Gustav Mahler, Seiji Ozawa(cond.), Boston Symphony Orchestra – Symphony No.1, Kindertotenlieder(CD1, CD10の一部)


★★★★☆
ベートーヴェンに続きドイツ系新ロマン主義の大家マーラーの交響曲全曲セット。14枚組。曲順が一部バラバラなので、なるべく番号順に聞いていく。バラバラなのはマーラーの書く曲が長大すぎることが原因で、1つの交響曲が1枚のCDに収まらないことが多い。交響曲8, 9番に至っては90分を超えている。
交響曲1番は「巨人」というタイトルがついている。マーラーの愛読書の小説のタイトルらしい。この曲は交響詩的な性格が強いのかもしれない。1曲1曲は長い。長いゆえにタメ部分も非常に長い。第一楽章は長いタメで始まり、自然を模したっぽい音の後に主題が現れ、またタメに戻った後、派手な金管で〆る。第三楽章はなんと「グーチョキパーでなにつくろう」が主題だ。海外の童謡・民謡の類のものだったんだろうね。第四楽章は嵐でも起きたようなシンバルと金管で始まり(副題が「嵐のように運動して」だった)、その後十数分にわたるタメパートに入る。徐々に高揚して15分くらいで一旦完結するが、物々しい弦がパートを切り替えて、金管破裂の激しいクライマックスに突入して終わる。
音楽理論家でない自分としては、全体としてインパクトが弱い。田園のややパワーが弱まったバージョンという感じだ。クライマックス部分は見事だけどやや金管が派手過ぎか。音の揺らぎが特徴的な小澤さんの手腕はこの曲でも十分に発揮されていて、時々どきりとする。
Kindertotenliederは直訳すれば「子供の死の歌」と恐ろしい。が歌詞を見るとなんとその通りで、子供の死を悲しむ歌だった。邦題は『亡き子をしのぶ歌』。めちゃんこ暗い。
歌詞の一部。

Oft denk ich, sie sind nur ausgegangen!
Bald werden sie wieder nach Hause gelangen.
Der Tag ist schön! O sei nicht bang!
Sie machen nur einen weiten Gang.
しばしば、私は考える、子供らはただ散歩に出かけただけだと!
まもなく、家に戻って来ることになるだろう!
今日はうるわしい日だ! おお、何も心配するに及ばないのだ!
子供らはただ遠足に行っているにすぎないのだから

In diesem Wetter, in diesem Saus,
in diesem Braus,
Sie ruhn als wie in der Mutter Haus,
Von keinem Sturm erschrecket,
Von Gottes Hand bedecket.
Sie ruhn wie in der Mutter Haus.
こんな荒れ狂う天候の中で
こんな嵐の中で
彼女らはまるで生家にいるかのように
もうどんな嵐も驚くことなく
神の手におおわれて
彼女らはまるで生家にいるかのように

キリスト教と生死を交えられると美しくて悲しくて。


Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Klavierkonzerten 4, 5(CD3)


★★★★★(・ω・ )
ラスト。コンチェルト4番は第2楽章がすっごくよいです。重苦しい弦も抑えたピアノも他に類の無いような形式。5番は「皇帝」として有名ですがどこらへんが皇帝なのかわかりません。むしろ歓びの歌ピアノ協奏曲バージョン、といった趣が強く、第一楽章から第三楽章に至るまで歓喜の嵐、体中の細胞が活性化するかのようです。第2楽章は全コンチェルト共通で超良質メロディー、現代のバラード的曲は全部ここから発祥してるんじゃないか?と思わせられるくらい。
ようやく聞き終えました12枚。グルダさんの演奏は、良くも悪くもクラシック初心者向けだと思います。強弱がやりすぎなくらいはっきりしているので、馴染みがない人にとっても、聞いていて退屈になる演奏がありません。曲想にこのダイナミクスがピタリとハマったとき、臨界点突破によるすさまじい音楽連鎖反応が起こり、悶えさせられました。逆に、人によってはやかましいと感じることもあるでしょう。私にとっても、1曲だけ五月蝿い曲がありました。表裏一体です。面白いピアニストさんでした。他のピアニストさんのベートーヴェン全集も聞いてみたいです。
ベートーヴェンは言うまでもなく天才ですが、まだハイドン・モーツァルトの呪縛の強い時代にこれだけの独創的なピアノ曲を作って、しかも今の時代でも通用するどころか、人を悶絶させるような曲を多数輩出するなんて尋常じゃないです。彼の残した足跡がこの後のロマン派の名立たる作曲家たちに与えた影響は計り知れないものがあります。オリジナルの多くは、おそらくこの人なのでしょう。


Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Klavierkonzert 2, 3(CD2)

Amazon.co.jp: Ludwig van Beethoven, Horst Stein, Wiener Philharmoniker, Friedrich Gulda : Beethoven: Piano Sonata No. 1-32, Piano Concertos No. 1-5 – 音楽
★★★★★ヽ(゚∀゚)ノ
ピアノ協奏曲3番が良い。よすぎる。ライブで聞いたらスタンディングオベーション間違いなし。第一楽章しょっぱなから攻撃力の高いベートーヴェン・ダサ光線が炸裂し、ピアノソナタ本編で発揮していた誇張気味のグルダさんのピアノ捌きが光る光る。後半のキラキラピアノソロから絶頂のラストへの流れは必聴!第三楽章もまた開始早々スケルツォ風味の舞踊的だっさ曲で、最初から最後まで悶絶しっぱなし。まさに波動砲。オケもピアノも録音レベルごと爆発してのラストは圧巻でした。これは指揮者も相当ハッスルしてただろうなぁ。


Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Klavierkonzert 1, Klaviersonaten 23, 24(2)(CD1)

Amazon.co.jp: Ludwig van Beethoven, Horst Stein, Wiener Philharmoniker, Friedrich Gulda : Beethoven: Piano Sonata No. 1-32, Piano Concertos No. 1-5 – 音楽
★★★★☆
ピアノ協奏曲1番とおまけのピアノソナタ23,24番。協奏曲の1楽章目は、これはモーツァルト?ベートーベン?どっち?と思うくらいそっくり。でも後半に突然数分間もピアノソナタ並の激烈ソロが挿入されるところに、オリジナリティを感じた。ヴァイオリン協奏曲もそうだけど、ベートーヴェンの協奏曲ってソロが長いのかも。いつも通りのカターいオケ。で、緩衝楽章の第二楽章はいつも素晴らしいメロディーで、どうして量産できるのか不思議だ。第三楽章はいつもの舞踊調の超ダサ曲で、3曲とも王道ベートーヴェンを貫いてくれてうれしい。いつもの、ばっかり言ってるけれどワンパターンというわけではないです。
ピアノソナタは数年後の録音なのにもかかわらず音が悪く、悪いだけならいいんだけど演奏自体もややピントのぼけた印象で、残念。


Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No. 30-32(CD12)


★★★★★∩(・ω・∩) (∩・ω・)∩
名曲しかない。。
まず切ない切ないメロディーで始まる30番。第1楽章、中盤からは曲調が変わり実質の2楽章目、いつものベートーヴェン節が大炸裂し、チャーラチャンチャンとダサさも完備。第2楽章は長大で10分超、しかも曲調がコロコロ変わる。しっとりとした前半から打って変わって後半は押し寄せる渓流奔流、まるで木曽川。7分半くらいでまた変わり、対位法堅苦しいゾーン+ダサゾーンを抜けて長大階段へ、、美しい。
31番は第1楽章がフラペチーノ、いやキャラメルマキアートか?というくらい甘い。後味を残したまま、またまた超ダサの第2楽章スケルツォ。マイムマイムみたい。繰り返しと謎のメロディー、激しいのかそうでないのか掴みきれない変わった曲。第3楽章は暗い歌風味のメロディーからフーガで盛り上がった後また歌、そして感動のラストへ。ラストがオケもびっくりの壮大さ。
32番は前評判通り、最高傑作といっていいと思う。第1楽章は原点回帰かと思うような激しい曲、俺たちのベートーヴェン的ダサメロ、無限回廊、激情、爆音、強烈テクニック、いままでのベートーヴェンの総結集といった曲になっている。そしてベートーヴェンが新世界の神となった第2楽章、なんとこの曲には、中盤にスウィングが登場する!!この曲ができたのは1821年なので、文字通り100年早い!しかも天にも昇るような完璧な曲で!信じられない。ウソだろって思った。マジであんたすげぇよ。スウィング地帯を抜けた後は、高音とトリルを主体とした気持ちの高揚をずーっと保つかのような流れが続いて、11分過ぎにトリルが途切れ、着地する。この着地した、と思われる感覚が、並じゃない。ラストの静寂にも驚く。この曲は、他のピアノソナタのどの曲とも違う。でも、ベートーヴェンの曲とすぐに分かる。
wikipediaを見たら参考文献に「『ジャズの起源はベートーベンにある』(田幸正邦 / 東京図書出版会 / ISBN-10: 4434020315 / ISBN-13: 978-4434020315 2002年)」って出てるし!!
グルダさんもずるいです。初期中期は、わざとなのか、爆音演奏を量産していたというのに、後期になったらタッチに憂いをもたせるのだもの。引き込まれるに決まっている。ピアノソナタを全部聞いてみて、ベストはこの、最後の1枚。時点で最後から2番目。とにかく後期の演奏が素晴らしい。前半はやや誇張しすぎなのではないかというくらい、派手でダイナミクスつけすぎだったけど、特に最後の3枚の演奏は意図的なのかバランスが取れておりしっくりくるし感動する演奏だった。
残りはピアノコンチェルト3枚。しかしこの演奏と量で3000円台ってのは出血大プライスだな。


Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No.28-29(CD11)

Amazon.co.jp: Ludwig van Beethoven, Horst Stein, Wiener Philharmoniker, Friedrich Gulda : Beethoven: Piano Sonata No. 1-32, Piano Concertos No. 1-5 – 音楽
★★★★★(σ゚∀゚)σ
まず28番。静かな第1楽章に続き、付点リズムでずーと踊ってる第2楽章が印象的だが、第3楽章が久しぶりに中盤の神がかったメロディー&付点付き超ダサメロディー&強烈な盛り上がり、とこれまでのベートーヴェン風味を凝縮したような濃い曲になっていて、しかも物寂しげなスパイスまでついているというこれまたすごい一曲。
そして29番ハンマークラヴィーア。これは最高傑作といっていいと思います。第1楽章は爆音ド派手派手、そしてひたすら手数が多いピアニスト泣かせの曲。箱根駅伝でいうと2区。第2楽章は何故かこの曲だけ短いスケルツォで、短いといえども中盤〜終盤にかけて意味不明ゾーンがあり気が抜けません。第3楽章はプログレもびっくりの約14分の超大曲。弾く人によっては20分にもなるらしい。これのどこが緩衝曲なんじゃと思うような押し殺した感情が延々と続きます。疲れます。終盤では押し殺しきれず時々激情がほとばしってます。箱根駅伝でいうと4区。
最後の第4楽章がやばい。やばすぎる。グルダさんこの曲だけ弾けてない。人間がやるもんじゃない。まさに山登りの5区。序盤の静謐で引いて引いてこちらが待ちきれなくなったところで、対位法の右から左からの旋律、執拗なトリル、頻発するオクターブまたぎ、あちこちから音が10分間にわたって責めてくる新感覚ピアノ曲でした。無限回廊、無限階段。どこまでいっても階段。それが精密機械よりも完璧に組み立てられている、キングオブわけわからんピアノ曲。普通の人間が弾いたらブレーキ間違いなし。なぜ駅伝に例えたかというと、はじめて、ピアノ曲を聞いただけでマラソンを走ったみたいに疲れるという経験をしたから。
しかし、wikipediaには
>現実には、作曲後20数年でクララ・シューマンやフランツ・リストがレパートリー化して、各地で演奏した。
って書いてあるんだよなぁ。人間ってすごい。


Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No.23-27(CD10)

Amazon.co.jp: Ludwig van Beethoven, Horst Stein, Wiener Philharmoniker, Friedrich Gulda : Beethoven: Piano Sonata No. 1-32, Piano Concertos No. 1-5 – 音楽
★★★★★
ピアノソナタも終盤戦、あと3枚。いきなり23番「熱情」で始まる。素晴らしい演奏です。右から左から奔流が走る、ちょっと早すぎるかも。特に最終第3楽章のシメの16分和音連打ゾーンは今聞いても衝撃だ。24番からは一変して非常に優しい雰囲気の曲に変わる。グルダさんダイナミクスつけすぎなくらいですね。25番は第3楽章が短いながらも躍動感があって好きです。
26番も有名な曲らしい。「告別」と自分でタイトルを付けたそうだ。第1楽章のオクターブ+下降のところが神メロディーでめちゃんこ心にしみる。第2楽章は単なる踏み台でそのまま超軽快な第3楽章へ。2分前と3分半くらいのところの右手オクターブのフォルテッシモからピアノ?に代わって跳ね回るところがすげぇです。この曲はピアノなのにドーパミンが出まくる。すごい。
27番もマイナーながら第1楽章は異様に激しいわ第2楽章は大きく包み込むようでいて中身の熱さが見え隠れする名曲。


Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No.18-22(CD9)

Amazon.co.jp: Ludwig van Beethoven, Horst Stein, Wiener Philharmoniker, Friedrich Gulda : Beethoven: Piano Sonata No. 1-32, Piano Concertos No. 1-5 – 音楽
★★★★☆
小品揃いの1枚。18番の4楽章が三連符ダサ爆発曲となっており、かなり暑い。19番、20番は突然地味になるが、それもそのはず、この2曲だけは出版される9年前に作られたものらしい。
このCDの胆は21番「ヴァルトシュタイン」。グルダさんの演奏はとにかく速い!速い!まるでジェットコースターだ。笑っちゃうくらいだ。この映画のテーマ曲だったのでよく覚えているが、こんなに速くなかった。この速度のせいで、手数で分散しがちな楽曲が一つの大きな塊になっているようだ。曲の大局を支配する大波小波はよく表現されており、このシリーズの名演奏の一つに数えてよいと思う。第2楽章は第3楽章のおまけで、3楽章目もシンプルながら心に響く主題、そして後ろで鳴ってるジェットコースターその2が印象的。
22番は地味。


Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No.15-17(CD8)

Amazon.co.jp: Ludwig van Beethoven, Horst Stein, Wiener Philharmoniker, Friedrich Gulda : Beethoven: Piano Sonata No. 1-32, Piano Concertos No. 1-5 – 音楽
★★★★★
何故か「田園」の副題がついた15番。言うほど牧歌的ではないです。むしろ宮廷的。1楽章目にあまり肩の力が入っておらず安らかに聞けます。2楽章目が演歌炸裂、クサメロが出てきてそのままメタルにでもできそうでたまりません。3-4楽章とまるで交響曲のような構成。3楽章はwikipediaに農民的な響きって書いてあるけど農民的ってなんだ?上流階級の踊りっぽいけどなぁ。
16番の第1楽章は非常に変わっていて、右手と左手がほんの少し(16分?)ずれてます。ずれ部分の直後の同一主題を小さく弾くところがかわいい。激しい部分と可愛い部分を交互に挟む名曲。さらに第3楽章がダサい主題なのに非常に熱いダサアツの一曲、走って走って最後に意外な結末になる、という優れた曲でした。
17番は「テンペスト」として有名らしいです。1楽章目はやはりダサアツ、さらにラストが静かという点で16-3と共通しています。ただし今回のダサには泣き成分がかなり強めに含まれていて、しかも激しい。3楽章目は非常に有名ですがこの6/8の泣きメロの嵐は素晴らしいですね。グルダさんのやや誇張気味で腕力あふれたダイナミック演奏が実に良い効果を生んでいて、心が終始かき回されてどうにかなってしまいそうです。文句なしのMVP。


Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No. 11-14(CD7)

Amazon.co.jp: Ludwig van Beethoven, Horst Stein, Wiener Philharmoniker, Friedrich Gulda : Beethoven: Piano Sonata No. 1-32, Piano Concertos No. 1-5 – 音楽
★★★★☆(13番の2が汚いので減点)
Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No. 7-10(CD6) – diary 六帖の続きです。ピアノソナタ、中盤戦。比較的無名の11-13番の後に、「月光」の副題で有名な14番が続くという1枚。11番は3-4楽章がよいです。グルダさんの演奏はダイナミクスの幅が非常に大きいのが特徴で、ここではその良さが良く発揮されています。4楽章の16分ゾーンも燃えます。12番は1楽章を静かに始める、という初めて聴く構成。wikipediaにも載ってましたがここからベートーヴェンは古典的なソナタの形式を無視し始めます。なんで形に縛られなきゃならない、俺はやりたいようにやるぜ!というロックな思想が見えてきました。第3楽章は「葬送」の名がついてるらしく、交響曲7番2楽章を思わせるような旋律をさらに重ったるく荘厳ぶってダサオーラをまき散らすベートーヴェンらしい名曲です。4楽章も初めて聴くような形式で、ベートーヴェンの俺様道の幕開けを感じます。下降スケールの3連符が可愛いです。13番も名曲揃いで、特に第2楽章は短いくせに超絶美しい旋律が華やかに…と思ったらうるさいよ!強く弾きすぎで汚い!!!これはいただけません。曲がめちゃんこ良いのでもったいなすぎる。彼のダイナミクスの激しさが悪い方に作用している例になってしまった。このシリーズ、熱の入った演奏は異様に音が大きくなるので、グルダさんの思い入れがあったということなのかもしれないけれど、この演奏はやりすぎ。4楽章はよいです。最後に突然盛り上がって終わるところなんか一人オケって感じでよいですね。
で、間髪入れずに14番月光へ(なぜ間を空けないのか?)。私は月光の1楽章だけは弾ける、という人はいるのでは?意外にも2楽章がキュートでよいですね。3楽章目は有名すぎて語ることが何もないです。演奏もパーフェクト。