Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No. 7-10(CD6)

Amazon.co.jp: Ludwig van Beethoven, Horst Stein, Wiener Philharmoniker, Friedrich Gulda : Beethoven: Piano Sonata No. 1-32, Piano Concertos No. 1-5 – 音楽
★★★★★
3枚目。7番で第1楽章の構成が以前と比べて明らかに変わりました。硬さがなくなって、非常にカッコよくなった。ベートーヴェン風演歌の名残をとどめつつも曲想が壮大になるわほんのりとした哀しみも混ぜてくるわ。2楽章もこれでもかというくらい悲壮感を叩きつけてくるし、3楽章の三拍子メヌエットも泣けてくるし。
続く8番は「悲愴」として有名ですね。しょっぱなからマイクの録音レベルをオーバーしてますグルダさん。1楽章の後半はやはり演歌。でもすっごく速い。シンフォニックメタルを感じさせる疾走する悲哀だ。第2楽章は誰でも1度は聞いたことがあるメロディーなんじゃないだろうか。いいですよね。第3楽章も超有名で、ベートーヴェンらしいかっちりしたメロディー。泣き系の王道、王様。これにも運命風メロディーが所々にある。8番はグルダさんの力が入りすぎの感はあるけれど、激情を表現していると思えばまあいいのかな。
次の9番の第1楽章が個人的にはMVPで、冒頭のたった6音のメロディーが天使やら神やら本当にいるんじゃないか?と思わせる文字通り神メロディーだと感じた。ベートーヴェンすげぇ。悲愴の陰に隠れて超マイナー曲なんだろうなぁ。時と場所と音階を変えて4回くらい登場するこのメロディー、聞くたびにざわざわっとする。曲自体は練習曲めいているところがあるのでグルダさんの演奏と混じることで奇跡の化学反応を起こしたんじゃなかろうか。第2楽章もよいです。
10番は、第1楽章の極めて柔らかい主題とかわいいメロディーが印象的。同一音6連発本当にかわいいですね。


Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No. 4-6(CD5)

Amazon.co.jp: Ludwig van Beethoven, Horst Stein, Wiener Philharmoniker, Friedrich Gulda : Beethoven: Piano Sonata No. 1-32, Piano Concertos No. 1-5 – 音楽
★★★★☆(5番は★★★★★)
2枚目、ピアノソナタの4-6番。毎回ベートーヴェンの顔が出てくると疲れるので、ジャケットを省略します。
いわゆる3大ソナタでも、別名のついているソナタでもない、無名の曲たちですが、しかし光るものがあります。4-6番はいずれも第一楽章がやや硬くてベートーヴェン風演歌が展開されており、悪くはないですが肩肘張った感じがします。4番の第2楽章は名曲です。ピアニッシモにどきりとさせられます。そしてこのCDのMVPは5番の2,3楽章です。2楽章はピアニストの持つ抒情を最大限に発揮できる曲で、グルダさんの演奏は優しさと激しさを同居させつつ絶妙な余韻を残してくれました。第3楽章はベートーヴェン風ダサさが最高に発揮された曲で、傑作だと思います。まず冒頭が真面目ぶっていてそれが滑稽に見えるちびまる子ちゃんの丸尾君のようなメロディーです。その後の信じられないような単音のフォルテッシモ6連発タタターンタタターンもすごくいいです。度肝を抜かれるダサさ。しかも3回もある。最高です。それでいて演奏が軽快でめちゃんこ上手なんだからずるいですね。中盤にプチ運命風メロディーも出てきます。
6番は時間が短いしあまり印象に残らなかった。残念。演奏の問題かもしれない。運指が難しそうな3楽章目でちょっとフレーズが切れてる。


Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No. 1-3(CD4)


★★★★★
ベートーヴェンピアノソナタ全集+ピアノコンチェルト全集。全12枚。今回はピアノソナタ1-3番。クラシック期間にはしばらくこれを聞いていきます。ここのところ回していく順番で定着したのが、クラシック2-3枚→ジャズ2-3枚→プログレ→テクノ→その他ロック→クラシック、の順。クラシックはボックスセットに限ります。安いくせに名盤が多いので。
ピアニストはオーストリアのフリードリヒ・グルダ(1930-2000)さんです。わりと最近まで生きてたんだ。amazonのレビューは絶賛9割けなし1割といったところ。これを見る前に、1枚目を聞きました。素直に、とても良い演奏と感じました。ソナタ1番なんか完全に練習曲といった趣のある曲なのに、軽快なかっちょいい曲に化けてます。これはすごい。続く2番の2曲目は比較的単純な曲なのに、静謐から爆音への上昇が非常に好みです。他にも2番の3曲目、3番の2-3曲目もおすすめです。しかしこの時代に1番をいきなり短調で書くなんて天才は違うな。モーツァルトの時代と全然違う音。若干25歳。初期の曲のくせにすでに超人パッセージが所々に現れてます。


Schumann, Beethoven, Fritz Reiner(Cond), Van Cliburn(pf), Chicago Symphony Orchestra (Orch) – Schumann: Piano Concerto in A Minor / Beethoven: Emperor Concerto (RCA Living Stereo Collection CD60)

★★★★☆

このシリーズもとうとう最後です。
前半はシューマンのピアノ協奏曲。シューマンはピアノソロでは意味不明な曲を多数輩出していますが、この協奏曲はオードソックスなドイツカッコつけ系で、とても聞きやすく爽快な曲、演奏です。ところどころゾクっとするダイナミクスの変化があり、名演といえるのではないでしょうか。クライバーンさんの演奏もいい感じにキラキラしてます。
後半はベートーヴェンのピアノ協奏曲5番皇帝。何度聞いてもベートーヴェンは天才だと思う。重苦しいようで迫力のある、チラッと聞いただけですぐベートーヴェンと分かる音の響きってありますよね。ただの和音なんだけど、何故か人が分かる。不思議。序盤、ピアノが半音の上昇で入ってくるところは、普通の人なら川の流れとか天井からわずかに差し込む木漏れ日とでもいうのでしょうが、私には何故か各停を急行停車駅で降りたあとに間髪入れず颯爽とやってくる急行電車のように感じました。「やあ僕急行!速いよ!長いよ!キラッ☆彡」昨日時刻表プログラムばっかり作ってたからかもしれない。
美しくていいんだけど、第一楽章でクライバーンさんが一番いいところで豪快にぶっ飛ばして外した!さらに、第三楽章のラストが決まらない!実にがっかり、がっかり。これがなければ文句なしだったのに!惜しかった。
RCAにはアメリカの本気レコードを沢山いただきました。どうもありがとうございました。


Richard strauss, Fritz Reiner(Cond), Chicago Symphony Orchestra(Orch) – Sinfonia Domestica / Suite From Le Bourgeois (RCA Living Stereo Collection CD59)


★★★★★
ちょっと息抜き
映画音楽のような曲の多いR.シュトラウスですが、この2曲も例に漏れず幅のでかい曲です。Sinfonia Domesticaのラストは決まりすぎていてブラボー、Le bourgeois gentilhomme(町人貴族)もVI. Prelude to act II (Intermezzo)がめちゃめちゃよいです。録音が古いため音が爆裂してますがそれがまたエネルギーを感じさせ、ああ生で聞いてみたいなぁと思うのです。


Gustav Mahler, Fritz Reiner(Cond), Chicago Symphony Orchestra(Orch) – Das Lied Von Der Erde(RCA Living Stereo Collection CD58)


★★★★★
マーラー作の「大地の歌」。マーラーは日本で演奏されることが少ない。よくあるベスト盤みたいなクラシックのCDには必ず入っていない。いままで馴染みがなかった。
歌というよりは交響曲(歌曲つき)という感じだ。ドイツ語がまったく聞き取れないのが残念だが、どの曲もオペラ並みの重厚な構成になっており、少し疲れる。圧巻なのは第六楽章で、なんと30分もある。そしてこれがド名曲で、後半の全楽器が渦を巻くように絡まって押し寄せてくるような個所は抜きんでている。ラストはこの時代の交響曲としては珍しい和音(6度の音が入っているらしいです)で、そのせいでかなり余韻が残る。演奏もいうこと無し、完璧です。みんなこれ1枚でマーラーファンになること間違いなし。私はなりました。
なんとWikipediaの記事に全歌詞と全訳が載っている。すばらしい。


Hector Berlioz, Charles Munch(cond), Boston Symphony Orchestra – Harold in Italy: The Roman Carnival Overture (RCA Living Stereo Collection CD57)


★★★★☆
ベルリオーズといえば幻想交響曲くらいしか有名ではないですが、このCDには「イタリアのハロルド」+序曲4つと、マイナーな曲が収められています。イタリアのハロルドは1〜3曲目まで牧歌的なチェロのソロやらで平和に流れますが4曲目で耳を壊されそうなシンバルとともに燃える展開に突入します。序曲も6,7曲目はブラスバンド的熱い曲となってますが、相変わらず金管と打楽器が非常にずれる!なんとかならんのか!


Tchaikovsky, Boston Symphony Orchestra(Orch), Seiji Ozawa(cond) – Swan Lake


★★★★☆(一部★★★★★)
興奮冷めやらぬままCDを聞いた。白鳥の湖は組曲版で演奏されることが多い。バレエ用の完全版は演奏される機会が少なく、CDもあまりない。それは全曲通しで演奏すると2時間超と長いことと、演奏が難しい曲が多いためと考えられる。しかし一度完全版を聞いてしまうと、もう組曲版は聞けない。この作品の恐ろしいところは、一部の曲ではなく、すべての曲が名曲であることだ。チャイコフスキーのメロディーメイカーっぷりを2時間超にわたって味わうことができる。
指揮は最近体調が心配な小澤征爾さん。小澤さんのことは勝手に「ゆらぎの小澤」と呼んでいる。テンポの変化、ダイナミクスの変化が秀逸なのだ。このCDも非常に小さい音量で始まるが、フォルテッシモのときは音量全開となる。リタルダンドも過剰なくらいやる。短い曲でも最強に盛り上がって終わることが多いこれらの楽曲では、演奏後に拍手してしまいたくなる曲もいくつかある。
しかしこの録音には、最近聞いていたCDに共通する欠点がある。ズレだ。CD全体にわたって激しくずれる。特に打楽器や金管のずれがひどい。演奏は小澤ゆらぎが十二分に発揮されほぼ完璧だ。燃える萌える。なのにこのずれのせいでその熱狂が若干殺がれてしまう。本当に残念!やっぱりアメリカのオケだからなのか!?彼らの個性が一つにまとまることを許さないわけ!?
中にはずれてない曲もある。2枚目に収録されている、ヴァイオリンソロが特徴的な「ロシアの踊り」はチャイコフスキーのスラブ魂が込められた超名曲。今ならソロを樫本大進さんに弾いてもらいたい。オケ全員と小澤さんの呼吸が一致し、音が連鎖反応で爆発して奇跡のような1曲になっている。風呂場で聞いていて、ブラボーと叫びそうになってしまった。


Artur Rubinstein(piano), Symphony of the Air(orch), Alfred Wallenstein(cond) – Saint-Saëns: Concerto No. 2 / Franck: Symphonic Variations / Liszt: Concerto No. 1(RCA Living Stereo CD56)


★★★☆☆
ポーランド出身のユダヤ人、アルトゥール・ルービンシュタインのピアノ協奏曲が3曲も入っているこのアルバム、やや録音が古く、しかも後半の2曲は恒例のオケの音ずれが頻発します。アメリカの楽団は元気はいいんだけど荒っぽい。。20世紀に活躍した大演奏家はみんなユダヤ人だ。なんで?
フランス音楽といえばいわゆるエスプリに富んだ、一歩引いて訳分かるような分からないような謎和音を繰り出しまくるのが特徴ですが、サンサーンスのピアノ協奏曲第2番はこの法則に当てはまらず直球です。特に第一楽章。マイナーでドジャーンと攻めるド演歌とベートーヴェンを混ぜたような波がやってくる。ピアノ爆速の第三楽章も聞きごたえがあります。
ダサカッコいい系譜の強肩打者、リスト様の協奏曲は冒頭の旋律がいつも通りの激ダサで、胸に響きます。終盤に再び現れるメインテーマも安定のダサさ。これを強烈に荘厳に演奏してくれるといいのだけれどピアノ以外はいまいち。木管が浮いてるし全体的にずれてる。ピアノは見事です。明らかに規格外のキチガイ譜面なのに超絶かっこいいです。オケがもうちょっと上手だったらなあ、残念。他のCDでもう一度聞いてみたい。


Spain (RCA Living Stereo Collection CD 55)


★☆☆☆☆
ファリャ、アルベニス、グラナドスの3人のスペインの作曲家たちの特集。このうちファリャの「三角帽子」は自分にとって懐かしい曲だった。中学校時代、住んでいた場所はど田舎でCDショップなんぞ近くになかった。吹奏楽部の準備室にはCDが数十枚置いてあり、これまたCDショップにもあまり数のないクラシック曲が収録されたものばかりで、そこそこ値の張りそうなミニコンポも置いてあったので、時々友人とそこでCDを聞いたり、自分たちの演奏や他の学校の演奏の入ったデモテープを聞いたりしていた。「三角帽子」は入部2年前くらいに吹奏楽アレンジをして自由曲として演奏したものらしく、これもCDが置いてあった。たぶん、東京佼成ウインドオーケストラのこれじゃないかな?でも1996年発売って書いてあるから、当時はまだ発売されてないよな。するとクラシック版だったのかもしれない。で、そのCDを借りて家に持って帰って聞いて、衝撃を受けたので今でも覚えている。それまでクラシック音楽なんて眠くなる曲としか考えてなかったので、熱気と狂気に包まれているこの曲には本当に驚いた。あれから20年近く経っているので、細部が削ぎ落とされて理想化されたクオリア?だけが残っていたはずだ。
なので三角帽子の最終曲終幕の踊りのイントロがかかっただけで寒気がした。のに、その後聞いていったら、、展開がだめ!なんちゅうか、これは狂気っていうか、、トムとジェリーじゃねえか!!!!いくらアメリカの楽団だからって、これはないよ。テンポが速くて流れるようにあっちへこっちへ駆け抜けて行って情緒もへったくれもない。中盤の盛り上げ部分もボヘボヘーンって感じで拍子抜けするし、これじゃあ感動できんです。
他の曲についても、前半戦のファリャの「恋は魔術師」も全然ダメ。ソプラノははずすし、全体的にもわっと決まらないし、ストリングスが時々がっくりするくらいずれる。最終曲アルベニスの「Iberia Book4」も楽曲のポテンシャルの高さは感じられるものの金管もストリングスもずれまくり、ラストはトライアングルがあり得ないタイミングで入ってもうがっかりイリュージョンだ。800円分のがっかりだ。
特に三角帽子が許せないのでレビューを書き始めて以来はじめて最低評価の★1つとしました。リンク先のamazon.comは”VIVA! BRAVO! AND OLE, FRITZ REINER” “A magnificent disc. ” などなど絶賛レビューで埋め尽くされているがわたしゃ信じないよ!