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元添加物商社マンの懺悔の書
著者の安部司さんは、国立大の化学科を卒業し添加物を売る敏腕商社マンとしてバリバリ働いていました。添加物で数々の食品加工会社に大きな利益をもたらし「添加物の神様」と呼ばれていました。
ある日、こどもが食べようとしたミートボールが彼の運命を変えました。そのミートボールは、捨てられるはずのクズ肉に組織上大豆たんぱくを加えて増量し調味料や乳化剤などを投入して味と舌触りを調え氷酢酸+カラメル+化調で作ったソースもどきを加えてできた、彼の自信作でした。ゴミと大量生産される化学物質が原料なので原価が安く利益率の高い優良品でした。しかしそれを自分のこどもが「おいしい」と言って食べるのを見て、、彼は「食べたらいかん!」と言いました。
こうして彼は会社を退職し、添加物についての知識を広める活動を始めました。これが序章です。
具体例なしでも説得力大
本書には食品添加物の実際の仕様事例が数多く例示されていますが、どの添加物がこれこれこのように毒性がある、などとという具体例は一切出てきません。おそらくターゲット層を化学的知識のない層に絞っていると思われ、意図的に具体例を出していないようです。上手いマーケティングです。というのも、彼が「添加物の神様」だったという事実1点だけで本書に説得力が出るから必要ないのです。
私は昔から添加物は好きではありません。数々のコスト削減の工夫の賜物である添加物使用の実例をこれだけ大量に並べられると辟易します。
食の破壊
著者は毒性の危険性にも言及していますが、それ以上に添加物による味覚の破壊、ひいては食生活の破壊を最も憂慮しています。この視点は私と同じです。商品を遠方から運んで保管し陳列する以上、酸化防止剤や保存料の添加は避けられません(自炊すりゃいいんですが)。しかし嗜好性の強化となれば話は別です。
グルタミン酸ナトリウム。人間によって発見された最も偉大なタンパク質加水分解物からなる旨み調味料。いわゆる「味の素」です。これを単独で使用することにより我々の舌はウヒャッホーイと唸り脳が喜びます。以前に上司は「焼き鳥に味の素をかけるとすごくおいしいんだよ」という鳥を完全に無視した発言をしていました。味の素の破壊力を端的にあらわした発言です。「アジシオ」というこれまた味覚を大きく刺激する塩に味の素を加えた黄金的製品も存在します。
外食をするといつも感じます。味が濃すぎる。外食産業は売れなければ商売になりませんから、我々が求める、タンパク質加水分解物がいっぱいの脳が喜ぶ食事を提供します。必然的に味は濃くなります。
外食で最も中毒性のある食べ物と言えばラーメン二郎です。私も一時期食べていました。
ラーメン二郎 立川店 (らーめんじろう) – 立川南/ラーメン [食べログ]
このラーメンの旨みの正体はグルタミン酸です。
自宅でできる二郎風ラーメンの作り方 – デイリーポータルZ:@nifty
店に行くと袋から「白い粉」を大量投入する光景が見られるそうです。
カネシ醤油!とオーションをラーメン二郎で使っているのですが・・
醤油にも「アミノ酸液」なる怪しい物質がふんだんに含まれているようです。大量の脂、塩、化調と中毒成分の総合栄養食品と言えます。このうち塩、油については格好の参考書籍を見つけたので今度読んでみようと思っています。
話が脱線しました。本書では以上のような「うまみ」の製造方法も事細かに語られています。インスタントラーメンのスープはベースはみな同じ塩+化調+アミノ酸であり、あとは配合量をちょいと変えるだけでできあがります。白い粉しか使っていません。それっぽいラーメンの色はすべて着色料です。
大量の砂糖や果糖ブドウ糖液糖を入れて甘々でとてものめない飲料にちょいと酸味料とレモン香料を加えてやるだけですっきりとした清涼飲料水の出来上がりである、という記述も刺激的です。
http://www.asahiinryo.co.jp/products/carbonated/mitsuya_green_lemon/
例えばこれ。500mlで炭水化物47.5gです。角砂糖15個分くらいですね。
添加物をなるべく摂取しないようにするには
自炊しかありません。ただし本書では自炊だとしても十分危険であることも指摘されています。
大量生産・安価な商品に添加物が含まれないことなんてありえません。輸入食品に含まれる遺伝子組み換え作物が避けられないように、市販品を買うことによる添加物の摂取も避けられません。添加物の毒性うんぬんについては私は疑問がありますが、本書で警告されている味覚の破壊については全面的に同意します。自分の食は自分で守るしかありません。
途中でも述べましたが、現場の人間が書いたというのは重過ぎます。ちょっと反則的ですね。