書籍レビュー: 自分に正直であれ『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』 著:赤城大空

 

★★★★★

 

2012年発売。仕事用にセレクトしました。ラノベを読むのは18年ぶりです。中学生のとき、友人に押し付けられたこの本→スレイヤーズ! (富士見ファンタジア文庫)を読んで以来、ラノベには抵抗がありました。面白くなかったのです。

仕事用の課題図書にはあまり面白そうなものがなくがっくりしていた所、本作品のタイトルが目に飛び込み「こいつはバカなので期待できるかもしれない」と思いハズレ覚悟で手に取ってみました。

バカは好きです。

背景

舞台は近未来、国民にはPM(Peace Maker)という情報端末の装着が義務付けられあらゆる言論が監視される、「公序良俗健全育成法」の制定により政府が「不健全」とした表現はすべて禁止され罰則が設けられるという日本が舞台です。「言論のクリーン化」が極限まで突き詰められた世界です。もちろん性教育はありません。精通はちょっとした病気みたいなものと捉えられています。

いわゆる「監理社会モノ」「ディストピアもの」の一ジャンルですが、本作品は「性教育」一点においてだけ過剰に制限が加えられているという特徴があります。

 

実はこんな世界、いま現実に存在しますよ!

神聖なる金正恩同志率いるノースkoreaですよ!

“Whenever one of my friends had a wet dream, everyone gathered to console him over his ‘unknown disease’” (友達が無精すると、みんなが集まって「訳わからん病気」になった彼をはげますんです)

ですから舞台を北朝鮮にしたらそのまま現在進行形で感情移入できると思います。

脳波に影響しそう

本作品の重要な要素として芸術的な下ネタの数々が挙げられます。

やっぱり期待していた通り、排泄孔が太いデキる男ね!大根くらいなら余裕で飲み込んじゃうくらいガバガバね!いろいろな場面で活躍する度胸のある男の括約筋は全く活躍してないって感じ?(P58)

これだから盛りがついて常に股間にテントでキャンプファイヤーボルケーノ状態の淫乱男は…village villageしてんじゃないわよ!(P127)

僕は机に倒れ込み、現実逃避を開始する。ふふふ。もっこり。(P190)

しょせん世の中は弁とチンコの立つ奴が勝つのよ!(P204)

単にくだらないだけなのですが、単純ではない下ネタを量産しなければいけない、というのはお笑い芸人がボケを考えるくらい苦痛であることだと思います。このシリーズは2巻以降も続いていくそうですが下ネタは構造上バリエーションが少ないので枯渇が心配されます。village villageは元ネタあるんでしょうか。しばらく意味が分かりませんでした。

ラノベはたいてい学園モノです。ターゲットが中高生だからです。中高生男子といえば下ネタでご飯100杯行けるバカの権化です。IQが50くらい下がりそうな文章です。

抑圧するな

ところで「下ネタ」というのは人間の本質を表した重要な表現の一つです。全世界の人類は例外なく性行為から生まれているわけですから、下ネタを公権力を使って禁止することは人間性の抑圧と同義です。抑圧への対抗がこの物語の主題となっています。深読みすれば監理社会への風刺、性的なものへの肯定、マイノリティ批判への対抗などいくらでも深読みできそうではあります(私がやるとこじつけになりそうなので省略します)。

本書の大きなストーリーとして、思想統制されている学園の生徒ほぼ全員が「禁断の知識」の収められている書物を求めて立ち上がる。。というものがあります。その書物は何かというとエロ本です。男女区別なくエロ本を求めて立ち上がる姿は感動的でした。

「自分を変えることは不可能だから、世界を変えることにしたの」(P68)

ヒロイン華城綾女のこのセリフに思想が集約されています。自分を偽るよりも、正直のままでいた方がいい。

不自然に抑圧したらどうなるかは生徒会長の「アンナ・錦ノ宮(ひどい名前ですね)」が体現してくれていると思います。純潔一辺倒できた人間は、線引きが分からなくなってしまうため簡単に一線を踏み越えようとしてしまうのです。逆に、歩く下ネタ量産器である華城が実際の恋愛や距離感を詰めることに消極であることが象徴的であると感じました。作者がギャップ萌えを狙ってるだけかもしれませんけど。

 

ストーリーは粗めで進行上色々不自然な点はありますし、ジェンダー的に全然コレクトでない表現が多いなどの欠点はありますが、設定勝ちで予想より遥かに面白く読むことができました。

 

次は本稿を下敷きにして本書のプッシュ記事(5000文字以上)を書く仕事です。。
 


書籍レビュー: 2002年の自閉症認識『ぼくはうみがみたくなりました』 著:山下久仁明

★★☆☆☆

 

自閉症の青年・淳一と女の子、老夫婦を軸に展開する小説です。

随所に現れる淳一のこだわりエピソードの描写の細かさから、施設の人か親かどちらかだなぁと思っていたらやはり、作者は自閉症の息子の親でした。文章全体から啓蒙思想が強く感じられます。

自閉症を知る入門書として2002年時点では最適だったかもしれません。老夫婦の夫、ちょっと説教気味な園長先生は作者の心理を一番投影した人物だと思います。私はこの園長先生のセリフ、ところどころ違和感をもちました。

「自閉症の人の場合、特に子供の頃はそんな状態なんだって、ボクは思うようにしている。いろんなことがどうにもならなくて、仕方なく自分の世界の中に楽しみを見つけることしかできない。それが自分の中に閉じこもっているように見えるから、他の病気と同じように受け取られてしまう」(P106)

~しかできない??仕方なく????

なんでそんな上からなん?

彼らのこだわり行動って、本当にそれが好きだから、こそだよ!!??

「だからさ、人間は自分の下に線なんて引いちゃいけないんだ。自分の背負うべき分のハンディの確率まで背負ってきて生まれてきてくれた1/100の存在に感謝しなきゃいけないんだ。わかってくれるかな?」(P132)

感謝?

なんで?

当人は感謝されたいなんて思ってないよ?

親御さんは大変なので彼らには感謝しなきゃいけないと思うけど。

 

あとこういう淳一のモノローグ。

ぼくの名前はあさのじゅんいちです。

ぼくはおしゃべりがにがてです。

リアルさを求めているわけではないんだけど、わざとらしい。

 

詳しくはネタバレになるので書けませんが、極めつけはラストです。私はこのラスト、最悪だと思います。なぜ一般人の価値観の枠組みの中の感動的な物語に彼らを回収するのでしょうか。そうすればウケるからでしょうか。涙を誘えるからでしょうか。それとも作者本人がそのような物語の中に昇華されたいという願望があるのでしょうか。

なぜ彼らを彼らの文脈の中に置いてやらないのでしょうか。

 

明日実さん、お母さん、弟の描写はよかったので★2つとしました。淳一を兄に持つために空白の存在にされた弟の話についてはもっと突っ込んでもよかったのではないでしょうか。

自閉症系の本は本人か、医者の書いたものじゃないとだめ。創作物は感動モノ、泣ける文脈で消費されるためのものだからもういや。反省。

 

Amazonのレビューは満点です


書籍レビュー: ソフトウェアデザイン 2015年11月号 すいすい分かるHTTP/2, ファイアウォールの教科書

 

ソフトウェアデザイン 2015年 11 月号 [雑誌]

ソフトウェアデザイン 2015年 11 月号 [雑誌]

 

★★★★☆

最新技術に疎いので雑誌の助けも借ります。Web上にもたくさんドキュメントはあるんだけれど、探すのは意外とむつかしい。ニュース系のサイトだと、広告の都合上何回もページをめくらなきゃいけなくてレスポンスも悪い。電子書籍という手もあるけど、タブレットは文字小さいしそもそも本体が高くて買えないし、図書館にない。紙媒体は私にとってまだまだ現役です。

雑誌の良いところは、分かりやすく解説してくれる記事が多いこと、トピックが雑多で一つの記事についていけなくても他の記事で読めるものが必ずあるところです。初心者向けの記事も必ずあります。

 

メインとなっているHTTP/2とは、現行のHTTP/1.1だと同時に6アクセスまでしかできない(本当は規格上シリアルに1アクセスまでしかできない!)ので速度に限界があり、今まで涙ぐましい工夫により延命が計られてきましたが、加速度的に必要アクセス数が増えていく現代のweb環境では現状に合わなくなってきたため開発された新プロトコルです。

主な特徴はTCPコネクションを使いまわすことで1接続で複数のデータを送れるようになっていること、いくらでも並列接続できるようになること、ヘッダを圧縮して容量を減らせる、サーバー側から先読み用のデータをリクエストを待たずに自動送信して速度を上げる、などなどです。

 

イメージ図

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HTTP/2の現状とこれから

 

すでにgoogleやtwitter, facebookなどではHTTP/2が実装されており、対応ブラウザ(FireFox, Chrome, IE11※Windows10のみ)を使うとその恩恵を受けることができます。通信プロトコルのレベルの実装ですから見た目は何もわかりませんが、速度は確実に上がります。

分かりやすい記事でしたがUNIXの動作に入ると突然チンプンカンプンになります。ubuntu入れたことだし、実際に手を動かしてみないと歯が立ちません。時間がないなぁ。。

 

ファイアウォールの記事もおもしろかったです。いかにうちの会社のセキュリティ構成が甘いかもわかりました。

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ワイルドウエストにしちゃあかわいいよね

 

ところで背表紙のGMOインターネットのクラウドサービス、ConoHaサーバーのこの広告はどーかと思いました

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名前もあれですけどやっぱりネットワークエンジニアさんはこの手のキャラ好きなんかなぁ。中高生向けならともかく、二次元なんぞ20代前半で卒業するもんちゃうの。。?

 

 

この雑誌の収穫は

 

・UNIX知らないと話にならん!

・「そこにシビれる!メメタァ」とジョジョを記事に入れられると読んでいてうっとおしい(P129あたり)。ギークはほどほどに

Wiresharkってソフトでパケットをリアルタイム解析できるらしいのでこれを使ってメッセージに慣れてみよう

 

でした。

Wiresharkはすごいですよ。放っているだけでどんどんメッセージをキャプチャしてあっという間に画面がスクロールしてしまいます。

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参考書籍

書籍広告に面白そうな本がありました。

たのしいインフラの歩き方

たのしいインフラの歩き方

 
データサイエンティスト養成読本 機械学習入門編

データサイエンティスト養成読本 機械学習入門編

  • 作者: 比戸将平,馬場雪乃,里洋平,戸嶋龍哉,得居誠也,福島真太朗,加藤公一,関喜史,阿部厳,熊崎宏樹
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2015/09/10
  • メディア: Kindle版
  • この商品を含むブログを見る
 
あなたの知らない超絶技巧プログラミングの世界

あなたの知らない超絶技巧プログラミングの世界

 

 

ネットワーク関連では去年話題になったらしい本が図書館から届いたので、近いうちにこれを読みます。

ネットワークエンジニアの教科書

ネットワークエンジニアの教科書

  • 作者: シスコシステムズ合同会社テクニカルアシスタンスセンター
  • 出版社/メーカー: シーアンドアール研究所
  • 発売日: 2015/09/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 


書籍レビュー: 朗読CD10作品 芥川龍之介・浅田次郎・池波正太郎など

芥川龍之介 橋爪功『河童』|新潮社

 

ランニング中や料理中に時間を有効活用するため、朗読CDを聞いています。スマホにジップロックをつけて防水し、風呂でも聞いてます。CD1枚だとせいぜい短編1つ、文庫本50~100P分くらいでしょう。累計10作品になったので本1冊とカウントし、簡単なレビューをしておきます。

相模大野図書館にあるCD推定400枚を制覇することが目標です。アイウエオ順ですので今回はア行の作者ばかりです。

 

1

食味風々録 (中公文庫)

食味風々録 (中公文庫)

 

 

食味風々録 新潮CD

食味風々録 新潮CD

 

★★★☆☆

2015年8月に亡くなったばかりの阿川弘之さんによる、「食」に関するエッセイです。娘の阿川佐和子さんによる朗読でした。文章はとてもきれいです。戦争絡みの食堂車の話がおもしろかった。

阿川さんと言えばこれですよね。

きかんしゃやえもん (岩波の子どもの本)

きかんしゃやえもん (岩波の子どもの本)

 

 

2

三角の野望【朗読CD文庫】

三角の野望【朗読CD文庫】

 

★☆☆☆☆

南青山で金満する話。まじつまらん。はずれ

 

3

名作を聴く 芥川龍之介

名作を聴く 芥川龍之介

 

★★★☆☆

収録作品は「蜘蛛の糸」「杜子春」「羅生門」「鼻」「トロッコ」。定番ですね。朗読は上川隆也さん。へたです。もうちょっと上手に読めなかったかなぁ。

内容だけで判断するなら「杜子春」がいいですね。寓話なんでしょうけれどぶっ飛んでます。私は母親にこんな感情を抱けるのか疑問ですけれど。

芥川龍之介 杜子春

お前は何を考えているのだ。

 

4

★★★★★+

内容もさることながら、橋爪功さんの演技がキレすぎていて最強です。聴きながら何回も爆笑してしまいました。

河童は人間の一面をデフォルメしたり価値を反転したりした存在ですので、風刺入り不条理ギャグマンガ的な世界の先駆となる作品だと思います。大好きです。

新潮社のサイトで買えますが、お近くの図書館にあればぜひ聞いてみてください。笑い死にます。amazonにはなぜか無いようです。

芥川龍之介 河童

 

5

遺影

遺影

 
遺影(『霞町物語』講談社文庫所収)

遺影(『霞町物語』講談社文庫所収)

 

★★★☆☆

ぽっぽやの浅田次郎さんです。ちょっと複雑な、渋いじいさん達の話。

 

6

月島慕情【朗読CD文庫】

月島慕情【朗読CD文庫】

 
月島慕情 (文春文庫)

月島慕情 (文春文庫)

 

★★★★☆

吉原の話。朗読の小川道子さん、ドスが効いてて上手です。舞台を吉原にするのはずるく、状況押し切り勝ちって感じですがおもしろかったです。東京に住んでいた頃が懐かしくなります。MVPはダントツで人買いの卯吉。

 

7

聖夜の肖像

聖夜の肖像

 

★☆☆☆☆

フランスで別れた昔の男が想像の中で膨らんで苦しむ女の話。現夫がいい人すぎてお前絶対妻愛してないだろ、現実感なさすぎです。舞台が現代だと途端につまんなくなりますね。

 

8

井関道場・四天王

井関道場・四天王

 

★★★★☆

池波正太郎さんの小説を読む(聴く)のは初めてです。「剣客商売」シリーズから。井関道場の跡取り問題をめぐる騒動を描きます。朗読の神谷さん、すっげー上手!四天王の剣闘場面は臨場感があります。

 

9

徳どん、逃げろ

徳どん、逃げろ

 

★★★★☆

またも「剣客商売」シリーズから。登場人物は「井関道場・四天王」とリンクしています。ちょっと硬いラノベみたいなもんですね。スケベ気味なのもラノベと変わりません。そういえばちらっと読んだ吉川栄治の作品もすけべでした。歴史小説とラノベの一致を見ました。

 

10

唖の十蔵

唖の十蔵

 

★★★★☆

今日聴きました。「鬼平犯科帳」シリーズより。おそらく、シリーズ0話か1話のような位置づけなのではないでしょうか。拷問のシーンは心臓に悪いです。江戸時代も韓国王朝も自白させるためになんでもやりすぎです。ラストは何とも言えない気持ちに。

このシリーズも朗読は神谷さん。上手でした。

 

鬼平犯科帳(一): 1

鬼平犯科帳(一): 1

 

 


書籍レビュー: プログラム版文章読本『リーダブルコード―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック』 著: Dustin Boswell, Trevor Foucher

★★★☆☆

 

文章を書くノウハウ本は多数ありますが、プログラムを書くノウハウ本もいくつか出版されています。本書は比較的新しく、かつ定番となる本だそうですので前々から興味がありました。

プログラムの抽象的な大構造やデザインパターンと言ったマクロな話には立ち入らず、変数の命名規則といったミクロな範囲~関数・テスト設計と言った中程度の規模の話に集中して、「どうやったら他人が読んで理解できるコードを書けるか」「パッと見て意味が分かるか」というテクニックと思想を詰め込んだ本です。

命名規則には特にうるさく、「tmpという単純な名前はやめなさい、抽象的すぎるから」「getMean()のような関数は、getという名前で軽い処理を行うと解されやすいから、重い処理を詰め込むのはやめよ」などなど、日常業務に即適応できそうな内容ばかりです。

ただし後半になってくると、職業プログラマーをやっていると当然のようにぶちあたる課題と解決方法の繰り返しになるので、自分としては得るものが少なかったのが残念です。ここのところ本業が佳境に入って時間が取れないにもかかわらず、ものすごく早く読み終わってしまいました。逆に考えると、日常の業務の遂行方法が本書出版時の2012年現在でもだいたい有効であるということですので、うれしいです。

また、翻訳のクセが私には鼻について全然合わない(Amazonではみんな褒めてますけど)のと、巻末の解説が冗長すぎて「読みやすい」を目指すはずの本書の趣旨と合ってない、最終章のサンプルコードが無駄に複雑でここだけ難易度が跳ね上がっていて初級者には絶対読めないのとで、★-1としました。

 

プログラム本を読んでいていつも思うことがあります。発達障害者はプログラマーに向いている、ビルゲイツもアスペだったとよく言われます。私は嘘だと思います。私の書くコードはきたないです。なかなか一発で本書のような綺麗なコードは書けません。なぜなら良いコードは「他人が読んでわかりやすい」コードであり、それは文章や会話と原則的に何も変わらないからです。私は自分にしか意味の分からないようなコードを大量に生産しています。これはコミュ障と同じです。

さらに現代で優れているとされるプログラム手法は「オブジェクト化」「疎結合」ですがこれも、高度な抽象化が必要になる作業です。私は実はこれ、すっげぇ苦手です。どうしても直接的でベタ打ちのコードを書いてしまいます。同じ機能をまとめて抽象化して、より高次の問題だけを取り扱うのが現代プログラミングの基本ですが、全然できません。経験を積むほど自分がプログラミングに向いてないのが分かります。

だからプログラミングが得意な人間とは本当は、コミュニケーション能力があって空気が読め、何でもすぐに抽象化して上位概念を操るのが上手い人間なんだろうなぁと思うのです。たぶん私とは正反対に位置する人間ですこれ。

 

 

 

 

参考書籍

分厚い類書です。これもいつか必ず読みたいと思っている本です

CODE COMPLETE 第2版 上 完全なプログラミングを目指して

CODE COMPLETE 第2版 上 完全なプログラミングを目指して

 

 

正直言って会社で書いてるコードはきたないものばかりなので、リファクタリングも学ばないとなりません。

新装版 リファクタリング―既存のコードを安全に改善する― (OBJECT TECHNOLOGY SERIES)

新装版 リファクタリング―既存のコードを安全に改善する― (OBJECT TECHNOLOGY SERIES)

 

 

巻末に紹介がありました。気になるけど、すごく。。やばそうな本です

文芸的プログラミング (ASCII SOFTWARE SCIENCE Programming Paradigm)

文芸的プログラミング (ASCII SOFTWARE SCIENCE Programming Paradigm)

 

 


書籍レビュー: 人はなぜランニングキチになるのか『BORN TO RUN 走るために生まれた』 著:クリストファー・マクドゥーガル

★★★★★

 

箱根駅伝が好きで10年くらい前から毎年見ています。しかし今年はやや複雑な思いでレースを眺めていました。

箱根というブランド、栄光を背負うための戦いというシナリオは自分でないものにロマンを抱く多数の日本人に支持されています。同調圧力や虚構に支配された雰囲気が次第にうっとおしくなってきました。それでも毎年見てしまうのですが。

箱根駅伝には小田原~芦ノ湖間の5区山登りという23.2kmで標高差860mを登る区間があります。ここで大差をつけたチームが毎年優勝しています。去年、今年は青山学院の圧勝でした。1時間ちょいで登山するなんてアホみたいな区間だなぁ、、と思っていましたが私は甘かった。反省しています。

本書の前半は100マイル(160km!!!)の「ウルトラマラソン」にまつわる話です。走るのは舗装道でもトラックでもなく、自然の中です。「トレイル」とも呼ばれています。箱根なんてメじゃありません。参考に、言及されているレッドビル100のレース画像を載せておきます。

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http://www.summitdaily.com/csp/mediapool/sites/dt.common.streams.StreamServer.cls?STREAMOID=lRlHlDck5gCIJ13cuiuwk8$daE2N3K4ZzOUsqbU5sYuEC0v0nyQHjbQ8p1aEAiFBWCsjLu883Ygn4B49Lvm9bPe2QeMKQdVeZmXF$9l$4uCZ8QDXhaHEp3rvzXRJFdy0KqPHLoMevcTLo3h8xh70Y6N_U_CryOsw6FTOdKL_jpQ-&CONTENTTYPE=image/jpeg

Leadville Trail 100 ultra race draws athletes from all over the world | SummitDaily.com

Leadville Trail 100 Run Introduces Lottery System | Competitor.com

 

いやあなんつうか、バカですね!(褒めてます)

これほどまでにランナーを魅了するのは「走る」ということが人類の獲得した偉大な財産であるということが、後半で綿密な科学的考察を持って描写されます。そしてとある研究者は次のように結論付けるのです。

人はなぜマラソンを走るかわかりますか?とルイスはブランブル博士に訊いた。走ることはわれわれの種としての想像力に根差していて、想像力は走ることに根差している。言語、芸術、科学。スペースシャトル、ゴッホの『星月夜』、血管内手術。いずれも走る能力にルーツがある。走ることこそ、われわれを人間にした超大な力――つまり、すべての人間がもっているスーパーパワーなのだ。(P343)

これだけ読むと宗教がかっていて引きますが、本書をここまで読んできた人であれば合点がいくはずです。本書の訳者に至っては、訳しているうちに影響を受けて走り始め、ついにはハーフマラソンに応募してしまったそうです!一読をお勧めします。

 

 

 

個人的な話になりますが私も本書に会う前から走りはじめました

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いずれはフルマラソンもやってみたいですね。まずは、10km以上安定して走れるようになることを目指します。

 

靴は本書によれば裸足が最も良いのですがそこまでの勇気はまだ持てず、ワークマンに売ってる「建さん2」というペラペラの靴を使っています。足裏の感覚が鮮明になるとても良い靴です。

商品カテゴリー:作業靴|ワークマン オンラインストア

680円と非常にお値打ちです。昔は500円だったそうです。サンダルでもいいらしいですよ!


書籍レビュー: 常識人は意識してクラクラする 『プチ哲学』 著:佐藤雅彦

★★★☆☆(巻末対談の一部分だけ★★★★★)

 

クラウドワークスでとあるライティング業務のトライアルに引っかかったので、大慌てで課題図書のうちすぐ読めそうで興味のある本を調べ、図書館まで自転車飛ばして借りてきて、大急ぎで全部読んで記事を書き上げました。今日本業の仕事が一段落した夕方~夜のことです。なにしろ、明日から本業の仕事量がドッと増えるかもしれないので、急ぐしかありませんでした。

ここではトライアル記事の体裁の制限で書けなかったことを書きます。採用されれば、ねんがんの安定収入(少ないけど)が入ることになります。

 

佐藤雅彦さんと言えば「ポリンキー」「だんご三兄弟」「ピタゴラスイッチ」で有名です。ピタゴラスイッチはこどもと一緒に見ていて好きだったので、こりゃあうってつけだぜ!と思ってマッハ借りして一気に読んだ、のですが、あんまりおもしろくなかったです。。

「プチ哲学」というのは哲学までは行かないけど視点をちょっと変えてみると世界の見え方が変わるぜ―系のビジネス書なんかでもありそうな奴で、彼の特徴であるkawaiiイラストとともに解説が添えられているのですが、残念なことに取り上げられている事柄への考察が浅かったです。軽く読んでもらえる本ということがコンセプトなのでしょうがないんですけれど。次はもっとマジメに書いてある本を読んでみたいです。

 

一点だけとても納得したことがあります。巻末に漫画家の中川いさみさんとの対談が収録されていて、ここで佐藤さんが面白いことを言っています。

佐藤:・・・中川さんは非常に常識人だと僕は思うんです。僕は自分を普通に常識だと思っているんですけど、それと同じ意味で常識人。例えば、「スコーン、スコーン、コイケヤスコーン♪」を僕が町でやっていたら、僕は変な人ですよね。ところが、こういうCMやれば、スコーンの認知率が70%になりますよってスポンサーに話すとき、僕はすごく常識的な人間ですよね。CMという枠の中では奇妙奇天烈なことをやりながら、同時に、どうしてそれがクラクラするのかということがわかる自分はすごく常識的なわけですね。そもそも僕が変な人間だったら、あんな変な状況にもクラクラこないわけです。あれがクラクラくるということは、自分がすごく普通の人なんですね。中川さんの漫画はやっぱり普通じゃないところがあります。でも、それが面白いと客観的に分かる中川さんは極めて常識的だと思います。

・・・

ああ!なるほど!

だからこの本面白いと思えなかったんだ!

私は「スコーン、スコーン、コイケヤスコーン♪」を町でやる人間が大好きなんです!それも、クラクラ来ないでフツーにやってる人間が好きなんです!!

壊れる壊れないといったレベルをハンドル使って調整している作品って後ろ側の手が見えちゃいますもんね!素でぶっ飛んでる人とはエネルギーの出し方が違いますね!

だからだ!

ありがとう佐藤さん!

 


書籍レビュー: マクロな世界史『世界史』 著:ウイリアム・H・マクニール

★★★★★ʕ→ᴥ←ʔ

 

人類発祥から現代史に至るまでの数千年を1冊で語ってしまうという本です。世界史には以前から興味があったので、まず読んでみたいと思っていた一冊でした。アウトラインだけザーッと書いてあるのかと思ったらとんでもない、見た目も内容もヘビーでした。歴史に慣れていないこともあって読むのに合計20時間は費やしたのではないかと思います。10冊分ぐらい読んだと思ってよさそうです。

まず驚愕するのはマクニール教授の異常な博識さです。歴史学者なので全ての時代について綿密な考察がされているのは当然として、物理学、数学、音楽、美術、建築などへの言及も誤りなくしかも示唆に富んだ記述がふんだんに盛り込まれています。人類が今までになした軌跡をあまねく辿るのですから、全てのことについて理解がないといけないのは分かりますがいやすごいですね。

イノベーションで興隆が決まる

全体を通して「歴史はイノベーションの連続である」という思想が感じられます。イノベーションを発明した地域が繁栄を極め、残りの地域はそれに追いつこう、取り入れようと奮闘するという構図が至る所に散見されます。たとえば紀元前、農耕がはじまったことで富の蓄積が初めて可能となり、文明が生まれました。以降数千年に渡り「文明ー周縁」という定義が出来上がり長期間にわたって固定化します。マクニール氏に言わせれば四大文明ですらメソポタミアが時代の最先端で、あとの3つは周縁の扱いです。

暴走族ハーン

一方古代文明は常に蛮族との戦いを常としており、維持するだけでも並大抵出ない努力が必要でした。蛮族は大抵中央アジアからやってきます。中央アジア~モンゴルは北斗の拳でいう修羅の国とほぼ同じ扱いを受けており、西洋の蛮族バリアーはいまのイラン・イラク付近、中国のバリアーは万里の長城でした。なにしろ蛮族は馬の扱いに長けており、時々暴走族を統率できるカリスマ族長が現れると圧倒的な力を発揮するので、マジで強いのです。歴史上最強の暴走族長はもちろん、日本の小学生でも知ってるチンギス・ハーンです。

www.youtube.com

ただし蛮族は力は強いけど安定した制度やインフラを作る力が無く、世界各地を征服した後大抵が後継者争いで崩壊してまた元に戻るという繰り返しでした。日本にやってきた元は中国文明を吸収してドーピングしたため、比較的長持ちした方でした(でもやっぱり後継者争いで崩壊)。

産業革命と民主主義

1500年以降のイノベーターはなんといっても西洋です。1500-1700年の間に西洋で発展した「産業革命」「民主主義」の2つは今でも続く西洋の優越の源泉となっています。産業革命によって種々の生産が大規模になったことと、自動車を作ったからタイヤ・ゴム産業が発展、電気産業が発展したから電線に使う銅産業が発展、というように連鎖反応が起きてテクノロジーが指数関数的に発達し、周りの文明との距離をグングン開いていきました。箱根駅伝の2区で2位と5分差をつけてしまってそのまま10区までトップでゴールインしてしまったような感じです。

民主主義は第二の力の源泉でした。それまで西洋の政治とは、神の力を受け継いだ統治者によってなされるものであり、それゆえ変えることができないものだと思われていたのです。現代人の感覚からすると笑っちゃいますが大日本帝国だって天皇は現人神ですから1945年までは神権政治だったのです。

民主主義の実現によって、政府は人間の手で作られるものだという認識が生まれ、柔軟に政策を展開できるようになりました。さらに重要なことは、「俺たちが選んだ政府だぜ!」という認識が国民にあるため、政府の権力が格段に上がったことです。全国民が共感してくれれば反発なく彼らを徴兵して、国のために喜んで死んでくれる兵士を空前の規模で集めることができたのです。これが西洋政治の強みでした。

民主主義っていうと人間の自由な精神の獲得物と解釈されがちですが西洋人の認識は以上のようなものですので、こわいですね。

引用集

本書は細かい点では感激する点が大量にありました。読書中に面白いと思った所にはいつも付箋を貼って、あとでここに書く材料にしているのですが、本書は付箋が100カ所くらいに貼ってあります。とても紹介しきれませんので、いくつか引用を書いてこの記事を終わりにします。

帝国主義の推進者たちが貪欲なヨーロッパの投資家に約束していた利益は、ほとんどの場合実現しなかった。実際のところ、帝国主義というのは現金に換算してみると、全体として決して引き合わなかったのは確かなようだ。アフリカの植民地行政と開発のためにかかった経費は、おそらくアフリカからヨーロッパにむけて送られた物資の総価額を超えていただろう。・・・白人がアフリカの資源を掠奪して巨大な富を手にしたという意見は、単純計算による偏見でしかない。(P560)

奴隷貿易なども考えると現金の大小だけで割り切ってしまうことには抵抗がありますが、一方的に搾取するだったという見方が一面的であることは、反省してもよさそうです。

イスラム教徒の間では、宗教と政治ははるかに結びつきが強く、それはマホメット以来のことであった。おまけに、イスラエルが1947年と1973年の間にアラブと戦って買ったことも、世界中のイスラム教徒の宗教的意識を尖鋭化させた。なぜなら、敗戦を納得のゆくように説明すると、聖なる法典に記された神の意志に従わなかったから神は罰された、ということになるからである。(P621)

イスラム過激派がなぜ現代でも力を振るうか、についての原理的な解説です。なんと「負けた」→「神の言う通りにしなかったからだ!次は勝つる」の無限ループになるということです。イスラムが迫害されるほど尖鋭化する理由の一つです。

イスラムは中世にそのモーレツさで装備の不利も克服し兵隊の大量動員と統制をもって一時は世界を席巻しましたが、コーランが時代に合わなくなっても変更が不可能であるという根本的な欠点により、勢いを失ったと解説されています。イスラム嫌いじゃないんですけどね。コーランは古典だと思って、源氏物語とか古事記とかと同じ扱いにしてゆるーく尊重すればいいんじゃないのかなあ。

科学者たちはさらに革新的な技術飛躍の縁に舞い上がっているように思われる。そして、加速化する科学と技術の進歩は、来るべき未来に、人間問題に深い影響を与えることは確実である。過去においても事情は同じだったが、影響は間歇的だった。新しい考え方が、われわれの行動を変えることによって、予見しなかったような影響を世界に与える。これは、人間が、未来への展望の共有に基づき、人間の行動を統合しようとして言語を使い始めて以来、おこっていることである。現代においては、新しい観念の氾濫が、このむかしながらの過程を加速させ、その速度と力を強め、伝統的な慣習に対して、いままでよりははるかに大きな破壊力を発揮しているのである。(P639)

ほぼ最後の〆の言葉です。いかにも1917年生まれのじーさん(ご存命です!)らしいセリフですが、ここまでの長い長い歴史の叙述を踏まえると感動もひとしおでした。

現代ではイノベーションが現れては消え、現れては消えの繰り返しで、その周期も速くなっています。2000年にバブルを引き起こしたインターネットももはやインフラの一部となっていて、目新しさはありません。50年後、今の時代はどのように振り返られることになるのでしょうか。未来の歴史書を読んでみたいですね。

 

 

本書は文庫版もあります 

世界史 上 (中公文庫 マ 10-3)

世界史 上 (中公文庫 マ 10-3)

  • 作者: ウィリアム・H.マクニール,増田義郎,佐々木昭夫
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2008/01/25
  • メディア: 文庫
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世界史 下 (中公文庫 マ 10-4)

世界史 下 (中公文庫 マ 10-4)

  • 作者: ウィリアム・H.マクニール,増田義郎,佐々木昭夫
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2008/01/25
  • メディア: 文庫
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参考書籍

マクニール博士のもう一つ有名な本です。

疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

  • 作者: ウィリアム・H.マクニール,William H. McNeill,佐々木昭夫
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 文庫
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類書。本書では鉄も病原菌も銃もイノベーションや大きな影響の一つとしてとらえられているので、二番煎じじゃないんかと思います。でも読んでみたい。

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

 

 

 

 近代史

大国の興亡―1500年から2000年までの経済の変遷と軍事闘争〈上巻〉

大国の興亡―1500年から2000年までの経済の変遷と軍事闘争〈上巻〉

 

 

 冷戦

アメリカ外交50年 (岩波現代文庫)

アメリカ外交50年 (岩波現代文庫)

  • 作者: ジョージ・F.ケナン,George F. Kennan,近藤晋一,有賀貞,飯田藤次
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000/10/16
  • メディア: 文庫
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インド

ガンジー自伝 (中公文庫BIBLIO20世紀)

ガンジー自伝 (中公文庫BIBLIO20世紀)

 

著作権切れのため、原著はネットで公開されてます

An Autobiography or The Story of my Experiments with Truth – Wikilivres

 

 中国

中国の歴史―古代から現代まで (Minerva 21世紀ライブラリー)

中国の歴史―古代から現代まで (Minerva 21世紀ライブラリー)

  • 作者: J.K.フェアバンク,John K. Fairbank,大谷敏夫,太田秀夫
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 1996/07
  • メディア: 単行本
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ベトナム戦争

ベスト&ブライテスト〈上〉栄光と興奮に憑かれて (Nigensha Simultaneous World Issues)

ベスト&ブライテスト〈上〉栄光と興奮に憑かれて (Nigensha Simultaneous World Issues)

 

 


書籍レビュー: 死ぬまで呪われる『旧約聖書 民数記・申命記』


 

★★★☆☆

 

民数記はその名の通りユダヤ人何人いる?と数える話が冒頭に挿話されています。なんと20歳以上の男子だけで603550人もいたそうですよ(1章)。エジプトからどうやって世田谷区の人口よりも多い100万人以上が逃げたのか疑問ですので、この数字は1ケタ(2ケタかも)盛ってあるに違いありません。

主は異教徒と不信心な民をすぐ殺します。言うこと聞かない奴には容赦ありません。民数記は血塗られた歴史書です。

民が、主の与えるマナという食物に「マナ不味い肉食いたい」と文句を言うので主は怒り、大量のウズラを鼻から肉が出るくらい食わせた後に疫病で大量に殺しました(11章)。約束の地に偵察に行った人々がその地にいる屈強な戦士を見てビビったので、一人だけビビらなかったカレブという民を除いて全員殺しました(14章)。偵察隊の報を聞いて嘆き神を信じなくなった者も全員殺しました(14章)。安息日に働いた人間を民に石打ちで殺させました(15章)。反乱した部族を地割れと火事と疫病で皆殺しにしました(16章)。エドムの地で水飲みたい腹減ったと言った民全員に火の蛇を送りつけて殺しました(21章)。ミデアンという異教を拝する民族と交わった民を24000人殺しました(25章)。さらにミデアン人も男と非処女を皆殺しにし、処女は略奪しました(31章)。

酷い仕打ちは民にだけではなく、ただ一人だけ主と交信できるくらい可愛がっているモーセに対しても行われました。水不足で民が水飲みたい飲みたいエジプトに帰りたいと文句を言うので、主はモーセに杖を授け「水出してやれや」と言いましたがモーセは疲れていたのか、民に向かって「なんでお前らに水ただしてやらなきゃいかんのや」と言ってしまいました。

主は激おこプンプン、これを「メリバの水」と呼びモーセが死ぬまで恨み続けます。この失言1回でモーセは約束の地に一生入れない運命となってしまい、しかも聖書内で何回も「お前はあのときひどいことをした」と責めます。後世の人間に対してモーセを辱めています。可愛さ余って憎さ百倍ってやつですか。まさに一片の疑いもなく信じることを強制する厳しい、って言うかキチガイな宗教です。

申命記は超退屈で、モーセが今までのおさらいを一人語りした後寿命で死ぬだけの話でした。一言でいうと「神を信じろ信じないと死ぬ。私も死んだ」

主がどういった存在なのか、モーセが突然歌いだす32章にわかりやすく表現されていました。

わたしは殺し、また生かし、傷つけ、またいやす(32章)

これでいわゆる「モーセ五書」を読み終えることができました。もう律法系はこりごりです。この内容を神学的にああでもないこうでもないと解釈したり想像力を働かせたりする人たちを尊敬します。

 

以前の記事です



書籍レビュー:自分で考えることなんてできるのか『自分で考える勇気――カント哲学入門』 著:御子柴善之

★★★★☆

イマヌエル・カント。彼の名前を聞くと「インマヌエールインマヌエルー」っていう歌詞のある讃美歌(何番かわかりません)を思い出します。こどものとき「インマヌエルってなんじゃ?」と謎のカタカナ語が気になっていました。

 

本書は以前セレクトした岩波ジュニア新書20のうちの1冊です。これで5冊めです

 

これもジュニア向けにしてはかなり骨太な内容でした。内容は簡単なカントの個人史→純粋理性批判→実践理性批判→判断力批判→その後「永遠平和のために」などの解説、の順で進みます。本記事では主に純粋理性批判の記述について紹介します。

コペルニクス的転回?

「逆に考えるんだ。」のように、考え方を180度回転させるという形容で使われる用語として「コペルニクス的転回」という言葉があります。もったいぶった文章でよく使われてますね。これはカント発祥らしいのです。

コペルニクス的転回 – Wikipedia

従来は、世界というものは固定されていて不変・普遍的なものであり、それを人間が正確に認識していくことが求められていると考えられていました。これをカントは逆転し、人間の認識によって世界が形作られていくと考えました。

本書45~47Pでは「太陽光線がアスファルトを暖める」、という現象を例にとって説明しています。原因:太陽光線、結果:アスファルトが暖まった、というただの事実のように思えますが、アスファルトそのものを見ていても太陽光線が暖めたかどうかなんてわからないんじゃない?と指摘した著者は次のように述べます。

・・・私たちは「太陽光線がアスファルトを暖めたのだ」と言い、そのように自然現象を理解します。これは、見えているものに全面的に依存する態度によってではできないことです。

 では、<原因-結果>という考え方はどこから見出されたのでしょうか。ここでカントは、太陽光線に照りつけられるという「原因」がアスファルトの表面温度を上昇させるという「結果」を生み出す、そのような自然現象をそれとして成立させるのは、人間の認識のはたらきの方なのだと考えます。(P46)

こうしてカントは「対象に認識が従うのではなく、認識に対象が従う」と考えました。これが「コペルニクス的転回」と呼ばれるものだそうです。

「認識に対象が従う」という考え方は、生きていく上で強みになります。それは完全無欠の「対象」すなわち決定論的で固定されきった存在としての「世界」が存在しないということです。他人が見ている世界と私が見ている世界は、他人が作ったものと私が作ったものとなり別々のものというわけです。これを前提とすれば個人個人の価値観は違っていてアタリマエであることがすんなり理解でき、そしてあらゆる論証に対して反証可能性をつけることができます。「対象」なるものはすべて創作です。あなたが創作するんです。生きるの楽になりませんか?

ただこの論理は行き過ぎると次のような独断論になってしまうおそれもありますね。

お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではなとは (オマエガソウオモウンナラソウナンダロウオマエンナカデハナとは) [単語記事] – ニコニコ大百科

意志の自由ってあるのか

カントは「認識」に対しても普遍性をもつことができると考え、認識の中には生得的で誰でも持っているもの=「ア・プリオリ」なものがある、それは12の「純粋悟性概念」からなるのだという論を展開してきますが、個人的にはホンマですか、わたしたちそんなこと意識してないっすよ、と感じました。

この悟性とやらは論理判断を行う機能です。さきの太陽光線→アスファルトあったかい、のような<原因-結果>の対応付けを行うための機能のことです。ところがこの<原因-結果>を突き詰めると、カントが主張したい「意志の自由」が存在しないことになります。なぜならあなたの意志には突き詰めていけばすべて原因があることになるからです。

これをカントは「『物それ自体』の世界があるんだよ、人間は現象の世界しか認識できないから現象界で<原因-結果>に縛られて自由が無くなっても『物それ自体』では理論的には自由はあるんだよ」という正直言って苦しい論理によって解決します。続くページで「未来は不確定だからそこに自由がある」というちょっと救われた気になるような解説がありますが私は納得できませんでした。意志に自由はないのかもしれません。

カントは実践理性批判で「よい」とは何か、達成するためにはどうすればよいかを追求していきますが、私は「よい」が存在すると思っていませんので、カントは苦手です。。

 

1点気に入った言葉があるので引用しておきます。 これはカントの言葉ではなく、御子柴さんの言葉です。

明るい光が濃い影を生み出すからといって、光の明るさが無意味になるわけでも有害になるわけでもありません。(P152)

 

 

参考書籍

原典も一度は読んでみないといけないですね

純粋理性批判〈1〉 (光文社古典新訳文庫)

純粋理性批判〈1〉 (光文社古典新訳文庫)

 

 

美の経験とは一切の利害から解放されたものである、という考えはいいですよね

判断力批判 上 (岩波文庫 青 625-7)

判断力批判 上 (岩波文庫 青 625-7)