書籍レビュー: 智者たちの戦争『ローマ人の物語 (4) ― ハンニバル戦記(中)』 著:塩野七生

★★★★★

 

第4巻。ようやく全体の約1/10です。本書では紀元前219-206年、ローマvs地中海の盟主カルタゴの第二次ポエニ戦争の中盤戦が舞台です。

ハンニバル登場

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a8/Hannibal_Slodtz_Louvre_MR2093.jpg/200px-Hannibal_Slodtz_Louvre_MR2093.jpg

ハンニバル – Wikipedia

本書に登場する最大の難敵ハンニバルは時々名前を聞く武将です。イタリアでは悪いことをした子供に対して「戸口にハンニバルが来ていますよ」と言って脅すそうです。まるでナマハゲのような扱いです。

彼は潜在兵力75万と言われるローマにたった2万6千の兵力で単身乗り込み、本書の中盤では南イタリアをほぼ制圧してしまうという天才的な才能をもちます。

ハンニバル進撃路

 

奇跡的な行軍を成功させたのは彼の智慧が全てと言ってもよいでしょう。ハンニバルは手薄な北側からローマを攻めることを考えました。しかしハンニバルの拠点のスペインからフランスを超えてイタリアに攻めるまでの間には1つ難所があります。

アルプス山脈です。これはハンニバルの「アルプス越え」と呼ばれ非常に有名であるそうです。

この写真は最高峰のモンブラン山、標高4810m。他にも4000m級の富士山を超える山々が連なる難所を、ハンニバルは4万6千の兵と30頭の象を連れて超えました。すげぇ。富士山を4万6千と30頭の象が行軍する様子を想像すると気が遠くなります。そして上で2万6千の兵力と書いたように、2万人が山越えで死にました。しかしこの犠牲をあらかじめ計算してまでもハンニバルは山越えが重要と考えていました。

この無謀な行為はローマの油断につけこむことに見事成功し、ローマに壊滅的な打撃を与える前216年のカンネの戦いなどを通して10数年にわたりハンニバルはイタリア内で暴れ続けます。アレクサンダー大王、ハンニバル、優れた武将が1人出ると戦局はこうも大きく変わるものかと驚かされます。

あの偉大な数学者も登場

本書ではもう一人、誰でも名前を知っている智者が登場します。

アルキメデスです。彼はシチリア半島の自治区シラクサの大科学者でした。シラクサは本書でハンニバルの暗躍によりローマからカルタゴに寝返ります。したがってアルキメデスはローマの敵として登場します。浮力の原理という偉大な発見をした彼は、まるでアニメのお約束よろしく、ビックリドッキリメカでローマ軍を翻弄しました

兵器その1

Claw of Archimedes – Wikipedia, the free encyclopedia

「アルキメデスの鉤爪」と呼ばれるこの兵器は、城壁に取り付けたクレーン装置のようなもので、図のように船をひっかけて転覆させます。ローマ海軍は大きな被害を被りました。

兵器その2

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/58/Archimedes_Heat_Ray_conceptual_diagram.svg/220px-Archimedes_Heat_Ray_conceptual_diagram.svg.png

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%AD%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%B9#.E3.80.8C.E3.82.A2.E3.83.AB.E3.82.AD.E3.83.A1.E3.83.87.E3.82.B9.E3.81.AE.E7.86.B1.E5.85.89.E7.B7.9A.E3.80.8D.E3.81.AF.E5.98.98.E3.81.8B.E7.9C.9F.E5.AE.9F.E3.81.8B

「アルキメデスの熱光線」。これは本書に登場せず、リンク先でも存在を疑問視されていますが本当にあったと考える方がロマンがあります。

虫眼鏡で紙を焼く如く巨大な鏡で船を焼く、ソーラ・レイシステムです。紀元前に実用化されていたのですからガンダムは遅れていると言わざるを得ません。

なお彼は戦火の中ローマ兵に手違いで殺される直前まで数学の問題を解いていたマジな数学オタクだったそうです。本書のMVPはアルキメデスにあげたいと思います。

 

 

 

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