CDレビュー: Bach-Mozart-Brahms, Heifetz(vn.) – Double Concertos (RCA Living Stereo Collection CD 53)


★★★★☆

ヴァイオリンの帝王ハイフェッツちゃん(ジャケットに描かれているおじさんです)。このCDはヴァイオリン*2またはヴァイオリン+チェロのダブル協奏曲を3点集めたもの。前半戦ともいえるバッハ、モーツァルトはいわゆるバロック期、古典派の王様で、この2人は様式美が濃ゆく、耳にはさんだだけですぐ作曲者がわかる。たとえばこの絵を見て即、北斗の拳だと分かるのと同じ。

バッハはすぎやまこういちさんのせいで対位法を使ってると常にドラクエの城みたいな音楽に聞こえるし、モーツァルトはいつも通り超きらきら。ダブルコンチェルトということで抑えてはいますがハイフェッツちゃんの音も聞けばすぐ彼だと分かる特徴がある。メロディーを軽いグリッサンド気味に歌い上げることが多い。これを下手なポップス歌手がやると耳に触るけれど、彼のヴァイオリンは唸るし泣く。この2作品についてはオケが悪いのかソロ演奏者が走ってしまうのか分からないが、時々呼吸が合わなくなることがあり、その度にイラッとさせられるのが残念だった。

後半戦のブラームスのヴァイオリン+チェロ協奏曲はドイツ・オーストリア系ダサカッコイイの正当後継者で、この曲も例にもれず真剣にちょっとダサいメロディーを荘厳に奏でる聞きごたえのある曲だった。協奏曲ってのはなんで常に第一楽章が長大になりがちなんでしょう。第三楽章はいきなり民族音楽的な主題で始まりヴァイオリンかわいすぎ、中盤からチャイコフスキーでよく見られる半音ずつ上げていってドキドキ感を高める手法がとられていて心臓がバクバクします。最高です。

ハイフェッツちゃんのベスト盤としてはこのCD>のシベリウスの協奏曲を推したいです。ひたすら泣いてます。

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CDレビュー: Richard Strauss, Chicago Symphony Orchestra , Fritz Reiner(Cond) – Don Quixote / Don Juan (RCA Living Stereo Collection CD 52)


★★★★☆
リヒャルト・シュトラウスは現代に生きていれば超凄腕の映画音楽家になれたんじゃないかしら。ドン・キホーテのストーリーは知らなかったけれど、タイトルと音楽だけでどのシーンも目に浮かぶようだった。第2変奏のヒツジの群れ、第3変奏のソロの掛け合い、第7変奏の飛行が主な聞き所か。トランペットが異常に上手い。びっくりするくらい真っ直ぐな音を出す。目を見開かされてしまう。ただ全体的に音がぼやけていたように感じた。オケにメリハリがないのかもしれない。
さらにこのCDのおまけ扱いと思われるドン・ファンが超のつくくらい勇猛で雷鳴とどろくカッコよさで、度胆を抜かれた。このシリーズには当たりのCDが非常に多い。60枚入って1万円しない上に名盤ばかりだ。消えてしまった日記に書いた感想では、2枚目のサン・サーンス交響曲第3番、7枚目のチャイコ&ラフマニノフのピアノ協奏曲、14・25枚目のハイフェッツあたりがすごく良かった記憶がある。


CDレビュー: Bad Religion – The Gray Race (1996)


★★★★☆?
初めてまともに聞く洋楽パンク。まずは、有名どころから。メロコアの元祖だそうだ。
Bad Religionというグループ名、The Gray Raceというアルバム名から社会派を想像していたが、やはりその通りのようだ。歌詞が難しい上にパンクはスピードが速く当然歌も早いのですぐ耳から抜けていってわからない。これでは醍醐味を半分しか味わえず、フェアではないので歌詞を全部ゆっくり読んでから改めてレビューしてみたい。
以下サウンドだけで判断すると、非常にスタンダードなパンク・ナンバーのほかに、時々ややスローで腹に響くThe Streets Of Amerikaのような曲もある。これと、Them And Us, Parallel, Drunk Sincerityは一発で気に入った。ドラムの16分ロールが非常に気持ちいい。

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CDレビュー: King Crimson – Starless And Bible Black(1974)


★★★★★
6枚目。1曲目The Great Deceiverはダルさが心地よく、2曲目Lamentも美しいです。5-6曲目のふわふわした感じから長大な7-8曲目に至る流れは素晴らしい。7曲目、表題のStarless And Bible Blackはほぼ完全即興と思われるが、これまでにないような展開だ。圧巻なのは最終曲Fracture。序盤で予感を感じさせておいて、中盤から終盤にかけてワクワク感が限りなく増大していく。そして爆発して終わる。この曲で、またこのバンドの新しい境地を見た気がした。
Redだけ何故自分にヒットしなかったんだろう。。

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CDレビュー: King Crimson – Red(1974)


★★★☆☆
7枚目。6枚目のStarless And Bible Blackより先に聞いてしまった。このアルバムで、キング・クリムゾンとしての活動は一区切りとなるそうだ。
内容は、自分としては期待外れだった。1〜3曲目は今までのアルバムと違い全く訴えかけるものがなかった。ギターはチープな音をだし、ヴォーカルはやる気がなくダルデレ、ドラムがずれすぎている上に哀愁もソウルもなくセンスの感じられないエフェクトまでかかっていて、ここまででこのバンドはもう終わってしまったのか。。と愕然とした。4曲目Providenceでようやく息を吹き返した(やっぱりドラムは下手)かに見えたが、5曲目Starlessは今までのEpitaphやIn The Wake of Posseidonのパワーダウンした焼き直しに聞こえる。後半は悪くはないがやはりパワーが足りない。聞き終わって激しく消化不良のようなものを残すアルバムだった。あとでレビューを見てみると絶賛の声が多いがなんでなんだろう。自分が未熟なのかおかしいのか。
8/19追記:納得いかないのでStarlessだけ聞き直してみたけれど、やはり感想は変わらない。終盤の疾走部分もEarthboundの21st Century Schizoid Manに及ばない。なんだかスタッフロールみたいに聞こえる。-King Crimson 1969〜1972- ってタイトルの後に、ライブで演奏している姿を左半分に移しながら、右半分でバンドのメンバーや関係者が下から上に流れてるようなイメージ。で、ラストに -END- って出せば完璧。爽やかなメロディー、特徴的なストリングス、激しいリズムが全部混じってなぜかスタッフロールになる。なんでかなぁ。

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CDレビュー: Enrico Pieranunzi – Stories(2014)

★★★★★
最近のものも聞いてみたいので、モダンジャズから1枚。ピアノ・ベース・ドラムのスタンダードなトリオ。エンリコ・ピエラヌンツィさんのアルバムは、初めて聞いた。1949年生まれだからもう御年65歳、それでいてこの情感あふれる美しく熱のこもった演奏ができるなんて。こんな老人になりたい。
1曲目No Improper Useは、いきなりロックの香りが感じられるしかし曲調のコロコロ変化する流れの速い川のような曲。
この変化の具合が絶妙で、ある小節を境にぱっと変化するのではなく、数小節かけてじわじわと変化していく。スティーブ・ライヒのフェーズ・シフトを思わせるような漸次的な変わり方で、印象に残った。この変わり方は後のWhich Way Is UpやFlowering Stonesでも使われている。
2曲目Detras Mas Allaはラテンの魂を帯びたエネルギーにあふれた曲。3人とも全力出し切ってるのではないか。
4曲目The Slow Geneは静かな曲ながらドラムがすごい。静かなのにこれでもかというくらい叩いていて、かつ3人の和を乱さない。主張しすぎない。ドラムはこのアルバム全体を通して手数が非常に多い。動の曲でも静での曲も数も音色も多く、かつ正確だ。それでいて魂も込められており、所々ドキッとさせるリフを叩いてくる。Antonio Sanchezという人らしい。この人もチェックしておかなければ。
一番の山が7曲目Flowering Stones。静かで妖しく始まり、中盤以降はテーマを保持しつつ盛り上がっていく、最も好みの構成の曲です。
非の打ちどころのない素晴らしい演奏でした。
Cam Jazzのサイトでアルバム全体を試聴できます。太っ腹だなぁ。

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CDレビュー: Verve Jazz Masters 52 : Maynard Ferguson


★★★★☆
トランぺッター、メイナード・ファーガソンのごたまぜアルバム。新しい曲から古い曲まで。甲子園から見える青空のように明るい、明るくて眩しい音です。情緒や苦悩、気だるさといったものは全くありません。元気ですかーっ!
余裕があるときに聞くと頭を射抜かれたように心地いいですが、疲れたときに聞くと、うるさい勘弁してくれと思わせてしまう諸刃の剣です。

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CDレビュー: Verve Jazz Masters 51 : Blossom Dearie


★★★★★
かわいいです。とにかく声がかわいい。ジャズヴォーカルというと煙草で喉が焼け切った姐さんがかすれ声をジョワーと聞かせてくれるのが定式だと思ってましたがこの人の歌を聴いて自分の固定観念のアホさ加減が明るみになってしまいました。許して。6曲目Someone To Watch Over Me、7曲目L’Etang、ラスト16曲目The Party’s Overが特に破壊力高いです。ヴォーカル入りジャズとしては第一級のおすすめ。聞いてください。

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CDレビュー: Franz Schubert, Boston Symphony Orchestra, Charles Munch(Cond), 1955 and 1958 – Symphony No.8 in B Minor “Unfinished”, Symphony No.9 in C “The Great” (RCA Living Stereo Collection CD 51)

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★★★★★
いやあ交響曲っていいものですね!

シューベルトは「魔王」をほとんどの中学校で習うこともあって歌曲の作曲者として理解されていることが多いけれど、なんと交響曲を9つも作っている。未完成のものも含めると13もあるらしい。

こんなこと言うと怒られるかもしれないが、シューベルトを含めドイツ・オーストリア系の作曲者って作風が「ダサカッコいい」と思う。ベートーヴェンは美しいメロディーや和音もさることながら時々ユニゾンや爆音和音でダサい洪水を投げてくることがある。運命の冒頭とか交響曲6番の終盤の謎連発和音、7番4楽章の運動会みたいなメロディーなど。ブラームスもこの正統派ダサカッコいい系譜に位置する。リストもそうかも。

シューベルトの交響曲はベートーヴェンの美しさを引き継ぎつつ、ダサさをさらに洗練して頻度を高めたように聞こえた。彼の体に流れる熱い音楽的血潮がこのダサさを生み出し、聞き手を共振させて一種の興奮を引き起こす。特に、交響曲8番の第1楽章、9番の1,4楽章は顕著だ。

8番の第1楽章はほとんど演歌だ。オーケストラと演歌の融合を1825年に果たしているなんて超前衛的だ。9番の第1楽章はカッコいいはずの場面で盆踊りみたいな三連符が大量出現する。そして第4楽章は歓びの歌のパクリ、もといリスペクトした主題が要所で現れ、ズッコケそうになりながら絶頂、大団円を迎える。演奏は非常にダイナミックで、力が余りすぎて時々木管金管が前に滑ってしまっているがそれもよし。シューベルトはダサさを極め転じて人を感動させる魂を持った作曲家として私の心に刻まれた。

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CDレビュー: Giuseppe Verdi, Rome Opera Orchestra And Chorus, 1960 – La Traviata(RCA Living Stereo Collection CD 47, 48)


★★★★☆
イタリアの誇るオペラ王ヴェルディの中期の作品。邦題は「椿姫」というらしい。全くイタリア語のわからない身としては1枚目はやや盛り上がりに欠けるが2枚目が素晴らしい。途中、セリフを歌ではなく左マイクの真ん前で喋らせる演出もあり1960年当時としては前衛的だったのではないだろうか。たぶんラストはヒロインが死んでる。

(日本では単品発売されていないようなのでボックスセットへのリンクを貼ります)

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