRでDNAを増幅させる。いくつかのDNAは突然変異で高機能になる。
  5. DNAからRNAを作る
  6. 2に戻る

以上を繰り返すと10回でリガーゼ活性が700万倍になったそうです。すごい。

わかりにくいですか。では人間で置き換えてみます。「1秒に20連射できる高橋名人が欲しいなあ」と思ったとしましょう。

  1. 16連射できる高橋名人を何人か用意する
  2. 最も連射が早い高橋名人のDNAを採取
  3. クローンを複数作成する。突然変異によって連射の早い高橋名人が生まれることを期待する。
  4. 2に戻る

これを何度も繰り返すと20連射どころか100連射できる高橋名人が生まれるかもしれません。

生命史のスケールデカすぎ

後半は生命史のざっくりとした総まとめです。地球の気候変動から地層と考古学の方法論で準備をした後に地球46億年の歴史を駆け足で早送りします。大きな気候変動、特に海面の低下や気温の急激な低下などがあると生命は大部分が死滅します。これの大量絶滅が三畳紀やら白亜紀やらの「~記」を分けるポイントとなっているそうです。特にペルム紀(2.97-2.51億年前)の末期には全生物の96%が死滅したと推測されているそうです。ほとんど全滅ですが、残った生物が時間をかけて再び花開くなんてロマンがありますね。ちなみに原因は大規模な火山の噴火による気温の低下だそうです。箱根が噴火しそうだった時私はとても怖かったのですが、あれは生命に刻み付けられた先入観みたいなものなのかもしれません。

バランスと正確性にやや不満

前半は理論的な話が中心なのでしょうがないのですが、今までのシリーズと比べて図が少ないので理解がおっつかないのが欠点です。他の本を読んで補充する必要があります。また、原著の間違いが多いようで、訳者による訂正があちこちに見られます。

また、ゲノム中に現在でも存在している重複遺伝子はとても若いこともわかった。多くの重複遺伝子は、進化の時間スケールではまばたきするくらい短い(訳注:これはやや極端な表現である。数十万年の期間でもさまざまな進化は生じえる)、1000万年以内にゲノムから消えてしまうのだ。

上記のようなツッコミが20か所くらいはありました。訳者の指摘はありがたいですが、原著を読む気が失せます。

終盤の動物の進化については写真が多くて楽しいのですが、いかんせんページ数が足りず私としては消化不良気味です。

優れた本ではありますが、内容の濃さからするとブルーバックスのサイズで300ページちょいくらいでは不足です。他にもたくさん読んでみたいです。

 

補足

動物進化の章にいたキタオポッサムが可愛い

 

参考書籍

 

やっぱ読まないといけませんね。岩波文庫版よりも、新訳の方が評価が高いです。

種の起源〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

種の起源〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

 

 

これも定番。

利己的な遺伝子 <増補新装版>

利己的な遺伝子 <増補新装版>

  • 作者: リチャード・ドーキンス,日高敏隆,岸由二,羽田節子,垂水雄二
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 2006/05/01
  • メディア: 単行本
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木村センセの本。

分子進化の中立説

分子進化の中立説

 

 

そのまえにこっちを読もう。進化学全般。

生物進化を考える (岩波新書)

生物進化を考える (岩波新書)

 

 

 訳者の自推本。斎藤氏の他の新書は総じて評価が低い。

ゲノム進化学入門 CD-ROM付

ゲノム進化学入門 CD-ROM付

 

 

岩波のシリーズもある。全7巻。斎藤氏も関わっているのでこれも自推。

マクロ進化と全生物の系統分類 (シリーズ進化学 1)

マクロ進化と全生物の系統分類 (シリーズ進化学 1)

  • 作者: 佐藤矩行,馬渡峻輔,石川統,長谷川政美,西田治文,大野照文,柁原宏,川上紳一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2004/12/07
  • メディア: 単行本
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系統樹について。

系統樹曼荼羅―チェイン・ツリー・ネットワーク

系統樹曼荼羅―チェイン・ツリー・ネットワーク

 

 

生物や生命史は絵がないとだめ。重い高い長い。

生物の進化 大図鑑

生物の進化 大図鑑

 

 


書籍レビュー: 無知は高くつく 『カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第3巻 分子生物学』 著:デイヴィッド・サダヴァ他

★★★★★

 

第三巻は分子生物学。細胞間情報伝達、遺伝子組み換え、遺伝子病と癌、免疫、発生が大きなテーマです。やはり図表が豊富で、非常に分かりやすい優れた本でした。

本書も知らないことだらけで驚きの連続でした。内容は実際に読んでいただくとして気になったテーマを取り上げていきます。

においは分子

私たちが匂いを嗅ぐとそれは脳に伝わり、美味しそうな匂いや不快なにおいなどを識別することができます。これは、鼻の匂い受容体に匂い分子が付着することにより、イオンチャネルが開いてカルシウムとナトリウムが細胞内に流入し、電位差が生じて神経に電流が走り、これが脳に伝わることで匂いを感知しているということだそうです。

人体の仕組みはもちろん驚くべきですがこれを読んでちょっと参ったなあと思ったのは匂いが分子であるということです。匂いって、熱とか音波みたいになんとなく物体から発せられる実体のない「気」みたいなものだと思いませんか?私はそのようなイメージでした。ところが受容体に分子が結合しないと匂いを感知できないということは、ウンコから出た匂い分子は鼻腔内の受容体に結合するということです。つまりウンコからはものすごい勢いで匂い分子が発散しているのです。すぐ隣に毎日律儀にウンコする猫が常に控えている身としては彼らの匂い分子を毎日鼻腔に結合しまくっているのだと考えると複雑な気持ちです。

免疫システムについて。リンパ管が全身を巡っていることは知っていましたが図解で見せられるとざわりとするどころかぞぞっとします。人間が管でできていることを見せつけられると人間の概念が変わっていくような気持ちがします。医者というのは人間を見る目が普通人とどこか違うと思います。私も生物学の本は一生かけてたくさん読みたいので人間に対する認識が変わっていくでしょう。

HIVこわい

おなじみHIVウイルスは人間の免疫システムを破壊するふてえ野郎という程度の認識しかありませんでしたが、本書で読んでさらに恐ろしいものと分かりました。

HIVには潜伏期間というものがあります。人によってまちまちで感染から発現までに8~10年かかるそうです。この潜伏期間というのが曲者で、HIVウイルスに感染した当初は免疫機構がHIVウイルスを病原体と認識して、大部分をやっつけてしまうことができるそうなのです。ところがHIVウイルスは免疫のうちのT細胞に感染するという特性があるため、完全には排除できません。で、潜伏期間の間にすべてのT細胞に徐々に徐々に感染していき、最終的には全T細胞が機能不全になった時はすでにHIVウイルスも他の病原体も退治する能力は失われていて、ここではじめて発症する、というメカニズムだそうです。まるで死へのカウントダウンという感じがします。

学習はつらい

一番心を打たれたのは生物学とは直接関係のない記述でした。発生応答という、環境に応じて特異な遺伝的形質が発現するという現象(例えば、マメ科植物の長さが太陽光の量によって決まるなど)の解説の中に挟まれていた次の一説です。

動物では、学習が環境変化に対する発生応答である。この本の内容を吸収しようと格闘している人は、学習がつらいものであることが分かっているだろう、学習には多くの努力と時間が必要であり、学習中は他の有益なことをすることができない。しかし、学習は大人になってもずっと続けることができ、物理的、生物学的、社会的環境に自分の行動を適応させることが可能になる。学習は、複雑な環境システムを持つ種ではとくに重要である。これらの種の個体は、多くの仲間のアイデンティティと個別の特徴を学習し、それに応じて自らの行動を修正しなければならない。しかしながら、どんなに学習がつらいものでも、無知の方がずっと高くつくものであることを忘れないでほしい。

突然現れたこの段落に私は右ストレートを食らい歯が折れたような気持ちになりました。分からないことだらけの学習はつらいし苦しいです。しかし私はもう知らないことには耐えられません。何故なら、他人が言うことを鵜呑みにせずに自分でものを考えるためにはどうしても考える材料である知識が必要となるからです。と薄々考えていた時にこんなジャストな記述に出会って、おったまげてしまいました。無知は高くつく。肝に銘じて今後一生を過ごしていきます。

なお、本書はこの後何事もなかったかのように生物学の解説に戻っていきます。

 


書籍レビュー: 苦しいことは良いことだ 『力学 (物理入門コース1)』 著: 戸田盛和

★★★★★

物理入門という触れ込みだが。。

12年ぶりに物理の勉強本です。目標は学士卒業くらいの知識をつけること。理由は知らないことが嫌だからです。

市内の図書館にあったので、次にどんな勉強が必要か目を通して調べるためにとりあえず取り寄せてみたのですが、数学入門を読んで微積分をなんとなく思い出したのでもういいかな?と思って試しに読んでみました。

大学初年度向けの初心者向けという触れ込みだったのですが12年も経つと数式は忘れていて難しすぎ!微積分の公式はなにも説明なしでポンポン使われるし微分方程式も「~の解は~なので~」と勝手に解いてしまうし苦しいよう。1982年の本なので、当時の大学1年生にとってはちょろい本だったのでしょうが、私達ゆとり一歩手前の世代は微分方程式なんて知らんよ、数学入門でもついてくのヒーコラだったよ、と思いつつ苦行だと思ってなんとか読み通すことはできました。高校では習わないベクトルの外積を1から定義してくれていたので助かりました。

読むのが苦行というのは頭を使うということですから苦しんだ分効果は非常に高くしかも達成感のあるもので、終盤の剛体の運動のところではバットにどのようにボールを当てると手に衝撃が加わらないのか、という問題やビリヤードの問題などとても面白い例題が書かれていて、なんとか理解できた時にはエキサイトしました。

一番面白かったのは歳差運動ですね。なぜ地球ゴマの円盤が周りコマ自体も別の運動をするのか、ということが明らかになります。

歳差 – Wikipedia

さらに地球の歳差運動を別の原理で導き、地軸は僅かな速度で回転していて、1万年くらいすると北極星から外れてしまうということを導いたときには感動しました。天体論は必ずスケールのでかい話になるので心がぶわっと広がります。そういえば大学時代の知り合いに天文部の部長がいました。彼が天体に惹かれる理由が分かった気がします。彼の名前を思い出したので検索してみたら、宇宙学者ではなく、塾講師になっていました。。

https://www.youtube.com/watch?v=xHK_ppa7vk8

当時よりも声が高くて喋るのが早い。元気にしていたようでよかった。

 

一般的なことを言うと、高校のときに数学と物理で受験した人ならきっと読めます。大学1年の授業と並行するもよし、春休み中に読むもよし。それでも高校とはかなりギャップがありますのでこれで慣れておくのは有効です。

 

 

参考文献

さて教科書っていうのは得てして内容が詰まり過ぎているので何回でも読まなきゃいけません。本書も3回は読み返したいのですが今日が返却日だったので残念ながら手放さざるを得ませんでした。そういう意味で図書館で借りたのは失敗でした。買わなきゃダメ。

私が教科書にしたいのはこの本です。

ファインマン物理学〈1〉力学

ファインマン物理学〈1〉力学

 

ところがこの本5分冊で1冊3000円以上もするのです。痛い。ところが検索しているうちになんと、原書が全文web公開されていることが分かりました!!

The Feynman Lectures on Physics

うおおカルテック(カリフォルニア工科大)すばらしい!神!というわけでこのサイトの記述を何度も読み返すことにします。時間かかりそう。

 

その前に数学を復習しないと話になりません。理工書は荷物を減らすため一度大半を売ってしまいました。今思うと愚行です。一冊だけ残っていたこれで復習をするつもりです。

解析入門 原書第3版

解析入門 原書第3版

 

 

 

 


書籍レビュー: なぜ各桁の和が3で割り切れるとその数は3で割り切れるのか『数学入門〈下〉』 著:遠山啓

★★★★★

 

上巻に引き続き下巻では、整数論・関数・極限・指数対数三角関数・微積分がターゲットです。

合同式

123とか54321とか、各桁を足すと3の倍数になるということは知識として知っていました。お金を3等分したり料理中に材料を3等分する時に便利ですよね(あまり使わないか?)。でもそれが何故かなんてことは、全く考えてもみませんでした。ところが本書の序盤で出てくる「合同式」を使うと一発で証明できてしまうことに感動してしまいました。

合同式という概念は昔河合塾で習いました。しかし受験では一度も使うことなく入試に通ってしまいましたので、非常に印象の薄かった記憶しかありません。もちろん忘れました。

合同式とは、「ある数で割った余りが右辺と左辺で等しい」ということを表す式です。合同はふつうの等号に線を一本足した ≡ と書き、商を mod ? で表します。例えば

5 ≡ 2(mod 3)

です。5を3で割った余りは2、2を3で割った余りは2なので5と2は合同という意味です。

なぜ漫画の効果線みたいなけったいな記号を使うかと言うと、イコールと同じように扱えて直感的で便利だからです。例えば

5+1 ≡ 2+1 (mod 3)

5*2 ≡ 2*2 (mod 3)

 は成り立ちます。同じように引き算や割り算をしてもOKです。

100を3で割った余りは1、10を3で割った余りは1ですから、

100 ≡ 1 (mod 3)

10 ≡ 1 (mod 3)

 例えばa*100 + b*10 + cという数を3で割った時の余りを考えると、

a * 100 + b * 10 + c ≡ a + b + c (mod 3)

となって、各桁の和を足したものを3で割れば、3で割った余りが分かることが証明できました!!同じように9で割った余りについても

100 ≡ 1 (mod 9)

10 ≡ 1 (mod 9)

なので3で割った余りと全く同じ事が言える、つまり各桁を足して9の倍数になればその数は9で割り切れることまで証明できましたすごい!!!これで9等分も楽勝だ!

無限の魔力

もう一つ面白かったことがあります。無限をめぐる数学者たちの苦悩です。

1-1+1-1+… = ??

と無限に続いていく数は一体いくつになるのか、ということについて3通りの考えが示されました。 ボルツァーノの級数と言うらしいです。

1通り目→0である。

1-1+1-1+1…

= (1-1) + (1-1) + …

= 0

 2通り目→1である。

1-1+1-1+1…

=1 + (-1+1) + (-1+1) …

= 1

 3通り目→1/2である(!?)

求める数をxとおく。

x=1-1+1-1+…

=1 – (1-1+1-1+…) = 1 – x

2x = 1

x = 1/2

3通り目、面白いですね。直感的に考えると、どれも正しいような気がしてしまいます。コーシーという人が後世にどれも正しくない、答えはないということを証明してこの論争には終止符が打たれました。数学者たちの考えることってとても面白いです。

微分と歴史

ユークリッド幾何学や代数、数論は主として静的なもの、動かない数字や図形についての考察でした。しかし14世紀から15世紀にかけて、大航海時代が始まり太陽や月の運動を精密に知ろうとする必要が生じました。ここから運動と変化の科学が生まれ、関数、微分・積分といった新しい数学が誕生していったと著者は主張します。

すべてのものは流動するという信念を持ち地球が動いていると主張したガリレオが、絶対的な神という最強の静的存在を権威に持つ教会によって弾圧されたこと、正確な運動の原理を算出するために微分法を編み出したニュートンを執拗に攻撃したのは教会の代行人たる僧正(兼哲学者)バークリであったことがこの主張を大きく裏付けます。我々をあんなに悩ませた関数やら微積分やらは歴史のエネルギーによって生み出されたものであると考えると、ロマンにあふれていてなんだか大切にしてあげないといけない気にありますね。

ちょっと駆け足過ぎた

文明論まで交えながら数学を語る筆者の語り口は非常に魅力的です。しかし問題は本書のサイズでした。わずか230ページの中に雑談も混ぜつつこれだけ沢山のトピックを盛るのは無謀です。特にオイレルの公式、様々な積分法、微分方程式ははしょりすぎで、私には全く理解できませんでした。紙面が足りずやむなく式の羅列が続くと筆者の魅力も半減してしまいます。十分優れた本ではあるのですが、上巻のように数学にまつわる雑談をもっと増量してほしかったというのが正直な感想です。この点は著者の他の本を読んで補おうと思います。

ここにも登場、数キチ・アルキメデス

以前この本にも登場したアルキメデスが本書にも登場しました。引用文でまたも彼の数キチぶりが発揮されていました。

プルタークの『英雄伝』は古代における最大の数学者アルキメデス(紀元前287頃-212)についてつぎのように記している。

「多くの立派な事がらを発見したが、友人や同族のものに頼んで、自分の死んだ後では、墓の上に、球に外接している円筒を立てて、内接体に対する外接体の比を記して呉れと云ったそうである」(プルターク『英雄伝』四(岩波文庫)P163)

あんた数学者の鑑や。。詳細はこちらをご覧ください。

アルキメデスの墓に刻まれていたと伝えられる図柄に秘密が・・・ 中1 空間図形|数楽者のボヤキ・ツブヤキ・ササヤキ-中学 数学 道徳 Mathematics Puzzles-

 

 

参考文献

 もうちょっと簡単な本

数学の学び方・教え方 (岩波新書 青版 822)

数学の学び方・教え方 (岩波新書 青版 822)

 

 無限についてもっとくわしく

無限と連続―現代数学の展望 (岩波新書 青版 96)

無限と連続―現代数学の展望 (岩波新書 青版 96)

 

 講演集。数学史と、群論・集合論など

現代数学入門 (ちくま学芸文庫)

現代数学入門 (ちくま学芸文庫)

 

 微積分のもっとわかりやすい本

微分と積分―その思想と方法 (日評数学選書)

微分と積分―その思想と方法 (日評数学選書)

 

書籍レビュー: DNAとウイルスこわい『カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第2巻 分子遺伝学』 著:D.サダヴァ他

★★★★★

 

2巻は染色体分裂~メンデル遺伝学~DNA~ウイルス遺伝学~生物の遺伝学がテーマです。1巻と同様豊富な図表が理解を強力に助けてくれることと、今回は化学知識も不要で誰でもバリバリ読み進めることができる素晴らしい本です。

 

DNAやばすぎ

DNAや遺伝子と言えばすっかり比喩として使い古された感があります。威張ってる好調が「我が校のDNA」なんて言いますよね。でも本書を読むと軽々しくDNAなんて言えなくなります。

DNAは私たちの体を構成する全タンパク質の鋳型です。DNAからRNAがサブセットとして抜き出され、リボソームで解釈されて細胞を構成するタンパク質ができます。

2行で書ける内容ですが、この間にはもう涙なくては読めないほどの超精巧な作業、順番が完璧に整った化学反応、適材適所の酵素の配置、エラー訂正機構、正と負のフィードバックによる濃度調節、などなど万馬券を1万回連続で当てるよりずっと難しい特大奇跡の積み重ねによって我々が生きていることを認識させてくれます。15年くらい前に流行った泣きギャルゲーとかセカチューとかコブクロとか何それちっちゃすぎ!って思えるくらいの奇跡です。生物学者はみんな宗教がかってもおかしくないです。本書ではその詳細を400P以上使って解説するのですすごい。

全体的に抱いた印象は以上ですので残りは特に気になったところを紹介します。

わたしたちの中の遺伝子組み換え

減数分裂という細胞分裂があります。ふつうの体細胞分裂は染色体が2倍になって細胞分裂し、1倍の細胞が2つできます。ところが精子と卵子は2倍になりません。染色体は半数になります(正確には2倍になってから1/4になります)。半数と半数の染色体が結び付いて一人前の受精卵ができるというわけです。子供は精子と卵子の遺伝子をランダムで受け継ぐため多様性が生まれます。

ところがたまげたことがあって、減数分裂時も組換えがあるそうなのです。分裂前に染色体同士が交差して、そのまま入れ替わってしまうらしいです!乗り換えと呼ばれています。

http://www.metabo-help.com/images/gene/gene5_06.jpg

特定健診(メタボ)対策・ダイエット レシピ集|生活習慣病予防の総合健康情報サイト|メタボヘルプ ドットコム【遺伝子ふしぎ発見!】

つまり我々のキンタマの中では毎日遺伝子組み換えが起こっているというわけですよ!びっくり!これは有性生殖に加えてもう一段階進んだ遺伝的多様性を生み出します。精子や卵子全員に遺伝的な個性があるだなんて知りませんでしたよ。

宇宙人バクテリオファージ

これは高校生物でも習うので知っている人も多いと思います。私は習ったような気がしますが忘れました。

ウイルスとは自己増殖だけを目的としたDNAとそれを囲むタンパク質だけでできた存在です。自分で栄養を合成したりできないので、生物とはみなされません。他の生物に寄生することだけが彼らの生きる道です。

で、このウイルスの例として挙げられているT4バクテリオファージが怖いのです。

なんですかこの宇宙人!

ウィルス『ファージ』がまるで人工物のようだと話題に。 – NAVER まとめ

 

http://livedoor.blogimg.jp/chaos2ch/imgs/9/8/98c56a52.jpg

細胞を刺してDNAを注入するファージ

ウィルス『ファージ』がまるで人工物のようだと話題に。 – NAVER まとめ

 

 

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/8f/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%83%81%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%81%AE%E5%AE%9F%E9%A8%93.svg/800px-%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%83%81%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%81%AE%E5%AE%9F%E9%A8%93.svg.png

ファージに取りつかれた細胞は破裂して死ぬ

高等学校生物 生物I‐遺伝 – Wikibooks

 

DNAを注入された細胞はお人よしなことに細胞内器官が「わーいDNAが来たよー合成合成」とウイルスのDNAを使って、しかも自分のエネルギーを使ってウイルスのタンパク質を合成してしまい、上図のようなことが起きます。しかもウイルスなんて単純ですから大量に合成してしまいます。増殖したウイルスは細胞壁を溶かす酵素を出して細胞を壊し大量のウイルスが飛散、被害が拡大していきます。おそろしい

また、ウイルス由来のDNAは宿主細胞のDNAを組み替えてしまいます。そして宿主のDNA内で長い間潜伏し、例えば宿主の体調が良くなった時など(細胞内の特定の物質の濃度でわかるそうです)を狙って発現し増殖します。トロイの木馬ウイルスみたいなもんです。コンピューターで発明される前に、生物プログラムとして存在していたとは。見た目の怖さも抜群ですがここは心底ゾッとしました。

インフルエンザにかかったあなたはこれが体内で起きています

ところがこいつを病原菌にとりつくように改造(というか抽出と培養)すれば、病原菌だけを安全に殺すことができます。これを使って最近流行の多剤耐性菌を退治することも期待されています。ファージセラピー です。宇宙人も使いよう。

 

他にも遺伝的多様性に貢献したり病気の原因になったりするきまぐれなトランスポゾンとか細胞内のちょっとした物質の増加でスイッチの入るアポトーシス(細胞死)の仕組み怖いとか近親婚に病気が多い理由(劣性遺伝子がかち合いやすいから)とかDNA複製の心細すぎる仕組みとか驚愕した例はいっぱいあるのですが、時間と紙面の関係でここまでにします。気になる方はぜひ読んでみてください!

 


書籍レビュー: 刺激的な数学教養書『数学入門 <上>』 著:遠山啓

★★★★★(≧ω≦)

2年生の途中までしか終えていない大学教育の水準に追いつくため、まずは数学の勘から取り戻さないといけません。そこで尊敬している遠山先生の新書、名前もそのものずばり「数学入門」という本があるというので手に取ってみました。

数学者は語学マニア

著者の遠山啓(とおやまひらく、1909-1979)さんは数学者・数学教育者です。タイルを使って量の概念を確実に身に着ける「水道方式」で有名です。

1959に出版されたという本書では、「ものを数える」という概念の誕生から始まって加減乗除~方程式・代数学~幾何学~複素数までの説明を新書1冊で(演習無しで!)完結させるというなかなか野心的な書でした。

あちこちで目を引くのは遠山先生の教養レベルの高さ、というかマニアさです。まず数の概念についてはあらゆる言語や部族の数詞に言及します。

たとえば、英領ニューギニアのビュギライ族はつぎのような数詞をもっている。

1→タランジェサ

2→メタ・キナ

3→ギジメタ

4→トペン

5→マンダ

6→ガベン

7→トランクジンベ

8→ボデイ

6→ンガマ

10→ダラ

これは身体の各部分の名であるという。人間の身体の各部に関連させて数えていく、という流儀によると数百の数まで数えられるだろうが、これは覚えこむのが大変で会って、これでは記憶力をひどく酷使することになる。

この調子でいろんな方言などを比較しつつ数の概念の誕生に迫っていきます。。現代の天才数学者ピーター・フランクルさんは14か国語を話せるそうですので、数学者というのは語学に精通していることが多いようです。言語は面白いパターンに溢れていますから数学者好みと言えましょう。私も外国語は大好きですが数学は苦手です。

まさかクラメルの公式の意味が分かるとは

数論・四則演算で最も驚くべき個所は分数の足し算引き算・通分約分のところです。約分を「たたむ」、通分を「ひろげる」と折り紙に例えている個所はマジ感動しました(画像が無いのが残念です)。ここから量をタイルで考えるという発想に至り「水道方式」に繋がっていったのでしょう。

代数の章では一次方程式→行列→クラメルの公式までぶっ飛ばします。行列が多元1次方程式の解を求める要請から出てきたので必然とはいえここまで進むとは思いませんでした。さすがにここはしんどかったですが線形代数の授業で丸暗記するしかなかったクラメルの公式の意味が分かり驚きました。

公理を積み上げてできた幾何学

幾何学の章では浪人になる直前になんとなく本屋で手に取ったこの本を要約したような感じでした。

幾何への誘い (岩波現代文庫―学術)

幾何への誘い (岩波現代文庫―学術)

 

幾何学は「2点を通る直線は必ずあり、しかも1本しかない」などの公理と呼ばれる直感的に「当たり前」な数少ない事実だけを基にして複雑な証明を組み立てていく美しい学問です。と上の本を読んで感動したことを思い出しました。大学1年で買わされた杉浦「解析入門」も公理から微積分を導いていく本なのですがこちらは美しいと思えずただ苦痛だった記憶しかありません。いつか読破してやるんだ。。

 

あちこちにダンテやらプラトン、ショーペンハウエル、デカルト、スタンダールなどの引用が散りばめてあり、著者の教養の高さが伺えるとともにそれらの書物もまとめて読みたくなってしまう素敵な本でした。 下巻は関数、極限、微積分です。どういった説明が出てくるのかワクワクです。

 

 

参考書籍

イスラム数学者の話。

ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)

ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)

 

 

数学が得意だったダンテ。7や100といった数字が大きな意味を持つ。

神曲 地獄篇 (河出文庫 タ 2-1)

神曲 地獄篇 (河出文庫 タ 2-1)

 

 

幾何学の聖書。

ユークリッド原論 追補版

ユークリッド原論 追補版

 

 


書籍レビュー: ざわりとする生物学『カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学』 著: D・サダヴァ他

★★★★★٩(๑❛ᴗ❛๑)۶ 

 

高校の時生物が苦手でした。覚えることが多く暗記ばかり、計算が無いしイメージできず辛い。世界史と並んで毎回赤点寸前の劣等科目でした。もちろん大学入試には使わず、うっちゃっておいた領域の一つです。

しかし食や環境の本を読むにつけ色々な主張の生物学的根拠に一々疑問を持ってしまい、本当にそうなんけ、間違ってるんとちゃうんかい、一体どこまで妥当なの?と考え生物学の必要性を痛感しました。その後いろいろ物色してこの本に辿りつきました。

本書はLIFEという向こうではポピュラーな生物学テキストの抄訳です。 MITでは全員(生物学専攻以外の学生も含む)がこの教科書で学ぶそうです。

Life: The Science of Biology

Life: The Science of Biology

 

本シリーズ全5巻で、この教科書の約半分をカバーします。第1巻である本書では生物の基本のキである細胞を取り扱う、「細胞生物学」というタイトルがついています。

生物すごすぎ

内容は見事というしかありません。いや生物学が専門の人から見たら物足りないとか翻訳がダメとか言うんでしょうが私のような生物初心者にとっては最大級のインパクトがありましたよ。生物すげぇ!

まず丁寧な図解。しかもカラー。文字だけではわけのわからんカタカナ語の羅列にしか見えない複雑な反応系が図に落とし込まれることで脳に優しい形に変化し、葉緑体のホラーな生物工場っぷりやファゴサイトーシスのキモさ、クエン酸回路の美しさや膜内タンパク質の不気味さを存分に味わうことができます。

そして生物の奇跡。超蝶々複雑であると同時に美しくキモく絶妙なバランスで安定を保つ完璧な構造をしています。人間がどんなに頑張って作業ラインを組み立てたって敵いそうにない最強の物質生産・消費工場です。しかもこれがあらゆる生物の微小な細胞一つ一つに備わっているなんて!何十億年という地球環境の厳しさによって絶え間なく破壊され続けてもそれに抗って生き延びてきた生命の所業ということなんでしょう。

空気を読む細胞

(以下は生物学に詳しい方にとっては当たり前の内容です)

最も感動したのは好気呼吸における正のフィードバック・負のフィードバックの仕組みを読んだ時でした。

好気呼吸をざっと説明します。我々が炭水化物や脂肪類を食べると唾液や胃酸などでグルコース(ブドウ糖)に分解され、それが各細胞に行き渡ってエネルギーに変換されます。細胞内では次の図のような複雑な反応が行われています。これは単細胞生物のような原核生物を除いた全生物ほぼ共通です。

呼吸 – Wikipedia

目が痛くなりそうな図ですね。細胞内ではまずグルコースを炭素数半分のピルビン酸*2に分解し(解糖系、上図の左半分の反応)、それをミトコンドリア内のクエン酸回路(上図の右下の反応)に放り込んで二酸化炭素まで分解します。グルコースに蓄えられていたエネルギーは解糖系とクエン酸回路で各種物質と結びついたH+として化学的に保持された後、これらはミトコンドリアの電子伝達系(上図の右上の反応)を通じて大量のエネルギーを生み出します。

こんな超複雑な化学反応を連続して安定的に起こすためには、バーのマスターなんか目じゃないくらい各種物質を絶妙な割合で混合し、しかもその状態が恒常的に持続する必要があります。どれか1つの中間物質が少なくなる・過剰になるだけで、分子のバケツリレーが止まり細胞は死にます。おそろしい。

生物はフィードバック機構という化学的な仕組みを取り入れこの問題を解決しました。すべての反応には酵素が関わります。酵素とは化学反応を円滑に進めるための生体触媒です。矢印一つ毎に別々の酵素が関わっていると考えて良いです。好気呼吸においては、各所の産生物がいろんな場所の酵素にくっつき、反応速度を速めたり(正のフィードバック)、遅くしたり(負のフィードバック)するのです。

http://homepage2.nifty.com/nutriology/top-page/molecular-nutriology%286%29/kouso-10.gif

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上図は負のフィードバックの例です。例えるなら、ドラえもん(上の図の最終産物D)を量産する工場があったとします。ドラえもんを1日100体製造するペースを保ちたいのに、今日は組み立てラインの工員(上の図の酵素Ⅰ~Ⅲ)が頑張りすぎて正午なのに80体も製造してしまったとします。すると最終産物であるドラえもん自身が「お前ら働き過ぎ!休め!」と言いながら工員にくっついて邪魔をします。以後はラインの速度が低下し1日100体という計画をずれることなく見事操業時間を終了することができました。これが負のフィードバックです。

最終産物自らが酵素に働きかけ、自立的に物質の流れを制御する…なんてエレガントで美しいの!感動しました!いわば細胞内の物資たちが勝手に空気を読み、永遠の秩序を保つわけです。空気の読めない発達障碍者のみなさん、あなたが生きているということは、あなたの身体の中の物質は立派に空気読みまくってるわけですよ!誇ってください!

ざわざわする

このような奇跡は一方で危うさを感じさせます。ちょっとバランスが崩れたら死ぬんじゃないか。実はその通りで、1カ所の酵素が機能不全であるだけで慢性的な難病になることが多いのです。バランスが崩れるの怖い。すぐ死ぬ。同じことは宇宙に関する本を読むたびにも思います。地球があと少し太陽からはなれていたら寒くて死ぬし、少し近づいていたら焼け死んでる。本質的にスケールのでかい本を読むといつも気分がざわつきます。最悪の想像ばかりしてしまい、ああ1秒後に死ぬかも。次の瞬間に世界が終わるかも。という気持ちになります。我々は無数の奇跡の上に生きていると強く感じさせられる本でした。

化学知識と原書

本書の欠点は高校程度の化学の知識が必須であることです。私はたまたま化学で大学受験したので何とか読めましたが、そうでないと厳しいでしょう。

でも原書には化学の基礎知識の章が1つもうけられてますね。

Life: The Science of Biology

Part One. The Science of Life and Its Chemical Basis

  1. Studying Life
  2. Small Molecules and the Chemistry of Life
  3. Proteins, Carbohydrates, and Lipids
  4. Nucleic Acids and the Origin of Life

さすがは1冊で独習できる書の揃ったアメリカ。ちゃんと完結していてすばらしい。いずれ原書も読んでみたいものです。訳者がこの本を読むのは化学を高校で勉強した人間だけだぜって仮定したからなのか、紙面の都合(こっちかな)で大事な1章をばっさりカットしたことは欠点の一つです。

 

しかしそんな欠点なんぞ全く気にならない内容でした。すばらしい。生物すごすぎる。まじすげぇ。まずはこのシリーズを5巻全部読破することが目標です。

 

 

 

全部読み終わったらこれかな。

 

キャンベル生物学 原書9版

キャンベル生物学 原書9版

 

 16200円1728ページ!!たけーーー。なげーーーー。

 

Campbell Biology (10th Edition)

Campbell Biology (10th Edition)

  • 作者: Jane B. Reece,Lisa A. Urry,Michael L. Cain,Steven A. Wasserman,Peter V. Minorsky,Robert B. Jackson
  • 出版社/メーカー: Benjamin Cummings
  • 発売日: 2013/11/10
  • メディア: ハードカバー
  • この商品を含むブログを見る
 

原書は10版がすでに出てるじゃん!買うならこっちだね。でも3万円。死ぬ。100ページ当たり約200円と考えれば安いかも。でも一度に15冊大人買いするのと同じ意味だからやっぱり死ぬ。アメリカamazonでは絶賛されています。

 


書籍レビュー: 実例は楽しいが内容は薄い、宣伝有り注意『SEO対策のためのWebライティング実践講座』 著:鈴木良治

★★☆☆☆

著者の鈴木良治さんは株式会社アンドバリューの社長です。

webシステム開発、サイト作成などが業務のようです。この本はその活動の中で培われたノウハウを凝縮した書籍と言えそうですね。

web上で必要となるライティングスキルとは

この本の要点は2点に集約されます。

  1. 検索エンジンに上位表示されるコンテンツを作ること。
  2. ユーザーを狙ったページへ確実に誘導させること。

1点目はSEO(検索エンジン最適化)対策そのものですので当たり前のことですが、これも要点は次の2つに絞られるように感じました。

  • ニーズのあるキーワードを適切な割合で含むこと
  • オリジナル性があること

2点目についても同様に

  • ユーザーを離れさせない工夫をすること
  • 仮説・実践・検証を繰り返すこと

に絞られます。本書250P分を要約すると以上の通りです。

わかりやすく、内容は薄い

本書は、以上の4点を不動産会社の広告を例にとって具体的に説明していく構成を取ります。分かりやすさを重視している為か、1時間半くらいで読めてしまいました。内容は見た目の分厚さの割に薄く感じました。しかも、ほとんどの情報は既にwebでいろんな方が実践していることとほぼ同じです。私はアフィリエイターのブログを10ほど読みました。この本に書いてあることの2/3くらいは既に学んだことばかりです。

中盤にはキーワードを文章内に散りばめるリライト方法が書いてあります。参考になって楽しいのですが、この程度の内容ならふつうの日本語の書き方本を読んだ方がよさそうです。文字数を揃えるテクニックは必然性に欠けます。外注として文章を書く時でなければ参考になりません。

無料ツールの紹介は自社の宣伝だった

ラストに無料ツールの紹介があります。ファンキーライティングは便利そうです、が、、

ファンキーライティング[FunkeyWriting] | 無料Webライティングツール – FunMaker[ファンメイカー]

よく見るとアンドバリューの製品じゃん!サイト内に本書の広告がありました。ああ自社宣伝だったのですね。いやーまいったまいった。

他に便利そうなのはgoogleアドワーズ、googleアナリティクスと日本語文章校正ツールですが、日本語文章校正ツールはリンク切れでした。泣けてきます。googleアナリティクスは優秀ですが本書ではまともに解説されてないので、他の書籍で学習する必要があります。

 

いまいちでしたね。

 


書籍レビュー: 万能の1冊『Programming PHP (3rd edition)』 著: Rasmus Lerdorf, Kevin Tatroe

★★★★☆

これ1冊でPHPプログラミングは十分可能

基本的な言語仕様から、Cookie、PDOを使ったデータベース操作、セキュリティ入門、画像作成やPDF作成、XML操作、RESTfulなサービスなどのトピックを盛り込んだボリュームのある書です。特に言語仕様については詳しく、設計思想を絡めて説明してくれるので腑に落ちることが多い良書です。

巻末に組み込み関数のリファレンスが付いているので、これ1冊で基本的なPHPプログラミングを行うに当たっては全く困ることがなくなると言っても過言ではないでしょう。

プログラミング初心者向けではない

とはいえ、特に言語仕様について感じましたが、プログラミング初心者向けではありません。盛り込む情報量が多いので仕方ないのですが、1つ1つの説明は簡潔で、すべてにサンプルコードを書けるスペースは存在しません。はじめてプログラミングをする人は困惑するでしょう。

また、PDF作成やXML操作などの後半のトピックは「あとは公式マニュアルを見てくれ」で済ませてあることが多く、内容が薄いです。これらの技術を使う場合、他の書物を読んで情報を補強する必要が必ず発生します。

PHPはpython以上にbattery includedだ

pythonの思想は“Battery Included”、およそ必要なライブラリはあらかじめ組み込んである、という設計を謳っています。しかし実際にプログラミングしてみると不足な機能は多く、pipを使ってライブラリをインストールしまくる必要がありました。

PHPはpython以上に“Battery Included”だと思いました。データベースは標準で操作できるし正規表現も楽勝、画像も作れるわネットワーク・メール関連も充実しています。ライブラリのインストールもPHPファイルを持ってくるだけだから楽勝です。

今後も本書を大いに活用してPHPのプログラムを書いていこうと思います。ありがたい1冊でした。

 

↓日本語版はこちら

 

この本から学んで記事にしたこと

必ず覚えておこうと思っていくつか記事にしています。並べてみると随分ありますね。