書籍レビュー:『躁と鬱』著:森山公夫

★★★☆☆

著者は1934年生まれの精神科医、陽和病院元院長、現名誉院長の森山公夫さんです。2014年刊行です。

著者は、単極性のうつ病というものは存在しないという立場に立っています。躁とうつはいずれも、「焦燥→努力→焦燥…」「孤立→焦燥→孤立…」といったスパイラルを形成する点、24時間生体リズムの崩壊であるという点で同じであり、これらが循環をなして躁うつ病を形成すると言っています。

躁うつ状態を日常からの「転調」と捉え、吉本隆明やシェークスピアなどを引用して美しい躁うつ病理論を構築したことは見事というほかなく、読み物としては面白いのですが、じゃあ具体的にどうすりゃいいんだというと「寝ろ」「生活リズムを整えろ」くらいしか言及がありませんでした。それができてたら苦労せんわ!!

著者は薬物療法にも懐疑的で、それはそれでよいのですが、対症療法しないなら患者本人の深層心理に向き合って長い対話を続けていくしかないことは以前読んだレインの本にも書いてあったのに、対話についてはぜんぜんページが割かれていませんでした。

病気を理解するには、概念を作って言葉を割り当ててあげないと、治療するにも雲をつかむようだしデータの蓄積もされません。偉大なる先人たちによって医学用語が定義されていったから今日の医療があることは分かります。分かりますが、それでも本書はやや概念論に傾き過ぎている気がしました。それから、文章がわかりにくいです。わりと致命的です。わからなくて上手くまとめられませんでした。

Amazonレビューでも、患者さんに「思弁的にすぎる」と書かれていました。やっぱそうだよねー

関連書籍

精神科医がうつ病になった本だそうです。

主人公が孤独からリズム崩壊していく話だそうです。


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