CDレビュー: Jaga Jazzist – Jævla Jazzist Grete Stitz(1996)

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Jaga Jazzist – Jævla Jazzist Grete Stitz (CD) at Discogs

★★★★☆

 

現代ジャズ枠はノルウェーの前衛ジャズ音楽集団ジャガ・ジャジスト(ノルウェー読みではヤガ・ヤジスト)を聴くことにしました。仕事中にネットラジオなどを聴いてモチベーションを高めているのですが、このバンドの曲だけ毎回耳に残るのでとても気になっている集団でした。日本公演もしているらしく日本での知名度もそこそこあるようです。

1枚目である本アルバムは自主製作版でどこにも在庫が無いらしく、やむなくyoutubeなどで調達して聴きました。なのでこのレビューはCDレビューではありません。2枚目からはちゃんと手に入れますごめんなさい。

ジャンルの垣根を超えたダルダル

内容は期待通り狂っていました。イントロはノイズだらけの意味不明、次の曲がいきなりヒップホップでジャズあんまり関係ないのに歌詞でジャズジャズと言ってる、3曲目はブレイクビーツと現代ジャズを混ぜた意味不明な曲などなど。

7曲目Yo! It’s Christmasが一番狂っていてクリスマスソングっぽく始まったと思ったら途中で酩酊したラップが入ったりギターと一緒に奇声を上げたりしてダルダル色マリファナ味付けという感じでした。ノルウェーのクリスマスってこんな感じなのかいな。

ボーナストラック?の8曲目はいい感じのセッションプレイのあと、メンバーの一人が20分くらいメンバーの紹介っぽいことをノルウェー語で喋りまくるというまさにカオスな内容でした。

まだまだはじける余地はあると思うので星4つです。次回に期待

 

クリスマスソングをどうぞ。口から出てるのは凍える吹雪なのかエクトプラズムなのか

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CDレビュー: Eric Dolphy – Eric Dolphy Live at the Five Spot 1(1961)

★★★★★

 

ジャズの100枚。シリーズの23枚目。サックス奏者エリック・ドルフィー(1928-1964)のアルバムです。。早死にすぎ

バスクラやフルートも吹けるそうですよ多彩ですね。

 

1曲目のFire Waltzで左側から流れてくるソロサックスはジャズ聴き始めて日が全然無い私でもこいつアホかと思えるような演奏です。何考えてるかぜんぜんわからない。でも辛うじて意味不明にならないところのギリギリのラインでうへうへしながら吹いているように感じました。上のジャケット左側、目をつぶって吹いてる姿を思い浮かべながら聴くとシュールさが増してきてまた楽しい。この陽気キチな演奏にドラムが時々「いいねー兄ちゃん」って感じで応答しているからまたすごい。エド・ブラックウェルと言う人だそうです。

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2曲目Bee Vampはドルフィーはバスクラで裏方に回り、右側からブッカー・リトル(1938-1961、収録してすぐ死んでる)がうっとりするようなでもハキハキした耳に残るサウンドを流してくれます。この曲もドラムいいなぁ。ドラム好きなんです

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CDレビュー: Oliver Messiaen Complete Edition – Catalogue d’oiseaux, Livre 1-3 (CD5)

★★★★☆

 

鳥シリーーーズ1

5~7枚目のピアノ曲はすべて「鳥のカタログ」です。メシアンは前衛的な曲の探求がいやんなっちゃって、次は鳥の探求を始めることにしたそうです。「鳥のカタログ」は全7巻13曲、3時間30分に及ぶ大作です。

 

1枚目の収録内容は次の通りです。

 

・第1巻
第1番 キバシガラス(黄嘴烏、Le Chocard des Alpes)
キバシガラス

キバシガラス – Wikipedia

ボヘーンホヘーンとぶっきらぼうな和音が多く確かにカラスのように聞こえます。

 

第2番 キガシラコウライウグイス(Le Loriot)

鳥のカタログについて〜キガシラコウライウグイス – KEN Diary (アナリーゼしてる!すげぇ。。)

小柄な鳥ですので単音でピチピチ鳴いています。かわいい

第3番 イソヒヨドリ(磯鵯、Le Merle bleu)
イソヒヨドリ

イソヒヨドリ – Wikipedia

23cmほどの小さな鳥ですが12分半ほどのかなり壮大な曲となっており野太い幻想的な声です。

 

・第2巻
第4番 カオグロヒタキ(Le Traquet Stapazin)

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キツツキの探鳥記

丸くてかわええっすね。旋律のような鳴き声が多く、このCDの中では一番メロディー性が高いように感じました。14分半の尺の中では絶望的な展開もあり一体どんな思いを持ってこの曲を書いたのかしのばれます。

 

・第3巻
第5番 モリフクロウ(La Chouette hulotte)

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モリフクロウ – Wikipedia

フクロウといえばハリーポッターですね。あれはシロフクロウという奴らしいです。ホーホーって感じはしませんが、見た目通りモフモフした音があちこちに入ります。夜のハンターというイメージのする曲です。日本では残念ながらこいつを野生でみかけることはできないそうです。

 

第6番 モリヒバリ(L’Alouette lulu)

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モリヒバリ – Wikipedia

渡り鳥です。13-15cmとかなりの小型。チリチリとちっちゃい声が続き瞑想的な演奏です。弾く方も聴く方も大変だこりゃ。

 

どれもフランスでよくみられる鳥だそうです。4番目のカオグロヒタキが一番良かったので動画を貼っておきます。

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CDレビュー: Arvo Part, Beethoven, Corigliano, Helene Grimaud(pf) – Credo (DG111 CD22)

★★★★☆

111 Years of Deutsche Grammophonの22枚目です。けっこ―新しいCDですね。2004年発売のものです。

ジャケに写ってるピアニストのエレーヌ・グリモー(1969-)さんはフランス生まれのピアニスト。ところがユダヤ人です。お決まり過ぎ。ピアニストはユダヤ人でないといけない法則でもあるのでしょうか。動物生態学を学ぶ共感覚者だそうですから、メシアンとかぶってますね。彼女はオオカミの生態が専門だそうですので、そのうちオオカミの曲を作ったりするかもしれません。楽しみです。

クレドが惜しい

1曲目はジョン・コリリアーノ(1938-) という作曲家の「ファンタジア・オン・オスティナート」。捉えどころのない曲調ですが途中に突然ベートーヴェンの交響曲7番第2楽章が挿入される謎曲です。

次はベートーヴェンのピアノソナタ17番「テンペスト」。か、かたーーい。あんたブレイクかけられて徐々に石化にでもなってるんとちゃうのか。と思うと学校の階段をヒョイヒョイ昇るように進んでいくこともあるしよくわかりません。ベートーヴェンのソナタは人気曲だけに演奏者によってずいぶんと印象が変わりますね。

3つ目はまたベートーヴェンで「合唱と管弦楽のための幻想曲 ハ短調 作品80 《合唱幻想曲》」。合唱と言ってるものの合唱は最後の最後にしか出てきません。第9にとても近い曲です。いい曲ですね。

ラストはアルヴォ・ペルト(1935-)の「クレド」。アルバムのタイトル曲ですのでこのCDのキモです。序盤は派手寄りな教会音楽っぽいのですが途中から不穏な雰囲気が漂って行ったあとに一気に爆発する中盤の大音量カオスゾーンで私は爆笑してしまいました。ビアノぶっ壊れてるし志村音割れすぎ!で、ラストにバッハの平均律クラヴィーア1番(アヴェ・マリア)をまるまるトリビュートしてシメるというとても変な曲でした。

彼なりの思想を持つ曲なんでしょうがアヴェマリアの部分はいらないんじゃないんかねぇ、と私は感じました。中盤で終わってたら超がつくお笑い曲だったのになぁ。

 

ニコニコ動画にこの演奏のクレドが上がってますね。

 

※日本版はクレド終盤元ネタのバッハの曲が別収録で入ってます

 

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CDレビュー: Pachlbel, Bach, Handel, Vivaldi – Musica Antiqua Koln, Goebel – Baroque Favoiltes (DG111 CD21)

★★★★☆

 

古楽器を作って演奏

DG111の21枚目です。ラインハルト・ゲーベルという古楽専門の指揮者に率いられた、ムジカ・アンティクワ・ケルンというアンサンブルが演奏します。

曲目はパッヘルベルのカノン、ヘンデルのソナタ、ヴィヴァルディの「ラ・フォリア」、バッハの管弦楽組曲第2番です。パッヘルベルのカノンはおなじみですよね。

 

古楽器でお楽しみください

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古楽器は今の楽器と異なる音がして面白いです。ピアノはこの時代にまだないのでチェンバロのポロポロした音が歯切れ良いですね。弦楽器も今のヴァイオリンとは違い、ヴィオラ・ダ・ガンバなんて洒落た名前がついています。古楽器アンサンブルは徹底してますから専用の楽器を作って演奏してます。

ヴィオラ・ダ・ガンバ – Wikipedia

ジャケットの左端の人が持ってる縦笛っぽいものなんでしょうね。

 

個々の曲で言えばヴィヴァルディの曲が緩急がきつくて展開しまくりで一番燃えますね。日本では徳川吉宗が改革していた頃にこんな曲が演奏されていたかと思うともやもやワクワクする気持ちです。

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昔の曲は比較的パターンが決まっていて単調になりがちですがこのCDは解釈が現代的で一様でない面白い演奏だと思いました。たくさん聞いてみると色々発見がありそうです。

 

 

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CDレビュー: Jimanica×Ametsub – Surge (2007)

★★★★☆

 

電子音楽家AmetsubとドラマーJimanicaとの共演で作成された、30分ほどで終わってしまうミニアルバムです。

独特の空間描写

Ametsubの1stアルバムLinear Crypticsと同様、神経症的な繰り返しと切ない音場効果が光ります。Jimanicaのあまり人間味を感じさせないドラミングが組み合わさり、琵琶湖あたりに一人で漂いながら上空を大量の戦闘機が飛んでいくようなメランコリーで週末的な雰囲気が演出されます。

 

一番良かったのは2曲目のzebecです。

vimeo.com

気持ちいい鬱

vimeo貼ってみましたがでかいですね

 

人間的なところがないドラムはエレクトロニカに合わせるのはちょうどいいような気もしますが、もうちょっと魅力がほしいかな、、

 

 

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CDレビュー: Metallica – Death Magnetic (2008)

★★★★★

 

メタリカ9枚目のアルバムにして最新、最後のアルバムです。

総決算を超えて次のステージへ

結論から言うと、本アルバムがメタリカの中で最も優れていると感じました。名盤と言われている3rdよりもいいです。

10曲ほとんどが7分超、しかもハズレ曲なし。長さが苦にならない上手な曲作りは本作でピークに達しています。昔あったような青臭い曲調や斜め向きのカッコつけた曲が存在せず、彼らの円熟を十分に感じさせる内容です。音量バランスは時代を反映してかなり爆音寄りになっており耳にも刺激的です。爆音のせいでバスドラがヘタクソなのがばれてしまうのですが。

何がいいって1曲も妥協が無いところです。4、7曲目はバラード要素が入っているものの決して軟派じゃないしきっちりぶっ飛ばしてます。特に7曲目The Unforgiven III は、Unforgivenシリーズは好きじゃないのになんでまた第三弾なんか作ったのかねバカねーと思ったら後半が全然別物になっていていい意味で裏切られました。

おすすめは5、9曲目です。5曲目All Nightmare Longは燃えがった後一瞬のブレークのあと入ってくる構成がカッチョいいし、9曲目Suicide & Redemptionはインストオンリー曲で、約10分を使って今までの道のりを振り返りつつさらに次の段階へ進んでいき、ラストにかけては肩肘張らない純粋なメタルを堪能することができます。

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ライブ版です。マッチョオヤジナイスヒゲ46歳

 

やはり変わっていくバンドというのが私は好きなようです。もう新譜が出ることはないかもしれませんが、メタリカは面白いバンドの一つでした。

 

 

いわゆる「ビッグ4(スレイヤー、メタリカ、メガデス、アンスラックス)」については全アルバムを聞いてみたいと思っていますが、他にも気になるアーティストは沢山いるので、次回はちょっと寄り道してみようと思います。

 

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CDレビュー: Yes – Maginification(2001)

★★★★★

 

プログレバンド、イエス18枚目のスタジオアルバムです。

新しい試み

本作はオケを大々的にフィーチャーし全体的に美しい仕上がりとなっています。特に1、8、9曲目は大作であり構成も上手でさすがと言うしかない出来栄えです。間にいやな感じのしないポップな曲も交え、これまでのキャリアの総集編と言えるアルバムではないでしょうか。

オケも単純に盛り上げるために入れてるわけではなく、現代映画音楽のように面白い和音構成を混ぜてきたり一筋縄ではありません、これは特に8曲目Dreamtimeの後半で顕著です。

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この曲は中盤の展開が今までにないパターンでこのアルバムでは一番好きです。前進していくバンドはいいですね。

もう少しびっくりさせてくれるものがあると歴代1位を付けたかもしれません。とはいえ、キャリア後半のイエスのアルバムの中では抜きんでている1枚です。

 

 

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CDレビュー: The Rough Guide to Calipso & Soca (1999)

★★★★★

 

ラフガイドシリーズを手あたり次第聞いてみる枠、今回はカリプソとソカです。

カリプソってどんなプソ?

カリプソとはそのまんまカリブ海の音楽です。レゲエをちょっと早くしてマイルドにした感じかなぁと思っていたらやっぱりレゲエのルーツだそうですよ。

ソカはソウル+カリプソから分岐したもの。16ビートをきつくしてディスコ的要素が強化されておりタバスコをかけたようにラテン風味が増しています。こちらはトリニダード・トバゴが発祥だそうです。本アルバムだと9曲目以降がソカ、8曲目までがカリプソです。

 

私はカリプソが好みです。何となくしか歌詞が分からないですが8曲目Voices From The Ghettoなんて歌詞これめちゃめちゃシビアなんじゃないのかなと感じたので調べてみたらやっぱりきついものでした。

The sun rises slowly over the hills,
Everywhere is golden sunlight but still
Most nights with sad tales are crowded
Their days with dark clouds are shrouded
They don’t smile and they never will,
Only vultures get their fill.
Empty promises is what they hear
No running water from year to year
Hearts that know one desire –
That if there is a Messiah,
Someday He’d hear their whispered prayer.

Cupboard always bare and scanty
Ten people in a one-bedroom shanty
Forced to sell on the pavement
No vacancies, no employment
Can’t tell firecracker from gunshot
Blood does flow when things get hot
Ah ‘fraid to look out mih window
To hear voices from the ghetto…

[Crying,] crying [crying] ay Lord, Lord [crying] crying, voices from the ghetto
[Crying,] crying [crying] Lord, Lord, Lord [crying] aye ay, voices from the ghetto
Help us Father! Oh, Lord!

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マジで夢も希望もありませんが曲を聴いていただければわかるように、めちゃんこ明るいです。そしてSandraさんのこの恰幅のよさ。素晴らしいですね。どんな状況でも明るくなれそうです。

この曲に限らずカリプソは社会的メッセージの強い曲が多いようです。

 

4曲目Cyar Take Datもよかった。

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歌詞の一部を見つけたので貼っておきます。こちらも骨太です。

I work my finger to the bone for me country
I squeeze blood out of stone for me country
The people in authority
mashing up my family
So much a years that we sweat and toil
Is we blood and tears what till the soil
But we still suffering
And we children can’t see the way, hey
I wake up in the morning and it’s more unemployment
I cyar take dat
I wake up in the morning and it’s more retrenchment
I cyar take dat
When they going to stop all this humiliation
I cyar take dat
Wake up in the morning more frustration
I cyar take dat…No!

Ain’t taking that, so
People ain’t taking that (x4)

 

 

ラフガイドシリーズだけでは芸が無いので、ちょっと気になる変なアーティストを発掘しました。次回それを聴いてみます。

 

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CDレビュー: Paul Motian Trio – One Time Out (1989)

★★★☆☆

 

ジャズドラマーPaul MotianのComplete Remasteredシリーズ5枚目です。6枚目はEnrico Pieranunziさんのボックスとかぶっているので実質最終アルバムとなりました。

混沌としすぎ

本アルバムもかなりフリーに偏ったジャズです。1曲目One Time Outからして意味不明です。ていうか、トリオなのにドラムとサックスとギターってなんだよ。ベースとなる音など全く存在せず、なんだかよくわからない音の群れがそこら中に散らばっているような印象を受ける曲でした。

2曲目If You Could See Me Nowもベース音が無いためしっとりしているようで中空のような印象、ハンカチが空に舞ってますねぇ。

前2枚に続きBill Frisellのギターが入りますが、本アルバムでは切なさ成分がありません。全然和音を弾いてないからかもしれません。

わけわかりません、という印象以上のものを掴むことができませんでした。私にはフリージャズはまだ早いのかもしれません。でもAnthony Braxtonさんのアルバムは時々ツボったんだよなあ。波長が合わなかっただけなのかもしれません。

 

4曲目。一番混沌してる

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次の現代ジャズ枠はちょっと趣向を変えてみようと思っています。

 

 

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