書籍レビュー: 感染症を見る目が変わる『感染症と文明―共生への道』 著: 山本太郎

★★★★★(*´ω`*)

著者の山本太郎さんは小沢一郎と組んだあの人ではなく、アフリカやハイチなどで感染症対策に従事した経験を持つ医師です。

「感染症」をキーワードとして読み解く人類史

狩猟生活から農耕生活に人類が移行したため、単位面積当たりの人口が増大し、感染症にとって繁栄することのできる土壌が生まれた――などなど、感染症をマクロな視点で捉え、淘汰圧や自然選択、感染力の強弱・免疫の有無などの分かりやすい要素を道具として、人類史の出来事を考察していく書物です。新書ということで200Pしかありませんが、よくまとまっています。著者の教養の豊富さとそれに裏打ちされた思索の深さには驚かされます。厭らしいところが微塵もありません。

感染症と「共生」!?

前半は、交易や戦争など人間の移動と共に、感染症も移動してスペイン風邪やペストなどの歴史上の大事件を引き起こした実例がいくつも書かれています。前半もとても興味深いのですが、私がこの本で衝撃を受けたのは後半、特に感染症を長い時間軸を使ってその「適応」の段階を紐解いていく終章です。

感染症は大抵の場合動物からやってきます。そして人間に感染するような株が現れ、小集団内の流行で終息する段階から、定期的に大流行を引き起こす段階へと人類に「適応」していきます。こうして適応した感染症は人間の中でしか生きられなくなる段階が来ます。

ところが人間社会というものは変化します。しかも変化のスピードが大きい。すると、人類に「過剰適応」してしまった感染症は、変化についていけず死滅するというのが著者の仮説です。著者は成人T細胞白血病ウイルスを実例として挙げ、徐々にこの世から姿を消していく様子を描いています。そしてこのウイルスの消滅について著者は警告を発するのです。

一方で、最終段階まで適応を果したウイルスの消滅は、別の問題を生み出す可能性がある。ウイルスが消滅した後の生態学的地位を埋めるために、新たなウイルスが出現する可能性である。

同様に、人類による感染症の根絶も著者は「過剰適応」だとみなしています。たとえ話として、洪水を防ぐためのミシシッピ川の嵩上げについて次のように述べています。

歴史家であるウイリアム・マクニールは、「大惨事(カタストロフ)の保全」ということを述べている。人類の皮肉な努力としてマクニールは、アメリカ陸軍工兵団が挑んだミシシッピ川制圧の歴史を挙げる。ミシシッピ川は春になると氾濫し流域は洪水に襲われた。1930年代に入り、アメリカ陸軍工兵団は堤防を築き始め、ミシシッピ川の封じ込めに乗り出した。おかげで毎年の洪水は止んだ。しかし川底には年々、沈泥が蓄積し、堤防もそれにあわせて高くなっていった。堤防の嵩上げは続いている。しかし、この川が地上100メートルを流れることにはならない。いずれ破綻をきたす。そのとき、堤防建設以前に彼の地を襲っていた例年の洪水など及びもつかないような、途方もない被害が起こる可能性があるというのである。

そこで著者は感染症との「共生」を唱えるのです。。

著者は感染症対策のエキスパートでもあるのですが、この文章からは、感染症を根絶するべき「敵」としてではなく、対話可能な「相手」としてとらえていることが読み取れます。初めてみる視点です。私はこれに衝撃を受けました。また、感染症の栄枯盛衰の理論をこれだけ明快に見せつけられると、なんだか切なくなってきます。人類の敵であるはずの小さな小さなウイルスに対してそんな感情が生まれたということも衝撃的です。

総評

新書とは思えないクオリティです。本では3冊目の★★★★★+評価を付けました。ぜひ読んでみてください。

 

 

参考書籍

1冊読むと関連本を10冊は読みたくなりますよね。こうしてネットワークが作られていき、泥沼にはまるわけです。

 

エッセンシャル・キャンベル生物学

エッセンシャル・キャンベル生物学

 

 まず生物学基礎を全然知らないのでこれから。高い。

 

やさしい基礎生物学 第2版

やさしい基礎生物学 第2版

 

 こういうのでもいいかな。

 

カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学 (ブルーバックス)

カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学 (ブルーバックス)

  • 作者: クレイグ・H・ヘラー,ゴードン・H・オーリアンズ,デイヴィッド・M・ヒリス,デイヴィッド・サダヴァ,浅井将,石崎泰樹,丸山敬
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/02/19
  • メディア: 新書
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コンパクトにするならこれか。

 

 

世界史 上 (中公文庫 マ 10-3)

世界史 上 (中公文庫 マ 10-3)

  • 作者: ウィリアム・H.マクニール,増田義郎,佐々木昭夫
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2008/01/25
  • メディア: 平装-文?
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 マクニール先生のいずれ読まなければいけないと思っている本。

疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

  • 作者: ウィリアム・H.マクニール,William H. McNeill,佐々木昭夫
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 文庫
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 本書で紹介のあった本。

 

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

 

これも本書で言及があった。少し前のベストセラー。

 

失われてゆく、我々の内なる細菌

失われてゆく、我々の内なる細菌

 

 山本さんの最新翻訳本。欲しい。

 

エイズの起源

エイズの起源

 

 同翻訳本。

 

 


フィスコレポートを読む セレクト 4919ミルボン、4668明光ネットワーク、3230スター・マイカ、7628オーハシテクニカ

企業調査レポート|サービス紹介|FISCO

4919 ミルボン(おすすめ)

株式会社 ミルボン

美容師向けヘア化粧品の国内トップメーカーです。主力製品はヘアケア用品、染毛剤、パーマ剤の3つです。このうちパーマ剤については市場が年々縮小傾向にあり、同社も少しずつ事業の占める割合を削っていていまでは売上の6%を占めるにすぎません。

日本の人口が縮小するにしたがってヘア化粧品の需要も低下することが予想され、同社は日本の他の大企業と同様に海外展開を進めています。海外事業は極めて好調で、年20%の成長率を達成しています。

同社の商売は粗利益率が65~70%と極めて高いことが注目されます。この数字はオドロキですね。美容という女性にとって必須である需要をターゲットにし、高い付加価値をつけることが可能となっています。販管費を引いた営業利益率も18%程度で推移し、高収益と成長を安定的に達成する優良な企業です。

なお女性の美への追及は年齢を問わず続けられるので、当面の市場縮小はないとレポートでは見込まれています。

http://www.milbon.co.jp/ir/img/gyoseki_graph1_01.jpg

連結業績ハイライト|株式会社 MILBON【IR情報 Web Site】

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売上推移と株価もこの通り。素晴らしいグラフです。直近で爆上げして、PERが30倍程度とすでに高水準のため短期的には美味しくないですが、下がったところを買えば2年以上の長期スパンなら報われること間違いなしの銘柄でしょう。今後は海外事業の収益化に同社の行く末がかかっています。

4668 明光ネットワーク

明光ネットワークジャパン

以前にも取り上げました。ビジネスモデルの強みについてはこちら。フランチャイズ事業による搾取が同社の高い収益性を支えています。

3か月前との違いは、減少傾向にあった塾の生徒数が増加に転じたことと、MAXISエデュケーションと早稲田EDUのM&Aです。いくつか塾銘柄を取り上げたことがありますが少子化にもかかわらず塾の生徒数はどこも増えています。この銘柄は高い収益性に支えられた流動資産が莫大にありますから、今後もM&Aで大きく事業を拡大できるでしょう。

3230 スター・マイカ(面白い)

スター・マイカ株式会社

中古マンションの販売が主事業です。ここのビジネスモデルはとても興味をひかれます。

中古マンションが賃貸に出されていたらそこを1室単位で買い取り、リノベーションして価値を上げてから売りに出す。賃貸中でも買い取り、賃借人が住んでいる間は賃料収入を得る。賃貸中のマンションは価格が安いのでむしろ賃貸中の方が都合が良い。という誰でも思いつくようでまず思いつかない面白いモデルです。賃料収入だけで売上の15.3%を占めており、この収入が同社を安定たらしめています。

新築マンションは人気がありますがマンションの耐用年数は35年以上あります。35年必ず同一人物が住むとは限らず、必然的に中古マンションのストックは増える一方です。

中古マンションはめちゃんこ安いです。都心といえども空き室率はどこも10%超で、同社の入り込む余地はいくらでもあるように見えます。

東京都のマンション経営・アパート経営|見える!賃貸経営 | HOME’S不動産投資

同社の売上高営業利益率は13.6%。不動産業界の平均7%の約2倍もあります。これは前述の、賃料収入による底上げが大きいと思われます。

高い新築マンションの需要が下がる景気後退期にこそ、この銘柄は強いのではないかと思い昔の有報を見てみました。

https://www.starmica.co.jp/pdf/securitiesreport/1378195202.pdf

予想通り、2009年には純利益が半減こそしたものの赤字になっていません。ただ株価は一時期1/5程度になってしまっているようです。。しかし他の不動産銘柄はどこを見ても株価は1/10以下(1/20もある)になっており、リーマンショックでは超ド級の赤字を経験しています。これらと比較すれば(不動産銘柄の中では)不況耐性が強いと判断してよさそうです。PER12倍と、6-8倍程度の他の不動産銘柄と比べると極めて高い値です。安定性を買われているのだと思います。中長期ではそれなりに発展しそうですね。

そういえばすぽさんのブログでも取り上げられていました。

7628 オーハシテクニカ

OHASHI TECHNICA,Inc

自動車部品メーカーですが、自社工場と協力会社工場の2本立ての体制「ファブレス&ファクトリー」と、ニーズを把握し自社製品を効率的に売り込むコンサルティング機能が功を奏し、部品メーカーの中ではかなりの高水準である営業利益率10%台を達成しています。その割に株価はPER8.4倍・PBR1倍割れとかなり過小評価されており、自動車業界が好調な間はバリュー投資の典型となる投資先になりそうです。個人的には自動車業界は振れ幅が大きくあまり好みではありませんけれど。

 

今週はミルボン、スター・マイカが面白い銘柄でしたね。いろんな会社でいろんな人が面白いことを考えているのを知るのは本当に楽しいです。


自分用単語記憶ソフトを開発して1年、6000語以上学習できた

私の趣味の一つに外国語学習があります。かれこれ4年くらいになります。

震災後からスタート

きっかけは東日本大震災でした。地震後からさまざまな情報が氾濫し、毎日ニュースにくぎ付けになっていました。近隣のスーパーから水が無くなったり、住んでいる地域に放射性物質が降ったりと身の回りもえらいことになっていました。

ところが日本のメディアはパニック抑止のため情報統制がきつく、一番情報が早いのはなんと英BBCでした。

大学入試以来の錆び付いた英語力でざざっと読んでいましたが限界があり、文章の大意がつかめていたかどうかも怪しかったものです。この時から外国語を学び直してみよう、という考えが湧いてきました。

多言語理解を目指す

英語だけではなく、大学でかじった程度のフランス語や、近隣の中国語韓国語にも興味がありました。また、いずれ哲学書を原文で読むことを目指してドイツ語も学習を始めました。オペラを聴いて歌詞の意味が知りたいな!と思ってイタリア語も少しずつ学習を始めました。いまは時間が無くなってイタリア語は中止、韓国語も縮小運転中です。各国語についてはいずれ別の機会に記事にする予定です。

単語力が重要

外国語学習については様々なメソッドがあり正解はありません。4年間で色々なことを試しました。そこここに転がっている外国語吹き替えの日本製アニメを見る(いままでに10タイトルくらい見ました)とか、ドラマを見るとか、ラジオ番組を聴くとか、洋書にトライしてみるとか。しかしなかなか効率は上がりません。今考えると、自分のレベルを超越しているものばかり選んでいました。東芝のようにチャレンジしても見せかけの利益にしかなりませんでした。

色々な言語をかじるにつれて一つだけ確信したことがあります。語学は「単語力が最も重要」であるということです。単語を知らなければ読めません、聞けません。もちろん書けないし話せません。この思想をもって、単語力を伸ばすためにPHPの勉強を兼ねて自分で学習用ソフトを開発することにしました。

復習が基本、モチベーションも重要

語学は復習が基本です。100を適当に流すより、1を繰り返して確実に覚えた方がよいです。なぜなら語学は覚えることが多すぎて、一度流すと2回目に同じ表現が現れることはまれで、人間の宿命である「忘却」という厄介な敵によって記憶が持ち去られてしまうからです。

また、単語は単語帳を使って単独で覚えることをおすすめしません。これは個人的な好みの問題です。単語が全て日本語と1対1にくっついたただの代替物になってしまうのが嫌です。あと、単純に覚えるのが退屈です。文脈を使って文章の中で実際に使用されている原語の「生」の状態で覚えるのが最も効率が良いし、その「文脈」も自分で読みたいな!と思った文章であれば「絶対に理解してやる!」というモチベーションが働くので更に相乗効果を生む、と考えます。

以上のことから「文脈」「復習」に重点を置いたソフトを開発しました。忘却曲線の論理を借り、一度出題した問題を1日後・1週間後・2週間後・1か月後にそれぞれ復習するという仕様で、完成したのが1年前です。

毎日の学習を強制されるシステム

システムは単純で、「単語」「例文」「解答」を1組にしたDBを作り、1日後・1週間後・2週間後・1か月後に復習させるだけです。ただし、記憶の度合いによっていずれのステージに属するかをユーザーが選択できるようにします。次のような感じです。

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「覚えていた!」なら1日後→1週間後に格上げ。「なんとなく覚えていた」なら1日後に残留。「忘れた。。」なら格下げです。それほど難しくなく、カスタマイズも楽勝でプログラムの勉強にちょうど良い規模のアプリケーションでした。まだwebデザインを勉強していない頃だったので、UIは淡泊でつまんねぇです。

このシステムを動作させてみるといくつかの利点に気が付きました。まず、復習が前提ですので1日サボると効果が無くなります。しかも1日に解く問題の量を枯渇させないため、毎日一定量の問題を登録しなくてはいけません。要するに毎日の学習を強制されます。これは受動的でネガティブに聞こえますが、1年続けていくための大きな原動力となりました。いまは1日に新規で16単語学習+問題登録しているのですが、復習で16単語*4=64問学習しなければいけないので、だいたい1日1時間かかります。

さらに、1か月後に復習するとかなりの頻度で忘れているということもわかりました。長期記憶というのは難しいです。1か月後の復習が終わった単語について、再復習するための処理も作ったのですが時間が足りずあまり動作させていません。。

検索機能も大事です。問題作成時に、実はすでに登録済みの単語だったということも多いのです。単語検索機能もつけたので、登録済みであることが分かるとついでに復習もできて「あ~この文章で使われていた単語だったのか」とちょっとうれしくなる上に、記憶が定着します。

1年で6000語以上の学習に成功

自己満足のために学習した単語数をグラフにする機能も付けました。flotr2というライブラリを使っています。おすすめです。

1年間使ってみた結果は次のようになりました。

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登録単語数は約6200語。問題作成時に一度学習していることを考えると、1年で6200語を学習したことになります。1か月後の復習、つまり最低6回学習した単語だけで5000語あります。うち英語は1900語程度。

効果は?

こうかはばつぐんです。まず英語については、1年前苦戦していた洋書を読む速度が体感で倍速になりました。特にコンピューター書については平易な言語で書かれていることが多いので、楽勝で読めます。単純に単語だけを学習するのではなく、文章全体で分からなかった単語を調べるついでに復習するという形式にしたため、結果的に読む文章量が多くなりました。しかも楽しい。次は通常のスピードの3倍を目指して赤くなりたいです。分からない単語に会う確率は今後も減っていきますが、読むスピードが上がるので学習に割く時間は一定しています。

weblioに単語力診断があります。

これを1年前に診断したときの推定語彙数は7001~8000でした。今日試しに再テストしてみました。

確実に上がっています。でも2000語上がらなかったのは残念です。学習した1900語のうち、半分はまだ記憶が怪しいということなのかもしれません。来年もテストしてみます。

フランス語も、1年前に歯が立たなかったネイティブ向け新聞記事が、単語を調べればすんなり読めるようになってきました。NHK WORLD – French ここのものなら平易なのでそれなりの速度で読めるようになりました。いまだに分からない単語は1記事に1つくらいありますが。中国語、ドイツ語についても1日あたりの学習時間は10分に満たないのですが、確実に読めるようになってきています。

韓国語は私にとって非常に難易度が高く、しかも時間の都合上学習量を1日1語に限定したためなかなか進みません。いまは、紆余曲折を経て某ラノベの韓国語訳を教材にしていますが、開始から4か月経っても未だに冒頭のキョンのモノローグすら終わっていません。1つの文に3つも4つも知らない単語があるためです。いつになったらブーストするのやら。気長に10年くらい続けようと思っています。

Ankiがおすすめ

これから単語を学習したい人は、Ankiというソフトをお勧めします。基本思想は私が作ったシステムと同じです(Ankiは後で知りました)が、こちらの方が何段階も洗練されています。スマホでも使えるしweb上でも使え、しかもローカルとの同期も取れます。

Anki – powerful, intelligent flashcards

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【忘却曲線に基づいた暗記!?】暗記用アプリ「Anki」 | OUlife

私は先ほど述べたように、1対1の単語帳として使うのではなく、なるべく例文を「自分の読んだ文章から」持ってくることをお勧めします。そうすれば絶対楽しいですから。もちろん問題集は人の作ったものでなく自分で作ることが前提です。自分で作らないとこの手のソフトには意味がないと思います。

私は昔「速読英単語」で大学入試に備えましたが、これ、文章がつまんねぇっていう最大の欠点があるんですよね。時間も選択肢もない高校生にはこれしかないかもしれませんが、大人がこれを使うのはおすすめしません。自分の好みで選んだ文章で、自分だけの単語帳を作って学習するって本当にいいものですよ!


書籍レビュー: 反則!現場の重み『みんな大好きな食品添加物』 著: 安倍司

★★★★★

元添加物商社マンの懺悔の書

著者の安部司さんは、国立大の化学科を卒業し添加物を売る敏腕商社マンとしてバリバリ働いていました。添加物で数々の食品加工会社に大きな利益をもたらし「添加物の神様」と呼ばれていました。

ある日、こどもが食べようとしたミートボールが彼の運命を変えました。そのミートボールは、捨てられるはずのクズ肉に組織上大豆たんぱくを加えて増量し調味料や乳化剤などを投入して味と舌触りを調え氷酢酸+カラメル+化調で作ったソースもどきを加えてできた、彼の自信作でした。ゴミと大量生産される化学物質が原料なので原価が安く利益率の高い優良品でした。しかしそれを自分のこどもが「おいしい」と言って食べるのを見て、、彼は「食べたらいかん!」と言いました。

こうして彼は会社を退職し、添加物についての知識を広める活動を始めました。これが序章です。

具体例なしでも説得力大

本書には食品添加物の実際の仕様事例が数多く例示されていますが、どの添加物がこれこれこのように毒性がある、などとという具体例は一切出てきません。おそらくターゲット層を化学的知識のない層に絞っていると思われ、意図的に具体例を出していないようです。上手いマーケティングです。というのも、彼が「添加物の神様」だったという事実1点だけで本書に説得力が出るから必要ないのです。

私は昔から添加物は好きではありません。数々のコスト削減の工夫の賜物である添加物使用の実例をこれだけ大量に並べられると辟易します。

食の破壊

著者は毒性の危険性にも言及していますが、それ以上に添加物による味覚の破壊、ひいては食生活の破壊を最も憂慮しています。この視点は私と同じです。商品を遠方から運んで保管し陳列する以上、酸化防止剤や保存料の添加は避けられません(自炊すりゃいいんですが)。しかし嗜好性の強化となれば話は別です。

グルタミン酸ナトリウム。人間によって発見された最も偉大なタンパク質加水分解物からなる旨み調味料。いわゆる「味の素」です。これを単独で使用することにより我々の舌はウヒャッホーイと唸り脳が喜びます。以前に上司は「焼き鳥に味の素をかけるとすごくおいしいんだよ」という鳥を完全に無視した発言をしていました。味の素の破壊力を端的にあらわした発言です。「アジシオ」というこれまた味覚を大きく刺激する塩に味の素を加えた黄金的製品も存在します。

外食をするといつも感じます。味が濃すぎる。外食産業は売れなければ商売になりませんから、我々が求める、タンパク質加水分解物がいっぱいの脳が喜ぶ食事を提供します。必然的に味は濃くなります。

 

外食で最も中毒性のある食べ物と言えばラーメン二郎です。私も一時期食べていました。

http://image1-4.tabelog.k-img.com/restaurant/images/Rvw/20845/640x640_rect_20845914.jpg

ラーメン二郎 立川店 (らーめんじろう) – 立川南/ラーメン [食べログ]

このラーメンの旨みの正体はグルタミン酸です。

http://portal.nifty.com/2014/10/21/c/img/pc/014.jpg

自宅でできる二郎風ラーメンの作り方 – デイリーポータルZ:@nifty

店に行くと袋から「白い粉」を大量投入する光景が見られるそうです。

ラーメン二郎醤油のカネシ醤油

カネシ醤油!とオーションをラーメン二郎で使っているのですが・・

醤油にも「アミノ酸液」なる怪しい物質がふんだんに含まれているようです。大量の脂、塩、化調と中毒成分の総合栄養食品と言えます。このうち塩、油については格好の参考書籍を見つけたので今度読んでみようと思っています。

フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠

フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠

 

 

話が脱線しました。本書では以上のような「うまみ」の製造方法も事細かに語られています。インスタントラーメンのスープはベースはみな同じ塩+化調+アミノ酸であり、あとは配合量をちょいと変えるだけでできあがります。白い粉しか使っていません。それっぽいラーメンの色はすべて着色料です。

大量の砂糖や果糖ブドウ糖液糖を入れて甘々でとてものめない飲料にちょいと酸味料とレモン香料を加えてやるだけですっきりとした清涼飲料水の出来上がりである、という記述も刺激的です。

http://www.asahiinryo.co.jp/products/carbonated/mitsuya_green_lemon/

例えばこれ。500mlで炭水化物47.5gです。角砂糖15個分くらいですね。

添加物をなるべく摂取しないようにするには

自炊しかありません。ただし本書では自炊だとしても十分危険であることも指摘されています。

大量生産・安価な商品に添加物が含まれないことなんてありえません。輸入食品に含まれる遺伝子組み換え作物が避けられないように、市販品を買うことによる添加物の摂取も避けられません。添加物の毒性うんぬんについては私は疑問がありますが、本書で警告されている味覚の破壊については全面的に同意します。自分の食は自分で守るしかありません。

 

途中でも述べましたが、現場の人間が書いたというのは重過ぎます。ちょっと反則的ですね。

 


CDレビュー: Yes – Union(1991)

★★★☆☆

流行サウンドの枠内にとどまる曲が多い

Yesの13枚目のアルバムです。前作から今作の間に解散したり合流したりいろいろあったそうですがそういった事情は全く無視して音の感想を述べます。

全体的に流行りものサウンドといった趣の曲ばかりです。ロックバンドのくせにスッカスカの打ち込みドラムを使うのは許せません。私が小~中学校のときに使っていたSC-88系の音が目立ちます。当時は最先端だったのでしょうが今聞くとちゃちいですねぇ。大部分の曲はメロディーがありがちすぎたりサウンドがだっさかったりで心を捉えません。

時々耳を引く曲も

7曲目Miracle Of Life、9曲目The More We Liveと10曲目Angkor Watが浮いてます。この3曲だけ悪くありません。特に7曲目は音が軟派ながらもちょっとドキドキするし、10曲目は全然ロックではありませんがパッドの使い方が上手で適度に幻想的になっていてよいですね。Amazonのレビューによると、分裂時にヴォーカルのジョン・アンダーソンらで結成されたABWHというバンドが作っていない曲が4,6,7,9曲目だそうです。そういえば7曲目はヴォーカルも違いました。じゃあABWHの曲はだめなのかもしれないですね、、昔からのメンバーばかりのはずなのですが。

ABWHのアルバムは1枚だけ、Anderson Bruford Wakeman Howe というそのまんまなタイトルのものがあるそうなので、機会があったらこちらも聞いてみます。

 

 

プログレッシブロックの他のCDレビューはこちらです。


フジコーが昼に通期決算発表、増収増益も営業減益のため大幅下げ。

http://www.fujikoh-net.co.jp/wp-content/themes/fujiko/images/logo.png

2405フジコーが本日昼11:30に通期決算を発表しました。フジコーは建設材・食品のリサイクル会社で、平成28年から稼働する森林発電事業(バイオマス発電)が目玉です。人気ブロガー弐億貯男さんの主力銘柄でもあります。私も一時期便乗して持っていましたが、今は手放しています。

http://www.fujikoh-net.co.jp/wp-content/uploads/2015/08/ef70a807bc52e3fa6525653c14e836f4.pdf 決算短信

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なんと営業減益です。これは痛い。短信を読むと食品系リサイクル事業が不調で、赤字転落してしまったことが原因でした。前期の決算短信を読むと、営業利益予定360百万円、当期純利益予定180百万円ですから11.7%の未達ですね。

(株)フジコー - 株価チャート

この結果を受けて後場で前日比-5.72%と株価を大幅に下げました。どこの会社も決算で大幅下げばかりです。決算には魔物が住んでいます。

来期予定は建設・食品リサイクルが減収予定ですが、期末から稼働する森林発電事業が後押しし、大幅な増収増益となる予定です。森林発電事業の売上予想が256百万円ですので、来来期は10億円相当の売上を見込めるということになります。来年が楽しみです。


CDレビュー: The Rough Guide to Salsa Dance (First Edition) (1999)

★★★★☆

サルサって何?

唐辛子入りのソースではありません。サルサはキューバ発祥のラテン系ダンス音楽です。キューバですので歌は全部スペイン語。だからなのか情熱的な曲ばかりです。キューバにはアフリカ系の住民も多いですので、打楽器が大量に使われて複雑だが繰り返しの多いリズムを作り出しています。特にクラベス(拍子木みたいなやつ)がほとんどの曲で使われています。

こいつです。、、カンカン、、カン、カン、カン(1文字につき16分音符1つ)というリズムが特徴的ですよね。

他にもギロ・コンガ・ボンゴ・カウベルやらが常時鳴り響いています。いわゆるアフロ・キューバンな音というとこのアルバムのような曲になるんでしょうね。

そういえばこの手の曲は昔、音ゲーでもありました。

 
サナ.モレッテ.ネ.エンテ (Sana Morette Ne Ente – Full version) – YouTube

今聞いてみると泣き成分が全然足りないしヴォーカルの質が曲に合ってなくてヌルすぎですね。日本人は薄味がお好みのようで。

 

スペイン系の演歌調泣き曲多数

これなんかもそうでしたが、演歌調のだっさい曲が多いのです。管楽器も昔のビッグバンドジャズのようなパラパラパッパーですし、ヴォーカルは垢抜けて無くてとても泥臭い。暑苦しい汗の臭いがスピーカーの向こうからやってくるようです。

1曲1曲は悪くありませんが15曲もベタベタした曲を聴かされるとちょっと辛いです。。

 

1曲目。つかみは珍しく哀愁成分の控えめな、明るーいサルサです。


Jose alberto el canario – Me dejo picao – YouTube

 

14曲目。ベタベタなブラスにうっとおしい泣きサウンドが特徴のうざいサルサです。左側からクラベスが聞こえます。演歌の匂いがします。


Son de la Loma – Mariana – YouTube

 

 

ワールドミュージックの他のCDレビューはこちらです。


書籍レビュー: 歴史は紀元前から繰り返している 『ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上)』 著: 塩野七生

★★★★★

歴史を学びたい

私は世界史が苦手でした。高校時代の私は想像力なんてものがからっきしでしたので、人物と出来事を羅列されるだけの授業は退屈極まるものでした。進学校でしたので定期テストの全教科に順位がついて返ってくるわけですが世界史はいつもビリかビリ2でした。

しかし最近のギリシャショック・中国ショックに関連して国際情勢などを調べるにつけ歴史を知らないと国際関係の問題が全く理解できないことを痛感しました。これらの国々が一体どのような経緯で今の状況に至ったのか、歴史的な立場からこの国はどのような動きをすることができるのか、さっぱりわからないのです。

また直近で読んだ「経済学大図鑑」から、すべての経済論理は歴史と密接に関係していることもわかりました。また「ソロスは警告する」でジョージ・ソロスも「金を儲けたければ哲学と歴史は必須」と言っていました。歴史と哲学の必要性は高まるばかりでした。

そこでまず近場の図書館にずらっと並べてあった本書を手に取ってみた次第です。

意外にも極めて簡潔な文体

本シリーズは塩野七生氏のライフワークといえる大著で、単行本版全15巻、文庫版全43巻+別冊と非常に壮大です。私は著者の創作力をもって物語を詳述していったら膨大に膨れ上がってこの量になったのだと想像していました。しかし事実は違いました。一つ一つの出来事は極めて簡潔に書かれており、歴史自身が膨大であったことがすぐに判明しました。この調子で43巻のボリュームになるのかと思うと胸が高まります。

既に現代の歴史が繰り返されている

第1巻ではローマの建国から王政を経て共和制に移行するまでと、隣国であるギリシャのあけぼのが描かれます。およそ紀元前5世紀までの物語です。

一番衝撃を受けたのはローマではなくギリシャのトップランナー、アテネの話でした。何故アテネでポリスという民主制度が興ったのか。紀元前6世紀のアテネは、貴族政が敷かれていました。小作人付きの土地所有によって基盤づけられている貴族たちが権力を持っていたのです。ところがアテネでは商業が大きく発達し、富を得た商人たちは新興勢力となっていきます。しかし商人には国政への参加権がない。また小規模な自作農たちも貴族が幅を利かせていて土地をたくさん持てませんから、富が少なく借金地獄に陥りやすい。この2つの階級が、貴族に反発して民主制度を打ち立てていくのです。

どこかで聞いた話です。ああこれはフランス革命と同じだと思いました。経済学大図鑑でも読みましたが、フランス革命も貴族に対する商人たちの反抗でした。金の力を付けた商人たちの権利要求が、民主政治を作ったのです(だから民主政治は本質的に金を持ってる奴が強いに決まっていると考えてます)。そしてそれが紀元前7世紀(!)に既に起こった出来事なのです。

人間が今の形に進化してきた時間の長さを考えれば頭の中身が数千年スパンくらいで変わるもんじゃないでしょう。歴史は繰り返すことを義務付けられていると大きく実感しました。断言できます。歴史は力になると。

 

2巻以降も楽しみです。こればっかり読むわけではないので今のペースだと1年以上かかりそうですが。。

 

 


1717明豊ファシリティワークスは計画通り爆下げ

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計画通り

 

予想通りDVxの下げ率を凌ぐ-10.16%と本日9番目の値下がり率となりました。値下がりまで計画通りならすばらしいので少量買ってみました。報われるのは今期決算発表時の9か月後でしょう。


ユニリタ1Q決算。見た目は良好も中身に不安含み

UNIRITA

今日は引け後に準主力3800ユニリタの1Q決算が発表されました。

http://www.unirita.co.jp/wp-content/uploads/2015/08/150806_001.pdf 決算短信

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正直、いまいちです。

1Qの数字だけ見るとすごく良い成績に見えますが、売り上げが全然伸びていません。これは、新規子会社に加えたデータ活用事業がめっきり不調であるためです。

データ活用事業
当第1四半期のデータ活用事業の業績は、売上4億72百万円(前年同期比8.4%減)、営業損失89百万円(前年同期は84百万円の損失)となりました。製品売上は45百万円(前年同期比22.5%減)、技術支援サービス売上は2億22百万円(同17.3%増)、保守サービス売上は2億4百万円(同23.5%減)となりました。

売上及び営業損失が増えているのがとても痛いです。データ活用事業は魅力的だと思ったんだけど。。

メインフレーム事業は予定通り減収減益。これは時代の趨勢で仕方ないことです。システム運用事業が爆発的に好調で、売上・営業利益を1億円押し上げたことで何とかカバーし、1Qの数字に何とか形を持たせたように見えます。

2Q売上・営業利益は果たして達成できるのか?それは売上高の1/4を占めるに至ったデータ活用事業にかかっています。ここが黒字化すればかなりの利益増が見込まれます。

やや自身をなくした決算発表でした。明日は数字だけ見た短期筋が上げてくるでしょうけど。