書籍レビュー: ツッコミ多すぎ『カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第4巻 進化生物学』 著:デイヴィッド・サダヴァ他

★★★★☆

進化論中心の1冊

1~3巻は「LIFE」という教科書の翻訳でしたが、4・5巻「PRINCIPLES OF LIFE」という教科書の翻訳だそうです。4巻は進化生物学と題して進化のメカニズム~系統樹~種分化~生命の歴史~動物の進化までを扱います。

進化のメカニズムの章でははダーウィンの論が中心となって展開されます。中心概念は「自然淘汰」です。まとめると次のようなことです。

環境に適さない動物は生き残れなかったり子孫を残せず、適応した生物だけが生き残り子孫を残し、特定の形質を持つ者だけが生き残る。遺伝子は突然変異するが、その変異がより優位なものであればさらに生き残る確率が高まる。こうして有利な形質が次々と生まれていき、環境特有の生物種が生まれる。

中立進化と人工進化

この章で一番驚いたのは「中立進化論」です。遺伝上の変異は、ほとんどのものが淘汰上有利でも不利でもない、という論です。我々の性格やこだわり、先天的な体の大小などは、言われてみれば子孫の有無などに全然関係していないように思えますので、言われてみれば納得がいきます。この論は1968年に日本人の木村資生(もとお、1924-1994)によって提唱されたそうです。本書では2Pくらいの軽い紹介にとどまっていますので、他の本も読みたくなりました。

また、簡単な進化は実験室上でラクラクと実行できる、ということも驚きました。「試験管内進化」と呼ばれるものです。例えば「リガーゼ活性(DNAをつなぐ能力。遺伝子修復などに使用する)が高いRNAが欲しいなぁ」と思ったら次のようなプロセスを踏むと臨んだ結果が得られるというのです。

  1. 適当にRNAを用意する
  2. 最も活性の高いRNAを選抜
  3. 選抜したRNAを逆転写でDNAにする
  4. PCRでDNAを増幅させる。いくつかのDNAは突然変異で高機能になる。
  5. DNAからRNAを作る
  6. 2に戻る

以上を繰り返すと10回でリガーゼ活性が700万倍になったそうです。すごい。

わかりにくいですか。では人間で置き換えてみます。「1秒に20連射できる高橋名人が欲しいなあ」と思ったとしましょう。

  1. 16連射できる高橋名人を何人か用意する
  2. 最も連射が早い高橋名人のDNAを採取
  3. クローンを複数作成する。突然変異によって連射の早い高橋名人が生まれることを期待する。
  4. 2に戻る

これを何度も繰り返すと20連射どころか100連射できる高橋名人が生まれるかもしれません。

生命史のスケールデカすぎ

後半は生命史のざっくりとした総まとめです。地球の気候変動から地層と考古学の方法論で準備をした後に地球46億年の歴史を駆け足で早送りします。大きな気候変動、特に海面の低下や気温の急激な低下などがあると生命は大部分が死滅します。これの大量絶滅が三畳紀やら白亜紀やらの「~記」を分けるポイントとなっているそうです。特にペルム紀(2.97-2.51億年前)の末期には全生物の96%が死滅したと推測されているそうです。ほとんど全滅ですが、残った生物が時間をかけて再び花開くなんてロマンがありますね。ちなみに原因は大規模な火山の噴火による気温の低下だそうです。箱根が噴火しそうだった時私はとても怖かったのですが、あれは生命に刻み付けられた先入観みたいなものなのかもしれません。

バランスと正確性にやや不満

前半は理論的な話が中心なのでしょうがないのですが、今までのシリーズと比べて図が少ないので理解がおっつかないのが欠点です。他の本を読んで補充する必要があります。また、原著の間違いが多いようで、訳者による訂正があちこちに見られます。

また、ゲノム中に現在でも存在している重複遺伝子はとても若いこともわかった。多くの重複遺伝子は、進化の時間スケールではまばたきするくらい短い(訳注:これはやや極端な表現である。数十万年の期間でもさまざまな進化は生じえる)、1000万年以内にゲノムから消えてしまうのだ。

上記のようなツッコミが20か所くらいはありました。訳者の指摘はありがたいですが、原著を読む気が失せます。

終盤の動物の進化については写真が多くて楽しいのですが、いかんせんページ数が足りず私としては消化不良気味です。

優れた本ではありますが、内容の濃さからするとブルーバックスのサイズで300ページちょいくらいでは不足です。他にもたくさん読んでみたいです。

 

補足

動物進化の章にいたキタオポッサムが可愛い

 

参考書籍

 

やっぱ読まないといけませんね。岩波文庫版よりも、新訳の方が評価が高いです。

種の起源〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

種の起源〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

 

 

これも定番。

利己的な遺伝子 <増補新装版>

利己的な遺伝子 <増補新装版>

  • 作者: リチャード・ドーキンス,日高敏隆,岸由二,羽田節子,垂水雄二
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 2006/05/01
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木村センセの本。

分子進化の中立説

分子進化の中立説

 

 

そのまえにこっちを読もう。進化学全般。

生物進化を考える (岩波新書)

生物進化を考える (岩波新書)

 

 

 訳者の自推本。斎藤氏の他の新書は総じて評価が低い。

ゲノム進化学入門 CD-ROM付

ゲノム進化学入門 CD-ROM付

 

 

岩波のシリーズもある。全7巻。斎藤氏も関わっているのでこれも自推。

マクロ進化と全生物の系統分類 (シリーズ進化学 1)

マクロ進化と全生物の系統分類 (シリーズ進化学 1)

  • 作者: 佐藤矩行,馬渡峻輔,石川統,長谷川政美,西田治文,大野照文,柁原宏,川上紳一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2004/12/07
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系統樹について。

系統樹曼荼羅―チェイン・ツリー・ネットワーク

系統樹曼荼羅―チェイン・ツリー・ネットワーク

 

 

生物や生命史は絵がないとだめ。重い高い長い。

生物の進化 大図鑑

生物の進化 大図鑑

 

 


書籍レビュー: 内戦してる場合じゃない『ローマ人の物語 (7) ― 勝者の混迷(下) 』 著:塩野七生

★★★★☆

スッラとマリウスの対立

7冊目です。本書のカバー範囲は紀元前88~63年まで。主人公はルキウス・コルネリウス・スッラ(前138-78)とポンペイウス(前106-48)です。特に目立っていたのはスッラでした。

ルキウス・コルネリウス・スッラ – Wikipedia

 

前回に引き続きローマ内では権力闘争がおこります。国内格差からはじまった「同盟者戦役」が平定されてすぐ、前88年にスッラは最高権力者の執政官に就任しますが、平民代表の護民官との対立が激しくなり、「同盟者戦役」の結果として成立した選挙法改革を巡って揉め、貴族側代表のスッラはクーデターを起こし、平民代表のガイウス・マリウス(前157-86)を追い出します。

ガイウス・マリウス – Wikipedia

このマリウスという人は百戦錬磨のヒーローで、彼は怒って逆にクーデターを起こし、反対派および中立派を皆殺しにして権力を奪取します(前87年)。

一方スッラは内戦のゴタゴタの隙に侵略してきたポントス王ミトリダテスを制圧するためギリシャに遠征していました。マリウスがローマの権力を得たことでスッラは賊軍となりました。しかしスッラがミトリダテスを倒す前83年までの間にマリウスは病死し、代わって権力を得たキンナをスッラが破り(前82年)また反対派を大粛清しました。マリウスに味方した部族の兵士4000名を一斉に処刑したりマリウスの子孫を皆殺しにしたり、密告制度を作って徹底的に反対派を排除しました。これで多くの人材が失われたことでしょう。争いというのは優秀な人間が必ず死にますのでいやなものですね。

結果的にスッラは絶大な権力を握ることとなり、数々の元老院(貴族)に有利な法案を通しまくりました。これはローマの帝政に繋がっていくそうです。ちなみに彼は弩級の贅沢野郎であり、モーツァルトの「ルーチョ・シッラ」というオペラで「傲慢で退廃した女好きの独裁者」として登場させられたそうです。

Lucio Silla – Wikipedia, the free encyclopedia

100000対5

後半の主役はポンペイウスで、しぶといミトリダテスとの戦いが描かれますがどの戦いもあっさり描かれすぎていてやや不満です。体制の移り変わりを描いているのだから仕方ないのかもしれませんが、ミトリダテス側の戦死者十万、ポンペイウス側の死者5人などというとんでもない戦いの様子はもうちょっと詳述してくれてもよかったかな。

ミトリダテスの軍事力が弱かったからよかったものの、弱くなかったらローマは隙だらけでぶっ潰れてますね。この戦いでローマはアジア側(今のトルコ、シリア、イスラエル)にも領土を広げ、地中海全体を制圧することとなりました。

引用

ローマ人シリーズはずっとそうなのですが、事実を抽象化した歴史の大原則とも思える言葉が書かれていることがあります。いくつか気になった言葉を引用します。

システムの持つプラス面は、誰が実施者になってもほどほどの成果が保証されるところにある。反対にマイナス面は、ほどほどの成果しかあげないようでは敗北につながってしまうような場合、共同体が蒙らざるをえない実害が大きすぎる点にある。

ローマの「元老院体制」というシステムについて述べた段落ですがこれは現代政治にも十分通用する言葉だと思いました。

ツキティディスは、著作『ペロポネソス戦史』の中で、「大国の統治には、民主政体は適していない」とまで言っている。民主制だけが、絶対善ではない。民主制もまた他の政体同様、プラス面とマイナス面の両面を持つ、運用次第では常に危険な政体なのである。

民主制の最たるものであるギリシャが実質的独裁のあと衆愚制に陥ったことを評しています。現代の何とかうまくいってる中国を見ていても民主制が本当に正しいのかどうかわかりません。これはもっと歴史を学んでいかないと結論は出せませんので、引き続き沢山読書していきたいです。

 

 

関連作品

モーツァルト:歌劇「ルーチョ・シッラ」(全曲)

モーツァルト:歌劇「ルーチョ・シッラ」(全曲)

  • アーティスト: アーノンクール(ニコラウス),グルベローヴァ(エディタ),シュライアー(ペーター),バルトリ(チェチーリア),アップショウ(ドーン),ケリー(イヴォンヌ),アルノルト・シェーンベルク合唱団,モーツァルト,オルトナー(エルヴィン),ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
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なんとモーツァルト16歳のときの作品だそうですよマジ天才。かなりマイナーな曲ですね。

 


書籍レビュー: ウホッ、いいソクラテス…『饗宴』 著:プラトン 訳:森進一

★★★★★

知的飲み会

プラトン2冊目です。いわゆる「プラトニック・ラブ」の出典と言われています。

饗宴というのは飲み会みたいなもんだけど、参加する人はみんな哲人なので酒飲みつつ言論発表会もするというような知的な集会でした。本作では紀元前416年ごろに行われた饗宴を、紀元前400年ごろにアポロドロスという人が友達にせがまれて思い出しながら話す、という形式をとっています。

饗宴の参加者はアポロドロスの他に悲劇詩人アガトン、悲劇作家アリストパネス、そしてソクラテスなど錚々たるメンツが揃い、28名(wikipedia情報、そんなにいたっけ?)で行われました。医者のエリュクシマコスが、今日の議題は「エロース」についてにしようぜ!と提案し、5名が順々に演説をしていくという形式で、「ソクラテスの弁明」と同様にほとんど物語でした。演劇にするともっとしっくりきそうです。十分耐えうる素材だと思います。訳は不自然なところなどなく完璧でとても読みやすかったです。脚注も充実していて助かりました。

哲人エロースを語る

「エロ―ス」といっても、現代の肉欲的なエロとは全然違います。そもそもエロースとは愛の神です。しかも、ギリシャ神話でのエロースは美の神アプロディーテーの子であり神の中でも古参の部類に入ります。高尚なエロースを5名が順々に讃えていきます。

古代ギリシャ人は古代ギリシャは男性同士の同性愛が異性愛よりも高尚なものとみなされていました。演説者の一人パウサニアスの言うことには、アプロディーテーは2人いて一方が肉欲を生じさせる神、もう一方は男性の理性や強さへの憧憬を生じさせる神と定義し、

つまり、この種のくだらぬ人々は、第一に少年を愛すると同じように女性をも愛する。次に、その愛する者の魂より肉体を愛する。さらに、できるかぎり知恵なき愚者を愛する。

と肉欲をけなしたあと

このアプロディーテーにつながる愛の息吹をうけたものは、生まれつきより強きもの、より知性ゆたかなる者を愛して、男性に愛を向けるのである。そして、かの、少年への愛においても、ただひたすら、この愛にだけ動かされている人々への姿が見られるはずである。

と少年愛を賛美するのです。これは演説者ほぼ全員に共通の認識であり、みんな大抵男性の恋人がいます。ソクラテスにもいます(後述)。子孫の繁栄とかそういった言葉は全然出てきませんでした。肉体的<精神的なもの、という価値観を突き詰めるとこうなるのかもしれません。同性愛といってもくそみそテクニック的なものは論外というわけです。パウサニアスはこのあと、オッサンが少年に向ける愛を長々と賛美します。なんとなく自己正当化っぽい気もしますが文字だけ見ると美しいです。

アリストパネスは人気作家だけあって面白い解釈をしていました。カンタンにまとめると次のようなことになります。人間はもともと2体がくっついて出来ていた。2体でできてる時代の人間は強くて傲慢だった。そこでゼウスが人間を懲らしめるため、2体を分離した。人間の傷はふさがったが、1体では中途半端で常に欠乏感がある。そしてもともともう一つの自分であった1体と出会うと一つになりたいという気持ちが湧き上がってくる。。という説を語っていました。この物語に即するなら、一目惚れとか運命とかが説明できてロマンチックですね。ただアリストパネスの説は、昔の人間は「男×女」の2体だけではなく「男×男」や「女×女」の組み合わせもあった(しかも同じぐらいいたみたい)ということになってますから、やはり同性愛は正当化されうるのです。

愛=不死?

5名のうち最後に語るソクラテスは、全員の論を包括した上でもう一次元上にのぼる論を展開します。一言で言うと、エロースすなわち愛とは「不死への希求」だということです。

エロース(私達、と読み替えてもいいと思います)は完全なものではなく、欠乏をもっている。それゆえに美、善きものを追い求める。そしてこれらを手にしたならば、永久に自分の手にしたいと考える。自らは刻々と変化していく存在なので、なんとかしてこれら善きものを保存する方法を手に入れなければならない。そこで私たちは「懐妊」する。。

生物学的に「懐妊」すればそれは肉体的な愛となりますが、金銭、創作、名誉、知恵という方法を使って「懐妊」することも可能です。いずれも、永遠すなわち不死を追い求めることが「懐妊」だと言っています。私がこのようなブログを執筆するのも愛の一つの姿ということなのかもしれません。ここでも肉体<魂という序列が付けられます。肉体はどれだけ美しくとも他のものと似たり寄ったりで、しかも崩れゆく運命にありますが、あらゆる肉体から抽象した「美」は永遠のものとなります。知識も永遠です。これがいわゆるイデアって奴ですかね。イデアは永遠の体現なのですね。

プラトニックラブって純潔とか肉体的な結びつきの否定とかいわゆる「純愛」みたいなものと思ってましたが全然違いますね。人間同士の結びつきというよりは、もっと芸術的なものです。それに永遠や不死とは「自己保存」の最たるものですから、直感的には美しいですが本質的にオレ本位でわがままです。自己増殖して後世に俺様を残すことだけが目的のDNAが、彼の理想を一番表しているように感じました。

ウホッ、、とは違った

ラスト、アルキピアデスという酔っ払いが乱入してくるのですがこいつはなんとソクラテスの恋人です。アルキピアデスは美少年で、自分の容姿にも自信を持っていました。彼はソクラテスに告白してOKをもらい、隣で寝るのですがソクラテスはなにもしてくれなかったぜ!という愚痴を言いに来ました。そりゃそうですソクラテスは外面的な肉体には興味はなく彼の魂に興味があったのですから。このときソクラテス53歳なんですが憧れられるなんてすげーですね。

 

書いてみるとこの本の内容を全然理解できていない事実を突き付けられ落ち込みますがこれが今の自分の力ですのでしゃーないです。もっと色々読んで考えないといけません。すくなくとも姿勢だけはプラトンと同じように、究極の美なるものを追い求めたいと思っています。

 

 

参考文献

手前味噌ですがパイドロスやアリストパネスの話はギリシャ神話の引用ばっかですから、前提として必ず知識が必要になります。読んでおいてよかったと思っています。

 

イデア―美と芸術の理論のために (平凡社ライブラリー)

イデア―美と芸術の理論のために (平凡社ライブラリー)

  • 作者: エルヴィンパノフスキー,Erwin Panofsky,伊藤博明,富松保文
  • 出版社/メーカー: 平凡社
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 イデアについて。ちなみに本書には「イデア」という単語は出てきませんでした。


CDレビュー: Jaga Jazzist – Jævla Jazzist Grete Stitz(1996)

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Jaga Jazzist – Jævla Jazzist Grete Stitz (CD) at Discogs

★★★★☆

 

現代ジャズ枠はノルウェーの前衛ジャズ音楽集団ジャガ・ジャジスト(ノルウェー読みではヤガ・ヤジスト)を聴くことにしました。仕事中にネットラジオなどを聴いてモチベーションを高めているのですが、このバンドの曲だけ毎回耳に残るのでとても気になっている集団でした。日本公演もしているらしく日本での知名度もそこそこあるようです。

1枚目である本アルバムは自主製作版でどこにも在庫が無いらしく、やむなくyoutubeなどで調達して聴きました。なのでこのレビューはCDレビューではありません。2枚目からはちゃんと手に入れますごめんなさい。

ジャンルの垣根を超えたダルダル

内容は期待通り狂っていました。イントロはノイズだらけの意味不明、次の曲がいきなりヒップホップでジャズあんまり関係ないのに歌詞でジャズジャズと言ってる、3曲目はブレイクビーツと現代ジャズを混ぜた意味不明な曲などなど。

7曲目Yo! It’s Christmasが一番狂っていてクリスマスソングっぽく始まったと思ったら途中で酩酊したラップが入ったりギターと一緒に奇声を上げたりしてダルダル色マリファナ味付けという感じでした。ノルウェーのクリスマスってこんな感じなのかいな。

ボーナストラック?の8曲目はいい感じのセッションプレイのあと、メンバーの一人が20分くらいメンバーの紹介っぽいことをノルウェー語で喋りまくるというまさにカオスな内容でした。

まだまだはじける余地はあると思うので星4つです。次回に期待

 

クリスマスソングをどうぞ。口から出てるのは凍える吹雪なのかエクトプラズムなのか

soundcloud.com

 

ジャズの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Eric Dolphy – Eric Dolphy Live at the Five Spot 1(1961)

★★★★★

 

ジャズの100枚。シリーズの23枚目。サックス奏者エリック・ドルフィー(1928-1964)のアルバムです。。早死にすぎ

バスクラやフルートも吹けるそうですよ多彩ですね。

 

1曲目のFire Waltzで左側から流れてくるソロサックスはジャズ聴き始めて日が全然無い私でもこいつアホかと思えるような演奏です。何考えてるかぜんぜんわからない。でも辛うじて意味不明にならないところのギリギリのラインでうへうへしながら吹いているように感じました。上のジャケット左側、目をつぶって吹いてる姿を思い浮かべながら聴くとシュールさが増してきてまた楽しい。この陽気キチな演奏にドラムが時々「いいねー兄ちゃん」って感じで応答しているからまたすごい。エド・ブラックウェルと言う人だそうです。

www.youtube.com

 

2曲目Bee Vampはドルフィーはバスクラで裏方に回り、右側からブッカー・リトル(1938-1961、収録してすぐ死んでる)がうっとりするようなでもハキハキした耳に残るサウンドを流してくれます。この曲もドラムいいなぁ。ドラム好きなんです

www.youtube.com

 

 

 

ジャズの他のCDレビューはこちらです。


自分の人生を総括する必要が出てきた

私は一般人から見ると、一見3児の父に見えます。

でも法律的は2児の父で、住民登録的には何故か独身で、戸籍的にはバツ2(3?)です。

家族とは同居していますが、名目的にも実質的にも父でも夫でもありません。おそらく子にとって私は、同居中の叔父さんくらいの位置付けです。

私は1日中在宅勤務で、勤務時間でも外を出歩くことはほとんどありません。1日の平均労働時間は10時間で休日は週1日です。私は労働基準法の適用外の働き方をしているので、残業という概念がありません。一昨日から家事をほとんどしなくなったので、ご飯を食べて労働する機械のような状態です。自分で使える金はありません。借金は100万ありますが、元本は月2万ずつしか減りません。このブログを書いている時、風呂でデジタルプレーヤーに入れたCD音源を聴くとき、寝る前に本を読む時間だけが幸せです。

 

生物学的+金銭的+時間的な自主性はありません。家事一切をやってもらってるので、文句は言えません。幸いパソコンが相手なので、ここで密かに精神的な自主性を保てるのが救いです。

家族がいるから文句言うなという声があると思います。ごもっともです。が、家に居ながら法律的にも精神的にも家族でない状態というのは、こたえます。会話はほとんどありません。愛情なんて全く分からなくなりました。私は30代前半ですが、考えてみるとここ数か月精通すらしてません。

suumoの新着物件情報を毎日チェックしています。ここに住んで食料はあれを買って時間の配分はこうして、という妄想が止まりません。おかげで比較的安い物件が多い(=供給過剰で人気がない)相模原市・町田市・八王子市の図書館立地とスーパー・ドラッグストア事情に異様に詳しくなりました。家賃2万円程度で条件に適う物件が4件ほど見つかっています。3市はいずれも単身用マンションの造り過ぎですね。安いのはみんな分譲賃貸でしかも似たような間取りと設備です。特に相模原市がひどい。

最近調べている食料コスパ調査も妄想の一環です。月1万円もあれば栄養満点で腹一杯な食事を十分エンジョイできることがわかりました。それから家具や家電も随分調べました。kakaku.comを使えば新品家電はヤマダやノジマのチラシより安く手に入る死、ジモティーというヤフオクをもうちょっと原始的にしたようなサイトを使うと、物によっては相当安く手に入りそうです。

自分で自分の生活を組み立てる想像をすることが楽しいのです。山で木や空や動物をずっと眺めていたいので上に挙げた3市だと八王子が一番山に近くていいかもしれません。

 

なぜこんなわけわからんことになったのか。今の生活に至るまでを振り返り検証する必要があります。

平日は時間が取れませんので日曜あたりに検証していこうと思います。

 

次記事


heartbreaking.を2008年後半の投稿から読みました

 

あまりに突き抜けているブログ主のことがとても気になったので過去ログを読み始めたら、全然他人事ではない記事(特に結婚から別居、離婚に至る過程)がいくつも見受けられたので、5時間ほど使って2008年後半~2015年までの投稿をあらかた読んでしまいました。今日の予定を全部潰したけど公開していません。今の私に必要と感じたからです。感銘を受けた記事を大量にブックマークしてしまいました。2005~2008年ごろの記事はまた余裕があるときに必ず読みます。

ブログの読者になりました。今後も読み続けます。本出してくれたら買います。

そしてここ1週間ほど感じている胃もたれの様な気分に理由がつきました。感謝しています。あなたの文章があってよかったと思う人は少なくとも1人います。

 

なぜだか次の本がとても読みたくなりました。今度買おう

森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫)

森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫)

 

 


書籍レビュー: エジプト人はいい迷惑、あと人死に過ぎ 『旧約聖書 出エジプト記・レビ記』

口語訳聖書(新約および旧約 索引)

★★★★☆

 

だいたい本1冊分くらいになったので一度レビューを加えます。日課でつけているtwitterに書いたまとめを自分で読み返してみました。1日260文字程度とはいえ1か月で8000文字くらいになるのでかなりの量ですね。

 


 

自作自演の脱出劇

「出エジプト記」は前半がモーセの誕生、神とエジプト王との対決から例の海を割る有名なシーンを通したユダヤ人の脱出まで、後半は宗教的行事の細かい定めを中心とした神のおことば全集です。

前半は神話的でダイナミックです。特に神がエジプト王に様々な嫌がらせをしてユダヤ人を追いだすように仕向ける逸話の数々は、カエルやイナゴを大量発生させるなど想像力を刺激される話が多いです。といってもエジプト王は頑固なので神の嫌がらせもエスカレートして、長子が全部死ぬとか国中が腫物の病気になるとか凄惨なものになっていきますが。。

で、エジプト王が頑固なのは、神がわざとそうしている、ということが作中に何度も出てきます。つまりこの嫌がらせ合戦は神の自作自演なのです。神の言い分はこうです。

そこで、主はモーセに言われた、「パロのもとに行きなさい。わたしは彼の心とその家来たちの心をかたくなにした。これは、わたしがこれらのしるしを、彼らの中に行うためである。また、わたしがエジプトびとをあしらったこと、また彼らの中にわたしが行ったしるしを、あなたがたが、子や孫の耳に語り伝えるためである。そしてあなたがたは、わたしが主であることを知るであろう」。

―出エジプト記10章1~2

つまり神の物語を作るためにエジプト中を大混乱に陥れ、家畜や人間殺しまくってるってわけです、大迷惑!神学的には一体どのような解釈になっているのか興味があります。

不必要なほど詳細な儀式の指定

後半は儀式のやり方が中心ですので正直言って退屈です。やれ幕にはあれ使え、器具は金を何タラント使えだの、そんな記述が延々と続くのです。たとえば祭壇に置く燭台についての指定はこんなものです。

また純金の燭台を造らなければならない。燭台は打物造りとし、その台、幹、萼、節、花を一つに連ならせなければならない。また六つの枝をそのわきから出させ、燭台の三つの枝をこの側から、燭台の三つの枝をかの側から出させなければならない。あめんどうの花の形をした三つの萼が、それぞれ節と花をもって一つの枝にあり、また、あめんどうの花の形をした三つの萼が、それぞれ節と花をもってほかの枝にあるようにし、燭台から出る六つの枝を、みなそのようにしなければならない。また、燭台の幹には、あめんどうの花の形をした四つの萼を付け、その萼にはそれぞれ節と花をもたせなさい。すなわち二つの枝の下に一つの節を取り付け、次の二つの枝の下に一つの節を取り付け、更に次の二つの枝の下に一つの節を取り付け、燭台の幹から出る六つの枝に、みなそのようにしなければならない。

ー出エジプト記25章31~35 (まだ二倍くらいの似たような記述があるよ!)

執拗なくらい詳細な規定が大量に書かれています。現代に生きているユダヤ教では一体どれほどこの戒律が守られているのでしょうか。

強力な汚れ思想

レビ記も出エジプト記も後半と同じく、1巻まとめて全部法律書的です。主に罪祭や燔祭などの儀式の執り行い方と、「汚れ(けがれ)」思想について書かれています。

「汚れ」思想は今の私たちから見れば極めて迷信的で、不合理です。病気のもの、とくにらい病(らい病ではなく重度の皮膚病を指しているという説もあります)患者への「汚れ」の烙印は強力で、触った人間も汚れたことになるし、キチガイ的に詳細なお祓いの儀式をしなければいけないし、病人が出た家は壁を削って専用の廃棄物処理場に投棄しろと書かれているほどです。大地の治療が必要でふ!

またほとんどの面で女性は男性より汚れていることになっていますし、ラストで出てくる「値積もり」とやらでも、女性は男性より価値が低いことになっています。私達の常識からみれば許されないことではありますが、彼らの価値観ではこれは当然のことなのであって、批判する権利は私たちにはありません。当時はそれなりの合理性があったのであろうと思います。

死に過ぎだろ

律法には「~すると死ぬ」という記述が非常に多く出てきます。聖書は「民のうちから断たれる」などというもう少し上品な表現が使われていますが、まあ死ぬんです。死にます。

まとめに入れたものだけでもこれくらい死にます。

  • 聖なるシナイ山に触れると死ぬ(出エジプト記19章)
  • 父母をのろうと死ぬ(21章)
  • ケンカして相手を殺すと死ぬ(21章)
  • 魔女は死ぬ(22章)
  • 異教徒は死ぬ(22章)
  • 祭司が神に指定された服を着ないと死ぬ(28章)
  • 祭壇に捧げる薫香や油を私的に作ると死ぬ(30章)
  • 安息日に働くと死ぬ(31章)
  • 偶像を作るとみんな死ぬ(32章)
  • 神の顔を見ると死ぬ(33章)
  • 主に捧げた肉を3日以上経ってから食べると死ぬ(レビ記7章)
  • 自然に死んだ獣の肉を食べると死ぬ(7章)
  • 祭りを行っている7日のうちに祭司が幕屋を出ると死ぬ(8章)
  • 異教の祭りをすると死ぬ(10章)
  • 幕屋の前まで持ってきた動物をささげなければ死ぬ(17章)
  • 動物の血を食べると死ぬ(17章)
  • とにかく主の言うことを聞かないと死ぬ(18章)
  • 子供をモレク(異教の神)に捧げる者、口寄せや占い師を慕う者、父母をのろう者、隣人やこの妻と姦淫する者、同性愛者、獣姦する者、きょうだいの裸を見る者、生理中の女と寝た者、父母の姉妹を犯すもの、は死ぬ(20章)
  • 7/10の贖罪の日に悩まないと死ぬ(23章)
  • 神をのろうと石打ちで死ぬ(24章)
  • 奉納物を譲渡すると死ぬ(27章)

これによれば私も3回くらい死んでますね。ユダヤ・キリスト教徒はスぺランカー並みに死にやすいんじゃないかと心配です。

 

モレクやケルビムなどいくつか分からない言葉を調べていたら、聖書ほぼすべてについて詳細に解説をしてくれているありがたいサイトを発見しました。初見の印象を大事にしたいので聖書を全部読んでからになりますが、いずれ読んでみます。

Logos Ministries | ロゴス・ミニストリー


聖書まとめ 旧約聖書「レビ記」

続いてレビ記です。今のペースだと全部読み終わるのに残り1年くらいかかりそうですね。


聖書まとめ 旧約聖書「出エジプト記」

旧約聖書を読もうと思ったのですがあまりの物量に圧倒されてしまったため、時間を味方につけることにしました。1日2章分をノルマとして少しずつ読んで、140字に強引にまとめてtwitterに放流する作業を1か月ほど続けています。昨日出エジプト記とレビ記を読み終わったので、振り返りも兼ねて一気に貼り付けてみます。

 

初めの方の「神ブログ」というのは聖書って神が書いたブログっぽいなぁと思ったからです。文字数の無駄になるので後々省きました。