書籍レビュー: 人々は大きな物語に支配される 『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』 著: ロレッタ・ナポリオーニ

★★★★☆

 

今年初めの日本人2名殺害事件で一躍日本でも有名になった過激派テロ組織、イスラム国の本です。

イスラム教については今後の要学習テーマですがキリスト教を学んでからなのでまだ先の話なのです。しかし彼らは最近のニュースで頻出ですので一体どんな組織なのか気になって本を手に取ってみました。

2015年10月時点、トップのアブ・バクル・アル・バクダディは最近の報道で空爆を受けて生死不明の状態です。

イスラム国?IS?ISIL?ISIS?

イスラム国はISだったりISILだったりISISだったり名称が一定しません。海外メディアではISISで固定ですがこれは本書で2つの理由が語られています。それは「アイシス」と単に発音しやすいから、もう一つは略称だと「国」が入らないので彼らを国と認めたくない政治家にとって都合が良いからだそうです。

日本国内メディアが「イスラム国」なのも単に短くて読みやすいからなんでしょうね。「イラクとシリアのイスラム国」とか「イラクとレバントのイスラム国」なんて見ただけで飛ばしたくなりますね。なお本書ではあえて「イスラム国」と呼ばれています。それは「国」を強調するためです。

当社の強み

21世紀初頭、2001年に911アメリカ同時多発テロが発生し「アルカイダ」「タリバン」が流行語となりました。ちょうど高校生の頃でライブ映像で2台目の飛行機がビルに衝突する映像を見てしまったことを覚えています。あれから14年が経ち台頭してきたイスラム国は、アルカイダと大きな違いがあります。手段として武力を使うことは同じですが、大きな相違点は彼らのもつ誇大妄想ともいえる物語と、手法の近代性の2点にあるようです。

1点目は「カリフ制に則る国を作る」ということが存在意義であることです。本書では何度も出てきますが中東イスラム国家は独裁の腐敗国家ばかりですので、厳格なイスラム主義はこれらの国に絶望したイスラム民にとって大きな訴求力があります。また彼らの領土獲得手段は暴力ですが、同時に道路補修、食料配給、電力供給などのインフラを強力に整備するという大きな特徴があります。内戦続きで崩壊しまくっているイスラム諸国にとってどれだけ魅力があることでしょう。

カリフ(ムハンマドの後継者たる預言者のこと)を掲げるなんて、生活に密着した歴史的なロマンたっぷりな物語で人々を釣るやり方ですね。カリフを日本で言うと征夷大将軍とか天皇みたいなもんだと思います。しかし日本には武士がいないので「将軍復活!」を掲げるテロ集団を立ち上げても支持は得られなさそうですね。没落士族の多かった明治時代ならウケたかも。「天皇を再び現人神に」なら愛国人が賛同しそうですがやっぱり人数が限られるかな。今や宗教の全くない日本じゃ無理ですね。人々に共通する強力な物語がないと。

2点目は日本でもよく知られていることですが、SNSの有効活用です。youtubeで首切り動画をばらまき、twitterで瞬時に全世界に魅力的なメッセージを発信します。

「欧米を支配しているのは銀行だ。議会ではない。おまえたちは、それを知っているはずだ。自分が一つの駒にすぎないこと、臆病な歩兵に過ぎないことに、お前たちは気づいている。だから自分のこと、自分の仕事のこと、家族のことしか考えない…それ以外のことには何の力もないと分かっているからだ。しかしいま、ジハードが始まった。イスラムの声を聴くがいい。イスラムは自由をもたらす。」

イスラムが自由かどうかは置いておいて前半はその通りですので、こんなメッセージがfacebookなんかで流れてきたら欧米のイスラム人を刺激することは間違いないです。

PLOという先例

実はイスラム国には先例があります。パレスチナ自治区です。彼らの代表PLO(パレスチナ解放機構)はテロビジネスで金を儲け、インフラ構築して定住し、いまでは国連のオブザーバー国家扱いになるまで発展しました。私はPLOの成り立ちを知らなかったので驚きました。テロってそんなに金になるんだねぇ。

というのも本書によればテロは必ず後ろ盾がいるものだからです。現在主権国家は表立って戦争を行うと経済封鎖などで瞬時にして痛手を負うので、様々な国家が彼らのような武装集団を密かに武器と金銭支援を行って代理戦争させ、武力を行使するという形をとっているからです。さらに、冷戦時代はアメリカかソ連しかスポンサーがいなかったのに、冷戦が終わった近年では各国の利害が複雑になり、スポンサー国家があちこちに出現して武装集団にとってはありがたい状況です。おかげでイスラム国も金を掻き集め短期間で大きくなることができました。

カリスマ統率者は必要か

最後に、アラブの春とイスラム国の違いについての筆者の言及が鋭いです。アラブの春はイスラム国と同様にSNSを使って広まり、世論を盛り上げて一定の変革をもたらしたように見えましたが、エジプトの軍部再クーデター、シリア内戦の泥沼化などいずれも失敗に終わりました。一方、SNSを効果的に利用したイスラム国は今のところ成功しているように見えます。これを筆者は、前者が個人の自主的な集まり、後者が求心的リーダーによる統率に依拠していることへの違いと見ました。自主的な集まりでは、メンバー間の関係性や交流により翻弄されてしまうから、と。なるほど歴史的に見てもカリスマに率いられた集団は強いです。ヒトラーしかり、天皇しかり、キリスト教の神しかり、、この論点からすれば、個人からなる日本の反安保同盟は失敗します。現に失敗しそうです。

でも、アメリカの手先なの?

ちなみに私が時々読んでいるあるジャーナリストによると、イスラム国はほぼアメリカの傀儡であり、中東の紛争恒久化(軍産複合体が儲かる)のために意図的に過大評価されているという見方もあります。メディアの使い方が洗練されすぎているので、米国が関わっていると考えるのは自然っちゃ自然です。

何が真理なのか私には全く分かりません。本書は短いながらも複雑で、所々重要な論点だけ抜き出してみましたが全体としては混沌としていてまとまりのない印象を受けました。単に私の知識と理解力が足りないだけなのかもしれません。国際情勢については、歴史を勉強したあと100冊くらい本を読まないとだめそうです。。

 

 

参考書籍

 

やっぱこれ読まなきゃダメだな

国際紛争 原書第9版 -- 理論と歴史

国際紛争 原書第9版 — 理論と歴史

  • 作者: ジョセフ・S.ナイジュニア,デイヴィッド・A.ウェルチ,田中明彦,村田晃嗣
  • 出版社/メーカー: 有斐閣
  • 発売日: 2013/04/20
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 イスラム

イスラーム世界の論じ方

イスラーム世界の論じ方

 

 

 いつか読みたい中田考

日亜対訳 クルアーン――「付」訳解と正統十読誦注解

日亜対訳 クルアーン――「付」訳解と正統十読誦注解

  • 作者: 中田考,黎明イスラーム学術・文化振興会,松山洋平,中田香織,下村佳州紀
  • 出版社/メーカー: 作品社
  • 発売日: 2014/08/02
  • メディア: 単行本
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 戦争っつたらやっぱこれだけど、歴史を学んでからじゃなきゃ無理そう

戦争論〈上〉 (岩波文庫)

戦争論〈上〉 (岩波文庫)

 

 


CDレビュー: Arvo Part, Beethoven, Corigliano, Helene Grimaud(pf) – Credo (DG111 CD22)

★★★★☆

111 Years of Deutsche Grammophonの22枚目です。けっこ―新しいCDですね。2004年発売のものです。

ジャケに写ってるピアニストのエレーヌ・グリモー(1969-)さんはフランス生まれのピアニスト。ところがユダヤ人です。お決まり過ぎ。ピアニストはユダヤ人でないといけない法則でもあるのでしょうか。動物生態学を学ぶ共感覚者だそうですから、メシアンとかぶってますね。彼女はオオカミの生態が専門だそうですので、そのうちオオカミの曲を作ったりするかもしれません。楽しみです。

クレドが惜しい

1曲目はジョン・コリリアーノ(1938-) という作曲家の「ファンタジア・オン・オスティナート」。捉えどころのない曲調ですが途中に突然ベートーヴェンの交響曲7番第2楽章が挿入される謎曲です。

次はベートーヴェンのピアノソナタ17番「テンペスト」。か、かたーーい。あんたブレイクかけられて徐々に石化にでもなってるんとちゃうのか。と思うと学校の階段をヒョイヒョイ昇るように進んでいくこともあるしよくわかりません。ベートーヴェンのソナタは人気曲だけに演奏者によってずいぶんと印象が変わりますね。

3つ目はまたベートーヴェンで「合唱と管弦楽のための幻想曲 ハ短調 作品80 《合唱幻想曲》」。合唱と言ってるものの合唱は最後の最後にしか出てきません。第9にとても近い曲です。いい曲ですね。

ラストはアルヴォ・ペルト(1935-)の「クレド」。アルバムのタイトル曲ですのでこのCDのキモです。序盤は派手寄りな教会音楽っぽいのですが途中から不穏な雰囲気が漂って行ったあとに一気に爆発する中盤の大音量カオスゾーンで私は爆笑してしまいました。ビアノぶっ壊れてるし志村音割れすぎ!で、ラストにバッハの平均律クラヴィーア1番(アヴェ・マリア)をまるまるトリビュートしてシメるというとても変な曲でした。

彼なりの思想を持つ曲なんでしょうがアヴェマリアの部分はいらないんじゃないんかねぇ、と私は感じました。中盤で終わってたら超がつくお笑い曲だったのになぁ。

 

ニコニコ動画にこの演奏のクレドが上がってますね。

 

※日本版はクレド終盤元ネタのバッハの曲が別収録で入ってます

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Pachlbel, Bach, Handel, Vivaldi – Musica Antiqua Koln, Goebel – Baroque Favoiltes (DG111 CD21)

★★★★☆

 

古楽器を作って演奏

DG111の21枚目です。ラインハルト・ゲーベルという古楽専門の指揮者に率いられた、ムジカ・アンティクワ・ケルンというアンサンブルが演奏します。

曲目はパッヘルベルのカノン、ヘンデルのソナタ、ヴィヴァルディの「ラ・フォリア」、バッハの管弦楽組曲第2番です。パッヘルベルのカノンはおなじみですよね。

 

古楽器でお楽しみください

www.youtube.com

古楽器は今の楽器と異なる音がして面白いです。ピアノはこの時代にまだないのでチェンバロのポロポロした音が歯切れ良いですね。弦楽器も今のヴァイオリンとは違い、ヴィオラ・ダ・ガンバなんて洒落た名前がついています。古楽器アンサンブルは徹底してますから専用の楽器を作って演奏してます。

ヴィオラ・ダ・ガンバ – Wikipedia

ジャケットの左端の人が持ってる縦笛っぽいものなんでしょうね。

 

個々の曲で言えばヴィヴァルディの曲が緩急がきつくて展開しまくりで一番燃えますね。日本では徳川吉宗が改革していた頃にこんな曲が演奏されていたかと思うともやもやワクワクする気持ちです。

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昔の曲は比較的パターンが決まっていて単調になりがちですがこのCDは解釈が現代的で一様でない面白い演奏だと思いました。たくさん聞いてみると色々発見がありそうです。

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


書籍レビュー: 無知は高くつく 『カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第3巻 分子生物学』 著:デイヴィッド・サダヴァ他

★★★★★

 

第三巻は分子生物学。細胞間情報伝達、遺伝子組み換え、遺伝子病と癌、免疫、発生が大きなテーマです。やはり図表が豊富で、非常に分かりやすい優れた本でした。

本書も知らないことだらけで驚きの連続でした。内容は実際に読んでいただくとして気になったテーマを取り上げていきます。

においは分子

私たちが匂いを嗅ぐとそれは脳に伝わり、美味しそうな匂いや不快なにおいなどを識別することができます。これは、鼻の匂い受容体に匂い分子が付着することにより、イオンチャネルが開いてカルシウムとナトリウムが細胞内に流入し、電位差が生じて神経に電流が走り、これが脳に伝わることで匂いを感知しているということだそうです。

人体の仕組みはもちろん驚くべきですがこれを読んでちょっと参ったなあと思ったのは匂いが分子であるということです。匂いって、熱とか音波みたいになんとなく物体から発せられる実体のない「気」みたいなものだと思いませんか?私はそのようなイメージでした。ところが受容体に分子が結合しないと匂いを感知できないということは、ウンコから出た匂い分子は鼻腔内の受容体に結合するということです。つまりウンコからはものすごい勢いで匂い分子が発散しているのです。すぐ隣に毎日律儀にウンコする猫が常に控えている身としては彼らの匂い分子を毎日鼻腔に結合しまくっているのだと考えると複雑な気持ちです。

免疫システムについて。リンパ管が全身を巡っていることは知っていましたが図解で見せられるとざわりとするどころかぞぞっとします。人間が管でできていることを見せつけられると人間の概念が変わっていくような気持ちがします。医者というのは人間を見る目が普通人とどこか違うと思います。私も生物学の本は一生かけてたくさん読みたいので人間に対する認識が変わっていくでしょう。

HIVこわい

おなじみHIVウイルスは人間の免疫システムを破壊するふてえ野郎という程度の認識しかありませんでしたが、本書で読んでさらに恐ろしいものと分かりました。

HIVには潜伏期間というものがあります。人によってまちまちで感染から発現までに8~10年かかるそうです。この潜伏期間というのが曲者で、HIVウイルスに感染した当初は免疫機構がHIVウイルスを病原体と認識して、大部分をやっつけてしまうことができるそうなのです。ところがHIVウイルスは免疫のうちのT細胞に感染するという特性があるため、完全には排除できません。で、潜伏期間の間にすべてのT細胞に徐々に徐々に感染していき、最終的には全T細胞が機能不全になった時はすでにHIVウイルスも他の病原体も退治する能力は失われていて、ここではじめて発症する、というメカニズムだそうです。まるで死へのカウントダウンという感じがします。

学習はつらい

一番心を打たれたのは生物学とは直接関係のない記述でした。発生応答という、環境に応じて特異な遺伝的形質が発現するという現象(例えば、マメ科植物の長さが太陽光の量によって決まるなど)の解説の中に挟まれていた次の一説です。

動物では、学習が環境変化に対する発生応答である。この本の内容を吸収しようと格闘している人は、学習がつらいものであることが分かっているだろう、学習には多くの努力と時間が必要であり、学習中は他の有益なことをすることができない。しかし、学習は大人になってもずっと続けることができ、物理的、生物学的、社会的環境に自分の行動を適応させることが可能になる。学習は、複雑な環境システムを持つ種ではとくに重要である。これらの種の個体は、多くの仲間のアイデンティティと個別の特徴を学習し、それに応じて自らの行動を修正しなければならない。しかしながら、どんなに学習がつらいものでも、無知の方がずっと高くつくものであることを忘れないでほしい。

突然現れたこの段落に私は右ストレートを食らい歯が折れたような気持ちになりました。分からないことだらけの学習はつらいし苦しいです。しかし私はもう知らないことには耐えられません。何故なら、他人が言うことを鵜呑みにせずに自分でものを考えるためにはどうしても考える材料である知識が必要となるからです。と薄々考えていた時にこんなジャストな記述に出会って、おったまげてしまいました。無知は高くつく。肝に銘じて今後一生を過ごしていきます。

なお、本書はこの後何事もなかったかのように生物学の解説に戻っていきます。

 


CDレビュー: Jimanica×Ametsub – Surge (2007)

★★★★☆

 

電子音楽家AmetsubとドラマーJimanicaとの共演で作成された、30分ほどで終わってしまうミニアルバムです。

独特の空間描写

Ametsubの1stアルバムLinear Crypticsと同様、神経症的な繰り返しと切ない音場効果が光ります。Jimanicaのあまり人間味を感じさせないドラミングが組み合わさり、琵琶湖あたりに一人で漂いながら上空を大量の戦闘機が飛んでいくようなメランコリーで週末的な雰囲気が演出されます。

 

一番良かったのは2曲目のzebecです。

vimeo.com

気持ちいい鬱

vimeo貼ってみましたがでかいですね

 

人間的なところがないドラムはエレクトロニカに合わせるのはちょうどいいような気もしますが、もうちょっと魅力がほしいかな、、

 

 

電子音楽の他のCDレビューはこちらです。


書籍レビュー: 障害ってなおすものなの?『パーソナリティ障害―いかに接し、どう克服するか』 著: 岡田尊司

★★★★☆

 

著者の岡田尊司さんは2005年に「脳内汚染」を書いていわゆる「ゲーム脳」論で有名になった人ですね。哲学科をやめて医師になったという変わった経歴の持ち主です。

新書の割に300Pもあり分厚目ですが内容は平易で、サクサク読めます。

10種類のパーソナリティ障害

パーソナリティ障害等はDSM-IVによれば「著しく偏った、内的体験及び行動の持続的様式」です。本書では10種類のパーソナリティ障害が紹介されています。岡田さんによればそれは著しく偏ったパターンを単に列挙したものではなく、いずれも次の2点が核に存在するものである、と主張します。

  • 自分へのこだわり
  • 傷つきやすい自己

この2点が「対等で信頼しあった人間関係を築くこと」を障害している、これをパーソナリティ障害と定義しています。

具体的な10パターンは次の通りです。聞いたことがある名前もあると思います。

 

  • 境界性パーソナリティ障害
  • 自己愛性パーソナリティ障害
  • 演技性パーソナリティ障害
  • 反社会性パーソナリティ障害
  • 妄想性パーソナリティ障害
  • 失調型パーソナリティ障害
  • シゾイドパーソナリティ障害
  • 回避性パーソナリティ障害
  • 依存性パーソナリティ障害
  • 強迫性パーソナリティ障害

本書では10種類すべて解説がついています。盛り込み過ぎて1つ1つへの言及は短いような感があります。気になったパーソナリティ障害については、別途他の本を読むのが良いでしょう。

気になった累計2つ

さて私がなぜこの本に興味を持ったかと言うと、身内にパーソナリティ障害のような人がいるからです。この本を読むとどうも境界性パーソナリティ障害(+演技性?)っぽいのです。

境界性パーソナリティ障害とは簡単に言うと「最高」と「最低」を行き来する思考が極端な人です。ついさっきまで最高の気分だと思ったら、何かのきっかけで世界の終わりのようなどん底の気分に変わります。そして、その気分には持続性がありません。いわゆる「メンヘルちゃん」の類型を思い浮かべてもらえばよいです。躁鬱病はきっとこれに含まれるでしょう。

思考にグレーゾーン、中間がありません。米田先生は自閉症スペクトラムの人は思考のコントラストが高すぎるという説を唱えていたので、自己の傷つきやすさという要素が加われば境界性パーソナリティ障害に分類される確率は高いでしょう。

ちなみに最悪な気分のときに典型的な症状は自殺企図です。リスカする人とは違います。あれは死なないこと前提ですので。彼らはマジですので注意が必要です。

個人的に気になるのはシゾイド型です。絶望ちゃんセーレン・キルケゴールもこれに分類されるそうです。彼らの特徴は孤独を好み対人接触を望まないこと、しかも傷つけられるのが怖いのではなく本質的に孤独が好きだということです。欲に乏しく名声も望まない。最近私はこのシゾイド型の思考が育っててきているので、彼らの生き方は大いに参考になるのではないかと思いました。私の生涯の目標は「どうやったら老後に年100万円程度使える金を残し(もしくは稼ぎ)、その金額でいかに生存するか」です。

障害は治すものなのか

自閉症は人間の生物学的な基盤ですが、パーソナリティ障害は人間の適応上の表現型だと思いました。自閉症スぺクトラムだろうが定型だろうがどの障害にだって陥る可能性があります。さて「障害」とはなんでしょうか。それは社会生活が困難になるかどうかで判断されるようです。誤解を恐れずに言えばそれは社会から見て目障りかどうかです。本書では、10種類すべてのパーソナリティ障害について、「克服」の仕方が記述してあります。

今日、この記事を読みました。

私は「障害」を治すという考えが嫌いです。例えばこういう本です。

発達障害を治す (幻冬舎新書)

発達障害を治す (幻冬舎新書)

 

 

自閉症は漢方でよくなる! (健康ライブラリー)

自閉症は漢方でよくなる! (健康ライブラリー)

 

 

でしさんの記事には全面的に同意します。ある特性を持って生まれてきたことは社会的に不利でしょう。それを他人に「社会にそぐわないよ」と言われるのは嫌です。いや本当にそぐわないので、おっしゃる通りで反論はできないんですけど。しかし一生ものの障害を「私たち素晴らしい普通人が矯正してあげます」と言われるのはもっと嫌です。岡田さんは誠意をもって克服法を書いてくれているのでしょうけれど、「障害」をどこか「未熟なもの」とみなし「克服」すべきものとする姿勢には、どうしても背後に大多数の普通人の圧力を感じてしまうのです。それがこの本で唯一引っかかる点です。

一般的なふつうの社会生活を送りたいならそりゃあ「克服」する必要はあるでしょう。でも克服したところで根っこは変わりませんから毎日苦しいに決まってます。ストレスでおかしくなるくらいだったらはじめっから普通じゃない道を究めた方が精神的にも可能性的にもいいんじゃないでしょうか。このような道は基本的に金になりにくいので甘すぎる考えだとは思っていますが、、

 

 

参考書籍

つー訳で次はこれですね。

境界性パーソナリティ障害=BPD 第2版

境界性パーソナリティ障害=BPD 第2版

  • 作者: ランディ・クリーガー,ポール・メイソン,荒井 秀樹
  • 出版社/メーカー: 星和書店
  • 発売日: 2010/12/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 購入: 1人 クリック: 1回
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岡田先生も書いてました。

境界性パーソナリティ障害 (幻冬舎新書)

境界性パーソナリティ障害 (幻冬舎新書)

 

 

 シゾイドも本出てますね。

シゾイド人間―内なる母子関係をさぐる (ちくま学芸文庫)

シゾイド人間―内なる母子関係をさぐる (ちくま学芸文庫)

 

 

サイコパスも気になります。

良心をもたない人たち (草思社文庫)

良心をもたない人たち (草思社文庫)

 

 


フィスコレポートを読む セレクト 4779ソフトブレーン、3666テクノスジャパン、3341日本調剤

 

4779 ソフトブレーン(地味)

http://www.softbrain.co.jp/images/logo.gif

何をやっているか分かりにくいですが「企業の持つ営業課題を解決し売上UPに繋がるサービスを提供」と書いてあります。具体的には営業支援・顧客管理ソフト「eセールスマネージャー」と、50000人の主婦を動員した消費者目線が売りのマーケティング・営業支援サービス「フィールドサービス」が主力です。この2つがそれぞれ売上の約半分近くを占めます。

SFA・CRM・営業日報・営業支援システム|eセールスマネージャー

リテールサポート・フィールドリサーチ・店頭調査ならソフトブレーン・フィールド

 

eセールスマネージャ―は営業を徹底的に管理し効率化するツールです。

営業を見える化|SFA/CRM eセールスマネージャーRemix Cloud

経営者にとってはヨダレが出そうなツールですが営業本人に取っちゃデータで雁字搦めにされてたまったもんじゃないですね。

 

なんとPepperを営業補助に導入するそうです。それモバイルデバイスでいいんちゃう、、って思いますが。

プレスリリース | ソフトブレーン株式会社

「eセールスマネージャーRemix Cloud」のスケジュールデータから、来社予定の顧客名と担当者名を自動的に「Pepper」に表示し、来社の際、担当者に連絡が入るような仕組みを予 定しています。また、担当者が来るまでの時間に会社やサービスなどの紹介、天気や地図情報など顧客ニーズに沿った情報提供も検討しています。

 

売上の伸びは順調、利益率もそこそこです。

売上高(連結)グラフ営業利益(連結)グラフ

 

株価は利益低迷してることもあって奮わないですね。無配ですし。

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3666 テクノスジャパン(過大評価)

くにおくんシリーズのあれとは別の会社です。

システムの総合コンサル事業からデータ解析、データマイニング、IoT、ディープラーニングなど旬の話題だけ盛り込んだ事業に展開していこうとしている会社です。

https://www.tecnos.co.jp/IR/upload_file/library_01/2015_kessansetsumei.pdf

バラ色な雰囲気ですね

 

会社自体は成長しそうですが高すぎ。。レポートには「同業他社並みのバリュエーションまで上昇が期待される」って書いてあるけどそれってPERが37→58~81倍くらいになることらしいです。それって現実味あるんですかね。

 

3341日本調剤(長期おすすめ)

日本調剤

調剤薬局チェーンです。ここの特徴は自社でジェネリック医薬品の製造まで行っているということが挙げられます。またドラッグストアのように物販はせず、調剤に特化した薬局ですので非常に1店あたりの売上高が高いです。f:id:happyholiday:20151018110603p:plain

ジェネリック医薬品は、調剤すると点数が加算されます。1調剤あたりの利益が増えます。自社でジェネリックを作ってるのですから調剤と製剤と両方で儲けられるって面白いビジネスモデルだと思いました。

また医療従事者派遣事業もここのところ大きく伸びていて、営業利益をかなり押し上げています。製剤と派遣どちらも本業と直接関係してますので、グループシナジー効果も大きいでしょう。

ただ調剤事業に投資する上での最大の欠点は2年に一度の法改正に振り回されることですね。利益率がは保険点数に大きく左右されますので、ちょっと苦しいものがあります。ここは売上高はなにもいうことない素晴らしい伸びなのですが、営業利益がドンブラコッコと揺れてます。

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長期的には伸びる余地がまだまだありますので、仕込み時期が肝心ですね。2年前に投資していたら最強だったのになぁ。残念です。

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一時4倍ですかすごいですね。いまは仕込み時期なのかどうかよくわかりません。5年スパンならまだ2倍になる余地があるんじゃないかと。

 

今週は日本調剤が面白いですね。ここは検討します。


CDレビュー: Metallica – Death Magnetic (2008)

★★★★★

 

メタリカ9枚目のアルバムにして最新、最後のアルバムです。

総決算を超えて次のステージへ

結論から言うと、本アルバムがメタリカの中で最も優れていると感じました。名盤と言われている3rdよりもいいです。

10曲ほとんどが7分超、しかもハズレ曲なし。長さが苦にならない上手な曲作りは本作でピークに達しています。昔あったような青臭い曲調や斜め向きのカッコつけた曲が存在せず、彼らの円熟を十分に感じさせる内容です。音量バランスは時代を反映してかなり爆音寄りになっており耳にも刺激的です。爆音のせいでバスドラがヘタクソなのがばれてしまうのですが。

何がいいって1曲も妥協が無いところです。4、7曲目はバラード要素が入っているものの決して軟派じゃないしきっちりぶっ飛ばしてます。特に7曲目The Unforgiven III は、Unforgivenシリーズは好きじゃないのになんでまた第三弾なんか作ったのかねバカねーと思ったら後半が全然別物になっていていい意味で裏切られました。

おすすめは5、9曲目です。5曲目All Nightmare Longは燃えがった後一瞬のブレークのあと入ってくる構成がカッチョいいし、9曲目Suicide & Redemptionはインストオンリー曲で、約10分を使って今までの道のりを振り返りつつさらに次の段階へ進んでいき、ラストにかけては肩肘張らない純粋なメタルを堪能することができます。

www.youtube.com

ライブ版です。マッチョオヤジナイスヒゲ46歳

 

やはり変わっていくバンドというのが私は好きなようです。もう新譜が出ることはないかもしれませんが、メタリカは面白いバンドの一つでした。

 

 

いわゆる「ビッグ4(スレイヤー、メタリカ、メガデス、アンスラックス)」については全アルバムを聞いてみたいと思っていますが、他にも気になるアーティストは沢山いるので、次回はちょっと寄り道してみようと思います。

 

ロック等の他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Yes – Maginification(2001)

★★★★★

 

プログレバンド、イエス18枚目のスタジオアルバムです。

新しい試み

本作はオケを大々的にフィーチャーし全体的に美しい仕上がりとなっています。特に1、8、9曲目は大作であり構成も上手でさすがと言うしかない出来栄えです。間にいやな感じのしないポップな曲も交え、これまでのキャリアの総集編と言えるアルバムではないでしょうか。

オケも単純に盛り上げるために入れてるわけではなく、現代映画音楽のように面白い和音構成を混ぜてきたり一筋縄ではありません、これは特に8曲目Dreamtimeの後半で顕著です。

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この曲は中盤の展開が今までにないパターンでこのアルバムでは一番好きです。前進していくバンドはいいですね。

もう少しびっくりさせてくれるものがあると歴代1位を付けたかもしれません。とはいえ、キャリア後半のイエスのアルバムの中では抜きんでている1枚です。

 

 

プログレッシブロックの他のCDレビューはこちらです。


書籍レビュー: 信用創造ってなんだ 『金融入門』 著: 岩田規久男

★★★★★

 

岩田規久男さんは経済学者。現在(2015年)、日銀副総裁です。任期は2018年まで。

副総裁:岩田規久男(いわたきくお) :日本銀行 Bank of Japan

本書は貨幣とは何か、というところから始まります。銀行の役割、金融とは何かの解説とその必要性、金利や金融市場とは何か、などなどを経て最終的にはマクロ経済学と金融政策にまで至ってしまう非常に射程の広い本です。専門用語のオンパレードですが繰り返しも多く、付いていくための工夫もされています。欲をいうならもっと図やグラフが多ければさらに分かりやすいのですが、ページ数の都合を考えると仕方ないでしょう。

金融ってなんですか

読んで字のごとく「金の融通」です。Aさんはお金が足りないが、Bさんはお金が余っている。Aさんは1か月後に金が入る当てがあるが、今すぐお金が入るわけではない。Bさんは金が余っているが、1か月寝かしておくのも勿体ない。そこでBさんはAさんに金を貸して、Aさんが1か月後返す時に一定の利子を取って儲けたい。

しかしAさんは本当に金を返してくれるのかどうか信用できない。夜逃げされたらおしまいだ。でもAさんの収入状況を調べるのはとても手間がかかる。Aさんからしてみても、Bさんがどんな人かわからないし暴利を要求されるかもしれない。支払いが遅れるとスマキにされて東京湾に沈められるかもしれない。

そこで登場するのが、銀行をはじめとする専門の金融機関です。調査のプロフェッショナルにより調査コストを抑え、AさんとBさんのような顧客を多数抱えてマッチングさせ、仲介料を取る仕事、それが金融だということが序盤で説明されています。この方式ならAさんは金を借りる機会が増え、Bさんは安全に資産を運用でき、銀行は仲介で儲けられる。3者が得するという関係になります。

銀行は貨幣を創造する

私全く分かってなかったんですが、銀行が会社に融資する時って、銀行が貨幣を文字通り「創造」するんですね。金を借りたい企業が銀行に行って融資を頼み、審査が終わると次のようになります。

…銀行が企業Aに100万円貸し出すとしてみよう。銀行はこの貸し出しを、企業Aに預金口座を開設させ、その預金口座に100万円だけ入金することによって実行する。この企業Aへの預金口座の入金は、単に、企業Aの預金口座に100万円と印字するだけであり、銀行は1円の現金も必要としない。

えー!!!知らなかった!!!てっきり、銀行は顧客が預けた金全額がプールされていて、そこにある金額を上限として貸し出せるんだと思ってました!

信用の力で金が生まれる

もう少し読み進めていくと謎が解けました。銀行には顧客の預金全額が常に存在するわけではありません。顧客の数が多ければ、顧客が預けている金の何%かを持っていさえすれば日常の引き出しには十分応じることができますので、銀行にある現金は少ない量でよいのです。残りは貸してしまって利子をつけ儲けることができます。なので、上記のような「突然預金が100万円増えた」なんてことをしてしまっても、顧客が日常使用する金額さえ銀行内に存在すれば業務が十分成り立つわけです。こうして銀行は貨幣を創造し、利潤を極限まで高めます。この創造機能が信用です。そこに存在しない金をあたかも存在するように変える、「ない」を「ある」に変換する機能が信用だと言えます。

「あの銀行はやばい」という噂が流れるとこの信用が崩れ、顧客が預金を引き出しまくると銀行は潰れます。顧客が預けているお金全部が銀行にあるわけではないからです。信用は現物を遥かに超える量のお金を生み出しますが、前提が崩れると何もかも無くなります。危ういですね。

他にも、今私が金を借りている消費者金融、すなわちノンバンクは何故~銀行系列って言うのかなと思ってましたが、それはノンバンクが必ず銀行に金を借りて営業しているから、でした。ですのでノンバンクは金の又貸しです。親玉の銀行に利子を払わなければいけませんので、金利が高いのは当たり前というわけです。

基本的なことで知らないことだらけだったので、非常に良い本でした。1999年に発行された本ですが古さが気になりません。90年代ですからバブル崩壊はストック過剰の調整だった、などの考察も載っています。おすすめの1冊です。岩田さんが今の国債や手形を買いまくる量的緩和をどう思っているか、知りたいものです。

 

 

関連書籍

わかりやすかったので、次はこれを読んでみようと思います。

国際金融入門 (岩波新書)

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推進派でしたか。

リフレは正しい アベノミクスで復活する日本経済

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 これも面白そうですね。

昭和恐慌の研究

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金融と言えばこれ。以前立ち読みしたことがありますが、この本を読んでからにすればよかったと後悔しています。またゆっくり読みたい。

ナニワ金融道 文庫 全10巻 完結セット (講談社漫画文庫)

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