私の趣味の一つに外国語学習があります。かれこれ4年くらいになります。
震災後からスタート
きっかけは東日本大震災でした。地震後からさまざまな情報が氾濫し、毎日ニュースにくぎ付けになっていました。近隣のスーパーから水が無くなったり、住んでいる地域に放射性物質が降ったりと身の回りもえらいことになっていました。
ところが日本のメディアはパニック抑止のため情報統制がきつく、一番情報が早いのはなんと英BBCでした。
大学入試以来の錆び付いた英語力でざざっと読んでいましたが限界があり、文章の大意がつかめていたかどうかも怪しかったものです。この時から外国語を学び直してみよう、という考えが湧いてきました。
多言語理解を目指す
英語だけではなく、大学でかじった程度のフランス語や、近隣の中国語韓国語にも興味がありました。また、いずれ哲学書を原文で読むことを目指してドイツ語も学習を始めました。オペラを聴いて歌詞の意味が知りたいな!と思ってイタリア語も少しずつ学習を始めました。いまは時間が無くなってイタリア語は中止、韓国語も縮小運転中です。各国語についてはいずれ別の機会に記事にする予定です。
単語力が重要
外国語学習については様々なメソッドがあり正解はありません。4年間で色々なことを試しました。そこここに転がっている外国語吹き替えの日本製アニメを見る(いままでに10タイトルくらい見ました)とか、ドラマを見るとか、ラジオ番組を聴くとか、洋書にトライしてみるとか。しかしなかなか効率は上がりません。今考えると、自分のレベルを超越しているものばかり選んでいました。東芝のようにチャレンジしても見せかけの利益にしかなりませんでした。
色々な言語をかじるにつれて一つだけ確信したことがあります。語学は「単語力が最も重要」であるということです。単語を知らなければ読めません、聞けません。もちろん書けないし話せません。この思想をもって、単語力を伸ばすためにPHPの勉強を兼ねて自分で学習用ソフトを開発することにしました。
復習が基本、モチベーションも重要
語学は復習が基本です。100を適当に流すより、1を繰り返して確実に覚えた方がよいです。なぜなら語学は覚えることが多すぎて、一度流すと2回目に同じ表現が現れることはまれで、人間の宿命である「忘却」という厄介な敵によって記憶が持ち去られてしまうからです。
また、単語は単語帳を使って単独で覚えることをおすすめしません。これは個人的な好みの問題です。単語が全て日本語と1対1にくっついたただの代替物になってしまうのが嫌です。あと、単純に覚えるのが退屈です。文脈を使って文章の中で実際に使用されている原語の「生」の状態で覚えるのが最も効率が良いし、その「文脈」も自分で読みたいな!と思った文章であれば「絶対に理解してやる!」というモチベーションが働くので更に相乗効果を生む、と考えます。
以上のことから「文脈」「復習」に重点を置いたソフトを開発しました。忘却曲線の論理を借り、一度出題した問題を1日後・1週間後・2週間後・1か月後にそれぞれ復習するという仕様で、完成したのが1年前です。
毎日の学習を強制されるシステム
システムは単純で、「単語」「例文」「解答」を1組にしたDBを作り、1日後・1週間後・2週間後・1か月後に復習させるだけです。ただし、記憶の度合いによっていずれのステージに属するかをユーザーが選択できるようにします。次のような感じです。
「覚えていた!」なら1日後→1週間後に格上げ。「なんとなく覚えていた」なら1日後に残留。「忘れた。。」なら格下げです。それほど難しくなく、カスタマイズも楽勝でプログラムの勉強にちょうど良い規模のアプリケーションでした。まだwebデザインを勉強していない頃だったので、UIは淡泊でつまんねぇです。
このシステムを動作させてみるといくつかの利点に気が付きました。まず、復習が前提ですので1日サボると効果が無くなります。しかも1日に解く問題の量を枯渇させないため、毎日一定量の問題を登録しなくてはいけません。要するに毎日の学習を強制されます。これは受動的でネガティブに聞こえますが、1年続けていくための大きな原動力となりました。いまは1日に新規で16単語学習+問題登録しているのですが、復習で16単語*4=64問学習しなければいけないので、だいたい1日1時間かかります。
さらに、1か月後に復習するとかなりの頻度で忘れているということもわかりました。長期記憶というのは難しいです。1か月後の復習が終わった単語について、再復習するための処理も作ったのですが時間が足りずあまり動作させていません。。
検索機能も大事です。問題作成時に、実はすでに登録済みの単語だったということも多いのです。単語検索機能もつけたので、登録済みであることが分かるとついでに復習もできて「あ~この文章で使われていた単語だったのか」とちょっとうれしくなる上に、記憶が定着します。
1年で6000語以上の学習に成功
自己満足のために学習した単語数をグラフにする機能も付けました。flotr2というライブラリを使っています。おすすめです。
1年間使ってみた結果は次のようになりました。
登録単語数は約6200語。問題作成時に一度学習していることを考えると、1年で6200語を学習したことになります。1か月後の復習、つまり最低6回学習した単語だけで5000語あります。うち英語は1900語程度。
効果は?
こうかはばつぐんです。まず英語については、1年前苦戦していた洋書を読む速度が体感で倍速になりました。特にコンピューター書については平易な言語で書かれていることが多いので、楽勝で読めます。単純に単語だけを学習するのではなく、文章全体で分からなかった単語を調べるついでに復習するという形式にしたため、結果的に読む文章量が多くなりました。しかも楽しい。次は通常のスピードの3倍を目指して赤くなりたいです。分からない単語に会う確率は今後も減っていきますが、読むスピードが上がるので学習に割く時間は一定しています。
weblioに単語力診断があります。
これを1年前に診断したときの推定語彙数は7001~8000でした。今日試しに再テストしてみました。
今回のweblio語彙力診断結果は「レベル15」推定語彙数「8001~9000語」称号「上級者」grade「advanced」回答時間「1分48秒」スコア「86.6」 #vocab_test http://t.co/xZ65lzAS2i
— 六帖 (@_rokujo) 2015, 8月 9
確実に上がっています。でも2000語上がらなかったのは残念です。学習した1900語のうち、半分はまだ記憶が怪しいということなのかもしれません。来年もテストしてみます。
フランス語も、1年前に歯が立たなかったネイティブ向け新聞記事が、単語を調べればすんなり読めるようになってきました。NHK WORLD – French ここのものなら平易なのでそれなりの速度で読めるようになりました。いまだに分からない単語は1記事に1つくらいありますが。中国語、ドイツ語についても1日あたりの学習時間は10分に満たないのですが、確実に読めるようになってきています。
韓国語は私にとって非常に難易度が高く、しかも時間の都合上学習量を1日1語に限定したためなかなか進みません。いまは、紆余曲折を経て某ラノベの韓国語訳を教材にしていますが、開始から4か月経っても未だに冒頭のキョンのモノローグすら終わっていません。1つの文に3つも4つも知らない単語があるためです。いつになったらブーストするのやら。気長に10年くらい続けようと思っています。
Ankiがおすすめ
これから単語を学習したい人は、Ankiというソフトをお勧めします。基本思想は私が作ったシステムと同じです(Ankiは後で知りました)が、こちらの方が何段階も洗練されています。スマホでも使えるしweb上でも使え、しかもローカルとの同期も取れます。
Anki – powerful, intelligent flashcards
【忘却曲線に基づいた暗記!?】暗記用アプリ「Anki」 | OUlife
私は先ほど述べたように、1対1の単語帳として使うのではなく、なるべく例文を「自分の読んだ文章から」持ってくることをお勧めします。そうすれば絶対楽しいですから。もちろん問題集は人の作ったものでなく自分で作ることが前提です。自分で作らないとこの手のソフトには意味がないと思います。
私は昔「速読英単語」で大学入試に備えましたが、これ、文章がつまんねぇっていう最大の欠点があるんですよね。時間も選択肢もない高校生にはこれしかないかもしれませんが、大人がこれを使うのはおすすめしません。自分の好みで選んだ文章で、自分だけの単語帳を作って学習するって本当にいいものですよ!