CDレビュー: the HIATUS – Keeper Of The Flame (2014)

★★★★★

the HIATUSは日本のオルタナティブ・ロックバンドです。細美武士という人が中心のバンドで、日本ではそこそこ売れているようです。

センスの良さに裏打ちされた丁寧な音作り

最も耳を引き付けるのがブレイクビーツの使い方の上手さです。私はリズム大好き人間なので、センスよくビートを重ねてくれるアーティストは大好きです。

シンセの使い方も上手です。オルタナというとカッチョ悪い電子音が入ると全てをぶち壊しにしてしまうおそれがあるので怖かったのですが、例えば3曲目Unhurtや7曲目Roller Coaster Ride Memoriesでは下側からうまいことシンセを潜らせて効果を上げています。実に丁寧な音作りをしていると思います。5曲目Sunset Off The Coastlineの序盤、水族館の洞窟型プールから光が漏れているような空間作りも上手ですね。

ラスト2曲が特に優れています。10曲目Don’t Follow The Crowdはリズム萌えと心を煽るカタルシスを融合させた良曲、ラストBurn To Shineは空気感と音圧で押しまくる盛り上げ昇華系燃焼ソングです。

ヴォーカルの湿り気をサウンドで覆い尽くす

正直なところヴォーカルの声は醤油的な上に線が細くてちょっと苦手です。裏声も苦手。ただし本作は良質なサウンドがカバーしてそれほど目立ちません。次はヴォーカル抜きのアルバムを作ってもらいたいですね。

期待よりも良かったので過去の1~3枚目も聞いてみようと思います。

 

 

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CDレビュー: Metallica – …And Justice For All (1988)

★★★★☆

メタリカ4枚目です。

メタルとしての構成力は4作中最もよい

本作はほとんどの曲が6分を超えており9分超えも2曲と大作揃いで、かといって単調ではなく展開が上手で飽きさせません。特に表題曲…And Justice For All は見事です。幹線道路のような太い芯を通しながらも次々と曲調を変化させ気が付くと9分46秒経っています。言うなれば環八ロックですね。

8曲目To Live To Dieも純インストの長編曲ですがこれも構成がよくできていて、やはり多摩ニュータウン通りのような巨大な背骨の先頭や最後にトンネルを付けたり車窓からマンションだらけの無機質な街を映してみたりする曲です。イメージが道路ばっかりですね。それも夜に限ります。自然破壊を伴っているところが特徴です。

本作は2, 3枚目で見られた若干軟派気味な曲はほとんど存在せず、4曲目Oneの前半だけにしか見られません。といってもこの曲、後半は6連符連発の超硬派に変わります。じゃあ全編硬派ですね。いわば超合金Zメタルです。メタルだけに言葉が重なってしまいました。

爆音のミキシングが仇に

本作で誰もが印象的に感じるのは変わったミキシングでしょう。ベースが聞こえません。そのことを批判する人は少なからずAmazonのレビューにもいらっしゃいます。私はベースについては気になりませんでした。これはこれでアリだと思います。ただし、ドラムを思いっきり強調していますがこれは失敗です!ドラムがヘタクソなのがこの上なく強調されてしまい、そればかり気になって数多くの曲が台無しになっています。特にバスドラムがひどく、…And Justice For All は見事と書きましたが実はバスドラが高速で入るたびにグチャっとなり、演奏へののめりこみ度が一歩引いてしまいます。よく出来た曲なのに本当に残念です!

 

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CDレビュー: MAN WITH A MISSION – Tales of Purefly(2014)

★★★☆☆

次の記事で日本の曲を聴く必要性を感じたので、日本のアルバムもローテーションに入れて聴いてみることにしました。

 

MAN WITH A MISSIONは日本のロックバンドです。オオカミの被り物が特徴的です。ジャケットを見て私はまず次のバンドを思い出しました。

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よくまとまった音作りをしていて、スマートな印象を受けます。そのためロックとしては若干パワー不足です。日本人好みのアレンジを加えたお醤油ロックと言ったところでしょうか。ロックは日本用にリプログラミングすると、ゲーム音楽に近いような音になるのですね。

ヴォーカルは2人いるようですが、サブヴォーカルの人の方が味があって好みです。メインの人はビジュアル系的な声の使い方が耳に立ちますし、最高音で裏声に変える歌唱法は苦手です。。サブの人が全部歌ったらかなり印象が変わったと思います。

5曲目vitamin 64の後半と9曲目When My Devil Risesは良いです。ただし、ドラム好きの私としてはどうしてもドラムのスカスカさが気になります。もっと耳を引くパワーが欲しいです。

不満点は多いですがコンビニやスーパーで流れている頭が悪くなりそうなJPOPと比べれば天と地ほどの差があります。しかしまだまだ、日本人を相手とした商業用量産音楽のレベルを超えられていない印象です。せっかくロックをやるならもっともっと尖った音を出してほしいですね。

 

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CDレビュー: Metallica – Master Of Puppets (1986)

★★★★☆

最高傑作と名高いアルバムですが、個人的にはやや期待外れでした。

哀愁からバリバリのメタルにすんなりと入ってゆく1曲目Battery, 意外性のある変拍子とメリハリ・上手な構成によって中毒性を生み出すタイトル曲Master Of Puppetsは素晴らしいです。3曲目The Thing That Should Not Beも私の好きな直線クレッシェンドでメインテーマに繋がる構成でとても良いです。

しかし後が続きません。4,5といまいちな曲が続き、7曲目純インスト曲Orionがよくないのです。。単調で迫力がありません。8分の無駄遣いです。前作のThe Call Of Kturuは見事な構成だったのに。

せっかくドラム、ギターみんな上手なのに曲で損しているアルバムと感じました。今後メタリカはガラッと作風を変えていくとの前評判がありますので、いったいどうなることやら。

 


Metallica – Ride The Lightning (1984)

★★★★★

2枚目。ラストのThe Call Of Ktuluだけでも、このアルバムを買う価値があると考える。9分近くの大曲を、シンセなし・ギミックなし・なんとヴォーカルもなしのストロングスタイルで起承転結を付けて飽きさせない展開が作れるロックバンドは早々ないと思う。お見事。

スラッシュスラッシュと言われるがこのアルバムの方向性は速さではなく、王道をゆくロックそのものだ。前作のような演奏を見せつける要素もないし、ストレートに勝負する任侠のようなものを感じた。メジャーを意識しているのか4曲目Fade To Blackのような少し軟弱な曲も入っている(でも後半が良い)。7曲目Creeping Deathのような変わった拍子の曲もよい。ギターは上手!


Metallica – Kill ‘em All (1983)

★★★★☆

デビューアルバム。若い!音がすっげー若い!やんちゃ!特に前半4曲に顕著で、オラオラ聴けやーって気持ちが伝わってくる。後半6曲は前半と比べてヘビーさが増し、1枚のアルバムの中で何故か成長しているように感じた。録音した時期が違うのか、レコーディングしながら得るものがあったのか。まだ発展途上のため、2曲目The Four Horsemenなどで顕著だが長めの曲がただ長い演奏の見せつけと感じて少々鼻につくのでもっと成熟してほしいなあ。


Slayer – World Painted Blood (2009)


★★★★★
現時点の最新アルバム。1〜3曲目が何故かあまりぐっと来ずスレイヤーも終わってしまったのか?と思ったら4曲目Beauty Through Orderからドラムの切れが突然良くなり、そこから最後まで本気の演奏。最初から本気出せよ!いつものテンポが目まぐるしく変わるジェットコースターメタルは健在で、9曲目Psychopathy Redで全力出し過ぎたり、ラストNot Of This Godで6/8拍子に挑戦してみたり最後まで挑戦をやめない姿勢に脱帽した。このバンドはいつまでも伝説であり続けそうだ。
次回からスレイヤーと並ぶスラッシュ四天王の一角、メタリカを聴いていこうと思う。


Slayer – Christ Illusion(2006)


★★★☆☆
うーん。
今までに聞いたスレイヤーのアルバムの中で、唯一ドキドキできなかった。印象に残る曲が少ない。辛うじて聞けるのは9曲目Cultくらいか。いつも通り速い、強い。しかし、それだけだ。前作まで進化し続けてきたおどろおどろしさ、歌詞だけではなく曲全体から当然のように発せられる暴力性、聞き手をグイグイ引っ張る力、それらが抜けてしまった。とても残念だ。最近の画像を見るとみんなデブってしまっているので、毒気が抜けていい人になっちゃったんじゃないのか!?また、ドラマーが変わってしまったのが一因かもしれない。私は、ボスタフさんの方が好きです。
スレイヤーの現存するアルバムもあと1枚。なお、2015年に新譜が予定されているらしい。


Slayer – God Hates Us All(2001)


★★★★★┗=͟͟͞͞( ・∀・)=͟͟͞͞┛
大幅に進化した。デビューから20年もたっているというのに、信じられない。もはや3rdすら軟弱に思えてくる、鋼のヘヴィネスサウンドと化したスレイヤー。激しく爆音寄りのマスタリングがされており、まさに近代兵器。発売日は何の因果か9/11アメリカ同時多発テロと同日である。。またこの作品は歌詞から悪魔的なものが消えており、より人間の内面に潜む破壊性、暴力性を抉るものとなっている。歌詞は何となくしか聞き取れないので全体的な雰囲気からそう感じていたが、後で裏付けられてびっくり。人間寄りになったためか、初めてFワードが歌詞に乗るようになった。トム・アラヤのヴォーカルはこれまでにないくらい爆発しており、特に4曲目New Faithは強いインパクトを与える。またドラムのポール・ボスタフの気が狂ったようなリフ回しがこのアルバムの火力を大幅に底上げしている。いままでのどのアルバムよりも激しい。ちなみに彼はこの作品の後肘の故障で脱退した。遅いドローン系ダウナーからリズム変速曲、スピード違反の超スラッシュまですべて取り揃えたオールラウンドかつ迫力マシマシの一作。スレイヤーでまずどれを聞くかと言ったらまずこのアルバムを薦める。
感覚的なものだがこの作品はいままでのただ破壊するだけと言った世界観から、抗い闘うものへと昇華されつつあるような気がする。いや歌詞は今まで通り中二的で暴れまわってるんだけど、何故か、聞いていて元気が出た。


Slayer – Diabolus in Musica(1998)


★★★★★✌(՞ਊ՞✌三✌՞ਊ՞)✌
音圧大増加、モダンな外面に変わるも内面的に全然変わっていないスレイヤーの7枚目。低速曲を挟むことで高速曲がより生きてくるアルバム単位でみると完成度は最も高いように思われる。個人的には、若さで飛ばしている3rdよりも好き。ドラムが最高すぎてもう言うことなし。正確無比に全ての高速フレーズを叩き切る死の職人。何回びっくりしたかわからない。