書籍レビュー:『セクシャル・マイノリティ Q&A』編著:LGBT支援法律家ネットワーク出版プロジェクト

★★★★★

Q&Aという形式をとって、セクシャル・マイノリティの人が、社会生活を送るために具体的にどのような困りごとがあるのか、どう対応していけばいいのか、ということを主に法律家の立場から解説する本です。

セクシャル・マイノリティと謳っていますが実際にはほぼLGBTの人たちへの情報集でした。「LGBTの人が、マジョリティのために作られた社会制度の上にどうやって乗っかっていくか」がメインとなっています。例えば、

  • 心の性別と体の性別が違うときにはどのような手続きを取ればよいか?
  • 修学旅行のとき寝室をどうしよう。。
  • 自分が死んだときパートナーに財産を残すにはどうしたらいい?

といった、LGBTが日本で送る生活の中で必ずぶつかるであろう、社会的圧力や法的障害に対応するためのアドバイスが書かれています。ぼくはいまパートナーと法的にいえば事実婚状態なのですが、財産や任意後見制度、信託など事実婚についても適用できるアドバイスも多く、参考になりました。

途中にLGBT当事者によるコラムが挟まれていますが、彼らに共通しているのは、周りがみなバカにしている・異常だと思われる・誰にも相談できないことによる疎外感です。性別違和を感じニューハーフとなった後、男性学に出会いそのまま大学→修士まで修めてしまった宮田りりぃさんのコラムが一番面白かったです。

華やかな夜の都会で働く人々とのかかわりを通して、魅力的な女性/男性のイメージや恋愛関係が意図的・計画的に演出されていく様を間近で見ることが面白くてたまらないという感じでした。

本書に書かれているアドバイスはどれも個別で具体的なものですが、どのQ&Aにも執筆者さんの根底に「相談者さんの人格を大事にしたい」という思いが感じ取れます。それは、序盤の概論で次のように書かれている箇所に凝縮されていると思いました。

仮にマジョリティの人たちの方が多いとしても、多いからといって、それが「正しい」とか「普通」だとか「自然」だということにはなりません。人が、自分のことをどの性別だと思うか、また、誰を好きになるかということは、その人にとってとても大切なことです。そして、その人がどう生きるかといった、その人の人間としての尊厳(人間が人間らしくあること)に大きく関係することです。ですので、そのことについて、周りの人たちが「正しくない」とか「変」とか「不自然」だといったり、「こうあるべき」と決めつけたりすることは許されません。(P11)

マジョリティ側からかけられる圧力は、彼らの習慣に基づいたものに過ぎません。自分と他人の習慣が異なると、自分を否定されたようにに感じる人が多いので、数をたのんで「正しくない」だの「変」だのとマイノリティを攻撃して自分を保つ、という構造をよく見かけます。

誰一人同じ人間なんていないんだから、お互いを尊重できればそれでいいのにね。

 

 

 


書籍レビュー: 『すぐに役立つ 少額訴訟・支払督促のしくみと手続き実践文例56』

★★★★☆

60万円までの金銭請求までしかできないけれど、1回で審理が集結してその場で判決が出る、上告もできない超スピード審理が特徴の「少額訴訟」を解説した本です。

裁判費用は最大でも1万円で弁護士も必要なし。訴状を出したら、書記官さんがこういう資料を用意してね~とかここの書き方が間違ってるよ~と親切に教えてくれます。庶民にやさしい訴訟です。勝訴すれば、判決が確定してなくても仮執行で金銭の差し押さえができちゃいます。負けても1万円損するだけ。

「支払督促」は金銭トラブルに絞った、少額訴訟よりももっと簡素な、出廷さえしなくてもよい手続きです。原則、瑕疵が無ければ主張は認められるので、相手方からの異議申し立てが無ければ仮執行~強制執行までできちゃいます。給料不払いや敷金未返還トラブルには、泣き寝入りしないでぜひこの制度を活用するべきです。

相手方が離れた地にいたとしても、次のシステムを使えば遠隔地の裁判所まで行かなくても督促出来ちゃいます。

督促手続オンラインシステム

 

よくまとまっている本でした。

 


書籍レビュー:「普通」が差別を生む 『非婚の親と婚外子』 編:婚差会

★★★★☆

 

日本国では、婚姻関係にない男女から生まれた子は民法で「非嫡出子」として扱われます。法務省編の戸籍法の解説書には「非嫡出子は、正常でない家族関係における子」と記述されています(法務省民事局内法務研究会編「改正国籍法・戸籍法の解説」1995年)。

この本が書かれた2004年現在では非嫡出子は法律上の差別があり、民法900条4号で法定相続分が嫡出子(婚姻関係にある男女から生まれた子)の1/2となっていました。この規定は2013年12月に撤廃されました。

法律ですら差別がありますので、「非嫡出子」を「普通ではない」とみなす「常識人」は数多くいます。

第一章では、結婚生活が破綻し前夫が離婚に応じないまま次のパートナーとの子供を妊娠したため、民法772条の「離婚後300日を経過しないまま出産した子は前夫の子と推定する」という規定に苦しむ女性の話が描かれます。彼女は「普通はたくさんの人に祝福されてきて生まれる子のなのに、この子は私とパートナーしかいなくてかわいそう」と苦しみます。いやあなたとパートナーだけでいいじゃないの!!!なんでだめなの!

第三章、妻子持ちの男性との子を出産した女性が、男に「こいつも不幸やなあ。重い荷物背負って、差別されながら生きていかなあかんなあ」と言われます。男はカッコつけたつもりなのでしょうが、女性は次のように言います。

「そんな風に一番差別しているのは、父親であるあなたでしょ」(P53)

第四章は、シングルマザーが大阪府議の後援会事務所で議員に

「なんや、未婚の母か。そんなふしだらな人が自分の事務所に来てると言われるとなぁ(中略)あんた、子どもにかわいそうなことしたなぁ。これから就職やら結婚やら、いろんなところで差別されるで」(P70)

と言われた上にセクハラされるという胸糞悪い話です。この女性が議員相手に訴訟を起こして勝つまでのストーリーがスカッとするのが救いです。

3つのストーリーで共通して出てくる単語は「かわいそう」です。「かわいそう」という言葉には、裏に差別が含まれています。「差別されるからかわいそう」ということですから、差別を認めていることになります。単純化すると

「婚外子」→「普通ではない」→「かわいそう」=「差別」

となります。

人間は「普通」であることに安心し、「普通でない」ことに対して不安を抱きます。そして「普通」は国家が法律をもって決めます。国家が決めた「普通でない」ことにはペナルティがついたり、「普通」であることには税制上の優遇などのエサがつきます。

犯罪は他人の人権の侵害となるのでペナルティを受けて当然ですが、婚外子であることになぜペナルティがつかなければいけないのでしょう?近年、婚外子に対する法律上の差別は存在しなくなったので、あと残っているのは人間の差別心だけです。

婚外子差別は、特に夫のみが働く共働きでない婚姻関係のある世帯に顕著です。なぜなら、夫名義の財産は夫婦共有と考えられている場合が多く、夫の財産に対して相続権を持つ婚外子の存在は夫婦の共有財産の侵害と認識される場合が多いからです(P161~162)。妻の夫への経済的依存性のため、不実の夫に向けられるべき怒りが婚外子に向かってしまい「婚外子は加害者」という誤った差別意識が生まれる、という構造です。近年の低収入化による共働き世帯の増加によって婚外子差別は薄れていくかもしれませんが、ぼくの周りの話を聞くだけでもまだまだ遠い先のことに感じます。

図録▽婚外子(非嫡出子)の割合(国際比較)

日本の婚外子がいまだに全体の2.1%しかいないのは、婚外子のほとんどが中絶されているからです。

この記事でも書きましたが、本書でも「血縁関係や家族の形態よりも、養育を通した人間関係が重要である」という意見が、婚外子本人の立場からいくつか書かれています。

最後に次の記述を引用して終わります。

子にとって婚外出生は罪でない。女にとって婚外出生は恥ではない。

それは、人としての自然な営みの一つの形に過ぎない。(P249)

 

またクソレビューが書かれているので転載してしまいます。

 

トップカスタマーレビュー

投稿者 サッチャン 投稿日 2013/9/10

形式: 単行本

婚外子だの非婚だのこの本で感じるのは自分勝手な人間が多いなあと思います。ただ単に縛られたくないが子供は欲しいという利己主義の発想だと思います。結 婚というのは相手に合わせて生活していくのが、普通であり、それが嫌だと言うのであれば一生独身でいられた方がいいと思います。

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書籍レビュー: 面会まではゆっくりしかし確実に 『子どもに会いたい親のためのハンドブック』 著: 青木聡, 宗像充, 蓮見 岳夫, 共同親権運動ネットワーク

★★★★☆

類書は3冊目です。前2冊と違って執筆者は弁護士ではありません。そのため法的根拠よりも家庭裁判所の実務や「片親疎外」についての記述など、社会学的・カウンセリング的な内容に重点が置かれています。子どもに会えない親が初めて読むならこの本が最も適当でしょう。

片親疎外とは

狭義には、両親の離別をきっかけに、子どもが別居親に対してだけ強い拒絶反応を起こすことを指します。これは

・同居親が自分の意向(別居親への嫌悪感や恐怖感)を子どもに刷り込むことと

・子どもが同居親に嫌われないために親の意向を「察知」して行動すること

この2つの無限ループによって増幅されます。前者は当然起きるとして、後者は子どもにとっての暴力にほかならないと考えます。「子どもが会いたくないと言っている」という論理の欺瞞がここにあります。

「片親疎外」は広義には、子どもと別居親の面会交流が、子ども本人あるいは同居親+その親族によって、正当な理由なく拒絶されている状況全般を指します。狭義と意味違い過ぎるんとちゃうんかとツッコみたくなりますが本書全体ではどちらかというと広義の意味でつかわれることが多いです。狭義の「片親疎外」は本書では「片親引き離し症候群(PAS)」と呼ばれています。PASはDSM-5にも記載されておらず社会的な地位はありません。いち社会学的現象のような扱いです。

アメリカでは1970年代に離婚やPASが社会問題となり、映画(クレイマー・クレイマー)もできました。フランスに至っては2週間以上の面会拒否が軽犯罪法の対象だそうです。

日本は面会拒否に罰則がありません。西洋個人主義の伝統を汲むアメリカ・フランスと一概には比較できませんが、日本は単独親権主義、すなわち親権がない人間が法的にヨソモノ扱いされる先進国では稀有な国家です。人々の意識も同様に、別居親=もう関係ない人となりがちです。別居親にとっては最悪の環境の中、本書はどのようにして子どもにアプローチしていくのでしょうか。

まず生き残りましょう

別居親はショックや失意から仕事ができなくなったり生活もままならなくなりがちです。まず次の3点を基礎にしましょう。

・「子どもと会うためにできることをする」という気持ちをはっきりとさせる

現状を受け止め自分を変化させ、子どもに会った時に良い状態でいるためのイメージを作りましょう。

・ストレスに対処する

ストレスはあって当たり前です。体力をつけ、心療内科の力も借りましょう。

・経済的に安定する

子どもに安定的に会うためには生活を安定させることが第一です。面会にはコストもかかります。弁護士費用がかかることもあります。

面会交流の調停を申し立てましょう

「試行的面会交流」などというかなりうっとおしい名前がつきますが会えないよりマシです。PASの影響で子どもに激しく拒絶される可能性もありますが、覚悟しましょう。激昂しないで無償の愛情を注ぐ姿を示しましょう(きついなー)。ただし、嘘を吹き込まれている場合は冷静に毅然とした態度を示しましょう。第三者に事実を伝えてもらうなどして、他の人間の助けを借りましょう。

会えなくてもアプローチしましょう

調停を申し立てても無視される可能性があります。それでも手紙やメールを送り続けましょう。重要なのは、手紙やメールのコピーをファイルなどに保管しておくことです。同居親やその親族が、おしんの清バーさんの如く手紙を密かに破棄するなどして子どもとの連絡を絶つことは多いです。しかし手紙やメールを送ったという事実が、将来運よく子どもに会うことができたときにその効力を発揮するでしょう。また、裁判所などの第三者の評価を必要とする時にも力になります。

フェイスブック、ブログに子供宛の日記を綴る、子ども用の通帳を作って貯金しておくなどという方法も紹介されています。

第三者の助けを借りましょう

大都市には別居親の自助グループがあります。インターネット上にもグループがあります。ぜひ活用しましょう。



 

なお巻末で、同居親(父親)が再婚したために1年半引き離された別居親(母親)の交流開始の体験記が記されています。弁護士の助けを借りてやっとのことで会えたそうです。文章から彼女の苦労がしのばれます。交流が実現しても、父親の妨害行為は「お母さん」と呼ぶことを禁じる、本人が言っていないのに「会いたくないと言っている」など種々に及んでいます。ゲスですね。

 

 

関連書籍

 

片親疎外について

離婚毒―片親疎外という児童虐待

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 クレイマー、クレイマー

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面会交流シリーズはいったん一区切りです。


書籍レビュー: 面会交流を拒む親は親権者としての適格性に疑問あり『男の離婚術 弁護士が教える「勝つための」離婚戦略』 著:マイタウン法律事務所

★★★★☆

 

次は男側がどれだけ手を尽くして妻を追い出すか調べようと思って借りたのですがどちらかというと「浮気してものすごく立場が悪くなったんだけどできるだけ被害を少なくして離婚したい」という立場から書かれている本でした。ですので拍子抜け、目的は果たせませんでしたが、しかしいくつか有用な記述もありました。

公正証書は執行力がある

離婚協議書を普通の文章で作成すると、履行されない時は調停→裁判→強制執行という手順を踏む必要がありますが、公正証書で作成するとなんと即!強制執行が可能です。(P30)

調停委員は退職者ばっかり

てっきり法曹関係者で構成されていると思っていた調停委員は、弁護士10.9%、会社役員9.7%、その他士業16.9%、そして無職41.6%でした。なんだ無職って!?と思ったら年齢構成が50代24.6%、60代69.4%なんですね。つまりほとんどが退職した高齢者というわけです。(P46)

親権ってそもそも何?

親権とは、未成年の子どもを監護、教育し、その財産を管理するため、子どもの父母に与えられた権利と義務の総称です。(P173)

つまり著作権のような様々な権利の束である、という性質のもののようです。そして上記のように監護権は親権の一部でもありますが、親権から分離して別々の親に与えることが可能だ、ってことがわかりました。

面会交流を拒む親は親権者としての適格性に疑問あり

本書で一番驚いた記述です。この論法は使えます。

 しかし、それまで一緒に生活してきた父親に「会わせない」とか「1か月に1回くらいなら会わせてやる」というのはずいぶんと酷い話ではないでしょうか。離婚前であれば、その時点では共同親権者なわけですからなおのことです。妻がこどもを連れて一方的に別居を開始したケースであれば、なおさら不当な扱いと言わざるを得ません。

 さらにいえば、親の都合で父親と離ればなれにされてしまった子どもにとっても、その後、父親とほとんど会えなくなるのはよいこととは言えないでしょう。

 面会交流の実施に、母親にとって前述のような負担(注:元夫と顔を合わせなくないということです)があることは、子どもと父親との交流に消極的になる理由にはなりません。親権者として子どもの面倒をみる責任を引き受けたのであれば、面会交流に伴う負担も当然引き受けなければいけません。また「子どもが父親に会いたくない」と言っているという理由で面会交流を拒むとすれば、子どもを強い葛藤に追い込んでいる疑いが濃厚と言えます。いずれにせよ、親権者としての適格性に疑問を持たざるを得ない対応と言えます。

目から鱗の論理でした。私は「父親」と「母親」を逆転させて読んでいますが、十分通用します。男の方は浮気やDVしたんだからダメだろ―バカだなぁと思うのでした。

面会交流を拒まれたら記録にして残すこと

上記の「親権者としての適格性に疑問」を立証するためには証拠が必要です。そのため本書ではメールなど記録が残る媒体で面会交流の依頼をしたり、相手に弁護士がついていたら弁護士に文章を作らせるように依頼するよう推奨しています。また、文章を拒まれた場合でも次のように詳細に記録をつけておく戦略も書いてありました。

f:id:happyholiday:20160117221642j:plain(P190)

なるほどなぁ。

 

本文とはあまり関係ありませんが巻末の養育費算定表(年収と子どもの数にほぼ比例)を見たら私は一般的相場の4倍以上払っていることが分かりました。自慢できそうです。

 


書籍レビュー:じゃあ男がクソだった場合はどうすればいいんだよ『離れていても子どもに会いたい―引き離された子どもとの面会交流をかなえるために』 著:小嶋勇

★★★★☆

 

先に断っておくと、私の話ではありません。いやもちろん私も会いたいですけど、私の話ではなく、身近な人間のために調べていることです。

 

日本では離婚した夫婦に子があった場合は、離婚後は共同親権をとらず単独親権を採用しています。つまり父か母のどちらかが親権を独占します。親権を得られなかった親は子に対する権利を失います。

日本では「追い出し離婚」といって夫が密かに離婚届を提出し、気に入らない妻を追い出し締め出してしまうことが横行していました。今では離婚届の不受理制度というものが導入されたらしく(詳細については書いてありませんでした)このようなことは原理的には不可能となったらしいですが、それでも強制的に協議離婚にサインをさせれば似たようなことは可能です。いわば「外様」となってしまった元配偶者は子に合わせてもらえなくなったり、面会の希望を出しても一々理由をつけて断られるとなどということは日常茶飯事です。

本書はDV法を使用して妻に締め出された夫についての話が大部分を占めますが、正直な話、夫側の主張はどれも粘着質でお前それだから出ていかれたんちゃうんかと言いたくなるような例ばかりです。

しかし逆のパターン、夫が妻を追い出す「追い出し離婚」の例は深刻です。何故なら男はアホなので暴力や恫喝に訴えて相手を支配する生き物だからです。体裁は協議離婚という形をとりつつ、脅迫して無茶な内容の取り決め書にサインさせられます。また男の方が経済力を握っていることが多く、カネに物を言わせて弁護士も雇うこともできます。

 

以下は個人的メモとして残しておきます。

監護親が再婚すると親権の変更ができない

そもそも、離婚後、子どもが再婚相手と養子縁組をするに際し、非監護者・非監護親の同意は不要とされている上、家庭裁判所の「実務」では、離婚後、再婚相手とこどもの養子縁組がなされた場合には、もはや非親権者・非監護親には、親権者変更の申立ては認められないとされている(P99)

別れた元夫が妙に再婚を急いでいると思ったら、上記の「実務」目当ての知恵を弁護士に吹き込まれてると思った方がいいでしょう(そんな理由で再婚するのはクソだけど)。

面会交流が親の権利である根拠

東京家庭裁判所1964年12月14日審判

親権もしくは監護権を有しない親は、未成熟子と面接ないし交渉する権利を有し、この権利は、未成熟子の福祉を害することがない限り、制限されまた奪われることはない。」

 

子どもの権利条約第九条 (日本では条約は法律より上位の規定です)

一 締約国は、児童がその父母の意志に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として摘要のある法律及び手続きに従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りではない。このような決定は、父母が児童を虐待し若しくは放置する場合又は父母が別居しており児童の居住地を決定しなければならない場合のような特定の場合において必要となることがある。

三 締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する

 

平成24年改正民法766条

第1項 父母が協議上の離婚をするときは,子の監護をすべき者,父又は母と子との面会及びその他の交流,子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は,その協議で定める。この場合においては,子の利益を最も優先して考慮しなければならない

(太字部分は平成24年改正前には存在していなかった文言です)

 

なお、著者は一方の親が他方の親に面会を認めないことは憲法24条にも違反するとの見解です。

第二十四条 

第一項

婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

第二項

配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

筆者はまず、子どもの利益が最優先されるべきであるという原則から、面会交流はこどもの権利であるとします。こどもの権利は親の義務です。そしてそれは、監護親の非監護親に対する義務でもあると主張します。それは憲法24条の「夫婦両当事者の個人の尊厳と本質的平等」に合致するものだ、というわけです。引用します。

 ここであらためて指摘すれば、離婚後の親権者・監護者の指定と監護者とならなかった親とこどもとの面会交流は関連して論じられるべきです。そして、共同親権・共同監護に変わる方法として、親権者と監護者を両親に別々に帰属させるということ、その上で、現在の民法を前提として、離婚後の監護者を一方の親に指定した場合、当然の権利として、監護者とならなかった親と子どもとの面会交流が保証されなければなりません。以上が、憲法24条の趣旨に基づく、夫婦両当事者の個人の尊厳と本質的平等に則っていると評価できるのです。

日本では共同親権・共同監護の制度はありませんから、せめて親権と監護者を別々にしないか、という提案もしています。すごいですね。でも暴力夫はそんなもん認めるわけありません。家庭裁判所の実務でも、面会交流が非監護親に対する義務であるなんて全く考えていないらしいです。

ではどうすればいいのか。本書は残念ながらその答えを全く提供してくれませんでした。まだまだ他の本を調べる必要があります。

 

 

関連書籍

次はこれですね。私が知りたいのは夫が妻を追い出した場合です。はたして書いてあるのでしょうか。

子どもに会いたい親のためのハンドブック

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  • 作者: 青木聡,宗像充,蓮見岳夫,共同親権運動ネットワーク
  • 出版社/メーカー: 社会評論社
  • 発売日: 2013/01
  • メディア: 単行本
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