Verve Jazz Masters 59 : Toots Thielemans


★★★★★(;_;)
ハーモニカおじさんことトゥーツ・シールマンス特集。このシリーズの中でも一番現代寄りの楽曲たち。5曲目Hummin’なんか下手なブレイクビーツが裸足で逃げ出すのではないか。ハーモニカというと、昔経堂に住んでいたときによく買い物をしたOdakyu OXのイメージだ。今でも近くにあるので時々行く。OXってやや高級なので(高いので困る)、音楽もアホみたいな繰り返しだらけの曲や、いかにも打ち込みのポップスインスト・謎フュージョンを流したりはしない。何故かハーモニカが多いイメージだ。なのでマヨネーズとか鶏肉とかキャベツとかそういうイメージが湧いてきてしまう。1,2曲目なんか特にそう。でもハーモニカといっても10曲目Tenor Madnessだと買い物中にあちこちでペットボトルやワインの瓶やらでジャグリングをしていそうな雰囲気だ。ちなみにこの曲はベースが信じられないくらいかっこいい。必聴。大好きなローズピアノと共にクーーールな演奏をしている。14曲目The Peacocksというと大丸ピーコックか。これも経堂にあった。OXより高いので使わなかった。でかいスーパーが二軒隣接してるなんて世田谷ならではだな。ちなみに曲の中身は全然スーパーとは関係なく泣かせてくれる曲だけれど、ちょっとヴァイオリンが下手。9曲目Big Bossaなど、意外にもハーモニカはボサノヴァにも合う。食パンに海苔が合うような感じか。
ラスト16曲目For My Ladyはスタンダードなバラードで、私が想起したのはLadyではなく田舎の夕方。何か大きなイベントの後、あーおわっちゃったなーーーという気分にさせられる。今聞いているverveのシリーズの最後のアルバムの最後の曲であることとも重なって、切なすぎる気持ちにさせられた。あーー終わっちゃったーーーー。verveありがとう!素晴らしい曲をたくさん残してくれたジャズの巨匠たち、本当にありがとう!!!


Verve Jazz Masters 58 : Nina Simone Sings Nina


★★★★★
全然ジャズじゃなかったけど素晴らしいアルバムです。ほとんどがブルースやらカントリーやらアメリカ南部の香りのする曲で占められていて、で、それがこのニーナ・シモン(シモーヌ?)さんのスケールのデカ過ぎる声によって唯一の他に類のないような曲になってます。例によってライブ盤もスタジオ録音も新旧さまざまごったまぜですが全曲名曲。
このシリーズも次で最後ですねぇ。60枚目はベスト盤なので、飛ばします。


Verve Jazz Masters 57 – George Shearing


★★★★☆
イギリス生まれのピアニスト、最近まで生きていたジョージ・シアリングさん。基本的にはピアノ・ビブラフォン・ベース・ドラムのカルテットビブラフォンが入っているととてもかわいらしいサウンドになっていいですよね。1曲目Pick Yourself Upはギター入りで、アップテンポなのに超可愛い。5曲目Manbo Innはミニチュア世界にでももぐりこんでしまったようでももも萌えです。一番の聞き所は8曲目Summertime。何故かピアノがあまり目立ってないこのアルバムの中で異彩を放ちます。有名曲だけれどあまり他のアレンジでは聞かない、切なさを凝縮させまくったアレンジ・演奏になっていて心を締め付けます。全体を通して音はよくないけれど、音質なんて二の次で、魂を感じられれば十分。リンク先のレビュアーに言われるまで音質のことはまったく気にしてなかった。


Hector Berlioz, Charles Munch(cond), Boston Symphony Orchestra – Harold in Italy: The Roman Carnival Overture (RCA Living Stereo Collection CD57)


★★★★☆
ベルリオーズといえば幻想交響曲くらいしか有名ではないですが、このCDには「イタリアのハロルド」+序曲4つと、マイナーな曲が収められています。イタリアのハロルドは1〜3曲目まで牧歌的なチェロのソロやらで平和に流れますが4曲目で耳を壊されそうなシンバルとともに燃える展開に突入します。序曲も6,7曲目はブラスバンド的熱い曲となってますが、相変わらず金管と打楽器が非常にずれる!なんとかならんのか!


Tchaikovsky, Boston Symphony Orchestra(Orch), Seiji Ozawa(cond) – Swan Lake


★★★★☆(一部★★★★★)
興奮冷めやらぬままCDを聞いた。白鳥の湖は組曲版で演奏されることが多い。バレエ用の完全版は演奏される機会が少なく、CDもあまりない。それは全曲通しで演奏すると2時間超と長いことと、演奏が難しい曲が多いためと考えられる。しかし一度完全版を聞いてしまうと、もう組曲版は聞けない。この作品の恐ろしいところは、一部の曲ではなく、すべての曲が名曲であることだ。チャイコフスキーのメロディーメイカーっぷりを2時間超にわたって味わうことができる。
指揮は最近体調が心配な小澤征爾さん。小澤さんのことは勝手に「ゆらぎの小澤」と呼んでいる。テンポの変化、ダイナミクスの変化が秀逸なのだ。このCDも非常に小さい音量で始まるが、フォルテッシモのときは音量全開となる。リタルダンドも過剰なくらいやる。短い曲でも最強に盛り上がって終わることが多いこれらの楽曲では、演奏後に拍手してしまいたくなる曲もいくつかある。
しかしこの録音には、最近聞いていたCDに共通する欠点がある。ズレだ。CD全体にわたって激しくずれる。特に打楽器や金管のずれがひどい。演奏は小澤ゆらぎが十二分に発揮されほぼ完璧だ。燃える萌える。なのにこのずれのせいでその熱狂が若干殺がれてしまう。本当に残念!やっぱりアメリカのオケだからなのか!?彼らの個性が一つにまとまることを許さないわけ!?
中にはずれてない曲もある。2枚目に収録されている、ヴァイオリンソロが特徴的な「ロシアの踊り」はチャイコフスキーのスラブ魂が込められた超名曲。今ならソロを樫本大進さんに弾いてもらいたい。オケ全員と小澤さんの呼吸が一致し、音が連鎖反応で爆発して奇跡のような1曲になっている。風呂場で聞いていて、ブラボーと叫びそうになってしまった。


Artur Rubinstein(piano), Symphony of the Air(orch), Alfred Wallenstein(cond) – Saint-Saëns: Concerto No. 2 / Franck: Symphonic Variations / Liszt: Concerto No. 1(RCA Living Stereo CD56)


★★★☆☆
ポーランド出身のユダヤ人、アルトゥール・ルービンシュタインのピアノ協奏曲が3曲も入っているこのアルバム、やや録音が古く、しかも後半の2曲は恒例のオケの音ずれが頻発します。アメリカの楽団は元気はいいんだけど荒っぽい。。20世紀に活躍した大演奏家はみんなユダヤ人だ。なんで?
フランス音楽といえばいわゆるエスプリに富んだ、一歩引いて訳分かるような分からないような謎和音を繰り出しまくるのが特徴ですが、サンサーンスのピアノ協奏曲第2番はこの法則に当てはまらず直球です。特に第一楽章。マイナーでドジャーンと攻めるド演歌とベートーヴェンを混ぜたような波がやってくる。ピアノ爆速の第三楽章も聞きごたえがあります。
ダサカッコいい系譜の強肩打者、リスト様の協奏曲は冒頭の旋律がいつも通りの激ダサで、胸に響きます。終盤に再び現れるメインテーマも安定のダサさ。これを強烈に荘厳に演奏してくれるといいのだけれどピアノ以外はいまいち。木管が浮いてるし全体的にずれてる。ピアノは見事です。明らかに規格外のキチガイ譜面なのに超絶かっこいいです。オケがもうちょっと上手だったらなあ、残念。他のCDでもう一度聞いてみたい。


Steven Wilson – The Raven That Refused To Sing (2013)


★★★★★
21世紀のプログレを聞いてみたい、と思い、事前知識何もなしで、こちらのTop 2013 albumsの1位のアルバムを試しに聞いてみた。
これは。。良いです!UKロック、ジャズ、少々のクラシック、エフェクト、古いプログレ、ビートルズなどの良いところを全部持ってきながら、芯の部分はスタンダードなUKロックを貫き通している、という、現代ならではの楽曲たちだった。6曲すべてに相当気合が入っているのがわかる。ヴォーカルも若さで飛ばしている。さすが21世紀だけあって、録音技術、マスタリングは完璧だ。そして、本当にたまたまなんだけど、キングクリムゾンがいつも使っていたメロトロンの音が!驚いた。
Steven Wilsonについて調べてみると、若さで飛ばしていたと思っていたのに、46歳だった。でも顔はめちゃ若い。なぜあんな澄んだ声が出せるのか。。そしてやはりというべきかイギリス出身のプロデューサー兼ミュージシャン。クリムゾンの魂を受け継ぐ者ということか。
日本人、特にファミコン・スーファミ世代にプログレは親しみ深い。ゲームミュージックでよく使われる曲調だから、だ。おそらくこの時代のゲーム作曲者がみなプログレファンだったんだろうな。特に3曲目The Holy Drinkerなんか、クロノトリガーやFF6をやりこんだ人にはグッとくるのではないか。
そして特筆すべきはドラムスだ。Marco Minnemann という人らしい。異常に上手い。普通のリズムを叩いているかと思うと時々あり得ないようなリフを繰り出す。力をためておいて攻撃力2倍という感じだ。この人も要チェックだな。
ジオンはあと10年は戦えると言いつつ2か月で敗北してしまったけれど、プログレはまだまだ戦えそうだ。ポップな要素も取り入れつつ次のステージに向かうのでしょう。


King Crimson – Beat(1982)


★★★★★
2年連続9回目の作品。前作に引き続きキレイなキングクリムゾンが展開されていますが、ミニマルテイストを増加させ、かつ気怠い歌声と混ぜることで完全なオリジナルに昇華させた1曲目Neil and Jack and Meにまず度肝を抜かれました。さらに4曲目Waiting Manではそれにら加えて切なさとわけわかめギターも混じってまいっちりんぐです。3曲目Satori In Tangierは世に現れるのが10年早かったと思われる強烈なロックとチルアウトの融合、5曲目Neuroticaはジャズやらポップやらロックのクラシックなのもハードなのもドラム萌えやら何もかもが混ざっていてこのアルバム中での一つの山となっています。
で、7曲目からヴォーカルとギターに謎のエフェクトがかかって、キレイなことをやめます。俺は人間をやめるぞー!ラストRequiemは久々の意味不明インプロで、レクイエムっていうかこれは水木しげるの世界ですね。全楽器が爆裂していて、魑魅魍魎が跋扈して後には何も残らない、という感じです。演奏していて楽しいだろうなぁ。
前作が単なる前哨戦に思えた。各曲の個性が高くて好きです。


King Crimson – Discipline(1981)


★★★☆☆
7年ぶり8回目のアルバム。いったい何があった、と言いたくなるくらい音が変わりました。「あの有名女優・・・が激ヤセ!?」ってタイトルを付けたくなるぐらい。7年の間の録音技術の進歩もあったのでしょうがなんか根本的にサウンドが変わってます。良くも悪くもクリアー、泥が抜けてキレイです。
小畑健さんという漫画家がいますね。ヒカルの碁はジャンプで現役で読んでました。彼の絵は初期は拙いのですが、作品がヒカルの成長、そして佐為の消失、と佳境に向かうにつれてグングン上達し、圧倒的な美しさを誇っていました。その後デスノート、バクマン、と時代が進むにつれ彼の絵も変化します。デフォルメが過ぎるようになっていき、自分としてはだんだんと受け付けなくなっていきました。これと同じようなものを感じます。
綺麗なんです。特に1〜3曲目。いや、悪くはないんです。4曲目Indisciplineは昔のわけわからなさが戻ってきたようで心地よく、5曲目Thela Hun Ginjeetはドラム萌えもできる楽しい曲ですが、タイトル曲Disciplineがいただけない。この四つ打ち、変拍子のようで実は規則的で、繰り返し、徐々に変化する・・ってこれはまんまミニマルテクノじゃん!ミニマル自体はもっと歴史が古いし、ライヒちゃんのフェーズシフトのようにドキッとするわけでもなく、高揚する盛り上がりがあるわけでもなく、自分としては大ハズレでした。緩急に乏しいのが自分としては大きなマイナスポイントです。もっとドラムが頑張ればいいと思う。惜しい1枚。もうワンクッション欲しかったなぁ。


Paul Bley – The Nearness Of You(1989)


★★★★☆
ジャズピアニスト、ポール・ブレイの標準的なピアノトリオのアルバム。スタンダードナンバー中心の楽曲でありながら、時々かなりぶっ飛んだ表現がチラチラ覗く。全体を通してブレイさんはずっと歌ってます。ノリノリだ。まず1曲目This Can’t Be Loveはふつーーに始まるもののピアノが時々とんでもないフレーズを自然に混ぜてくる、後半の4小節ごとのドラムソロパートでは弾けまくりでかっちょいい。このドラムの人はBilly Hartというらしい。不思議なドラムだ。静かに目立たないながら実はとんでもない技巧と切なさをミックスしてるように聞こえる。ラストはなんじゃこりゃーという終わり方。2曲目表題曲The Nearness Of Youも静かなんだか激しいんだかわからない。6曲目Lullaby Of Birdlandは超有名曲なんだけれどメインテーマからの脱線振りがすごく、またやっぱり静かなのに激しい不思議なドラムに心奪われる。ラストTake the A-Trainもやはり有名曲だけどなんだこの冒頭は!!!爆笑してしまった。やりすぎ!40秒目くらいから何事もなかったかのように路線に乗っかってまた激しく脱線していくのが面白い。あくまでスタンダードの枠の中に留まりつつも実は全員が好き勝手に暴れまわっているという不思議な調和のアルバムだった。ドラム燃え燃え。