CDレビュー: Paul Bley with Paul Motian – Notes (1987)

★★★★☆

ジャズドラマーPaul Motianのボックスセット、Complete Remastered Recordings シリーズの4枚目です。

 

こんな風に年を取りたい

まずジャケットがいいですよね。これ書いた人絵のセンスあるなぁ。すてきすぎる。

コンビを組んでいるPaul Bleyはジャズピアニスト。穏やかにキラキラした演奏を聞かせてくれます。1曲目タイトルチューンNotesは控えめでかつ豪華という味のある演奏を堪能できます。この2人、他にもコンビでいくつかアルバムを出してるみたい。

一番好きなのは6曲目のNo.3です。2人ともいろんな楽器を使って遊びまくりながらこれまたおどけた音を出し続けるのです。タンバリンや鈴、音の高いベル?のようなものなで。10年ぶりに再会した年配の友人同士が語り合ったり、一緒にバーで飲んだり、街で遊んでみたり、ちょっとしたケンカもしてみたり、、派手で目立つ曲は一つもありませんが、こんな風に年を取れたらいいな、と思わせるアルバムでした。1987年の時点ではブレイが55歳、モチアンが46歳ですね。あと15年くらいしたら、こんな風になれるのかなぁ。

3曲目Piano Solo No.1ではブレイのピアノソロ、4曲目West 107th Streetでモチアンのドラムソロを聞くことができます。

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ドラムソロ大好きです

 

 

 

ジャズの他のCDレビューはこちらです。


書籍レビュー: DNAとウイルスこわい『カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第2巻 分子遺伝学』 著:D.サダヴァ他

★★★★★

 

2巻は染色体分裂~メンデル遺伝学~DNA~ウイルス遺伝学~生物の遺伝学がテーマです。1巻と同様豊富な図表が理解を強力に助けてくれることと、今回は化学知識も不要で誰でもバリバリ読み進めることができる素晴らしい本です。

 

DNAやばすぎ

DNAや遺伝子と言えばすっかり比喩として使い古された感があります。威張ってる好調が「我が校のDNA」なんて言いますよね。でも本書を読むと軽々しくDNAなんて言えなくなります。

DNAは私たちの体を構成する全タンパク質の鋳型です。DNAからRNAがサブセットとして抜き出され、リボソームで解釈されて細胞を構成するタンパク質ができます。

2行で書ける内容ですが、この間にはもう涙なくては読めないほどの超精巧な作業、順番が完璧に整った化学反応、適材適所の酵素の配置、エラー訂正機構、正と負のフィードバックによる濃度調節、などなど万馬券を1万回連続で当てるよりずっと難しい特大奇跡の積み重ねによって我々が生きていることを認識させてくれます。15年くらい前に流行った泣きギャルゲーとかセカチューとかコブクロとか何それちっちゃすぎ!って思えるくらいの奇跡です。生物学者はみんな宗教がかってもおかしくないです。本書ではその詳細を400P以上使って解説するのですすごい。

全体的に抱いた印象は以上ですので残りは特に気になったところを紹介します。

わたしたちの中の遺伝子組み換え

減数分裂という細胞分裂があります。ふつうの体細胞分裂は染色体が2倍になって細胞分裂し、1倍の細胞が2つできます。ところが精子と卵子は2倍になりません。染色体は半数になります(正確には2倍になってから1/4になります)。半数と半数の染色体が結び付いて一人前の受精卵ができるというわけです。子供は精子と卵子の遺伝子をランダムで受け継ぐため多様性が生まれます。

ところがたまげたことがあって、減数分裂時も組換えがあるそうなのです。分裂前に染色体同士が交差して、そのまま入れ替わってしまうらしいです!乗り換えと呼ばれています。

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特定健診(メタボ)対策・ダイエット レシピ集|生活習慣病予防の総合健康情報サイト|メタボヘルプ ドットコム【遺伝子ふしぎ発見!】

つまり我々のキンタマの中では毎日遺伝子組み換えが起こっているというわけですよ!びっくり!これは有性生殖に加えてもう一段階進んだ遺伝的多様性を生み出します。精子や卵子全員に遺伝的な個性があるだなんて知りませんでしたよ。

宇宙人バクテリオファージ

これは高校生物でも習うので知っている人も多いと思います。私は習ったような気がしますが忘れました。

ウイルスとは自己増殖だけを目的としたDNAとそれを囲むタンパク質だけでできた存在です。自分で栄養を合成したりできないので、生物とはみなされません。他の生物に寄生することだけが彼らの生きる道です。

で、このウイルスの例として挙げられているT4バクテリオファージが怖いのです。

なんですかこの宇宙人!

ウィルス『ファージ』がまるで人工物のようだと話題に。 – NAVER まとめ

 

http://livedoor.blogimg.jp/chaos2ch/imgs/9/8/98c56a52.jpg

細胞を刺してDNAを注入するファージ

ウィルス『ファージ』がまるで人工物のようだと話題に。 – NAVER まとめ

 

 

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ファージに取りつかれた細胞は破裂して死ぬ

高等学校生物 生物I‐遺伝 – Wikibooks

 

DNAを注入された細胞はお人よしなことに細胞内器官が「わーいDNAが来たよー合成合成」とウイルスのDNAを使って、しかも自分のエネルギーを使ってウイルスのタンパク質を合成してしまい、上図のようなことが起きます。しかもウイルスなんて単純ですから大量に合成してしまいます。増殖したウイルスは細胞壁を溶かす酵素を出して細胞を壊し大量のウイルスが飛散、被害が拡大していきます。おそろしい

また、ウイルス由来のDNAは宿主細胞のDNAを組み替えてしまいます。そして宿主のDNA内で長い間潜伏し、例えば宿主の体調が良くなった時など(細胞内の特定の物質の濃度でわかるそうです)を狙って発現し増殖します。トロイの木馬ウイルスみたいなもんです。コンピューターで発明される前に、生物プログラムとして存在していたとは。見た目の怖さも抜群ですがここは心底ゾッとしました。

インフルエンザにかかったあなたはこれが体内で起きています

ところがこいつを病原菌にとりつくように改造(というか抽出と培養)すれば、病原菌だけを安全に殺すことができます。これを使って最近流行の多剤耐性菌を退治することも期待されています。ファージセラピー です。宇宙人も使いよう。

 

他にも遺伝的多様性に貢献したり病気の原因になったりするきまぐれなトランスポゾンとか細胞内のちょっとした物質の増加でスイッチの入るアポトーシス(細胞死)の仕組み怖いとか近親婚に病気が多い理由(劣性遺伝子がかち合いやすいから)とかDNA複製の心細すぎる仕組みとか驚愕した例はいっぱいあるのですが、時間と紙面の関係でここまでにします。気になる方はぜひ読んでみてください!

 


CDレビュー: John Coltrane – Soultrane (1956)

★★★★☆

ジャズの100枚シリーズ21枚目。テナーサックス奏者ジョン・コルトレーン(1926-1967)の作品です。

 

まったりのようでいて激しかった

1曲目Good Baitは非常にゆったりとした曲調ですが中盤にわけわかめのアドリブを混ぜてきて油断がなりません。音は今まで聴いた中ではキャノンボール・アダレイに次ぐぶっとさ。直感的に思いつくイメージは、ワカメです。サザエさんではなく植物の方です。

2曲目以降はレッド・ガーランドさんのピアノが冴えます。ただ肝心のサックスが達人というよりちょっと下品に聞こえてしまって、むむむと思いました。

5曲目Russian Lullabyは燃えますね。この手の曲が好きな私はまだまだミーハーなのかもしれません。コルトレーンは「20世紀のジャズ最大の巨人」と呼ばれているらしいですが現時点では特別気に入る音を出してくれません。初期の作品ということもあるのでしょうけれど。ピアノのガーランドさんは素晴らしいです。

 

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CDレビュー: Oliver Messiaen Complete Edition – Petites Esquisses d’oiseaux, Etudes de rythme, etc(CD2)

★★★★☆

 

鳥先生メシアンのボックスセット2枚目です。本CDは小~中規模のピアノ曲が収録されています。

鳥鳥鳥

2枚目も鳥がよく登場します。先頭のPetites Esquisses d’oiseaux「鳥の小スケッチ」はその名の通りrouge-gorge(ヨーロッパコマドリ)やmerle noir(クロウタドリ)などなどの鳥の声だけで構成される曲を6つ集めたものです。しかし6曲中rouge-gorgeが3曲も入ってますのでメシアン先生はよほどコマドリが好きだったと見えます。

鳥と馬鹿にするべからず、演奏者には相当体力が要求されるようです。時には爆音時には静謐、演奏者の荒い息遣いまで聞こえるという地味に燃える曲です。

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楽譜付きの素晴らしい動画がありました。リストのような殺人的な楽譜ではありませんがやはりすんげぇ変です。一体どのような感性が必要とされるのでしょうか。

 

もう一曲好きな曲があります。Rondeau(ロンド)という2分ちょいの小品です。練習曲めいていますが、所々ピチョーンとか鳥の鳴き声っぽいものが挿入され、軽く狂気を帯びた魅力的な子供のようなとても変な曲です。

Messiaen: Rondeau

Messiaen: Rondeau

 

練習曲っぽいという予想は当たり、youtubeには子供の演奏がいくつかアップロードされています。上のRoger Muraroさんの演奏(当BOX収録分です)と比べるとやはり情緒に欠けてしまいますが、12歳でこれ弾けるのはオソロシイですね。一体どんな練習を積んでいるのか、ピアノの世界はこわい。

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Tracklist:

Petites esquisses d’oiseaux
1 I. Le rouge-gorge [2:12]
2 II. Le merle noir [2:15]
3 III. Le rouge-gorge [2:18]
4 IV. La grive musicienne [2:08]
5 V. Le rouge-gorge [2:31]
6 VI. L’alouette des champs [2:14]
Etudes de rythme
7 I. Ile de feu 1 [2:00]
8 II. Mode de valeurs et d’intensités [3:28]
9 III. Neumes rythmiques [7:02]
10 IV. Ile de feu 2 [4:25]
11 Cantéyodjaya [13:05]
12 Rondeau [2:25]
13 Fantaisie burlesque [7:27]
14 Prelude pour piano [2:50]
15 Piece pour le tombeau de paul dukas [3:31]

 

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


フィスコレポートを読む セレクト6030アドベンチャー、2153EJホールディングス、3681ブイキューブ

 

6030 アドベンチャー(ややうさんくさい小規模バカ高株)

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格安航空券予約販売が主力の企業です。従業員数17人、まだまだスタートしたばかりと言った感じです。直近の通期決算は売上69.1%増、営業利益413.6%増ととてつもない成長を遂げています。強みはLCCを生かした価格優位性と18か国語対応という窓口の広さです。航空券というその特性上、ほぼLCLとインバウンド頼みに近い銘柄ですね。説明会資料の「インバウンド」が「インバンド」になっていたりウェブサイトに所々リンク切れがあったり雑でちょっと心配になります。

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これはやりすぎじゃないのwww

1兆円ってオンライン市場全体じゃん!2020年まではそれなりに成長するとは思いますが。

今後も新規事業を立ち上げインバウンド市場の囲い込みを図ります。航空機だけではなく、訪日観光客向けのツアーやアクティビティ、宿泊先やレストランの手配などを手掛けていくそうです。

あまりに成長率がすごいので株価はいかに。。?

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PBRは15.22倍、実績PERで142倍ですね。うん高すぎ!利益が1年で4倍にならなきゃ正当化されない価格ですね。先月末の暴落時ぐらいしか怖くて拾えない株でした。

 

2153EJホールディングス(激安放置株)

公共事業のコンサル会社です。官公庁中心でインフラ・治水・治山などの地味な案件が多いため成長率は低く、最近の人件費高騰により利益率が徐々に低下しています。

これだけだと魅力が無いですがPERがなんと4倍。超割安です。建設業であることと配当性向が9.7%と非常に低いことが原因と思われます。でもこの安値のため配当利回りは2.19%と中間値よりほぼ上の水準です。もし増配があれば一気に株価は上がるでしょう。

官公庁向けなので業績が突然大幅悪化することはないでしょう。しかし成長もあまりないので、増配やら突然の人気高騰やらを見込んで長期保持するしか道のなさそうな銘柄です。

3681 ブイキューブ(安定急成長割高株)

V-CUBE

Web会議・TV会議のクラウドサービスのトップシェア企業です。SaaSによる月額課金が収入源ですので非常に手堅いストックビジネスである上に、2Q売上は前期比+55.8%と破竹の勢いで成長しています。

海外展開も急拡大中で、2Q決算では中国市場で前期の3倍以上に売上を伸ばしました。強みはアジアを中心とした海外拠点間のデータセンター間に張られた専用線で、これにより不安定になりがちな多国間の高速通信を可能としています。また、最近買収したアプライアンス事業(電子黒板)が文教市場での需要が高まっておりこれも成長ドライバーとなりそうです。更にドローン、オンライン研修、遠隔監視・医療・教育ともう目まぐるしいくらいのホットな話題が詰まっています。

目立つリスクもなく財務も健全、解約されにくいビジネスモデルの上に急成長とハッキリ言って強みしか見つかりません。

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ああーやっぱりなあ。株価は年初来安値から2倍以上になっていてPER88.82倍です。過熱にもほどがあります。

今年頭に買っていれば倍バガー。実に残念ですね。と言ってもここまで高騰しているととっくに売ってるでしょうけど。

 

 

今週は両極端な銘柄揃いですね。面白かったですが買えそうな銘柄はありませんでした。


書籍レビュー: 刺激的な数学教養書『数学入門 <上>』 著:遠山啓

★★★★★(≧ω≦)

2年生の途中までしか終えていない大学教育の水準に追いつくため、まずは数学の勘から取り戻さないといけません。そこで尊敬している遠山先生の新書、名前もそのものずばり「数学入門」という本があるというので手に取ってみました。

数学者は語学マニア

著者の遠山啓(とおやまひらく、1909-1979)さんは数学者・数学教育者です。タイルを使って量の概念を確実に身に着ける「水道方式」で有名です。

1959に出版されたという本書では、「ものを数える」という概念の誕生から始まって加減乗除~方程式・代数学~幾何学~複素数までの説明を新書1冊で(演習無しで!)完結させるというなかなか野心的な書でした。

あちこちで目を引くのは遠山先生の教養レベルの高さ、というかマニアさです。まず数の概念についてはあらゆる言語や部族の数詞に言及します。

たとえば、英領ニューギニアのビュギライ族はつぎのような数詞をもっている。

1→タランジェサ

2→メタ・キナ

3→ギジメタ

4→トペン

5→マンダ

6→ガベン

7→トランクジンベ

8→ボデイ

6→ンガマ

10→ダラ

これは身体の各部分の名であるという。人間の身体の各部に関連させて数えていく、という流儀によると数百の数まで数えられるだろうが、これは覚えこむのが大変で会って、これでは記憶力をひどく酷使することになる。

この調子でいろんな方言などを比較しつつ数の概念の誕生に迫っていきます。。現代の天才数学者ピーター・フランクルさんは14か国語を話せるそうですので、数学者というのは語学に精通していることが多いようです。言語は面白いパターンに溢れていますから数学者好みと言えましょう。私も外国語は大好きですが数学は苦手です。

まさかクラメルの公式の意味が分かるとは

数論・四則演算で最も驚くべき個所は分数の足し算引き算・通分約分のところです。約分を「たたむ」、通分を「ひろげる」と折り紙に例えている個所はマジ感動しました(画像が無いのが残念です)。ここから量をタイルで考えるという発想に至り「水道方式」に繋がっていったのでしょう。

代数の章では一次方程式→行列→クラメルの公式までぶっ飛ばします。行列が多元1次方程式の解を求める要請から出てきたので必然とはいえここまで進むとは思いませんでした。さすがにここはしんどかったですが線形代数の授業で丸暗記するしかなかったクラメルの公式の意味が分かり驚きました。

公理を積み上げてできた幾何学

幾何学の章では浪人になる直前になんとなく本屋で手に取ったこの本を要約したような感じでした。

幾何への誘い (岩波現代文庫―学術)

幾何への誘い (岩波現代文庫―学術)

 

幾何学は「2点を通る直線は必ずあり、しかも1本しかない」などの公理と呼ばれる直感的に「当たり前」な数少ない事実だけを基にして複雑な証明を組み立てていく美しい学問です。と上の本を読んで感動したことを思い出しました。大学1年で買わされた杉浦「解析入門」も公理から微積分を導いていく本なのですがこちらは美しいと思えずただ苦痛だった記憶しかありません。いつか読破してやるんだ。。

 

あちこちにダンテやらプラトン、ショーペンハウエル、デカルト、スタンダールなどの引用が散りばめてあり、著者の教養の高さが伺えるとともにそれらの書物もまとめて読みたくなってしまう素敵な本でした。 下巻は関数、極限、微積分です。どういった説明が出てくるのかワクワクです。

 

 

参考書籍

イスラム数学者の話。

ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)

ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)

 

 

数学が得意だったダンテ。7や100といった数字が大きな意味を持つ。

神曲 地獄篇 (河出文庫 タ 2-1)

神曲 地獄篇 (河出文庫 タ 2-1)

 

 

幾何学の聖書。

ユークリッド原論 追補版

ユークリッド原論 追補版

 

 


数独ソルバー

最近webプログラムを全く作成しておらず腕がなまって仕方ないので、新聞で見たシルバーウィーク数独特集!みたいな記事に触発されて数独ソルバーを作ってみました。時間もないので即興で2時間半しかかけてません。ですので予想が必要な難しい問題は一切できず一意に決まるごく簡単な問題しか解けません。

 

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プログラム倉庫に置きました。

 

今日はここまでだけれど、あとは再帰処理を使って予想→矛盾発見→候補から外す→予想しなおし→の繰り返しで一つずつ潰していけるはず。計算処理よりもインターフェースなどの準備段階の方が時間がかかったので問題を解く処理の強化自体は案外すぐできてしまうかも?


CDレビュー: Ludwig van Beethoven, Emil Gilels(pf) – Piano Sonatas, No.21, 26, 23(DG111 CD20)

★★★★★

 

111 Years of Deutsche Grammophon、ようやく20枚目です。DG111シリーズのピアノ作品は並行して聴いているGreat Pianistsシリーズとかぶることが多いのですがこのCDは運よく重複していなかったので、聴きました。

エミール・ギレリス(1916-1985)はソビエト・ロシアのピアニストです。例によってユダヤ人です。音楽家ってなんでユダヤ人ばっかりなんでしょうね。金持ちだからレッスンや教育に金をかけられるからなのかな。ジャケットを見ると72~75年の録音なので50代、そこそこ高齢の演奏ですね。本CDではベートーヴェンのピアノソナタ21番「ワルトシュタイン」26番「告別」23番「熱情」が収録されています。中期傑作選といったところでしょうか。

両手剣でぶった切るベートーヴェン

しょっぱなのワルトシュタイン第一楽章が硬い硬い。音切りまくりであっさり塩味か?と思っていたら油っ気がないだけでスピアーで突くような正確で力強い演奏でした。とても変わった音を持つ人ですね。ワルトシュタインは第三楽章が神展開なのですが見せ場でも音を切る切る。すっげぇ変わった弾き方。好みが分かれるところだと思います。私は慣れないので何とも評価できませんでしたがここまで極端だといやな感じはしませんね。

告別第一楽章も見せ場の和音を剣でも振り回すように切りまくりです。腹にはもたれないけれどコショウのように非常に刺激的な音です。第三楽章のフォルテッシモのあとのキラキラパートですら金属的で硬質です。

熱情は上記2曲よりも力が入っていて第一楽章は超爆音展開を見せ、第三楽章は今まで聴いた他のピアニストの演奏と比べるとテンポを落としていてかつ静かな狂気っぽいものを帯びるコワい演奏です。この曲だけ何故か硬質性が全くありません。ラストの16分ユニゾンパートは誰の演奏を聴いても素晴らしいですね。

 

amazonレビューは総じてベタ褒めですが私はとてもクセのある奏者であると感じました。嫌いな部類ではないのとベートーヴェンが好きなので評価は高めですが、Great Pianistsシリーズ(3組6枚もある)の彼の収録曲は一体どんな音を聴かせてくれるのか楽しみです。

しかしピアノ曲って言うのは創意工夫が難しそうな楽器のはずなのにピアニストによってなんでこんなに印象が変わるんでしょうね。不思議でなりません。

 

 

 

日本版は同じジャケなのに収録曲が違います。どうも悲愴・月光・熱情のいわゆる三大ソナタを1軍、それ以外を2軍と分けて2軍だけでCDを出したようです。これはいただけない。作曲時期で分けるべきです。

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」、第21番「ワルトシュタイン」、第26番「告別」

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」、第21番「ワルトシュタイン」、第26番「告別」

  • アーティスト: ギレリス(エミール),ベートーヴェン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2012/05/09
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Claudio Monteverdi, John Eliot Gardiner(cond.) – Vespro della Beata Vergine (DG111 CD18, 19)

★★★★★─=≡Σ((( つ•̀ω•́)つ

 

クラウディオ・モンテベルディ(1567-1643)はイタリアの作曲家です。2枚組100分ちょいの長大なこの楽曲の邦題は『聖母マリアの夕べの祈り』。いつまで祈るんだ!

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クラウディオ・モンテヴェルディ – Wikipedia

いい感じのじーさんですね。

単純なのに爽快

この曲が作曲されたのは1610年。有名な作曲家の中では古株のモーツァルトが生まれるより146年も前です。ですので曲はとても古風、というか単純です。1曲目なんて同じ和音でずっと押しまくるだけです。アーメンでシメるお馴染みのラストも多発します。

ところが2枚組であるにもかかわらず、このCD、全く飽きません。それどころか演奏から感じられる異様な熱気と、独特の音響(教会内で演奏しているらしいです)により演奏中ずっと興奮しっぱなしになりました。昔の曲は単調で飽きるというイメージがあったのですが完全に裏切られました。このCDすごい。私は人間の持つ迫力が直接ぶつかってくる声そのものが大好きなのかもしれませんね。

 

動画ありました!2014年、ヴェルサイユ宮殿・王家礼拝堂(すごい名前)での収録です。ということはこのCDとはバージョン違いですが、やべーマジで大聖堂だよ、、


Monteverdi – Vespers, &quot;Vespro della Beata Vergine …

本CDでは中央に穴が空いているかのような音場効果を感じることができたのですがこの動画を見て納得しました。教会って上部が巨大な空洞になってるんですね。壁画がきれいすぎます。ヨーロッパの人々の宗教心には本当に恐れ入ります。奏者真ん中の大きな素敵楽器はリュートというそうですよ。CDだと見えない独唱の人の表情が濃すぎてちょっと引きます。

なぜ魅力的?

私はこんな古い曲にどうして惹かれてしまったのでしょう?疑問が尽きません。人間の声の力?教会のパワー?実は祖先がイタリア人だった?最近仕事中にヘビーローテーションしているバッハのカンタータのせい?

音楽が人間の感情を喚起するためには音というただの空気の振動を脳が分析して一定のパターンを解釈して意味づけをすることでしか得られないと考えます。したがってより感情を動かすのは「慣れている」曲であるパターンが多いはずです。現代音楽みたいな訳わかめの曲を聴いたとしても「わかんねえよバカ」とか「眠い」と感じてオシマイになりがちです。ですが、本CDのような曲を聞くのはほぼ初めてで馴染みはありません。一聴して気に入る曲ってなんでしょう?一目惚れみたいなもの?一聴き惚れ?色々要素はあると思いますが引き続き考え続けていきたいと思います。

 

 

 

Vespro Della Beata Vergine [DVD] [Import]

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こっちが本CDに対応する映像のようです。イタリアはヴェネチア、サン・マルコ教会での収録。

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


書籍レビュー: 智者たちの戦争『ローマ人の物語 (4) ― ハンニバル戦記(中)』 著:塩野七生

★★★★★

 

第4巻。ようやく全体の約1/10です。本書では紀元前219-206年、ローマvs地中海の盟主カルタゴの第二次ポエニ戦争の中盤戦が舞台です。

ハンニバル登場

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ハンニバル – Wikipedia

本書に登場する最大の難敵ハンニバルは時々名前を聞く武将です。イタリアでは悪いことをした子供に対して「戸口にハンニバルが来ていますよ」と言って脅すそうです。まるでナマハゲのような扱いです。

彼は潜在兵力75万と言われるローマにたった2万6千の兵力で単身乗り込み、本書の中盤では南イタリアをほぼ制圧してしまうという天才的な才能をもちます。

ハンニバル進撃路

 

奇跡的な行軍を成功させたのは彼の智慧が全てと言ってもよいでしょう。ハンニバルは手薄な北側からローマを攻めることを考えました。しかしハンニバルの拠点のスペインからフランスを超えてイタリアに攻めるまでの間には1つ難所があります。

アルプス山脈です。これはハンニバルの「アルプス越え」と呼ばれ非常に有名であるそうです。

この写真は最高峰のモンブラン山、標高4810m。他にも4000m級の富士山を超える山々が連なる難所を、ハンニバルは4万6千の兵と30頭の象を連れて超えました。すげぇ。富士山を4万6千と30頭の象が行軍する様子を想像すると気が遠くなります。そして上で2万6千の兵力と書いたように、2万人が山越えで死にました。しかしこの犠牲をあらかじめ計算してまでもハンニバルは山越えが重要と考えていました。

この無謀な行為はローマの油断につけこむことに見事成功し、ローマに壊滅的な打撃を与える前216年のカンネの戦いなどを通して10数年にわたりハンニバルはイタリア内で暴れ続けます。アレクサンダー大王、ハンニバル、優れた武将が1人出ると戦局はこうも大きく変わるものかと驚かされます。

あの偉大な数学者も登場

本書ではもう一人、誰でも名前を知っている智者が登場します。

アルキメデスです。彼はシチリア半島の自治区シラクサの大科学者でした。シラクサは本書でハンニバルの暗躍によりローマからカルタゴに寝返ります。したがってアルキメデスはローマの敵として登場します。浮力の原理という偉大な発見をした彼は、まるでアニメのお約束よろしく、ビックリドッキリメカでローマ軍を翻弄しました

兵器その1

Claw of Archimedes – Wikipedia, the free encyclopedia

「アルキメデスの鉤爪」と呼ばれるこの兵器は、城壁に取り付けたクレーン装置のようなもので、図のように船をひっかけて転覆させます。ローマ海軍は大きな被害を被りました。

兵器その2

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/58/Archimedes_Heat_Ray_conceptual_diagram.svg/220px-Archimedes_Heat_Ray_conceptual_diagram.svg.png

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%AD%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%B9#.E3.80.8C.E3.82.A2.E3.83.AB.E3.82.AD.E3.83.A1.E3.83.87.E3.82.B9.E3.81.AE.E7.86.B1.E5.85.89.E7.B7.9A.E3.80.8D.E3.81.AF.E5.98.98.E3.81.8B.E7.9C.9F.E5.AE.9F.E3.81.8B

「アルキメデスの熱光線」。これは本書に登場せず、リンク先でも存在を疑問視されていますが本当にあったと考える方がロマンがあります。

虫眼鏡で紙を焼く如く巨大な鏡で船を焼く、ソーラ・レイシステムです。紀元前に実用化されていたのですからガンダムは遅れていると言わざるを得ません。

なお彼は戦火の中ローマ兵に手違いで殺される直前まで数学の問題を解いていたマジな数学オタクだったそうです。本書のMVPはアルキメデスにあげたいと思います。

 

 

 

関連書籍

シラクサ攻防戦を描いた漫画。読みたい。もちろんアルキメデスも登場します。なんと作者は寄生獣の人です。

ヘウレーカ (ジェッツコミックス)

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これも読んでみたいですね。

ハンニバルに学ぶ戦略思考

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