★★★★☆
リズム番長Amon Tobinが別人になった。今まで多用していた他人の曲、音のサンプリングをやめ、自分でサウンドをすべて組み立てたと思われる。サンプルされている音は水道の音やトラの声、虫、機械、弦楽器、多岐に渡る。特に水回りの音で構成された5曲目Kitchen Sink、フライパンやガラスや食器をたたく音で構成された7曲目Foley Roomは新しいビートの可能性を探求した面白い作品だ。ただ今までのTobinさんの作品に存在した、不気味なエネルギー、破滅を感じさせる気持ち悪いうねりがこのアルバムにはあまり感じられない。音がクリーンすぎるのだ。機器の制約のせいか今までローファイ寄りのサウンドだったのが、このアルバムでは高音寄りになって、ビートを重ねても清浄な響きになってしまい、どこかで聞いたような既聴感?を感じさせインパクトが弱まってしまった。
CDレビュー
Faust – 71 Minutes Of Faust(1995)
Allan Holdsworth – I.O.U.(1982)
★★★★☆
アラン・ホールズワースさんの初期アルバム。前から気になっていた人でした。
内容はジャズロック?なのかな。見た目はロックだけれど、内容は全然違う。難解なコード、ウネウネ移り変わる曲想、これまで聞いたどんなロックとも違う、複雑な音空間でした。アランさんのギターは速弾きでもうるさくない、落ち着いているのに激しい、禅思想を体現したような音をしていました。瞑想ロックだね。
曲は優れているのですが1点非常に残念なのがドラムス。技術力が非常に高いのは分かります。何回もこれはありえないドラミングだなぁと思いました。でもうるさいの。ドジャーンいえーい叩くぜーって気持ちが伝わってきてしまい、これだけは私の感性に合わなかった。もっと抑えて、アランさんと一緒に瞑想すればいいのに。次回作以降は押し殺した激しいドラムを期待します。
Enrico Pieranunzi – Isis(1981)
The Rough Guide to the Music of the Andes(1996)
★★★★☆
アンデス地方の音楽、主にボリビアの曲たち。よく「ボリビア〜」と言ってるのでやはり地元を讃える歌が多いのだろう。アンデスといえばケーナだ。1,7曲目などがいい例で、空気を切るような、湿り気のない、しかし哀愁帯びまくりの音がする。アンデス地方はほとんど過去にスペインに侵略されたので、言語はみんなスペイン語だし、音楽にもスペインの影響が強い。このアルバムには情熱的なギター曲が多い。5,9曲目なんてスペイン風味が濃く嗅ぎ取れるし、6,13曲目のようにほとんどボサノヴァのような曲もある。ここは山脈なのか地中海なのか。
14,15曲目は一定のフレーズを繰り返してトランスに至るワールドミュージックではお決まり?のパターンで、燃える。
Bill Evans Trio – Potrait In Jazz(1959)
★★★★★
ジャズ100枚の3枚目。
2曲目Autumn Leavesは実家にあったビルエヴァンス廉価版CDにも入っていて、当時(小学生くらい)は全く意味が分からず、ジャズってこんなよくわからんもんなのかね、という記憶だけが残っていたが、今聞くとすごい。3人ともなんて美しい演奏なこと!Autumn Leavesは2曲は言ってるんだけれど、個人的には2回目のモノラル・テイクの方が好き。開始早々ベースがうねって歌い、ドキリとさせられる。6曲目What Is This Thing Called Loveの右側から入る八分ベースがもう最高、7曲目Spring Is Hereも美しすぎる、なんでこんな変幻自在なピアノ弾けるかね。気に入るアルバムは決まってドラムスが優れているんだけど、このアルバムも例外ではない。Paul Motianという人らしい。アルバム中ただの1回もぶれない、完璧なスウィング。一本の太い太い背骨になっていることは間違いない。正確無比ながらほんの時々入るリフで頭に不意打ちを食らわせる寡黙だが熱い仕事人という感じだ。
Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Klavierkonzerten 4, 5(CD3)
★★★★★(・ω・ )
ラスト。コンチェルト4番は第2楽章がすっごくよいです。重苦しい弦も抑えたピアノも他に類の無いような形式。5番は「皇帝」として有名ですがどこらへんが皇帝なのかわかりません。むしろ歓びの歌ピアノ協奏曲バージョン、といった趣が強く、第一楽章から第三楽章に至るまで歓喜の嵐、体中の細胞が活性化するかのようです。第2楽章は全コンチェルト共通で超良質メロディー、現代のバラード的曲は全部ここから発祥してるんじゃないか?と思わせられるくらい。
ようやく聞き終えました12枚。グルダさんの演奏は、良くも悪くもクラシック初心者向けだと思います。強弱がやりすぎなくらいはっきりしているので、馴染みがない人にとっても、聞いていて退屈になる演奏がありません。曲想にこのダイナミクスがピタリとハマったとき、臨界点突破によるすさまじい音楽連鎖反応が起こり、悶えさせられました。逆に、人によってはやかましいと感じることもあるでしょう。私にとっても、1曲だけ五月蝿い曲がありました。表裏一体です。面白いピアニストさんでした。他のピアニストさんのベートーヴェン全集も聞いてみたいです。
ベートーヴェンは言うまでもなく天才ですが、まだハイドン・モーツァルトの呪縛の強い時代にこれだけの独創的なピアノ曲を作って、しかも今の時代でも通用するどころか、人を悶絶させるような曲を多数輩出するなんて尋常じゃないです。彼の残した足跡がこの後のロマン派の名立たる作曲家たちに与えた影響は計り知れないものがあります。オリジナルの多くは、おそらくこの人なのでしょう。
Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Klavierkonzert 2, 3(CD2)
Amazon.co.jp: Ludwig van Beethoven, Horst Stein, Wiener Philharmoniker, Friedrich Gulda : Beethoven: Piano Sonata No. 1-32, Piano Concertos No. 1-5 – 音楽
★★★★★ヽ(゚∀゚)ノ
ピアノ協奏曲3番が良い。よすぎる。ライブで聞いたらスタンディングオベーション間違いなし。第一楽章しょっぱなから攻撃力の高いベートーヴェン・ダサ光線が炸裂し、ピアノソナタ本編で発揮していた誇張気味のグルダさんのピアノ捌きが光る光る。後半のキラキラピアノソロから絶頂のラストへの流れは必聴!第三楽章もまた開始早々スケルツォ風味の舞踊的だっさ曲で、最初から最後まで悶絶しっぱなし。まさに波動砲。オケもピアノも録音レベルごと爆発してのラストは圧巻でした。これは指揮者も相当ハッスルしてただろうなぁ。
Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Klavierkonzert 1, Klaviersonaten 23, 24(2)(CD1)
Amazon.co.jp: Ludwig van Beethoven, Horst Stein, Wiener Philharmoniker, Friedrich Gulda : Beethoven: Piano Sonata No. 1-32, Piano Concertos No. 1-5 – 音楽
★★★★☆
ピアノ協奏曲1番とおまけのピアノソナタ23,24番。協奏曲の1楽章目は、これはモーツァルト?ベートーベン?どっち?と思うくらいそっくり。でも後半に突然数分間もピアノソナタ並の激烈ソロが挿入されるところに、オリジナリティを感じた。ヴァイオリン協奏曲もそうだけど、ベートーヴェンの協奏曲ってソロが長いのかも。いつも通りのカターいオケ。で、緩衝楽章の第二楽章はいつも素晴らしいメロディーで、どうして量産できるのか不思議だ。第三楽章はいつもの舞踊調の超ダサ曲で、3曲とも王道ベートーヴェンを貫いてくれてうれしい。いつもの、ばっかり言ってるけれどワンパターンというわけではないです。
ピアノソナタは数年後の録音なのにもかかわらず音が悪く、悪いだけならいいんだけど演奏自体もややピントのぼけた印象で、残念。
Faust – Rien(1994)
★★★★☆
21年ぶりのアルバム。ややインパクトは弱いが、彼らの期待を根性で裏切るスタイルは健在だ。2-3曲目とコラージュ気味でぼやけた曲が続いた後、5曲目Listen to the Fishは繰り返し部分が長すぎて聞くのが苦痛になるという逆説的なマラソン曲だった。6曲目Eroberung Der Stille, Teil 2は、嫌になるくらいホラーなサウンドでできた袋麺を入れたドンブリにカップ麺を放り込んだ感じ。初めは圧倒されるものの、後半はやりすぎでちょっと引く。ボイス部分が失敗だったのではないか。21年経ったせいかエネルギーと暴力性が若干損なわれているように思われる…と他の人が書いた解説を読んだら、ジム・オルークという人がファウストに送り付けられたライブのテープを(手動で)編集したものだそうだ。感性が違うと思った。でもよく編集できたな。