CDレビュー: Ludwig van Beethoven, Emil Gilels(pf) – Piano Sonatas, No.21, 26, 23(DG111 CD20)

★★★★★

 

111 Years of Deutsche Grammophon、ようやく20枚目です。DG111シリーズのピアノ作品は並行して聴いているGreat Pianistsシリーズとかぶることが多いのですがこのCDは運よく重複していなかったので、聴きました。

エミール・ギレリス(1916-1985)はソビエト・ロシアのピアニストです。例によってユダヤ人です。音楽家ってなんでユダヤ人ばっかりなんでしょうね。金持ちだからレッスンや教育に金をかけられるからなのかな。ジャケットを見ると72~75年の録音なので50代、そこそこ高齢の演奏ですね。本CDではベートーヴェンのピアノソナタ21番「ワルトシュタイン」26番「告別」23番「熱情」が収録されています。中期傑作選といったところでしょうか。

両手剣でぶった切るベートーヴェン

しょっぱなのワルトシュタイン第一楽章が硬い硬い。音切りまくりであっさり塩味か?と思っていたら油っ気がないだけでスピアーで突くような正確で力強い演奏でした。とても変わった音を持つ人ですね。ワルトシュタインは第三楽章が神展開なのですが見せ場でも音を切る切る。すっげぇ変わった弾き方。好みが分かれるところだと思います。私は慣れないので何とも評価できませんでしたがここまで極端だといやな感じはしませんね。

告別第一楽章も見せ場の和音を剣でも振り回すように切りまくりです。腹にはもたれないけれどコショウのように非常に刺激的な音です。第三楽章のフォルテッシモのあとのキラキラパートですら金属的で硬質です。

熱情は上記2曲よりも力が入っていて第一楽章は超爆音展開を見せ、第三楽章は今まで聴いた他のピアニストの演奏と比べるとテンポを落としていてかつ静かな狂気っぽいものを帯びるコワい演奏です。この曲だけ何故か硬質性が全くありません。ラストの16分ユニゾンパートは誰の演奏を聴いても素晴らしいですね。

 

amazonレビューは総じてベタ褒めですが私はとてもクセのある奏者であると感じました。嫌いな部類ではないのとベートーヴェンが好きなので評価は高めですが、Great Pianistsシリーズ(3組6枚もある)の彼の収録曲は一体どんな音を聴かせてくれるのか楽しみです。

しかしピアノ曲って言うのは創意工夫が難しそうな楽器のはずなのにピアニストによってなんでこんなに印象が変わるんでしょうね。不思議でなりません。

 

 

 

日本版は同じジャケなのに収録曲が違います。どうも悲愴・月光・熱情のいわゆる三大ソナタを1軍、それ以外を2軍と分けて2軍だけでCDを出したようです。これはいただけない。作曲時期で分けるべきです。

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」、第21番「ワルトシュタイン」、第26番「告別」

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」、第21番「ワルトシュタイン」、第26番「告別」

  • アーティスト: ギレリス(エミール),ベートーヴェン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2012/05/09
  • メディア: CD
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