Allan Holdsworth – Metal Fatigue(1983)


★★★★☆
アラン・ホールズワースの最も人気のあるアルバムだと思われる。やはりジャンル分けを拒む音楽だ。ジャンル:アランでいいだろう。コードワークとギターの変わったメロディーラインは馴染みのあるようなないような領域を行ったり来たりしている。5曲目The Un-Merry Go-Roundは14分と大曲だが、いくつかのパートに分かれているため、実質数曲を1トラックに収めたような感じだ。この曲の前半がこのアルバムで一番良い。しかし、彼自身のオリジナリティはあるものの前2作とあまり違いがなく、新しい試みがあまり見られないように感じた。アラン節が好きな人にはたまらないと思うけれど、自分は好きでも嫌いでもない、という領域をなかなか出ない。やはり瞑想ロックなので、どちらかというと高揚する曲(EDMのような上げ過ぎなものは嫌)が好きな自分にとっては、グッとくる成分がもう少し欲しい。


IQ – The Road of Bones (2014)


★★★★☆
2014年特集その9。IQはイギリスのネオプログレバンド。ネオプログレというのは、

Neo-progressive rock is characterized by deeply emotional content, often delivered via dramatic lyrics and a generous use of imagery and theatricality on-stage. The music is mostly the product of careful composition, relying less heavily on improvised jamming.
wikipedia

よりドラマチックな、芝居がかった、そして即興的要素を減らしたものらしい。http://www.progarchives.com/の昨年のランキングで大差の一位だったので、期待して聴いた。2枚組で合計100分超と、非常に長い。聴いてみれば、要するにやや主流ななロックの要素も取り入れたプログレ、ということだった。シンセも使うしドラムマシンも使う。良くも悪くも、音ゲーのような音がする。シンセ、ストリングスの音が全然洗練されていないことが原因と思われる。ヴォーカルも一般受けしそうな声質、歌い方だ。1枚目、1曲目From The Outside Inは感触が良い。最後の最後まで盛り上げつつ終わる。登山のようなロックだった。3曲目Without Wallsは19分と大曲だが後半へかけての弩級の展開は唸らせられるものがある。しかし残念ながら、2枚目が冗長だった。1曲目Knuckleheadは良いが、後の曲に行くほど力がなくなる。ラストHardcoreはよくない。いつまでも曲が終わらない感じがする。1枚目で終わっていれば非常に良かったのに。


Logos – L’Enigma Della Vita (2014)


★☆☆☆☆
2014年特集その7。イタリアンプログレなるものを、聴いた。えっと、演奏が下手すぎます!コードがところどころ音楽的におかしい!その上、スタジオでの音の仕上げ方も下手で、スッカスカの音がする!せっかく壮大さを感じさせる気がする曲が並んでるのに、いいところ全然なし!


Opeth – Pale Communion(2014)


★★★★★щ(゚д゚щ)
2014年特集その3。
オーペスはスウェーデンのプログレッシブメタルバンド。デビュー当時はデスヴォイスでぶいぶい言わせていたらしい。私はこのアルバムで初めて知った。
デス、メタル要素は皆無。やや古めの音の使い方を基調とし、近年の録音レベル・音圧上げ過ぎのメインストリームなロックとは一線を画す。プレイヤーの音量を2割上げる必要がある。北欧らしい哀愁と透明感、内に秘めた熱さを十分に感じさせる素晴らしいアルバムだった。まず2曲目Cusp Of Etenityがすばらしい。後半のギターソロから始まる展開部分は燃え燃えです。ハモンドオルガンとメロトロンに上手なギター、何故か中東的な響きのメロディーなんて燃えるに決まってる。3曲目Moon Above, Sun Belowもどことなく懐かしいメロディーがイケてる。一番ヒットしたのは6曲目River。プログレとカントリーが見事に融合してます。で、後半に中東風メロディーを混ぜたダブルギターソロから始まる大展開部分が最高。ドラムも上手いね。何故か日本風な部分もある。全体的にレベル高し、初期の作品も聞いてみようと強く思わせるバンドだった。今年の大ヒットトップバッターはこれ。


Allan Holdsworth – Road Games(1983)


★★★★★
前作I.O.Uに感じられたうるさいドラムが去り、良い部分だけが残った。20分ちょいだけと小粒だがこの人の音楽性をよく表したアルバムだと思う。やはり禅、瞑想といった感じの静を感じさせるロック。ギターは難解なフレーズをバリバリ弾いているんだけれど、底に流れるスピリットが静かで大きい。変わったコードを多用する一筋縄でいかない面白い曲揃いで、特に3、4曲目がよい。Tokyo Dreamという曲のとおり、都会臭がする。コンクリートと寂寥感、人が多いけれど孤独、心地のいい孤独、偽物のライトで満足する都市住民。懐かしいな東京。


Faust – 71 Minutes Of Faust(1995)


★★★★★
未発表楽曲を集めたものらしいです。
裂きイカみたいなギター。必要以上の反復と静かな暴力性、突然音楽を中断させる冒頭、これぞ、アンチ・ミュージックだと思います。ファウストというバンドをまとめるとこのようなアルバムになる、ある意味集大成のようなアルバム。


Allan Holdsworth – I.O.U.(1982)


★★★★☆
アラン・ホールズワースさんの初期アルバム。前から気になっていた人でした。
内容はジャズロック?なのかな。見た目はロックだけれど、内容は全然違う。難解なコード、ウネウネ移り変わる曲想、これまで聞いたどんなロックとも違う、複雑な音空間でした。アランさんのギターは速弾きでもうるさくない、落ち着いているのに激しい、禅思想を体現したような音をしていました。瞑想ロックだね。
曲は優れているのですが1点非常に残念なのがドラムス。技術力が非常に高いのは分かります。何回もこれはありえないドラミングだなぁと思いました。でもうるさいの。ドジャーンいえーい叩くぜーって気持ちが伝わってきてしまい、これだけは私の感性に合わなかった。もっと抑えて、アランさんと一緒に瞑想すればいいのに。次回作以降は押し殺した激しいドラムを期待します。


Faust – Rien(1994)


★★★★☆
21年ぶりのアルバム。ややインパクトは弱いが、彼らの期待を根性で裏切るスタイルは健在だ。2-3曲目とコラージュ気味でぼやけた曲が続いた後、5曲目Listen to the Fishは繰り返し部分が長すぎて聞くのが苦痛になるという逆説的なマラソン曲だった。6曲目Eroberung Der Stille, Teil 2は、嫌になるくらいホラーなサウンドでできた袋麺を入れたドンブリにカップ麺を放り込んだ感じ。初めは圧倒されるものの、後半はやりすぎでちょっと引く。ボイス部分が失敗だったのではないか。21年経ったせいかエネルギーと暴力性が若干損なわれているように思われる…と他の人が書いた解説を読んだら、ジム・オルークという人がファウストに送り付けられたライブのテープを(手動で)編集したものだそうだ。感性が違うと思った。でもよく編集できたな。


King Crimson – The Power To Believe(2003)


★★★★☆
バンドは解散してないけれど、事実上の最終作。近代的なデジタルドラムを混ぜ、ミクスチャー化した最終進化形のクリムゾンサウンド。Linkin Parkの手法とも似ている(サウンドは異なる)。Level Fiveは典型的なデジタルビートとの混合で、非常にヘビーで良いがドラムとギターが交互に掛け合う場面の若干タイミングがあってないのが気になる。ここが決まれば完璧だった。Eyes Wide Openは残念ながらデジタルなしの前作の方が良かった。。7曲目The Power To Believe IIは前作Shouganaiの発展バージョンで、これは本アルバムの勝ち。9,10曲目のHappy With What You Have To Be Happy With〜The Power To Believe IIIにかけての展開も悪くないがやっぱり前作のLarks〜IVには敵わないか。
1970年代にデビューしてから長い時が経っているとはいえ、最後まで変化、進化し続けるところは好感が持てる。人は変化するものだ。変化を受け入れるのも人間だ。初期のサウンド、後期のサウンドいずれも一長一短があり、気に入るかどうかも聞き手の感性次第だ。私は泣かせられる曲もダサい曲も美しい曲も破壊的な曲も大好きだ。しかしへヴィー路線に進むのであれば、もう少し、もう少しだけパワーが欲しかった。
次回からは以前から気になっていた Allan Holdsworth さんのアルバムを聞いてきます。


King Crimson – Happy With What You Have to Be(2002)


★★★★★
最終作 The Power To Believeに先駆けてのミニアルバム。30分程度と非常に短いが、5曲目Eyes Wide Openが透明さの際立つ名曲、6曲目Shouganaiもよい。ちなみに日本版タイトルはなぜか「しょうがない」。そしてこのアルバムの目玉は9曲目Larks’ Tongues In Aspic (Part IV)。なんだよ前作の再録かよ〜と思ったら、ドス重さが5倍、ギターの爆裂度合いも激しく増し、前回のへぼいFuckin電子ドラムもなくなり重厚ドラムに切り替わっており、2000年代のクリムゾンでは最高の曲なのではないか。あとはThe Power To Believeのみ。期待膨らむ。