書籍レビュー: 10回読めば金融脳 『国際金融入門』 著:岩田規久男

★★★★☆

黒字主体から赤字主体へお金を融通するという金融の超基本からはじまり、円高・ドル安の意味や固定相場制・変動相場制の意義に20世紀以降の簡潔な金融史までを含んだ超高密度な国際金融の基本書です。

経済学を学んだことのある人からしたら神レベルのまとめ本だと思います。ただ私のような経済のドシロウトが読むには骨が折れました。もっと図をたくさん出してほしい。ほとんどの説明を言葉で済ませているために、頭の中で「これはドル高だから円安で~」とか「輸入障壁が下がる→輸入増→国内産業の需要減→生産減→失業増」みたいな変換を毎回していかないといけないので、とても追いつきませんでした。

最初の1冊としては不向きですが、日ごろFXなどで国際金融に親しんでいる人からすれば、知識を確実にするためにふさわしい1冊と言えるでしょう。そうじゃない人は繰り返し読みましょう。何度も読めばきっと金融脳になれます。

 

一つわかったことは為替といえども人々の期待によってオーバーシュートすることは株や先物と全く変わらないということであり、為替リスク・プレミアムなるものも存在します。ちょっとした逸脱は中長期的にファンダメンタルズに吸収されてしまいます。

そう考えるとレバをかけて借金することが必須であるFXは長期投資を前提としない無理ゲーということもわかりました。

内容をまともに解説できない時点で私の理解が追いついてないことがよく分かりましたので他の本も読みます。

 

 

 姉妹本はこちらです

 

 

 次はレベルを落としてこれを読んでみようと思います

はじめて学ぶ国際金融論 (有斐閣ストゥディア)

はじめて学ぶ国際金融論 (有斐閣ストゥディア)

 

 


書籍レビュー: 必携ビジネス書カタログ『アメリカCEOのベストビジネス書100』 著:ジャック・コヴァート、トッド・サッターステン

★★★★★

 

私は経営者ではありませんがビジネスを外側から眺めるのが好きです。ビジネスには必ず人間の行動が関わっていて、ビックリするような発想でカネを動かしているからです。株に興味を持ってから企業の決算書や資料を見るのが楽しくなりました。

また、他人のおすすめするモノを教えてもらうのも大好きです。自分で探すことのできる能力には限界がありますし、自分を超えた存在である他人の人生を凝縮して選ばれたものには必ず価値があるからです。

好きなことが2つ合体したこの本、手に取るしかありませんでした。

本書はアメリカのビジネス書を紹介する会社「800-CEO-READ」という会社の代表が選択した珠玉の100冊の紹介です。

1冊につき関連書籍を3-5冊紹介しているので実質紹介されている本は300以上あります。もう読みたい本ばっかりなのですが、全部紹介していくとキリがないのでいくつかに絞ります。

 

ビジネスマンに贈る最後の言葉

ビジネスマンに贈る最後の言葉

  • 作者: ユージーン・オケリー,有賀裕子
  • 出版社/メーカー: アスペクト
  • 発売日: 2006/09/28
  • メディア: 単行本
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まずこれです。

あなたは余命三か月半と宣告されたらどのように行きたいでしょうか。本書には末期の脳腫瘍と診断された著者オケリーが、この世を去るまでの三か月半が詳細に語られています。会計事務所のCEOであるオケリーは会計士としての修正に従い、やるべきことをリスト化し、三か月半を極めて計画的に過ごしたそうです。

1 仕事を辞める。

2 可能な治療計画を選択する。

3 残された時間を人生最高のものとし、私の状態から大きな影響を受ける人たちにとっても、できる限り充実した時間を過ごしてもらう。

次に、残された日々に実行すべき事柄をリストアップした。「法的、経済的問題を整理する、人間関係を″解き放つ”、シンプルにする、今この瞬間を生きる、素晴らしい時間を、”完璧な時間”を想像する(また受け入れる)、次段階への移行に着手する、葬儀の準備をする」(P80-81)

私もいつか死にますが最後まで計画性を持って死んでいきたいものです。

 

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか

 

社会心理学者のロバート・チャルディーニによる、主に説得心理学を主題とした本です。説得とは、私たちの「心理的近道」を利用した技術です。人間は全ての意思決定を意識的に行っているわけではなく(そんなことをしたら時間がかかって死ぬ)、行動の大部分は生得的に自動化されています。例えば贈り物を受け取ったら、お返しをしなければいけないという思いに駆られるということなどが例として挙げられています。

自動化のメカニズムを端的に表した言葉として『返報性』『コミットメントと一貫性』『社会的証明』『行為』『権威』『希少性』があげられています。『返報性』は先ほどの贈り物の話ですね。

『コミットメントと一貫性』はいったん自分が見解を表明したら翻すことが難しい、ということを利用したものです。

・まず署名をさせてそこから大きな支援行為につなげる

・目標を書き出して他人に話し後戻りできなくして好結果を得る(時々わたしもやります)

という例がありました。本書は自分が不合理に説得されないためにも重要な本だと思われます。

 

ちなみに本書の訳者は土井英司さんといい、毎日3冊のビジネス書を読んで紹介しまくっている方だそうです。

 

私が受験生だった頃に流行っていたひどい英単語帳『もえたん』の仕掛人だったそうです。

もえたん[新装版]

もえたん[新装版]

 

 わたしゃ買ってません

 

 

 

他に面白そうと思った本を並べておきます。27冊も貼ってしまいました。後で私が使うためのリスト代わりです。たくさんあります。

 

IBMの再建

巨象も踊る

巨象も踊る

  • 作者: ルイス・V・ガースナー,山岡洋一,高遠裕子
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2002/12/02
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差別化戦略

コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略 (日経ビジネス人文庫)

コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略 (日経ビジネス人文庫)

  • 作者: ゲイリーハメル,Gary Hamel,C.K.プラハラード,C.K. Prahalad,一條和生
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2001/01
  • メディア: 文庫
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ポジショニング

ポジショニング戦略[新版]

ポジショニング戦略[新版]

  • 作者: アル・ライズ,ジャック・トラウト,フィリップ・コトラー(序文),川上純子
  • 出版社/メーカー: 海と月社
  • 発売日: 2008/04/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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サービスを売るには

逆転のサービス発想法―見えない商品を売るマーケティング

逆転のサービス発想法―見えない商品を売るマーケティング

  • 作者: ハリーベックウィス,Harry Beckwith,酒井泰介
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 1998/12
  • メディア: 単行本
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差別化

ザグを探せ! 最強のブランドをつくるために

ザグを探せ! 最強のブランドをつくるために

  • 作者: マーティ・ニューマイヤー,Marty Neumeier,千葉敏生
  • 出版社/メーカー: 実務教育出版
  • 発売日: 2009/09/17
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営業

販売成約120の秘訣

販売成約120の秘訣

 

 

店のものの配置

なぜこの店で買ってしまうのか ショッピングの科学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

なぜこの店で買ってしまうのか ショッピングの科学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 

経験を創造する

[新訳]経験経済

[新訳]経験経済

  • 作者: B・J・パインII,J・H・ギルモア,岡本慶一,小高尚子
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2005/08/05
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口コミ(SNSに応用できそう)

「紫の牛」を売れ!

「紫の牛」を売れ!

 

 

ドラッカー

チェンジ・リーダーの条件―みずから変化をつくりだせ! (はじめて読むドラッカー (マネジメント編))

チェンジ・リーダーの条件―みずから変化をつくりだせ! (はじめて読むドラッカー (マネジメント編))

 

 

ムダの排除

トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして

トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして

 

 

会議(私のような話下手にとっては、会話に応用可能だろう)

6つの帽子思考法 ――視点を変えると会議も変わる (フェニックスシリーズ)

6つの帽子思考法 ――視点を変えると会議も変わる (フェニックスシリーズ)

  • 作者: エドワードデボノ,川本英明
  • 出版社/メーカー: パンローリング
  • 発売日: 2015/12/12
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石油王ロックフェラー

タイタン 上

タイタン 上

 

 

ワシントン・ポストを30年率いたひと

キャサリン・グラハム わが人生

キャサリン・グラハム わが人生

  • 作者: キャサリングラハム,Katharine Graham,小野善邦
  • 出版社/メーカー: ティビーエスブリタニカ
  • 発売日: 1997/09
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ウォルマート(日本ならイオンとヨーカドーを足した感じ?)

私のウォルマート商法 すべて小さく考えよ (講談社+α文庫)

私のウォルマート商法 すべて小さく考えよ (講談社+α文庫)

 

 

ヴァージングループ

ヴァージン―僕は世界を変えていく

ヴァージン―僕は世界を変えていく

  • 作者: リチャードブランソン,植山周一郎
  • 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
  • 発売日: 2003/04/01
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マーケティング

実践的ゲリラマーケティング―小企業のための成功する広告戦術

実践的ゲリラマーケティング―小企業のための成功する広告戦術

  • 作者: ジェイ・C.レビンソン,Jay Conard Levinson,竹村健一
  • 出版社/メーカー: 東急エージェンシー
  • 発売日: 1998/07
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 マクドナルド

マクドナルド―わが豊饒の人材

マクドナルド―わが豊饒の人材

 

 

営業その2

いまだ目標に達せず―あるゼロックス・マネジャーの12ヵ月

いまだ目標に達せず―あるゼロックス・マネジャーの12ヵ月

 

 

 LTCM(近いうちに読みたい)

LTCM伝説―怪物ヘッジファンドの栄光と挫折

LTCM伝説―怪物ヘッジファンドの栄光と挫折

  • 作者: ニコラスダンバー,Nicholas Dunbar,寺沢芳男,グローバルサイバーインベストメント
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2001/02
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貧乏球団の再建

マネー・ボール〔完全版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

マネー・ボール〔完全版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 

発想

クリエイティブな習慣―右脳を鍛える32のエクササイズ

クリエイティブな習慣―右脳を鍛える32のエクササイズ

 

 

発想2

チャンスを広げる思考トレーニング

チャンスを広げる思考トレーニング

  • 作者: ロザモンド・ストーンザンダー,ベンジャミンザンダー,Rosamund Stone Zander,Benjamin Zander,田中志ほり
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2002/07/13
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複雑さとコントロール、この本のレビュー自体複雑でコントロールできそうにない

「複雑系」を超えて―システムを永久進化させる9つの法則

「複雑系」を超えて―システムを永久進化させる9つの法則

  • 作者: ケヴィンケリー,服部桂,Kevin Kelly,福岡洋一,横山亮
  • 出版社/メーカー: アスキー
  • 発売日: 1999/01
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集団と問題解決

「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)

「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)

  • 作者: ジェームズ・スロウィッキー,小高尚子
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2009/11/25
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人に印象付けるためには

アイデアのちから

アイデアのちから

 

 

マーケットと判断

投資の科学 あなたが知らないマーケットの不思議な振る舞い

投資の科学 あなたが知らないマーケットの不思議な振る舞い

  • 作者: マイケル・J・モーブッシン,川口有一郎,早稲田大学大学院応用ファイナンス研究会
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2007/02/22
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 外伝1 映画

マネー・ゲーム 株価大暴落 [DVD]

マネー・ゲーム 株価大暴落 [DVD]

 

 

外伝2 古典

新訂 孫子 (岩波文庫)

新訂 孫子 (岩波文庫)

 

 

ちなみにこの本も取り上げられていました

 


書籍レビュー: 日本は資本主義じゃなかった『最新版 法人資本主義の構造』 著:奥村宏

★★★★★

 

新年1冊目です。

この本、昨年末から読んでいたのですが読み終わるのに1週間もかかりました。本文に独特の癖があって読解が大変でした。文体は私に似ています。私の文章はお世辞にも読みやすいとは言えません。読むのに気力が必要でした。内容はいいんですけどね。以下紹介していきます。

会社マニア

著者の奥村さんは肩書こそ元中央大教授・経済評論家ですが、実際のところは会社マニアと称するのが正確だと思います。特に日本の会社についての資料が膨大で詳しすぎます。本書はバージョンを変えながらどんどん加筆されていって2005年のこの岩波現代文庫版が最新版です。最新版に当たってアメリカや韓国などの会社の書籍も調べまくったそうですやはりマニアです。

何故マニアと即断するかというと普通は次のような執拗な書き方をしないからです。

持株会社指定時における三井財閥の持株関係を見ると、三井鉱山が三井化学、三井農林、三井軽金属の株式を所有し、三井生命が三井本社、三井物産、三井鉱山、三井信託、日本製粉、大正海上火災、東洋レーヨン、東洋高圧、三井軽金属の株式を、三井化学が東洋高圧の株式を、三井物産が三井造船、大正海上火災、三井本船の株式を、三井造船が三井木船の株式を、日本製粉が三井本社、三井物産、三井鉱山の株式を、大正海上火災が三井本社、三井物産、三井鉱山、東洋レーヨン、東洋高圧の株式を、東洋綿花が東洋レーヨンの株式をそれぞれ所有していた。(P29-30)

いや図にしろよこれ!!!三井三井うるさいよ!!でも奥村さんにしてみれば全部書きまくることが大切なのであり、彼の頭の中では把握できているのでしょう。すごいですね。私は無理です。ちなみにこのあと、三菱系列についてほぼ同じような文章がもう一度並びます。目が痛いです。本書ではこのような反復が頻発し、復習になって助かりますがくどいです。たぶん発達障害です。

株式持ち合い?

さてこの「株式持ち合い」が本書のキモとなります。「株式持ち合い」とは法人同士が示し合わせてお互いの会社の株を所有する、日本独特の流儀のことです。例えばA社がB社の株を10%買うから、B社もA社の株を10%買ってくれよ、というようにします。この奇妙な慣習が、実は日本の独特な形式の資本主義や、「会社人間」が生まれる風土を育んだのである、というのが著者の主張です。

なぜ株式持ち合いが日本で発生したのか、その歴史を前半まるまるかけて詳述します。戦前をカットして思いっきり圧縮すると、初めは会社の乗っ取りを防ぐためだったんだけど株価釣り上げとか相手の会社と談合しやすいから便利だね~とズブズブ続けていってしまった、という経緯でした。会社同士でお互いの株を買っていれば、残りの株を買い占めることは難しくなるので乗っ取りができなくなるし、A社がB社の株を買っていればA社がB社の経営に口を出せる、逆にB社もA社の経営に口を出せるので運命共同体のようになり、連帯感が生まれますしお互いの損になる取引もやりにくくなります。

会社がまるで人間のようだ

著者は根本的な疑問を投げかけます。

「そもそも法人が株買うのっておかしいんちゃう?」

事実、アメリカではこのような取引は禁止されています。会社は株主、つまり自然人が株券を買うことによって共同出資して成り立つものです。法人も株を買って他の会社の一部を所有することができるとすると、じゃあその会社は誰のものなのか?社長?取締役?それとも「トヨタ」とか「セブン&アイ」という人間がいるものとしてそいつが所有してるの?それっておかしくない?という話になります。著者はこの議論を次のようにしてばっさり切り捨てます。

A社がB社の株式を所有し、B社がA社の株式を所有するという相互持合いは自社株所有と同じであって資本充実の原則に反する。(P256)

株式の買占めによる乗っ取りを防止すること自体が株式会社の原理を否定するものである。なぜなら株式は売買自由であり、株式を買い占めて会社を乗っ取るのも自由であるというのが株式会社の原理だからである。(P261)

×資本主義  ○会社資本主義

端的に言うと日本は資本主義ではありません。会社資本主義です。会社がまるで人間であるかのように社会の中に存在しており、しかも会社が人間よりも有利な取り扱いを受けています。なぜなら会社は犯罪を犯しても自由刑(禁固とか懲役とか)を科すことができないので東電やチッソのように潰れずに残るし、スカイマークのようにたとえ潰れたとしても債権放棄してオシマイで、実際のところ誰も責任を取らないで済むからです。

日本人は会社に所属することでモチベーションの上がる人が多い奇妙な民族です。この特性のおかげで労働者の多くはサービス残業や低賃金によって会社に奉仕します。私は次の引用を読んで笑ってしまいました。「会社主義」は会社礼賛の立場、「会社資本主義」は著者の立場です。

「日本企業は運命共同体であるがゆえに競争力をもち、それゆえに経済的成功を収め得たのだというのが会社主義だとすれば、ゴーイング・コンサーンとしての企業が自己存続と自己拡大を図るために、経営者や従業員の忠誠を調達するというのが会社本位主義である(『現代日本社会Ⅰ 課題と資格』P207 東大出版)」。(P286)

これで結びとさせていただきます。

 

 

本書を紹介してくださったふかくささんありがとうございました。

 

参考書籍

なんとジュニア新書にも奥村さんの本が。気になる

会社とはなにか (岩波ジュニア新書)

会社とはなにか (岩波ジュニア新書)

 

 

 これもよさげ

粉飾資本主義

粉飾資本主義

 

 

 J.S.ミルの会社論の古典。いずれ読む

経済学原理〈第1〉 (1967年) (岩波文庫)

経済学原理〈第1〉 (1967年) (岩波文庫)

 

 

 これも古典。

企業の理論

企業の理論

 

 

企業が自己存続と自己拡大を図るために経営者や従業員の忠誠を調達。いい言葉です。このセリフは間宮陽介という人が書いたそうです。

課題と視角 (現代日本社会)

課題と視角 (現代日本社会)

 

 

 間宮氏の経済思想史。

市場社会の思想史―「自由」をどう解釈するか (中公新書)

市場社会の思想史―「自由」をどう解釈するか (中公新書)

 

書籍レビュー: 著者の熱意に感服 『マクロ経済学(New Liberal Arts Selection) 』 著: 斎藤誠ほか

★★★★★

 

経済学たのしい

経済学は一生かけて学んでいきたい学問の一つです。個人的な経済危機を何度も経験し、近いうちにド貧乏暮らしを余儀なくされそうな自分としては金にはうるさくありたい。金がどのように世の中を回っているのか知りたい。巷に溢れる怪しい経済論議の胡散臭さを見破れるようになりたい。政策担当者はどう考えて税制や所得分配を立案しているのかを知りたい。世界の金持ちはどう考えて資産を動かしているのか知りたい。好況と不況はなぜ起こるのか知りたい。経済関連は知りたいことばかりです。

ミクロ経済学が個人や1企業などの小さい単位の需要と供給を扱う学問だとすれば、マクロ経済学とは国単位や世界単位の経済を扱い、主にGDPの大小を議論する学問です。本書は1章まるまる90ページほど使って、SNA(国民経済計算)などの統計の重要性について説くかなり革新的な教科書でした。その後古典的なマクロ経済学を丁寧に説明した後、それらをさらにミクロ経済学を使って詳述していく「マクロ経済学のミクロ経済学による基礎付け」という章にかなりの分量が割かれています。ここから文字の大きさが小さくなり数式が増え、ぐっと読むのにエネルギーがかかるようになります。なぜこのような構成にしたのかは随所の前書きやあとがきに詳しく、斎藤教授の熱意が伝わってきます。

分量が多いので1日20分、3か月くらいかけて少しずつゆっくり読みました。後半はそれなりに数学を使うため苦しいですが、物理学に比べれば大したことはありませんでした。大学中退の私でもなんとか理解できます。といってもあと2回は読まないと内容が頭の中をただ通り過ぎただけになってしまいそうなので、何度も読もうと思います。

そのモデル正しいの?

他の社会科学もそうなのかもしれませんが、経済学はモデル化の学問です。これまでの経済学者の功績とは、人々の欲望の総和である経済というでっかいバケモノを、グラフと数式を使って単純化したモデルに落とし込む作業の集積でした。ほとんどのモデルには無理があるように見えます。というのも「合理的期待形成」だの「長期的には必ず均衡に至る」だの、人間に合理性を求め過ぎです。人間は非合理的な存在ですよ。みんなが頭いいわけじゃないですし頭のいい人間だってわけのわかんないことしますよ。読めば読むほど本当にこの数式でいいの?という疑問がどんどん湧いていきます。これは経済学を勉強する前にジョージ・ソロスの本なんか読んじゃったからだと思います。彼は経済学理論にかなり懐疑的でした。

しかし力学や電磁気学のようなモデルがないと思考する基盤すら生じません。オリジナリティが言語の蓄積を前提としてしか生じないのと同じです。ですのでこれらのモデルと頭に入れておいてから、ああでもないこうでもないと悩むのが健康的なのだと考えて、繰り返し本書を読むことにします。

 

本書は経済学部4年生くらいの内容までカバーし大学院入試にも十分耐えうる内容だそうです。4年分と思えば値段も手ごろですし社会人には極めておすすめできる一冊です。

 


書籍レビュー: 信用創造ってなんだ 『金融入門』 著: 岩田規久男

★★★★★

 

岩田規久男さんは経済学者。現在(2015年)、日銀副総裁です。任期は2018年まで。

副総裁:岩田規久男(いわたきくお) :日本銀行 Bank of Japan

本書は貨幣とは何か、というところから始まります。銀行の役割、金融とは何かの解説とその必要性、金利や金融市場とは何か、などなどを経て最終的にはマクロ経済学と金融政策にまで至ってしまう非常に射程の広い本です。専門用語のオンパレードですが繰り返しも多く、付いていくための工夫もされています。欲をいうならもっと図やグラフが多ければさらに分かりやすいのですが、ページ数の都合を考えると仕方ないでしょう。

金融ってなんですか

読んで字のごとく「金の融通」です。Aさんはお金が足りないが、Bさんはお金が余っている。Aさんは1か月後に金が入る当てがあるが、今すぐお金が入るわけではない。Bさんは金が余っているが、1か月寝かしておくのも勿体ない。そこでBさんはAさんに金を貸して、Aさんが1か月後返す時に一定の利子を取って儲けたい。

しかしAさんは本当に金を返してくれるのかどうか信用できない。夜逃げされたらおしまいだ。でもAさんの収入状況を調べるのはとても手間がかかる。Aさんからしてみても、Bさんがどんな人かわからないし暴利を要求されるかもしれない。支払いが遅れるとスマキにされて東京湾に沈められるかもしれない。

そこで登場するのが、銀行をはじめとする専門の金融機関です。調査のプロフェッショナルにより調査コストを抑え、AさんとBさんのような顧客を多数抱えてマッチングさせ、仲介料を取る仕事、それが金融だということが序盤で説明されています。この方式ならAさんは金を借りる機会が増え、Bさんは安全に資産を運用でき、銀行は仲介で儲けられる。3者が得するという関係になります。

銀行は貨幣を創造する

私全く分かってなかったんですが、銀行が会社に融資する時って、銀行が貨幣を文字通り「創造」するんですね。金を借りたい企業が銀行に行って融資を頼み、審査が終わると次のようになります。

…銀行が企業Aに100万円貸し出すとしてみよう。銀行はこの貸し出しを、企業Aに預金口座を開設させ、その預金口座に100万円だけ入金することによって実行する。この企業Aへの預金口座の入金は、単に、企業Aの預金口座に100万円と印字するだけであり、銀行は1円の現金も必要としない。

えー!!!知らなかった!!!てっきり、銀行は顧客が預けた金全額がプールされていて、そこにある金額を上限として貸し出せるんだと思ってました!

信用の力で金が生まれる

もう少し読み進めていくと謎が解けました。銀行には顧客の預金全額が常に存在するわけではありません。顧客の数が多ければ、顧客が預けている金の何%かを持っていさえすれば日常の引き出しには十分応じることができますので、銀行にある現金は少ない量でよいのです。残りは貸してしまって利子をつけ儲けることができます。なので、上記のような「突然預金が100万円増えた」なんてことをしてしまっても、顧客が日常使用する金額さえ銀行内に存在すれば業務が十分成り立つわけです。こうして銀行は貨幣を創造し、利潤を極限まで高めます。この創造機能が信用です。そこに存在しない金をあたかも存在するように変える、「ない」を「ある」に変換する機能が信用だと言えます。

「あの銀行はやばい」という噂が流れるとこの信用が崩れ、顧客が預金を引き出しまくると銀行は潰れます。顧客が預けているお金全部が銀行にあるわけではないからです。信用は現物を遥かに超える量のお金を生み出しますが、前提が崩れると何もかも無くなります。危ういですね。

他にも、今私が金を借りている消費者金融、すなわちノンバンクは何故~銀行系列って言うのかなと思ってましたが、それはノンバンクが必ず銀行に金を借りて営業しているから、でした。ですのでノンバンクは金の又貸しです。親玉の銀行に利子を払わなければいけませんので、金利が高いのは当たり前というわけです。

基本的なことで知らないことだらけだったので、非常に良い本でした。1999年に発行された本ですが古さが気になりません。90年代ですからバブル崩壊はストック過剰の調整だった、などの考察も載っています。おすすめの1冊です。岩田さんが今の国債や手形を買いまくる量的緩和をどう思っているか、知りたいものです。

 

 

関連書籍

わかりやすかったので、次はこれを読んでみようと思います。

国際金融入門 (岩波新書)

国際金融入門 (岩波新書)

 

 

推進派でしたか。

リフレは正しい アベノミクスで復活する日本経済

リフレは正しい アベノミクスで復活する日本経済

 

 

 これも面白そうですね。

昭和恐慌の研究

昭和恐慌の研究

 

 

金融と言えばこれ。以前立ち読みしたことがありますが、この本を読んでからにすればよかったと後悔しています。またゆっくり読みたい。

ナニワ金融道 文庫 全10巻 完結セット (講談社漫画文庫)

ナニワ金融道 文庫 全10巻 完結セット (講談社漫画文庫)

 

 


書籍レビュー: 資本主義は終了しました!?『資本主義の終焉と歴史の危機』 著: 水野和夫

★★★★★

 

著者の水野和夫さん(1953-)は経済学者、民主党政権時の経済ブレーンです。三菱UFJモルガン・スタンレー証券(リーマンショック時にで小切手を渡して合併してる!)出身で職歴は1980-1998年の間ですので、日本のバブル真っただ中に経済の現場にいた人なんですね。いまは日大の教授。

文明論的な現代の考察

随分とショッキングなタイトルと帯です。内容を超単純化してまとめると次のようなことになります。

  • 資本主義は、絶えざる成長を前提とする。成長のためには収奪主体の「中心」と収奪対象の「周辺」が必要である。
  • しかし「周辺」はもはや枯渇した。1970年代のベトナム戦争終結により地理的な「周辺」は存在しなくなった。代替手段として20世紀末に「電脳・金融空間」が創設された。しかしこの地もリーマンショックにより構造的に崩壊した。
  • リーマンショック後の先進国における超低金利は、資本が資本を生み出せなくなったことを示している。アメリカ・EU・日本と続く量的緩和により延命が続けられているが、これは見せかけの成長に過ぎず、いずれ必ずバブル崩壊という形で終結する。

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16世紀と21世紀の共通点

自己ツッコミしたくらいぶっ飛んだ要旨でしたが、文明論を背景とした本書の主張はかなりの説得力があります。筆者は16世紀ヨーロッパで起こっていたことと現代に強い相似性があると論じます。16世紀は中世封建制度が行き詰まっていた時代だそうです。国内の領地は全て開発し尽くしてしまい、労働生産性は伸びなくなり経済成長は完全に飽和、ゆるやかなデフレ状態にありました。筆者はこれを「長い16世紀」と呼びました。これは現代世界の状態と奇妙なくらい符合しています。つまり資本主義が行き詰った21世紀も「長い21世紀」となるだろう、と筆者は予測しています。

16世紀は大航海時代に入ります。コロンブスを始めとする命知らず共が海外に出かけ一発逆転を狙い、成功者は資源を漁り巨万の富を得ました。そして中世封建制度は完全に崩壊し、いまの基盤となる資本主義が発生していきます。

これと同じことが21世紀で起こるとすれば、当然、崩壊するのは資本主義であるというわけです。そして筆者は資本主義が崩壊した後どうなるかは「全く分からない」と明言しています。そりゃそうですよねインターネット時代が来ることだって誰も予想していませんでしたし。昔の人の予想って今頃空を自動車が飛ぶとかテレポーテーション装置ができるとかでしたよね。

国内に持ち込まれた「周辺」

総論は大体以上のようなことです。各論で気になったところですが、いままで「周辺」であった地域、つまり資源を収奪されていた発展途上国は、近年BRICsなどのように大きく経済発展したためもはや「周辺」ではありません。するとその「周辺」はどこに持ち込まれるかと言うと、先進国の国内です。

日本は非正規労働者の割合がぐんぐん増えていまは37.4%です。私も非正規労働者です。

第65回 雇用者の37.4%は非正規労働者〜男性非正規労働者の割合も増加?〜 | 日本生命保険相互会社

非正規労働者はボーナスはないし休みがあれば収入は減る、労使交渉など存在しないから賃金は安いしいつでも切り捨てられる資本家にとって超都合のいい存在です。IR情報で「コスト削減により利潤が上がりました」と発表される背景にはたいてい労働者の非正規への組換えが起こっているはずです。

明日から改正派遣法が施行され「周辺」がさらに拡大することが懸念されます。この法案のキモは「3年経ったら派遣の首を切り替えれば永久に派遣を雇える」ことだと思いました。

 

その他論点

・中国の過剰投資は必ずバブル崩壊となる

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海外反応! I LOVE JAPAN : 中国、ゴーストタウンだらけで破綻寸前! 海外の反応。

固定資本といえば不動産

 

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SBI証券(旧SBIイー・トレード証券)-オンライントレードで株式・投資信託・債券を-

ほとんどバブル前に戻った株価

 

・金融緩和によるデフレ脱却は不可能

 

日本株は我々の年金を突っ込んで作られたバブルが間もなく崩壊しそうです。参考図として今日のドン引きチャートを貼っておきます。

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年初来安値も近そうです。ピーク時と比べて2割近く落ちましたね。

 

中国の減速を端緒として日本、EU、そして米国と斃れていけば本書の内容もあながちトンデモとは言い切れません。刺激的な書物でした。

 

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もっと歴史を勉強しなきゃいけません

 

 

 

参考書籍

本書は塩野七生さんに言わせれば「歴史を使って論拠を補強」するタイプの書物でした。叙述ではありません。しかし引用文献は膨大でした。読みたいと思った本を残しておきます。

 

地中海 (1)

地中海 (1)

 

 

ケインズはこう言った―迷走日本を古典で斬る (NHK出版新書 386)

ケインズはこう言った―迷走日本を古典で斬る (NHK出版新書 386)

 

 

マクミラン新編世界歴史統計〈1〉ヨーロッパ歴史統計:1750‐1993

マクミラン新編世界歴史統計〈1〉ヨーロッパ歴史統計:1750‐1993

  • 作者: ブライアン・R.ミッチェル,Brian R. Mitchell,中村宏,中村牧子
  • 出版社/メーカー: 東洋書林
  • 発売日: 2001/08
  • メディア: 大型本
  • この商品を含むブログを見る
 

 

増補・ヨーロッパとは何か―分裂と統合の1500年 (平凡社ライブラリー)

増補・ヨーロッパとは何か―分裂と統合の1500年 (平凡社ライブラリー)

 

 

次の本は「砂糖の世界史」にも出てきました。

近代世界システムI―農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立―

近代世界システムI―農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立―

 

 


書籍レビュー: プロセスとしてのリーマンショック『リーマン・ショック・コンフィデンシャル(下) 倒れゆくウォール街の巨人』 著: アンドリュー・ロス ソーキン 訳: 加賀山 卓朗

★★★★★

上巻のレビューから一か月も経ってしまいました。原書は1冊にまとまってるのですがこの本は記述量が半端じゃないので2冊に分けたのは賢明だと思います。

プロセスとしてのリーマンショック

下巻は役者が全員そろっているので上巻のようにエキセントリックな人物紹介はなく、登場人物が動き回りながらあちこちで巨大企業が倒れていきます。本書は上巻で述べたように、主として登場人物のとった行動に焦点が置かれていますので、構造的な問題は他の本で補わなければなりません。もしくは次のサイトを泣きそうになりながら読んでみようかとも思います。

サブプライム住宅ローン危機 – Wikipedia

本書から分かる範囲で簡単にまとめます。

サブプライム証券の価値暴落により破綻寸前のリーマン・ブラザーズに対して政府は政治的な理由で「助けてやんない。金融機関同士で何とかしな」とメッセージを出し、他の金融機関は株が暴落したリーマンを買おうとするも結局サブプライム証券の評価損の大きさが怖くてどこも手を出さず、リーマン・ブラザーズは2008年9月15日をもって破産します。

同様のサブプライム系証券に手を出していた大手保険会社AIGも破綻寸前までいきますがこちらはこれ以上危機を広げたくない政府による大量融資で80%が国有化(東電みたいな感じ)され、ギリギリのところで救われます。

大手投資銀行モルガン・スタンレーも資金不足となり死亡寸前までいきますがここはなんと三菱東京UFJが90億ドルの融資を決定し生き残ります。取引成立が祝日前だったので、三菱東京UFJはモルガン・スタンレーまで90億ドルの小切手(こわすぎ!!)を届けることで危機を回避しました。三菱東京UFJはいまでも22%の議決権を占める筆頭株主です。

金融機関が倒産するということは、経済の血液たる金の流れがストップするということです。リーマン・ブラザーズの倒産は内臓が一つオシャカになったことに相当します。例えば胃がんになったと言ったところでしょうか。AIG、モルガン・スタンレーが救われていなければさらに肺がんと肝臓がんがダブルパンチで襲ってくることに相当すると考えてよさそうです。まず死にます。間一髪で切除されて助かりました。

リーマンショックという出来事は、上手な人がまとめれば5行くらいで片付いてしまう出来事だと思います。本書は危機の端緒、フレディマックとファニーメイが国有化された2008年9月7日から、7000億ドルの不良債権を国が買い取る緊急経済安定化法案が成立する2008年10月3日までの話ですので、わずか4週間の出来事をこんな超分厚い本で語っています。

この本は歴史書だと感じました。まさに塩野七生さんの言うところの「プロセスとしての歴史」です。

すなわち構造的な理論書の補強として出来事を配置するのではなく、もっぱら出来事そのものを叙述することを目的とする本です。そこで必要となるのは、正確性と情報量の多さ、事実の多層性交錯性、登場人物の背景や性格、とった行動と彼らの思考です。著者の取材力には感心するしかありません。日本文で800Pくらいありますものね。

後知恵野郎はよく笑う

財務長官ヘンリー・ポールソンは今後長い間に渡って批判されるでしょう。なぜリーマンを救わず、他の金融機関は救ったのか、、と。しかしそれは結果論に過ぎません。リーマンを救うことは大きなモラル・ハザード(どうせ救われるんだから俺たちも無茶しちゃうぜーって他の金融機関が思うこと)に直結するというジレンマでポールソンは苦しんでいました。

ポールソンに限らずニューヨーク連邦準備銀行総裁ティモシー・ガイトナー、連邦準備制度理事会ベン・バーナンキも歴史の1点1点で彼らのベストを尽くし、できることを最大限にやり切ったのではないかと感じさせられます。

彼らを「あの時こうやればよかったのに」と、後知恵で非難することは簡単です。それは結果が分かっているからです。我々は現在を生きていて、未来を正確に予測することはできません。金融市場は大量の人間の意志という永遠に予測不可能な存在達の集合体です。非難する奴に言いたい「お前明日株が上がるかどうか分かるの?」

エピローグには、JPモルガンの代表ジェレミー・ダイモンのとても印象的な引用文が掲載されています。

重要なのは批評家ではない。ものごとを成し遂げるのに人がどこで躓いたか、どうすればもっとうまくできたか、そういう粗探しはどうでもよい。名誉はすべて、実際にアリーナに立つ人にある。その顔は汗と埃、血にまみれている。勇敢に戦い、失敗し、何度も何度もあと一歩で届かないことの繰り返しだ。そんな人の手に名誉はある。なぜなら失敗と弱点のないところに努力はないからだ。常に完璧を目指して現場で戦う人、偉大な熱狂を知る人、偉大な献身を知る人、価値ある志のためなら自分の身を粉にして厭わない人…結局最後に勝利の高みを極めるのは彼らなのだ。最悪、失敗に終わっても少なくとも全力で挑戦しながらの敗北である。彼らの魂が眠る場所は、勝利も敗北も知らない冷たく臆病な魂と決して同じにはならない。

――セオドア・ルーズベルト

 

私は感銘を受け、次の本を読みたくなりました。

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)

 

映画版を見たことがあります。1945年8月14~15日。天皇を崇拝しクーデターを起こして最終的にピストル自殺する畑中をはじめとして、結果を知っている現代の私達から見れば、彼らは一見滑稽に見えかねない思考で行動します。しかし彼らは決して道化でもないし馬鹿でもない。私はあの時間を極限まで凝縮して生きた人たちの生き方考え方を知りたいと思いました。

 

 

 

関連書籍

リーマンショック一番の功労者。彼がいなければ世界同時不況はもっと深刻になっていたかもしれません。いつか絶対読む。

ポールソン回顧録

ポールソン回顧録

 

 

 最近ガイトナーの回想録も出ました。超イケメン。これも絶対読む。

ガイトナー回顧録 ―金融危機の真相

ガイトナー回顧録 ―金融危機の真相

 

 

 ゴールドマン・サックスの本もある。これも読みたい。

訣別 ゴールドマン・サックス

訣別 ゴールドマン・サックス

 

 

でもこれらを読む前に基礎知識が必要です。次の本は図書館の入り口の無料譲渡本コーナーで手に入れたので近いうちに読みます。

金融入門 (岩波新書)

金融入門 (岩波新書)

 

 

これも必要

国際金融入門 (岩波新書)

国際金融入門 (岩波新書)

 

 

まずこれだけあれば十分かな?

入門 企業金融論: 基礎から学ぶ資金調達の仕組み

入門 企業金融論: 基礎から学ぶ資金調達の仕組み

 

 

 バーナンキが良さげな本を書いているので読みたい。

連邦準備制度と金融危機―バーナンキFRB理事会議長による大学生向け講義録

連邦準備制度と金融危機―バーナンキFRB理事会議長による大学生向け講義録

 

 


書籍レビュー: エヴァ好きが書いた一夜漬け用テキスト『グラフィック ミクロ経済学』著: 金谷貞男・吉田真理子

★★★★☆

 

私には野望があります。大学中退という負い目をバネに、あらゆる分野の知識について学部卒以上の知識をつけたいという野望です。ゼロからのスタートです。

そもそも大学で教えられている政治・経済・文学・歴史学・哲学・心理学・語学・物理学・化学・生物学・工学・医学などなどの学問は、興味のない分野など存在しません。どれも面白そうです。しかも、長いこと生きているとどの学問も自然と生きていく上での必要性を痛感する出来事にぶちあたります。不思議なものです。

まず経済学が必要になりました。個人的な金銭的行き詰まりのせいです。金を儲けたいので株や企業分析の勉強をしましたが、企業がどのように市況に影響を受けるのかわからない。それに新聞の経済欄で言っていることも全然わからない。なんでアメリカは利上げするの?中国はどうして在庫作り過ぎてバブルになったの?株安と円高がスパイラルで進行してるんだけど為替レートはどういう思惑で動くわけ?なんで株と連動してるのさ。未だに全く分かりません。いまリーマン・ショック・コンフィデンシャル(下)を読んでますが背景知識がないので面白さが半減しているような気がしてなりません。

というわけで経済学が必要です。株は短期的にはギャンブル要素が強いので学んだからといって儲けられるようになるわけではないのですが、長期的視点が欲しいことと、「なぜ」が分からないと気持ち悪くて仕方ないです。

 

さて経済学には大きく分けてマクロ経済学とミクロ経済学があります。ニュースでわけわからんのはほとんどマクロ経済学の話題っぽいのでマクロ経済学の本を買ってみました(読み終わり次第レビューします)。ところが目次に「マクロ経済学のミクロ的基礎付け」なんてものがあります。じゃあミクロ経済学先に勉強しなきゃダメじゃん。そこでブックオフで200円と投げ売られていたこの本を手に取ってみました。

わかりやすいが、役立つのかどうか全く分からない

非常に分かりやすいテキストでした。市場の基本的な理論にはじまって家計・生産・費用・独占・厚生のトピックに分けて、タイトル通りグラフを大量に導入して丁寧に説明してくれます。おかげで一通りの理論について「理解」することはできました。比較的短時間で読めるので、一夜漬けにぴったり、試験でもそれなりの点数を取ることは可能です。

ただし本書では明らかに不足です。何が不足かと言うと、例示が現実離れしており(後述)、グラフの意味を極めて分かりやすくするためだけの例に終始しています。おかげさまで理解は楽ですが、現実にどう適用していいのか全くわかりません。他にもっと詳しい本を買って補強する必要ができました。また経済学というのは限界生産性逓減の法則やら完全競争の前提やら情報の完全性やら現実に適用できるのかとても怪しい原理の上に成り立っていることもよくわかりました。あまり厳密に議論すると現実と乖離すること間違いありません。いまのところ、どの理論も話半分で「本当かどうか分からないけど覚えておく」くらいのつもりで理解しました。

エヴァマニア

投票者がシンジ君、レイさん、アスカさんの三人であるとしましょう・この三人が部屋に飾る花を投票によって選ぶとしましょう。・・・

とか

5000円の価格の時、アスカ水産の供給量は図1.10のC1(10尾)で示されます。また、カヲル漁業の供給量は図1.10のF1(2尾)で示されます。・・・

とか、登場人物名が全部エヴァンゲリオンです。また、本書で扱われる財はすべて伊勢エビと牛肉です。

このせいで理論は理解しやすいのですがどの例も現実離れして浮いてしまっています。イメージがわかないのが残念です。。

 

 

参考書籍

次はこれ。幸い、田舎な私の地域の図書館に何故か置いてあったので、長期で借りて読破するつもりです。

ミクロ経済学の力

ミクロ経済学の力

 

 

 でもこれも捨てがたい。4320円768ページ。分厚い。高い。

マンキュー経済学 I ミクロ編(第3版)

マンキュー経済学 I ミクロ編(第3版)

  • 作者: N.グレゴリーマンキュー,N.Gregory Mankiw,足立英之,柳川隆,石川城太,小川英治,地主敏樹,中馬宏之
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2013/03/22
  • メディア: 単行本
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ミクロ経済学の発展。

財政学 改訂版

財政学 改訂版

 

 

国際関係や貿易などはマクロ経済学を学んでからっぽいのでまた次の機会に。


書籍レビュー: マーケティングの教科書×ジョブズ×エリート礼賛 『Think Simple アップルを生み出す熱狂的哲学』 著:ケン・シーガル 訳:高橋則明

★★★★★

著者のケン・シーガルはアップルに長年勤めた広告マンです。スティーブ・ジョブズを広告面から陰で支えた存在と言えるでしょう。本書は、アップルの「Think Simple」という哲学をタイトルに冠しその詳細を10項目にまとめた(体裁の)の本です。

シンプルの法則の例

1985年から1995年の10年間、アップルはジョブズを追放します。その間、アップルの売上はどんどん低迷していきます。ジョブズが戻った時、アップルは瀕死でした。そこ から「シンプル」の法則に従った経営の立て直しが始まり、iMac、iPod、iPhone、iPadといった大ヒット商品を生み出す企業に発展していきます。

まずシンプルにするのは組織でした。これは第2章に詳しく書かれています。アップルはジョブズを中心とした少人数のエリートたちが迅速に物事を決める形態を選びました。要するに寡頭制です。大規模な会議は平等ですがスピードが遅い。しかも形式ばかりを重視し実質が伴わず、優れたアイディアも潰されやすいのです。これは日本的民主主義に対応していると感じました。ジョブズはこのようなまどろっこしい体制を「大企業病」と呼び忌み嫌いました。

次にシンプルにするのは製品ラインナップです。著者はデルの広告も担当したことがあるため、デルとアップルを比較してデルを激しくdisります。商品のラインナップが「複雑さ」の罠にはまりこんでいるというのです。デルはあらゆる顧客を満足させるために、種々雑多大量のモデルを投入していました。すると製品1つあたりにかけられる配慮は当然少なくなります。販売員がどれを薦めたらよいのかもわかりません。アップルはノートパソコンのモデルを「プロ用のMacBook Proとパーソナル用のMacBook Airだけ」と極めてシンプルにまとめました。そうすれば、少ない経営資源に集中できるという計算です。

いま別件でソフトバンクのウェブサイトをじっくり見ているのですが、iPhoneは「iPhone6」と「iPhone6 Plus」しかないんですね。実質iPhone6しかないも同然です。iPhoneを使いたかったらこれしかない、というシンプルの法則が働いています。

アップルのマーケティング理論

私はアップル製品を一度も買ったことがありません。iPhoneは持っていません。SIMカードなしのAndroid端末は持っています、PCは 20年以上Windowsを使っているし、iPodではなく韓国製COWONの音楽プレイヤーを持っています。実は個人的にはアップル製品に魅力を感じていません。

しかしこの本を読んでなぜアップル製品がアメリカだけではなく日本でも売れるのかよくわかりました。彼らが作るのはイメージです。ブランドです。「この製品を手に取れば自分が変わる」と思いこませる力です。彼らが一番金を掛けるのはどこか?広告費なのです。

シンプルの法則に従って商品を絞り込んだら、あとはその商品を売り込まなければいけません。株のポートフォリオなら「mixi全力買い」などとやっていることと等しいのです。mixiの株価を上げないと死にます。

ですから広告で「iPhoneすごい!革新的!持っていたら私プレミア!」と思いこませなければいけません。著者を含む広告部隊に課された大きな使命です。(ここら辺は本書には書いてありません)

著者が広告マンということもあるでしょうが5~10章は殆ど広告の話です。iPhoneのネーミングにかける情熱や、いかにしてユーザーにイメージを植え付けるのか、そのために選ぶ言葉や偶像は何にするのか、などなどが熱く語られます。

シンプルさが最も印象付けられるのはやはり「i」のネーミングでしょう。「i」にはインターネットのi、イマジネーションのi、インディヴィジュアル(個人)の「i」がたったの1文字に凝縮されています。今日では「i」さえあれば誰もがアップル製品のものであると分かる超シンプルな記号になっています。私も、先のソフトバンクのサイトで言えば「AQUOS PHONE Xx mini 303SH」や「Disney Mobile on SoftBank DM016SH」よりも「iPhone6」のシンプルさに軍配を上げます。

小人数のエリートにしか世界は支配できないのか?

さてこの本を読んで一番引っかかったことは、「少人数エリートによるトップダウン経営」についてです。アップルもジョブスの独裁と少数精鋭があってはじめて猛スピード経営が可能となります。意思決定が迅速で、権限が高いことによって軌道修正が容易、しかも思い切った決断がやりやすいからです。

また、第1章でも出てきますがジョブスは極めて率直にものを言います。クソだと思ったことには容赦なく罵詈雑言を浴びせます。しかし相手にも同じような率直さを求めます。そしてそれが妥当であれば、彼も考えを変えることがあります。ジョブズが好かれる理由はここにあると思いました。私も気に入ったので一時期バカ売れした評伝を読んでみたいです。

脱線しました。この率直さでもって少人数グループは嵐のような速度でディスカッションができ、プロモーション案の試行錯誤のスピードが通常の3倍速以上になります。しかも元々エリート揃いだから質の高いものを大量生産し、そこから最も良いものをジョブズが選び出すことができるのです。こりゃ敵う訳がありませんわ。

考えてみれば、ファーストリテイリングの柳井正、セブン&アイの鈴木敏文、ソフトバンクの孫正義、アマゾンのジェフ・ベゾス、マイクロソフトのビル・ゲイツ、急成長する企業はどれをとってもトップの力に依存しています。

この本は優秀な人間も凡人も平等な立場を保証して会議を進めたら良いものはできない、という証明の1つです。プロセスで雁字搦めにされた企業に明日はありません。私たちの人権意識や法の精神、平等感はイノベーションを損ないます。何が良くて何が悪いのか?さっぱりわからなくなってしまいました。

 

 


書籍レビュー: リーマンショックを物語風に味わう『リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上)』 著:アンドリュー・ロス・ソーキン 訳:加賀山卓朗

★★★★★

投資で一番怖いのは金融危機による暴落です。7年前にはリーマンショックという未曽有の危機が起きていましたが、当時の私は何のことか全く理解していませんでした。なんか銀行が破綻したせいで世界中が不況になったんだって。以上のことは知りませんでした。

今年に株式投資について勉強を始めると2008年に日経平均は1/2以下に、銘柄によっては1/5とか1/10とか笑っちゃうくらい値を下げているのを見ておお怖や怖や、資産がゴミのようだ。大不況怖い。金融危機怖い。と感じると同時に危機の成立条件やその効果、予兆の現れなどを全て知っておきたいと感じました。リーマンショック解説の定番と評価の高いこの本は読んでおかなければいけない。数か月前からそう考えていました。

結果的には、良い本だが自分にはちょっと時期尚早だったかな、という感想です。

圧倒的な情報量をバックに小説仕立てでリーマン危機を叙述

本書はニューヨーク・タイムズのトップ記者であるソーキンが、自らの人脈を駆使してインタビューやメモ、メール、日程表などを掻き集め、2008年後半の出来事を小説風に再構成したものです。上巻だけで本文360Pに加え、情報源の出所を記したページが22に達し、しかも本文は情報が凝縮されていて一筋縄では読み進められません。驚くべきことに著者は巻末の覚書で

妙なことだが、私にとってのいちばんの難題は、多すぎる情報を処理することだった。

と語っています。これでもかなり情報を削った方だというのです。

人物を中心に物語が展開していきます。主人公?であるリーマン・ブラザーズのCEO、ファルドをはじめ、主要金融機関のCEOはみな人物のバックグラウンドが説明されどのような人間か分かる描写がされます。みなエリートで天才なのですが、人格的には破綻気味の人間が多いです(でも社会性はある)。登場人物の中ではリーマンのファルド、財務長官ポールソンの二人のキャラクターが際立っています。

まず上巻はリーマン・ブラザーズと同業の投資銀行、ベア・スターンズの事実上の破綻から始まります。リーマンもベアと同様にサブプライムローン債権を大量に買っており、破綻寸前の状態となっていました。リーマンを中心として内紛や会計上のごまかしの画策、株価の暴落、危機を回避するための各銀行への合併持ちかけと失敗、AIGやメリルリンチにも迫る危機などが描かれ、2008年9月10日にリーマンが過去最大の損失を発表するも赤字部門のスピンオフを発表し株価が少し持ち直し、バンク・オブ・アメリカと最後の合併交渉に入るところで終わります。

アメリカ金融業界の強みと弱み

以下は感想ですが、リーマンショックの本筋からは外れます。全体の感想は下巻を読んでから改めて書こうと思います。

私は本書を読むまでアメリカの金融業界に対する知識はほぼゼロでした。メリルリンチやバンカメの名前は聞いたことがありましたが、実際どのような業界か知らなかったので驚くことばかりです。

まず取締役の報酬が狂っているほど高いです。例えばはてなブログで次のような人気記事があります。

6000万ドルといえば日本円換算で74億円。もうお腹いっぱいですね。30人ぐらい一生遊んで暮らせる金額です。

ところが金融機関のCEOたちはこれと匹敵するか、それ以上の収入を1年で得ています。次のリンク先の記事によると、本書の登場人物の一人でもあるゴールドマン・サックスのCEO、ロイド・ブランクファインの2006年度の年収は5400万ドルでした。一人でフリーザ並の年収。そして、上には上がいるようです。

一体そんな金何に使うんだよ。と言いたくなりますね。

このような高額報酬には利点と欠点があります。投資銀行部門の取締役の報酬は会社の利益が大きければ大きいほど高くなりますから、儲かることはなんでもします。彼らの手下のトレーダーたちの報酬は自分の上げた利益の多寡に左右されます。一攫千金を目指して頭脳をフル回転して最大限の利益を得るべく大きく動機づけられます。彼らは優秀な成績を残し、会社に莫大な利益をもたらします。また投資銀行には巨額の資金が流れ込みますから、得られる利益もそれに比例して巨額となります。

ところが儲かることはなんでもするということは、利益最大化のためにレバレッジを増やして大きなリスクを取る方にも必ず動機づけられるということです。当然、バブルが膨張しやすい構造となります。リスクはやめられません。儲かりますから。74億円も儲かれば「俺たちは大丈夫」という自尊心も肥大化します。誰かがやめさせなければいけないのに、やめさせる人間がいません。

またリーマンなどの投資銀行は、預金が無く投資家からの資金を集めて経営を成り立たせているので自社の株価が重要となります。ですので株価を下げないために、サブプライムローンの評価減を計上しないための画策を続けたり、口先だけで会社の将来性を約束したり何でもやってしまいます。会社の利益を下げないために。

役員の報酬を決めるのは取締役会であり、承認する人間達もみな巨額の報酬を得る人間だから、報酬が高額になるのは当然である、という記述をどこかで読みました。そりゃそうだわな。

頑張れ個人投資家

ヘッジファンドや投資銀行は他人の金で投資をするので責任がありません。他人の金に企業の信頼を付けてレバレッジかけまくって儲けられますが会社が倒れても路頭に迷いません。世界をズンドコに引き込んだファルドでさえ未だに資産はいっぱいです。

Richard S. Fuld, Jr. – Wikipedia, the free encyclopedia

一方個人投資家は規模が小さい上に自分の資産が無くなったらいつだってゲームオーバーです。すべて自分の責任。個人投資家にエールを送りたくなってきます。がんばれ個人投資家!