★★★★★
北アフリカ音楽は熱い!収録されている曲の発祥国は主にアルジェリア、エジプト、スーダン、モロッコ。これらの国は歴史的にイスラム教で、かつ、地中海に面しているためヨーロッパ、特にフランス・スペインとの結びつきが強い。びっくりすることに、曲にこれらの特性がそのまんま反映されていた。つまり、中途半端に近代化された、ゆるいイスラム音楽だった。略して近代ゆるスラ。いきなり1曲目M'Hainek Ya Galbiから、90年代のCDなのに80年代の香りがする古い音にコーラン風味のヴォーカル、時々おかしいコード。このパチモンっぽさが、とてもよい。2曲目Douni El Bladiもイスラムお得意のコーラン風ヴォーカル+繰り返し満載なのになぜかバックトラックが近代風ギター+ドラムマシン。インド音楽をも思わせるユルさだ。コーランって毎日放送で流れるから親しみも沸いてみんなこんなヴォーカルになっちゃうんだろうな。他にも面白い曲はいっぱいあるけれど、とりあえずここまで。とにかく無駄に近代化したイスラム風の曲が聴きたければ、このアルバムがベスト!
CDレビュー
Django à la Créole & Evan Christopher – Live! (2014)
★★★★★
2014年特集ファイナル。ギターとベースを混ぜたスウィング・ジャズが主のアルバムで、古き良きアメリカな曲が目白押し。
エバン・クリストファーはアメリカのクラリネット奏者。クラリネットは好きだ。以前、よく会社の帰りにパチンコ屋の宣伝でチンドン屋がクラリネットを吹いていて、これがなかなかに上手く、しばらく聞いていたことがあった。初めの方はそんなチンドン屋を思わせるような音なんだけど、だんだんノッてきて、息遣いが良く聞こえる、酔っ払いみたいなラリった演奏になってくる。7曲目 The Moocheあたりからもうノリノリ、クラリネット割れまくり、9曲目Feerieなんて爆速で最高!3曲目Dear Old Southlandも南部の飲んだくれがミシシッピの朝焼けを見てああ帰らなきゃなぁと考える光景が目に浮かぶようでいいですね。酔いどれクラリネットという新しい分野を知ることができてうれしい。2014年も面白いアルバムがいくつかあって希望が持てた。
Norma Winstone – Dance Without Answer(2014)
Gustav Mahler, Seiji Ozawa(cond.), Boston Symphony Orchestra – Symphony No.9,10(CD13,14)
★★★★☆(9-4は★★★★★)
マーラー集もこれで終わり。9,10番は純粋器楽曲で、やっぱり、歌入りのものと比べると迫力に欠ける。テクニックに走り過ぎて気持ちが置き去りにされてる感じだ。9番の4楽章の弦楽無双、ラストの静寂はとても良かったけど、他はいまいち印象に残らなかった。悪くはないけれど。
マーラーさんはカッコつけさんだと思います。最高と思った8番もすごいカッコつけ曲。人によって評価が分かれそうだ。どの曲も異様に長く、30分を超えるのはざら、ひどいと一時間近くもある。俺の曲を聴けーって匂いがよく感じられる、ワーグナーと双璧をなす中二病作家。なので外れるとひどいけど、人によっては当たって熱狂的なファンになる、というタイプなんだろう。
時々聞いているのが苦しかったけれど、8番というお気に入りの曲もできたし、それなりに楽しい14枚でした。
Gustav Mahler, Seiji Ozawa(cond.), Boston Symphony Orchestra – Symphony No.8(CD11,12)
小澤征爾: マーラー交響曲全集 14枚組
★★★★★(≧ω≦)
『千人の交響曲』として有名らしい超大規模編成の交響曲。少なくとも850人は必要らしい。なので、演奏機会に恵まれないかわいそうな曲。
曲はもうすげぇすげぇとしか言いようがない。今までの厭世的だったり暗かったりふざけてみたりという要素は完全にどこかに吹っ飛んでしまい、全編にわたって生の肯定と高揚とド派手で押す押す押す。特に第一楽章を聞いている時は二十数分間ドキドキが止まらないという過去に体験したことの無い経験をした。第二楽章も56分というアホみたいに長い構成だけど、最後まで聞けた。ラストのクライマックスが終わった後、風呂なのに(毎晩風呂で密閉型イヤホンで音楽を聞いてる)拍手してしまった。その後しばらく呆然としてしまった。
マーラーは自分でも絶賛していたらしい。絶賛してもいいと思う。
私はちょうど、第8番を完成させたところです。これはこれまでの私の作品の中で最大のものであり、内容も形式も独特なので、言葉で表現することができません。大宇宙が響き始める様子を想像してください。それは、もはや人間の声ではなく、運行する惑星であり、太陽です。–本人談
マーラーは歌を入れるのがとっても上手。器楽だけだと無理して金管系でブカブカバーンって不自然に盛り上げなきゃいけないところ、合唱が入ったことでごく自然に上昇していけるようになった。感情、情念、大きなもの、を器楽だけで表現するのは難しいのかもしれないね。
Flying Lotus – You’re Dead! (2014)
★★★★★ლ(ಠ_ಠ ლ)
2014年特集その10。2回目の大当たり!ジャケットが怖い。
Flying Lotusははカリフォルニア生まれの音楽プロデューサー、ディスクジョッキー。バキバキのエレクトリックサウンドを期待したら、なんとニュージャズ風の生楽器(しかも上手い)+ビートの融合やら大好きなローズピアノやら唐突なヒップホップ、テトリスやストIIのやられヴォイス「うーわうーわうーわ」などかなり大量のジャンルを超ミックスしたアルバムだった。40分足らずを19曲と爆速で駆け巡る。ジャズ要素を入れるのがすっごい上手。調べてみるとジョン・コルトレーンの甥らしいので、納得した。序盤のジャズ混じりの微妙にずらしたビートの曲群1〜3曲目も秀逸だが、5〜6のヒップホップもいいし、歌モノ?の10曲目Siren Songもぶっ飛んでいて好きだし、エレキマイルスを感じさせる14曲目Moment Of Hesitationも非常によい。14が一番いいかな。全体的にレベル高すぎ。この人も全アルバム揃えたい。
IQ – The Road of Bones (2014)
★★★★☆
2014年特集その9。IQはイギリスのネオプログレバンド。ネオプログレというのは、
Neo-progressive rock is characterized by deeply emotional content, often delivered via dramatic lyrics and a generous use of imagery and theatricality on-stage. The music is mostly the product of careful composition, relying less heavily on improvised jamming.
wikipedia
よりドラマチックな、芝居がかった、そして即興的要素を減らしたものらしい。http://www.progarchives.com/の昨年のランキングで大差の一位だったので、期待して聴いた。2枚組で合計100分超と、非常に長い。聴いてみれば、要するにやや主流ななロックの要素も取り入れたプログレ、ということだった。シンセも使うしドラムマシンも使う。良くも悪くも、音ゲーのような音がする。シンセ、ストリングスの音が全然洗練されていないことが原因と思われる。ヴォーカルも一般受けしそうな声質、歌い方だ。1枚目、1曲目From The Outside Inは感触が良い。最後の最後まで盛り上げつつ終わる。登山のようなロックだった。3曲目Without Wallsは19分と大曲だが後半へかけての弩級の展開は唸らせられるものがある。しかし残念ながら、2枚目が冗長だった。1曲目Knuckleheadは良いが、後の曲に行くほど力がなくなる。ラストHardcoreはよくない。いつまでも曲が終わらない感じがする。1枚目で終わっていれば非常に良かったのに。
Andy Stott – Faith In Strangers (2014)
★★★★☆
2014年特集8枚目。Andy Stottはダブ・テクノ系の音楽プロデューサー兼作曲家。最も注目(注耳?)すべきは2曲目Violence。音自体は簡単なシンセとTR-909のドラム。なんだけれど、それにディストーションを主とした激しいエフェクトを掛けまくることで、大化けする。それに囁くだけの女性ヴォーカルを加えることで、本年度No.1の鬱テクノの出来上がり。後半にかけてのダウナーさは随一。トリッキーのOvercomeを彷彿とさせるような下げ下げサウンドだ。
ただこのエフェクト、くどい。5曲目No Surrender、7曲目Damageと多用されるとさすがに疲れるし、飽きる。2曲目だけで止めてくれればよかった。8曲目表題曲Faith In Strangerも落ち着いているだけであまり迫ってこない。もうひと押し欲しかった。
Logos – L’Enigma Della Vita (2014)
David Virelles – Mboko (2014)
★★★★★
2014年特集その8。David Virelles はキューバ生まれNY在住のピアニスト。キューバ、アフロなパーカッション、という取り合わせからは想像できないくらい、極寒のピアノだった。特に1,2曲目で顕著で、南国パーカッションが場違いなくらい、いい意味で冷えるピアノ。ここは旭川?アラスカ?3曲目からリズム隊が本格始動し、ピアノトリオ+αが始動する。6曲目Seven〜のピアノの発散しっぷりは異次元の気持ちよさだ。音場効果のせいかピアノはずっと冷えている。8曲目Transmissionはまさかの手動ブレイクビーツ。わたしゃおったまげたよ。意味不明のまま全員燃えまくり。ほぼ全曲にわたって不協和音のオンパレードで、定型的な高揚感を生む効果は排除されている。果物は腐る直前が一番美味い、と思う人向けのアルバム。