CDレビュー: John Coltrane – Soultrane (1956)

★★★★☆

ジャズの100枚シリーズ21枚目。テナーサックス奏者ジョン・コルトレーン(1926-1967)の作品です。

 

まったりのようでいて激しかった

1曲目Good Baitは非常にゆったりとした曲調ですが中盤にわけわかめのアドリブを混ぜてきて油断がなりません。音は今まで聴いた中ではキャノンボール・アダレイに次ぐぶっとさ。直感的に思いつくイメージは、ワカメです。サザエさんではなく植物の方です。

2曲目以降はレッド・ガーランドさんのピアノが冴えます。ただ肝心のサックスが達人というよりちょっと下品に聞こえてしまって、むむむと思いました。

5曲目Russian Lullabyは燃えますね。この手の曲が好きな私はまだまだミーハーなのかもしれません。コルトレーンは「20世紀のジャズ最大の巨人」と呼ばれているらしいですが現時点では特別気に入る音を出してくれません。初期の作品ということもあるのでしょうけれど。ピアノのガーランドさんは素晴らしいです。

 

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ジャズの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Oliver Messiaen Complete Edition – Petites Esquisses d’oiseaux, Etudes de rythme, etc(CD2)

★★★★☆

 

鳥先生メシアンのボックスセット2枚目です。本CDは小~中規模のピアノ曲が収録されています。

鳥鳥鳥

2枚目も鳥がよく登場します。先頭のPetites Esquisses d’oiseaux「鳥の小スケッチ」はその名の通りrouge-gorge(ヨーロッパコマドリ)やmerle noir(クロウタドリ)などなどの鳥の声だけで構成される曲を6つ集めたものです。しかし6曲中rouge-gorgeが3曲も入ってますのでメシアン先生はよほどコマドリが好きだったと見えます。

鳥と馬鹿にするべからず、演奏者には相当体力が要求されるようです。時には爆音時には静謐、演奏者の荒い息遣いまで聞こえるという地味に燃える曲です。

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楽譜付きの素晴らしい動画がありました。リストのような殺人的な楽譜ではありませんがやはりすんげぇ変です。一体どのような感性が必要とされるのでしょうか。

 

もう一曲好きな曲があります。Rondeau(ロンド)という2分ちょいの小品です。練習曲めいていますが、所々ピチョーンとか鳥の鳴き声っぽいものが挿入され、軽く狂気を帯びた魅力的な子供のようなとても変な曲です。

Messiaen: Rondeau

Messiaen: Rondeau

 

練習曲っぽいという予想は当たり、youtubeには子供の演奏がいくつかアップロードされています。上のRoger Muraroさんの演奏(当BOX収録分です)と比べるとやはり情緒に欠けてしまいますが、12歳でこれ弾けるのはオソロシイですね。一体どんな練習を積んでいるのか、ピアノの世界はこわい。

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Tracklist:

Petites esquisses d’oiseaux
1 I. Le rouge-gorge [2:12]
2 II. Le merle noir [2:15]
3 III. Le rouge-gorge [2:18]
4 IV. La grive musicienne [2:08]
5 V. Le rouge-gorge [2:31]
6 VI. L’alouette des champs [2:14]
Etudes de rythme
7 I. Ile de feu 1 [2:00]
8 II. Mode de valeurs et d’intensités [3:28]
9 III. Neumes rythmiques [7:02]
10 IV. Ile de feu 2 [4:25]
11 Cantéyodjaya [13:05]
12 Rondeau [2:25]
13 Fantaisie burlesque [7:27]
14 Prelude pour piano [2:50]
15 Piece pour le tombeau de paul dukas [3:31]

 

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


フィスコレポートを読む セレクト6030アドベンチャー、2153EJホールディングス、3681ブイキューブ

 

6030 アドベンチャー(ややうさんくさい小規模バカ高株)

http://jp.adventurekk.com/images/adventure-logo.png

格安航空券予約販売が主力の企業です。従業員数17人、まだまだスタートしたばかりと言った感じです。直近の通期決算は売上69.1%増、営業利益413.6%増ととてつもない成長を遂げています。強みはLCCを生かした価格優位性と18か国語対応という窓口の広さです。航空券というその特性上、ほぼLCLとインバウンド頼みに近い銘柄ですね。説明会資料の「インバウンド」が「インバンド」になっていたりウェブサイトに所々リンク切れがあったり雑でちょっと心配になります。

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これはやりすぎじゃないのwww

1兆円ってオンライン市場全体じゃん!2020年まではそれなりに成長するとは思いますが。

今後も新規事業を立ち上げインバウンド市場の囲い込みを図ります。航空機だけではなく、訪日観光客向けのツアーやアクティビティ、宿泊先やレストランの手配などを手掛けていくそうです。

あまりに成長率がすごいので株価はいかに。。?

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PBRは15.22倍、実績PERで142倍ですね。うん高すぎ!利益が1年で4倍にならなきゃ正当化されない価格ですね。先月末の暴落時ぐらいしか怖くて拾えない株でした。

 

2153EJホールディングス(激安放置株)

公共事業のコンサル会社です。官公庁中心でインフラ・治水・治山などの地味な案件が多いため成長率は低く、最近の人件費高騰により利益率が徐々に低下しています。

これだけだと魅力が無いですがPERがなんと4倍。超割安です。建設業であることと配当性向が9.7%と非常に低いことが原因と思われます。でもこの安値のため配当利回りは2.19%と中間値よりほぼ上の水準です。もし増配があれば一気に株価は上がるでしょう。

官公庁向けなので業績が突然大幅悪化することはないでしょう。しかし成長もあまりないので、増配やら突然の人気高騰やらを見込んで長期保持するしか道のなさそうな銘柄です。

3681 ブイキューブ(安定急成長割高株)

V-CUBE

Web会議・TV会議のクラウドサービスのトップシェア企業です。SaaSによる月額課金が収入源ですので非常に手堅いストックビジネスである上に、2Q売上は前期比+55.8%と破竹の勢いで成長しています。

海外展開も急拡大中で、2Q決算では中国市場で前期の3倍以上に売上を伸ばしました。強みはアジアを中心とした海外拠点間のデータセンター間に張られた専用線で、これにより不安定になりがちな多国間の高速通信を可能としています。また、最近買収したアプライアンス事業(電子黒板)が文教市場での需要が高まっておりこれも成長ドライバーとなりそうです。更にドローン、オンライン研修、遠隔監視・医療・教育ともう目まぐるしいくらいのホットな話題が詰まっています。

目立つリスクもなく財務も健全、解約されにくいビジネスモデルの上に急成長とハッキリ言って強みしか見つかりません。

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ああーやっぱりなあ。株価は年初来安値から2倍以上になっていてPER88.82倍です。過熱にもほどがあります。

今年頭に買っていれば倍バガー。実に残念ですね。と言ってもここまで高騰しているととっくに売ってるでしょうけど。

 

 

今週は両極端な銘柄揃いですね。面白かったですが買えそうな銘柄はありませんでした。


書籍レビュー: 刺激的な数学教養書『数学入門 <上>』 著:遠山啓

★★★★★(≧ω≦)

2年生の途中までしか終えていない大学教育の水準に追いつくため、まずは数学の勘から取り戻さないといけません。そこで尊敬している遠山先生の新書、名前もそのものずばり「数学入門」という本があるというので手に取ってみました。

数学者は語学マニア

著者の遠山啓(とおやまひらく、1909-1979)さんは数学者・数学教育者です。タイルを使って量の概念を確実に身に着ける「水道方式」で有名です。

1959に出版されたという本書では、「ものを数える」という概念の誕生から始まって加減乗除~方程式・代数学~幾何学~複素数までの説明を新書1冊で(演習無しで!)完結させるというなかなか野心的な書でした。

あちこちで目を引くのは遠山先生の教養レベルの高さ、というかマニアさです。まず数の概念についてはあらゆる言語や部族の数詞に言及します。

たとえば、英領ニューギニアのビュギライ族はつぎのような数詞をもっている。

1→タランジェサ

2→メタ・キナ

3→ギジメタ

4→トペン

5→マンダ

6→ガベン

7→トランクジンベ

8→ボデイ

6→ンガマ

10→ダラ

これは身体の各部分の名であるという。人間の身体の各部に関連させて数えていく、という流儀によると数百の数まで数えられるだろうが、これは覚えこむのが大変で会って、これでは記憶力をひどく酷使することになる。

この調子でいろんな方言などを比較しつつ数の概念の誕生に迫っていきます。。現代の天才数学者ピーター・フランクルさんは14か国語を話せるそうですので、数学者というのは語学に精通していることが多いようです。言語は面白いパターンに溢れていますから数学者好みと言えましょう。私も外国語は大好きですが数学は苦手です。

まさかクラメルの公式の意味が分かるとは

数論・四則演算で最も驚くべき個所は分数の足し算引き算・通分約分のところです。約分を「たたむ」、通分を「ひろげる」と折り紙に例えている個所はマジ感動しました(画像が無いのが残念です)。ここから量をタイルで考えるという発想に至り「水道方式」に繋がっていったのでしょう。

代数の章では一次方程式→行列→クラメルの公式までぶっ飛ばします。行列が多元1次方程式の解を求める要請から出てきたので必然とはいえここまで進むとは思いませんでした。さすがにここはしんどかったですが線形代数の授業で丸暗記するしかなかったクラメルの公式の意味が分かり驚きました。

公理を積み上げてできた幾何学

幾何学の章では浪人になる直前になんとなく本屋で手に取ったこの本を要約したような感じでした。

幾何への誘い (岩波現代文庫―学術)

幾何への誘い (岩波現代文庫―学術)

 

幾何学は「2点を通る直線は必ずあり、しかも1本しかない」などの公理と呼ばれる直感的に「当たり前」な数少ない事実だけを基にして複雑な証明を組み立てていく美しい学問です。と上の本を読んで感動したことを思い出しました。大学1年で買わされた杉浦「解析入門」も公理から微積分を導いていく本なのですがこちらは美しいと思えずただ苦痛だった記憶しかありません。いつか読破してやるんだ。。

 

あちこちにダンテやらプラトン、ショーペンハウエル、デカルト、スタンダールなどの引用が散りばめてあり、著者の教養の高さが伺えるとともにそれらの書物もまとめて読みたくなってしまう素敵な本でした。 下巻は関数、極限、微積分です。どういった説明が出てくるのかワクワクです。

 

 

参考書籍

イスラム数学者の話。

ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)

ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)

 

 

数学が得意だったダンテ。7や100といった数字が大きな意味を持つ。

神曲 地獄篇 (河出文庫 タ 2-1)

神曲 地獄篇 (河出文庫 タ 2-1)

 

 

幾何学の聖書。

ユークリッド原論 追補版

ユークリッド原論 追補版

 

 


数独ソルバー

最近webプログラムを全く作成しておらず腕がなまって仕方ないので、新聞で見たシルバーウィーク数独特集!みたいな記事に触発されて数独ソルバーを作ってみました。時間もないので即興で2時間半しかかけてません。ですので予想が必要な難しい問題は一切できず一意に決まるごく簡単な問題しか解けません。

 

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プログラム倉庫に置きました。

 

今日はここまでだけれど、あとは再帰処理を使って予想→矛盾発見→候補から外す→予想しなおし→の繰り返しで一つずつ潰していけるはず。計算処理よりもインターフェースなどの準備段階の方が時間がかかったので問題を解く処理の強化自体は案外すぐできてしまうかも?


CDレビュー: Ludwig van Beethoven, Emil Gilels(pf) – Piano Sonatas, No.21, 26, 23(DG111 CD20)

★★★★★

 

111 Years of Deutsche Grammophon、ようやく20枚目です。DG111シリーズのピアノ作品は並行して聴いているGreat Pianistsシリーズとかぶることが多いのですがこのCDは運よく重複していなかったので、聴きました。

エミール・ギレリス(1916-1985)はソビエト・ロシアのピアニストです。例によってユダヤ人です。音楽家ってなんでユダヤ人ばっかりなんでしょうね。金持ちだからレッスンや教育に金をかけられるからなのかな。ジャケットを見ると72~75年の録音なので50代、そこそこ高齢の演奏ですね。本CDではベートーヴェンのピアノソナタ21番「ワルトシュタイン」26番「告別」23番「熱情」が収録されています。中期傑作選といったところでしょうか。

両手剣でぶった切るベートーヴェン

しょっぱなのワルトシュタイン第一楽章が硬い硬い。音切りまくりであっさり塩味か?と思っていたら油っ気がないだけでスピアーで突くような正確で力強い演奏でした。とても変わった音を持つ人ですね。ワルトシュタインは第三楽章が神展開なのですが見せ場でも音を切る切る。すっげぇ変わった弾き方。好みが分かれるところだと思います。私は慣れないので何とも評価できませんでしたがここまで極端だといやな感じはしませんね。

告別第一楽章も見せ場の和音を剣でも振り回すように切りまくりです。腹にはもたれないけれどコショウのように非常に刺激的な音です。第三楽章のフォルテッシモのあとのキラキラパートですら金属的で硬質です。

熱情は上記2曲よりも力が入っていて第一楽章は超爆音展開を見せ、第三楽章は今まで聴いた他のピアニストの演奏と比べるとテンポを落としていてかつ静かな狂気っぽいものを帯びるコワい演奏です。この曲だけ何故か硬質性が全くありません。ラストの16分ユニゾンパートは誰の演奏を聴いても素晴らしいですね。

 

amazonレビューは総じてベタ褒めですが私はとてもクセのある奏者であると感じました。嫌いな部類ではないのとベートーヴェンが好きなので評価は高めですが、Great Pianistsシリーズ(3組6枚もある)の彼の収録曲は一体どんな音を聴かせてくれるのか楽しみです。

しかしピアノ曲って言うのは創意工夫が難しそうな楽器のはずなのにピアニストによってなんでこんなに印象が変わるんでしょうね。不思議でなりません。

 

 

 

日本版は同じジャケなのに収録曲が違います。どうも悲愴・月光・熱情のいわゆる三大ソナタを1軍、それ以外を2軍と分けて2軍だけでCDを出したようです。これはいただけない。作曲時期で分けるべきです。

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」、第21番「ワルトシュタイン」、第26番「告別」

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」、第21番「ワルトシュタイン」、第26番「告別」

  • アーティスト: ギレリス(エミール),ベートーヴェン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2012/05/09
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Claudio Monteverdi, John Eliot Gardiner(cond.) – Vespro della Beata Vergine (DG111 CD18, 19)

★★★★★─=≡Σ((( つ•̀ω•́)つ

 

クラウディオ・モンテベルディ(1567-1643)はイタリアの作曲家です。2枚組100分ちょいの長大なこの楽曲の邦題は『聖母マリアの夕べの祈り』。いつまで祈るんだ!

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/fc/Portrait_of_an_Actor%2C_copy_after_Fetti%2C_detail_-_Robbins-Landon_1991_p60.jpg/220px-Portrait_of_an_Actor%2C_copy_after_Fetti%2C_detail_-_Robbins-Landon_1991_p60.jpg

クラウディオ・モンテヴェルディ – Wikipedia

いい感じのじーさんですね。

単純なのに爽快

この曲が作曲されたのは1610年。有名な作曲家の中では古株のモーツァルトが生まれるより146年も前です。ですので曲はとても古風、というか単純です。1曲目なんて同じ和音でずっと押しまくるだけです。アーメンでシメるお馴染みのラストも多発します。

ところが2枚組であるにもかかわらず、このCD、全く飽きません。それどころか演奏から感じられる異様な熱気と、独特の音響(教会内で演奏しているらしいです)により演奏中ずっと興奮しっぱなしになりました。昔の曲は単調で飽きるというイメージがあったのですが完全に裏切られました。このCDすごい。私は人間の持つ迫力が直接ぶつかってくる声そのものが大好きなのかもしれませんね。

 

動画ありました!2014年、ヴェルサイユ宮殿・王家礼拝堂(すごい名前)での収録です。ということはこのCDとはバージョン違いですが、やべーマジで大聖堂だよ、、


Monteverdi – Vespers, &quot;Vespro della Beata Vergine …

本CDでは中央に穴が空いているかのような音場効果を感じることができたのですがこの動画を見て納得しました。教会って上部が巨大な空洞になってるんですね。壁画がきれいすぎます。ヨーロッパの人々の宗教心には本当に恐れ入ります。奏者真ん中の大きな素敵楽器はリュートというそうですよ。CDだと見えない独唱の人の表情が濃すぎてちょっと引きます。

なぜ魅力的?

私はこんな古い曲にどうして惹かれてしまったのでしょう?疑問が尽きません。人間の声の力?教会のパワー?実は祖先がイタリア人だった?最近仕事中にヘビーローテーションしているバッハのカンタータのせい?

音楽が人間の感情を喚起するためには音というただの空気の振動を脳が分析して一定のパターンを解釈して意味づけをすることでしか得られないと考えます。したがってより感情を動かすのは「慣れている」曲であるパターンが多いはずです。現代音楽みたいな訳わかめの曲を聴いたとしても「わかんねえよバカ」とか「眠い」と感じてオシマイになりがちです。ですが、本CDのような曲を聞くのはほぼ初めてで馴染みはありません。一聴して気に入る曲ってなんでしょう?一目惚れみたいなもの?一聴き惚れ?色々要素はあると思いますが引き続き考え続けていきたいと思います。

 

 

 

Vespro Della Beata Vergine [DVD] [Import]

Vespro Della Beata Vergine [DVD] [Import]

 

こっちが本CDに対応する映像のようです。イタリアはヴェネチア、サン・マルコ教会での収録。

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


書籍レビュー: 智者たちの戦争『ローマ人の物語 (4) ― ハンニバル戦記(中)』 著:塩野七生

★★★★★

 

第4巻。ようやく全体の約1/10です。本書では紀元前219-206年、ローマvs地中海の盟主カルタゴの第二次ポエニ戦争の中盤戦が舞台です。

ハンニバル登場

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a8/Hannibal_Slodtz_Louvre_MR2093.jpg/200px-Hannibal_Slodtz_Louvre_MR2093.jpg

ハンニバル – Wikipedia

本書に登場する最大の難敵ハンニバルは時々名前を聞く武将です。イタリアでは悪いことをした子供に対して「戸口にハンニバルが来ていますよ」と言って脅すそうです。まるでナマハゲのような扱いです。

彼は潜在兵力75万と言われるローマにたった2万6千の兵力で単身乗り込み、本書の中盤では南イタリアをほぼ制圧してしまうという天才的な才能をもちます。

ハンニバル進撃路

 

奇跡的な行軍を成功させたのは彼の智慧が全てと言ってもよいでしょう。ハンニバルは手薄な北側からローマを攻めることを考えました。しかしハンニバルの拠点のスペインからフランスを超えてイタリアに攻めるまでの間には1つ難所があります。

アルプス山脈です。これはハンニバルの「アルプス越え」と呼ばれ非常に有名であるそうです。

この写真は最高峰のモンブラン山、標高4810m。他にも4000m級の富士山を超える山々が連なる難所を、ハンニバルは4万6千の兵と30頭の象を連れて超えました。すげぇ。富士山を4万6千と30頭の象が行軍する様子を想像すると気が遠くなります。そして上で2万6千の兵力と書いたように、2万人が山越えで死にました。しかしこの犠牲をあらかじめ計算してまでもハンニバルは山越えが重要と考えていました。

この無謀な行為はローマの油断につけこむことに見事成功し、ローマに壊滅的な打撃を与える前216年のカンネの戦いなどを通して10数年にわたりハンニバルはイタリア内で暴れ続けます。アレクサンダー大王、ハンニバル、優れた武将が1人出ると戦局はこうも大きく変わるものかと驚かされます。

あの偉大な数学者も登場

本書ではもう一人、誰でも名前を知っている智者が登場します。

アルキメデスです。彼はシチリア半島の自治区シラクサの大科学者でした。シラクサは本書でハンニバルの暗躍によりローマからカルタゴに寝返ります。したがってアルキメデスはローマの敵として登場します。浮力の原理という偉大な発見をした彼は、まるでアニメのお約束よろしく、ビックリドッキリメカでローマ軍を翻弄しました

兵器その1

Claw of Archimedes – Wikipedia, the free encyclopedia

「アルキメデスの鉤爪」と呼ばれるこの兵器は、城壁に取り付けたクレーン装置のようなもので、図のように船をひっかけて転覆させます。ローマ海軍は大きな被害を被りました。

兵器その2

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/58/Archimedes_Heat_Ray_conceptual_diagram.svg/220px-Archimedes_Heat_Ray_conceptual_diagram.svg.png

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%AD%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%B9#.E3.80.8C.E3.82.A2.E3.83.AB.E3.82.AD.E3.83.A1.E3.83.87.E3.82.B9.E3.81.AE.E7.86.B1.E5.85.89.E7.B7.9A.E3.80.8D.E3.81.AF.E5.98.98.E3.81.8B.E7.9C.9F.E5.AE.9F.E3.81.8B

「アルキメデスの熱光線」。これは本書に登場せず、リンク先でも存在を疑問視されていますが本当にあったと考える方がロマンがあります。

虫眼鏡で紙を焼く如く巨大な鏡で船を焼く、ソーラ・レイシステムです。紀元前に実用化されていたのですからガンダムは遅れていると言わざるを得ません。

なお彼は戦火の中ローマ兵に手違いで殺される直前まで数学の問題を解いていたマジな数学オタクだったそうです。本書のMVPはアルキメデスにあげたいと思います。

 

 

 

関連書籍

シラクサ攻防戦を描いた漫画。読みたい。もちろんアルキメデスも登場します。なんと作者は寄生獣の人です。

ヘウレーカ (ジェッツコミックス)

ヘウレーカ (ジェッツコミックス)

 

 

これも読んでみたいですね。

ハンニバルに学ぶ戦略思考

ハンニバルに学ぶ戦略思考

 

 


CDレビュー: the HIATUS – A World Of Pandemonium(2011)

★★★★☆

 

ゴリ押しロック(と名付けました)のthe HIATUS、3rdアルバムです。

インストがより洗練されるも後半が残念

インストのレベルが前作よりも飛躍的に上がりました。特に先頭の1,3,4曲目に関しては非常にレベルが高い。1曲目Deephoundsは得意の音圧ゴリ押しの成功例。3曲目The Tower and The Snakeはリズム隊も私好みに爆裂しており本アルバム中で最も好きです。4曲目Soulsも小刻みなイントロがワクワクさせてくれる上にゲストのJamie Blakeさんの超透明な歌声がカンフル剤となり楽曲に華を添えます。

ところが残念なことに5曲目以降失速します。5曲目Bittersweet/Hatching Mayfliesはゴリ押しの本領発揮ですが音量全開の見せ場で私の苦手な裏声も全開なので残念。裏声って下手なJPOPアーティストがみんなこぞって使用するので、よっぽど歌が上手い人以外はどうしても彼らと同じ印象を抱いてしまうのです。6,8,9,10は凡庸。7曲目Flyleafは良いですが肝になるフルート様の音色が明らかに打ち込みなのが残念です。せっかくここまでやったら全部生音にしましょうよ。

 

これでHIATUSについては発売中のアルバムを制覇したことになります。まるで成長株のように1st~4thといい感じに洗練されていっていますので、次のアルバムに大いに期待したいと思います。

 

 

ロック等の他のCDレビューはこちらです。

 

 

レベルの高いインストを聴くにつけ、以前1回通しで聴いたAmetsubというアーティストの曲が聴きたくなりました。次の日本人枠では彼のアルバムを4枚ほど聴き直してみようと思います。最新作以外は最後に聴いたのが2年以上前ですので、今の自分とはずいぶん違います。一体どのような印象を持つのか楽しみです。

 

Linear Cryptics

Linear Cryptics

 

 

Surge

Surge

 

 

All is Silence

All is Silence

 

 

The Nothings of The North

The Nothings of The North

 

 


書籍レビュー: 嫉妬されると死ぬ 『ギリシア神話』 著: 中村善也・中務哲郎

★★★★☆

 

岩波ジュニア新書2冊目。ジュニアと言えど内容は普通の新書と全く変わりません。著者の一人中務哲郎(なかつかさてつお)さんは、どこかで聞いた名前だと思ったら放送大学(ここも中退しそう)で西洋古典文学の授業でギリシャ篇を担当していた方ですね。先生からはとてもいいお話を聞けました。

放送大学 授業科目案内 ヨーロッパ文学の読み方―古典篇(’14)

いまはradikoという便利なツールがありますので授業は誰でも無料で効くことができます。

Radikool – radiko録音ツール

こいつを使えばタイマー録音もできます。放送大学は良質な授業が揃っていてとても良い学習アイテムです。

昔話

ギリシャ哲学を学びたいという野望があるので、背景知識として必須と思われるギリシャ神話についてどうしても知っておきたくて読みました。本書はギリシャ神話を愛・罪と罰・生と死などのテーマからとらえるという構成になっていますが、単にぶつ切りにするのではなく導入~神~英雄~人間~各テーマというよく練られた構成となっており非常に読みやすかったです。

ギリシャ神話は我々いうところの「昔話」に相当します。しかし日本の昔話は民話の寄せ集めで、名前の固定した登場人物はいません。紀元後8世紀に古事記が成立してやっと固有名詞付きの昔話が出現します。ギリシャ神話は紀元9世紀には記録が残ってますから彼らの知恵には恐れ入りますね。

神大杉

ギリシャ神話には膨大な人物が登場します。適当に画像検索すると目の痛くなりそうな系図が見つかりました。

http://harmonyatsugi.web.fc2.com/kyusoku/016graecia.gif

パンドラの箱の謎

 

実際にはもっといます。これ全部覚えるのはすぐには無理ですので、少しずつ慣れていくしかなさそうです。

ギリシャ神話の「神」はほとんど人間と変わりません。旧約聖書では神が自分に似せて人間を作りましたがギリシャ神話においては人間の誕生については特に語られません(上の図ではプロメテウスが作ったことになっていますが、本書ではこの説が比較的新しい作り話であると懐疑的です)。どうやらギリシャ人が自分たちに似せて神話を作ったようです。神は恋もするし全知全能じゃないし不死ではありません。上の系図から分かるように唯一神ではなく大量に存在します。違うところと言ったら、有名なゼウスの雷をはじめとしてみな特殊能力が使えることくらいでしょうか。サイヤ人みたいなものと考えればいいかもしれません。それから生殖方法は異常です(後述)。

神増え過ぎ

ギリシャ神話は旧約聖書なんてレベルじゃないほど人や神が死んだり生まれたりします。まず上の系図でいうとカオスが自然発生します。キリスト教徒はえらい違いですね。カオスは我々が思い浮かべるカオス(混沌)とは違い、すべての発生元の大きな穴、むしろ「何もない」というくらいの意味と思われます。

ここからが恐ろしくて、ギリシャ神話の世界では必ず何かから何かが生まれます。即ちカオスからガイアがポンと生まれるわけですがまあこれは穴から出てきたってわけだからまだ分かります。次にガイアからウラノスやらポントスやらが生まれます。ここまでもまだわかりますが、さらにガイアがその子ウラノスと夫婦の営みをしてその右側の大量の訳わからんものが生まれたことになっています。一番下にはドラクエにもいるキュクロプス(サイクロプスとも読む)やFFにもいるヘカトンケイルやらの名前も見えます。

サイクロプス.jpg

モンスター/サイクロプス – ドラゴンクエスト モンスターパレード 攻略 Wiki

 

http://www.square-enix-shop.com/jp/ff-tcg/card/cimg6/6-052u.png

FINAL FANTASY ⅩⅢ | タイトル別カードリスト | ファイナルファンタジー・トレーディングカードゲーム(FF-TCG)

 

お前ら変なもの産み過ぎ。

 

また下ネタになってすみませんが、神の生殖能力は滅茶苦茶で、神がと交わってできた神すらいます。何だよ岩って!生物ですらない。他にもクロノスがウラノスのチンコを切り落としたらそこから泡が発生して生まれたアフロディテとか、そんな話ばっかりで現代人から見ると引きます。ちなみにアフロディテは美の神ですよ。チンコなのに。

最強の神として各地でシンボル化されているゼウス(私がまず思い出すのはスーパーゼウス)も超絶倫で、あちこちで子供を残します。シカになったり牛になったり、時には雨になるなどという謎の変装をして可愛い女の子を襲うのです。ゼウスが女の子に言いよる話はこの本だけで10回くらい出てきました。現代だったら確実にけしからん話ですがギリシャ神話には日常茶飯事。むしろ私たちの常識が間違っているんじゃないかと思わせられるほどです。神を通した生命賛歌と捉えるのが妥当かもしれません。

触らぬ神に・・・

なお旧約聖書と同様、人間が神に逆らうと大体死にます。ところがギリシャ神話の神は人間的だから余計にたちが悪い。例えば機織りの名手アラクネは女神アテネを機織りで打ち負かしたため嫉妬されて死にます。子供が多いことをレト神に自慢したニオベはレトに嫉妬され14人の子供全員を弓で射殺されます。すっげえ理不尽ですが、いずれも神に対する「傲慢」を突かれて罰を受ける、という共通点があるため、因果応報とみてよいのかもしれません。神に嫉妬されないように気を付けよう。

 

 

 

参考書籍

優れた本ですがやっぱり生の物語にはかなわない。紙面の都合で仕方ないですが物語をもっと引用しまくってほしかった。

 

 というわけで次はこれですかね。石井桃子さんですし外れるわけがない。

ギリシア神話

ギリシア神話

 

 

 さらに補強するならこれか。でも前著で十分な気もする。

ギリシャ神話集 (講談社学術文庫)

ギリシャ神話集 (講談社学術文庫)

 

 

これもよさそうなんだけどブルフィンチって人が作ったまとめだから生の物語はどのくらい収録されてるんだろう。。?

ギリシア・ローマ神話―付インド・北欧神話 (岩波文庫)

ギリシア・ローマ神話―付インド・北欧神話 (岩波文庫)

 

 

最終目標はこれ。

イリアス〈上〉 (岩波文庫)

イリアス〈上〉 (岩波文庫)

 

 

ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)

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 本書のレビュー先で紹介されていました。これも読みたい。

神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

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