返事はハイでしょ

ぼくは生活の中でよく失敗をして、元妻に怒られた。怒るだけならいいのだが、元妻は人格攻撃も同時に行う。元妻は「人格を否定しているのではなくて、起きたことにそれ自体対して怒っている」と言っていたが、嘘だ。

ぼくが間違いを指摘して「それは違う」と言うと、元妻は「言い方がきつい」と怒った後、「トーダイ野郎は他人を見下す」と付け足した。元家族の家ではぼくは東大中退であることで驕っている、えらそう、ということになっていたからだ。中退なのに。東大なんか入ってごめんなさい。勉強していてごめんなさい。今でもぼくは東大への評価を低く見積もるバイアスをかけている。

人の気持ちが読めなかったときは、元妻に「××人は他人の気持ちを踏みにじるもんな!」と毎回言われた。××にはぼくの地元の名前が入る。これは元妻とぼくの親の仲が悪かったためだ。ぼくの親のことは家では「××人」と呼ばれていて、ぼくも××人と呼ばれていた。元家族の家では僕が生まれ育った地域も土地も忌み嫌われていた。これも尾を引いていて、ぼくが他人に地元のことを話す時にはマイナスイメージしか語ることができず「ここが美しい」「こんないい所がある」と紹介することができない。

誰だって怒られるたびに人格否定されたら耐えられない。言い返すための論理的思考、ニュートラルな気持ちも備わっていない。気分が地底まで落ちていくのを防ぐために、ぼくはまず、怒られそうになったら言い訳することにした。

例えばぼくの返事が遅いと怒られた。おおむね1秒以上間が空くと怒られる。ぼくは「2つのことを同時に考えていたら時間がかかった」「扇風機に気を取られていた」「◇◇という言葉は意味1と意味2の2通りが考えられるから、どちらかわからなくなって時間がかかった」などと言い訳をした。元妻には「◇◇は状況的に意味1に決まっているじゃないか、意味2を思いつくのはおかしい、さぼっている」などと否定された。

うっかり言い訳とみなされる言葉を発すると「また言い訳したな!」という言葉と共に堰が切られ、直接関係のない「××人」などの罵倒語を次々に浴びせられた。

ぼくは真面目に理由を説明しているつもりだった。しかし、何十回も何百回も「言い訳するな!」と言われ続けたため、ぼくが言い返す行為はすべて言い訳であると認識するようになった。

元妻は「返事はハイでしょ!」と言い、ハイ以外の返事を許さなかった。相手を怒らせたとき、怒らせそうになった時に反射的にハイと言ってしまう癖は今でも抜けていない。

これ調教だよね?


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