京王ダイヤ改正とか

TrainNavi2

更新しました。2015/09/25に行われた京王線系列のダイヤ改正に対応しました。

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なぜこんなものを作るかと言うとダイヤを目で見て愛でるためです。時刻表は昔から好きです。おそらく時刻表は数字で表現されているからでしょう。何駅から何駅までは何分とか調べてるとうひょーってなります。このPHPアプリケーションを作ったのはプログラミングの修行のためもありますが動機のほとんどは趣味です。グラフィカルに列車っぽいものを走らせてみたら面白くていつまでも見ていられそうです。いまのところ実物の列車には興味はありません。

脱線しました。9/25改正の目玉は準特急の停車駅の増加です。笹塚と千歳烏山に止まるようになりました。でも速度は落ちていません不思議。ひそかに区間急行が仙川に止まるようになりました。快速が八幡山で待避するようになり全然快速じゃなくなりました。しかも京王新宿ではなく新線新宿から発車するようになりました。快速停車駅の住人はあの大深度ホームまで降りるのはたいへん。

私はいま京王線沿線には住んでいませんが以前に相模原線沿線の多摩ニュータウンの西の果ての駅からさらに山を18分のぼった所に住んでいました。当時は橋本直通特急などなく新宿から八王子と高尾行の準特急が10分おきに出ていて、それに乗ると調布でダッシュ乗り換えを強いられる不便なダイヤでした。9/25改正で橋本発の準特急が笹塚に止まり、しかも笹塚では都営線行の急行が待ち構えているという超便利なダイヤになっていて何だよチクショウという感じです。

当時は朝7時発くらいの最ラッシュ時間帯の急行で通勤していました。京王線は複々線化されていないため、この時間の急行は急行とは名ばかりで調布を出るころには本線から合流した電車と合わせて超過密ダイヤとなっており通常の半分の速度で運転します。15.5kmを35分かけて走ります。のろすぎ

で、京王は首都圏の列車混雑度の上位にはランクインしていませんがあれは各駅停車の混雑度平均ですから嘘の値です。急行はJR首都圏路線にほぼ匹敵する混雑率300%で身動きが取れず、橋本の時点ですでに満席の列車では座席の前に立たざるを得ずしかも後ろから押されるため電車が傾くと壁ドンならぬ窓ドンは必至です。荷物から手を放すとあれよあれよとどこかに行ってしまうおそれがあります。過密はしょうがないですがノロいのが致命的でとてもげんなりする朝ラッシュでした。

そんな列車に乗っていたら南平で人身事故なる放送が入り調布を目前にして電車が止まったことがありました。まだ調布が地上駅だった時代ですので平面交差に入れない電車は動けなくなり、そのまま2時間ほど閉じ込められました。その後もダイヤ乱れにより新宿についたのは3時間後。体調が悪くなり搬送された乗客もいたそうです。そんな思い出のある京王のダイヤを視覚化して眺めるのは至福です。8時前後の超過密ダイヤをJRや小田急と並べてみると京王のノロさが際立ち、キャッキャウフフ


書籍レビュー: わかりやすい哲学者列伝107傑『哲学大図鑑』 著: ウィル・バッキンガム 訳:小須田健

★★★★★

 

以前「経済学大図鑑」という本を読みました。これがなかなか面白かったのでこのシリーズ、全部読んでみたくなりました。分厚くてでかいので時々1冊読む程度のペースで全部読もうと思っています。

 

哲学は私にとって昔から気になる分野です。というのも私は頭が悪い、特に論理的思考力に問題があるという自覚がありますので、論理の原理原則を追求し思考の基盤となる(と信じている)哲学をどうしても学びたかったのです。そしてそれは、ふつーの人が当たり前に考えている常識のようなものへの架け橋になると考えていました。私にとって全く理解できない常識がどんなものか完全に解体してしまえば理解できるようになるかもしれないという期待があります。哲学が本当にそんなものなのかどうかについてははまだ結論は出ていません。

そこでまず西洋哲学の概説書を読んでみようと思いました。古本屋の100円コーナーにカバーなしで捨て置かれたような状態になっていたこの本が目に留まりました。

西洋哲学史 (上巻) (岩波文庫 (33-636-1))

西洋哲学史 (上巻) (岩波文庫 (33-636-1))

 

ゴミ箱から救い出すような気持ちで購入し上下巻とも読んでみましたが、意味不明でした。死にそうになりながら最後まで読みましたがさっぱりわかりません。私の頭が足りないのか訳が悪いのか著者がアホなのかすらわかりません。ここから得た知識は「人間どんなことを基盤にしても生きられるものなのだなあ」という分かったような口をきくことくらいでした。

数年経ち、目に留まったのが本書です。経済学大図鑑と同じく、年代順に107人もの哲学者をずらずらと並べ、ひたすら解説していくというスタイルをとります。本書はシュヴェーグラーのものとは違い、極めて分かりやすかったです。著者は経済学大図鑑の人とは違いますが訳は同じ小須田さんです。訳者の専門ど真ん中だったことも分かりやすさに寄与しているようです。

分量は哲学者によって異なり、一人当たり1P~6Pの解説がなされます。著者が重点的に解説しようと思った人については長くなっているようです。ブッダや老子、田辺元、和辻哲郎、イスラム思想家など東洋の思想家についても取り上げられているのが特徴的です。訳者のあとがきによると著者は哲学の根本特徴である「理性的推論」に重点を置き、解説もこの視点からなされ類書と比べるとかなり斬新な解釈がなされているそうです。

以下では私が気に入った哲学者を5人紹介します。

5位 ウイリアム・ジェイムズ(1842-1910)

ジェイムズはアメリカ人。「プラグマティズム」という、真理を有用性に認める立場を確立した哲学者です。彼は、真理は絶対的1つのものではなく時と共に移り変わるものであると考えます。例えば地球が平らだと信じられていた時代はそれが真理であり、その時代においては十分機能していました。しかし時代が進みコロンブスの時代では地球が平らである解釈していたのでは不都合が起きます。そこで真理は「地球は丸い」へ変化することが要請されます。ここからジェイムズは、真理とは内在するものではなく我々の観念の中に「生じる」ものである、真理は真理に「なっていく」、様々な出来ことによって「真理にされる」ものであると推察します。

ジェイムズの論理の魅力的な点は、この考察から真理がダイナミックで動的なものとなる点です。一見して荒唐無稽な信念もその有用性が評価されれば彼の論に照らせば真理となります。新しい真理が次々と生まれますし、多様な真理の束が構成されることが期待されます。ただしその真理の有用性は、非常に厳密に評価されなければなりません。そして、信念が本当に真理であるのかどうかは私たちが生きている現在には決して評価しえず、あとになって振り返ってはじめて真理であったかどうかが分かります。とても厳しい考えですが、豊富な可能性を感じさせるジェイムズの考え方は好きになりました。

自分のなすことがちがいをもたらすかのようにふるまえ。そうすればそうなる。

4位 デイヴィド・ヒューム(1711-1776)

スコットランドのエディンバラ生まれのヒュームは、「イギリス経験論者」と言われるそうです。当時支配的だった考え方はデカルトによって打ち立てられた「合理主義」でした。人間が「生得概念」をもって生まれてくるとし、これを原理としてあらゆる知識には理性によって到達できるという理性バンザイな考え方でした。ヒュームは、そんなもんないんじゃね?とこれらを攻撃します。

例えば「AがBを引き起こす」という言明があったとします。例えば「明日になると太陽が昇る」という言明です。これは経験的には必ずそうなのですが未来永劫続くとは限りません。なぜなら未来の事象は観察できないからです。ヒュームはこれを突き詰めて、「科学的・帰納的推論はすべて論理的ではない」と結論します。どこまで推論を厳密にしても、論理的でない以上、それは信念もしくは蓋然的な習慣に過ぎません。科学が習慣にすぎないという主張はラディカルでびっくりするものでしたが、言われてみればその通りです。

ただしヒュームは科学が習慣だからと言ってそれが無意味だと説くわけではありません。むしろ理にかなったことであると考えていました。私達が信念によって引き出した結論は「論証的な結論と同じくらいに精神にとって満足のゆくものなのだ」と述べています。なんだかジェイムズとかぶってますね。ヒュームのことも、私がそう信じたいので気に入ったのでしょう。

習慣は人間生活の偉大なガイドだ。

3位 ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン(1889-1951)

ドイツはウィーン生まれのウィトゲンシュタインは、高機能自閉症の疑いがあると言われています。これだけでも気になる人なのですが、本書の解説によれば彼が目指したのは 「世界と言語の構造化」です。おお、めっちゃシステム化ド直球やん!しかも、両者はすべて構成要素に分解可能であると言い切っているそうです。希望が持てます。

ウィトゲンシュタインは、世界は命題で成り立っていると考えました。命題とは「波平はハゲだ」のように真偽が決定できる主張のことです。これを主著『論理哲学論考』の冒頭で「世界とは成立していることがらの総体だ」と表現しているそうです。

さらにウィトゲンシュタインは言語が世界を「写像」化していると主張します。写像とは数学的にはある世界の1つのものと別世界の1つのものを、1対1で対応させることです。つまり言語は世界のマッピングであるというわけです。地図を思い起こしていた抱ければよいと思います。地図上では、現実世界と紙の上の世界が1対1で対応しています。言語と世界は独立した論理形式をもつが、写像の働きにより私たちは世界を語ることができると彼は考えました。

私の言語の限界が私の世界の限界だ。

ところが世界が命題で成り立っているので、言語も命題で成り立っている、したがって真偽が判断できないこと、例えば倫理学や宗教は言語で語りえないとヴィトゲンシュタインは結論してしまいました。

語りえないことについては沈黙するほかない。

後年ヴィトゲンシュタインはこの考えを改めていくらしいですが、本書では詳しく触れられていません。言語によるマッピング・写像という考え方は私の世界観と激しくマッチするのでとても興味がありますが、のちにどうして考えを変えていったのかとても興味のある人です。

2位 ジャン=ポール・サルトル(1905-1980)

フランスの現代哲学者サルトルは、ボーヴォワールとの奇妙な生活が取り上げられることが多いようですが、本書によれば彼は「自由」を考え抜いた哲学者であったようです。

実存は本質に先立つ。

サルトルはペーパーナイフを例にとって上記の言明の説明をしました。ペーパーナイフの本質は包装を開くことです。効率的に包装を開くためには、人間工学的にデザインされた持ち手や、スムーズに切れる鋭い刃が必要です。そしてこれを設計するためには、ペーパーナイフの本質を理解する職人という実存が必要です。言い換えると、ペーパーナイフは目的・本質が先行し結果として実存しているのではなく、人間という実存が先立っているということです。

西洋で本質とされるのはもちろん神です。サルトルは神が先にあったのではない、人間が先にあるのだ、と考える無神論者でした。神は人生に目的を与えます。神学者はそれを人間の本質と考えます。サルトルはそんな強いられた本質なんかやなこったと考える人間でした。

自由には制約があります。例えば私たちは羽をもたないので飛べません。食わなければ死にます。しかし有限とはいえ私たちには選択の自由があります。無意識的に習慣のまま行動するのではなく、どう行動するか選択に向き合わなければならないというのがサルトルの主張でした。このため彼は政治的活動に積極的に関与していくそうです。

人間は自由の刑に処せられている

また、自由とは責任を伴うものです。なぜなら外部的なものに制約されないということは、同時に外部に自分を正当化する根拠が何もないということだからです。自分の行動に言い訳は許されません。なかなかヘビーな概念ですが、これは以前読んだ「7つの習慣」で言われていたことと全く同じですね。

自由についての彼の考え方は大好きです。フランスの個人主義はサルトルの影響を強く受けているそうです。私がなんとなくフランスに憧れて大学でフランス語を選択したのはあながち間違っていませんでした。彼の著作は必ず読んでみたいと思います。

1位 ゲオルク・ヘーゲル (1770-1831)

ヘーゲルはいわゆる「ドイツ観念論」と呼ばれる学者の代表だそうです。昨日の記事でも書きましたが、ヘーゲルは「弁証法」の提唱者です。弁証法は、あらゆる観念は完全なものではありえずかならず矛盾を含むものである、という考えを基礎とします。かれは観念を「定立」と呼び、内部の矛盾を「反定立」と呼びました。そしてこの矛盾は「綜合」という一層豊かな内容を持った観念が、もともとの観念それ自体から出現して解消する、というプロセスを辿ると考えました。「定立」の観念は私たちの理解が足りなかったために「反定立」が見えてきたのであって、「綜合」によってより正確な観念が把握できるようになったと考えます。これが弁証法です。

真理とは全体だ。

この論理の何が魅力かというと、その発展性です。定立はどこまでも拡大させることができますが、どこまでいっても「綜合」の余地があるということですから、無限大に広がることができます。そのイメージに私は魅了されてしまいました。動的に自己増殖可能な観念、それを身につけられたらどれだけ素晴らしいことか。

番外 フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)

キリスト教に壮大なケンカを売った人間です。本書で唯一爆笑した人物でした。死後の世界を信じているために現実の世界を置き去りにしているキリスト教や、「真」なるものが存在すると主張し現実世界はくだらないものだとするプラトン達のことが本当に気に入らなかったようです。すげー厨二めいたものを感じますがぜひ読んでみたい思想家でした。

振り返って

気に入った哲学者には偏りがあります。ジェイムズ、ヒューム、サルトル、ニーチェといわゆる「真なるもの」への私の疑念がそのまんま形になっているようです。ヘーゲルの思想は憧れです。ますますもって歴史を学ぶことの必要性が明らかになりました。

次は彼らの思想を原著でたくさん読んでみたいですがきっとすごく難しいんだろうなあ。

 

 

参考書籍

 

今回は多いです。100冊くらい読みたい本が増えた

 

ジェイムズ

ウィリアム・ジェイムズ入門―賢く生きる哲学

ウィリアム・ジェイムズ入門―賢く生きる哲学

 

 

宗教的経験の諸相 上 (岩波文庫 青 640-2)

宗教的経験の諸相 上 (岩波文庫 青 640-2)

 

 

ヒューム

人性論 (中公クラシックス)

人性論 (中公クラシックス)

 

 

社会契約論: ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ (ちくま新書 1039)

社会契約論: ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ (ちくま新書 1039)

 

 

ウィトゲンシュタイン

論理哲学論考 (岩波文庫)

論理哲学論考 (岩波文庫)

 

 

ウィトゲンシュタイン入門 (ちくま新書)

ウィトゲンシュタイン入門 (ちくま新書)

 

 

サルトル

 

嘔吐 新訳

嘔吐 新訳

 

 

サルトル 失われた直接性をもとめて シリーズ・哲学のエッセンス

サルトル 失われた直接性をもとめて シリーズ・哲学のエッセンス

 

サルトル本の邦訳はあんまり出てないのでフランス語を極めないとだめかも

 

ヘーゲル

精神現象学

精神現象学

 

 

歴史哲学講義 (上) (岩波文庫)

歴史哲学講義 (上) (岩波文庫)

 

 

使える 弁証法

使える 弁証法

 

 なんじゃこりゃ

 

ニーチェ

ツァラトゥストラは こう言った 上 (岩波文庫)

ツァラトゥストラは こう言った 上 (岩波文庫)

 

 

道徳の系譜 (岩波文庫)

道徳の系譜 (岩波文庫)

 

 

善悪の彼岸 (光文社古典新訳文庫)

善悪の彼岸 (光文社古典新訳文庫)

 

 

 

他に気になった人。

 

ゴータマ・シッダールタ(釈迦)

スッタニパータ [釈尊のことば] 全現代語訳 (講談社学術文庫)

スッタニパータ [釈尊のことば] 全現代語訳 (講談社学術文庫)

 

 

トマス=アクィナス

神学大全I (中公クラシックス)

神学大全I (中公クラシックス)

 

 

モンテーニュ

エセー 1 (岩波文庫 赤 509-1)

エセー 1 (岩波文庫 赤 509-1)

 

 

ウルストンクラフト

フェミニズムの古典と現代―甦るウルストンクラフト

フェミニズムの古典と現代―甦るウルストンクラフト

 

 

ルソー

エミール 上 (岩波文庫)

エミール 上 (岩波文庫)

 

 

ショーペンハウアー

意志と表象としての世界〈1〉 (中公クラシックス)

意志と表象としての世界〈1〉 (中公クラシックス)

 

 

ソシュール

一般言語学講義

一般言語学講義

 

 

ラッセル

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

 

 

クワイン

ことばと対象(双書プロブレーマタ3)

ことばと対象(双書プロブレーマタ3)

 

 

 デリダ

声と現象 (ちくま学芸文庫)

声と現象 (ちくま学芸文庫)

 

 

リオタール

ポスト・モダンの条件―知・社会・言語ゲーム (叢書言語の政治 (1))

ポスト・モダンの条件―知・社会・言語ゲーム (叢書言語の政治 (1))

 

 

 ボーヴォワール

決定版 第二の性〈1〉事実と神話

決定版 第二の性〈1〉事実と神話

 

 


書籍レビュー: 構造改革と止揚 『ローマ人の物語 (6) ― 勝者の混迷(上)』 著: 塩野七生

★★★★★

 

6冊目の舞台は紀元前133~88年までが舞台です。ポエニ戦争が終結し地中海の覇者となったローマを待ち受けるものは、、なんと国内問題でした。

日本とかぶってる

対外的には大した戦争も無く見た目は平和であったローマですが、平和であるゆえにある問題に悩まされることになりました。それは貧富の差です。

まず、第一次ポエニ戦役によって属州となったシチリアから税として納められた小麦が、小規模農家に打撃を与え中産階級が没落します。彼らは失業者となり、ローマに流れ込みます。

さらにポエニ戦争が終結し、戦時の特例であった直接税が廃止されます。この直接税は累進課税であったので、富裕層の金が余ります。金が余った人間が考えることは投資です。ローマは小麦農家が滅び大規模なオリーブや葡萄酒農場が発展しつつあったので、ここに金が流れ込みます。さらにこの時期、連戦連勝の戦争で得た奴隷という超低価格な労働者が入ってきました。彼らを農場で働かせた富裕層はぼろ儲けし、ポエニ戦役の前後で最富裕層と最下層の格差は10倍から500倍以上へと大拡大してしまいました。

小泉構造改革とTPPでボロボロな日本の中産階級と、アベノミクスで大儲けした日本の富裕層と完全に重なる構図です。ローマのこの後の事態を探ると日本がこれからたどる道が見えるかもしれません。

構造改革とその結果

さてこの事態を憂慮していたのは、ポエニ戦争の英雄スキピオの甥にあたるグラックス兄弟です。彼らは最も権力のある執政官ではなく、護民官という平民のトップに選出された後、様々な改革を行います。例えば、大農園の土地を再分配して自作農を増やし、中産階級を復興させるための農地改革法。日本の戦後の農地改革に似ていますね。また、小麦を貧民に二束三文で売ってセーフティーネットを作る穀物法。これは生活保護の思想です。また、平和になり軍事的な負担があまり意味のなくなる中で、同盟都市だけに課された1割の税金は不公平となったため、同盟都市に一律にローマ市民権を与えるという法律の制定。いずれも平等を目的とした素晴らしい法律だと思いました。

しかしこれは全て富裕層の既得権益を削る法案です。富裕層はすべてローマ市民です。ローマ市民の有力者が勢揃いする元老院はいい顔をしません。どうしたかというと、グラックス兄弟は元老院の陰謀により暗殺されました。マジかよ。

グラックス兄弟の弟ガイウスが失脚させられるまでの著者の考察は現代の私達にも通じるものがあります。耳が痛いです

二面作戦*1の一つは、ティベリウス*2のときも使われ、いつでもどこでも有効であった作戦である。護民官ガイウスの政策は、票集め、人気取り政策、権力の集中、権力の私物化であるという声を広めた。現代イギリスの研究者の一人は、次のように書いている。

「無知な大衆とは、政治上の目的でなされることでも、私利私欲に駆られてのことであると思い込むのが好きな人種である」

好きなのは無知な大衆に限らないと、私ならば思う。これより70年後の話になるが、ローマ史上最高の知識人であり、私の考えでは最高のジャーナリストであったキケロでさえ、この種のことが「好きな人種」の一人であったのだ。要は、教養の有無でも時代の違いでも文化の違いでもない。目的と手段の分岐点が明確でなくなり、手段の目的化を起こしてしまう人が存在する限り、この作戦の有効性は失われないのである。

同盟者戦役とアウフヘーベン

彼らが暗殺され、穀物法以外の改革案は葬り去られました。その後しばらくたって、格差問題は内乱となって表面化します。「同盟者戦役」と呼ばれる争いが起きます。

軍制改革(詳細は マリウスの軍制改革 – Wikipedia を参照)を経てローマ市民と同盟国の市民はますます格差が激しくなり、同盟国ではローマ市民権を求める声が高まりました。しかし既得権益層の多いローマ側はちっともそれを認めようとしません。認めようとすればグラックス兄弟のように殺されてしまうほど元老院の権力は強大でした。

紀元前90年、とうとう同盟国が爆発します。

The Growth of Roman Power in Italy.jpg

Social War (90–88 BC) – Wikipedia, the free encyclopedia

赤い部分が同盟国ですが、これらが一気にローマに反旗を翻します。同盟国はローマの戦術を知り尽くしていますから、どの戦場も激戦となりほぼ互角の戦いとなります。ローマ側はやむなく、同盟国に市民権を一律に認めることで事態を収束させ、2年で戦いは終わりました。

この事態に私はびっくらこきました。一昨日に読み終わった「哲学大図鑑」という哲学者をひたすら紹介していく本(明日感想を書きます)で一番気に入ったのがヘーゲルという人で、彼が有名にした「弁証法」という理論は乱暴にまとめると「矛盾を統一してより高い次元に至る(日本語で止揚、ドイツ語でアウフヘーベンというそうです)」というものでした。国内の矛盾が戦争となり、それをローマ市民権による結びつきという新しい次元に移行したローマは、まさにこの過程を辿っています。弁証法は歴史的なものだと書いてありましたが本当にそうでした。

本書はハンニバル戦も終わりドラマティックな戦いこそないものの、構造的な転換を地味に描き出す画期的な章でした!下巻はスッラ、ポンペイウスという人物が活躍するそうです。次も楽しみ。

 

*1:元老院がガイウスを失脚させるための作戦。2つ目はもっとエグい。本書参照のこと

*2:ガイウスの兄。元老院に失脚させられ暗殺された


CDレビュー: The Bill Evans Trio – Moon Beams (1962)

★★★★☆

 

ジャズの100枚シリーズの22枚目、3回目?の登場となるピアニスト、ビル・エヴァンスのアルバムです。偶然にもドラムを叩いてるのがいま他のボックスセットを聴いてるポール・モチアンでした。

超瞑想エヴァンスZ

ほぼ全曲がしっとり静かな曲で構成されています。1曲目Re: Person I Knewや2曲目Polka Dots And Moonbeamsなんか超がつくくらいの瞑想ミュージックです。こういう曲を聴くとなぜか新宿ブックファーストが思い出されます。店の中はごく静かなのに本から漂う熱気を感じ手に取って人知れず興奮してしまうあの感じです。いや最近大型書店って会社に行った帰りにカンタンに寄れるブックファーストにしか行ってないからなんですが。東京に住んでたらまた別の印象を感じるのでしょう。静かな中に大きな力を感じることができます。モチアンのドラムは静かなくせに粒がしっかりしていて好きです。

全曲がこの調子で進むので精神が未熟な私にとってはどうしても物足りない印象になってしまいますが、精神を研ぎ澄ましたいときはこのアルバムをヘビーローテーションでまわしながら作業するととても良いんじゃないでしょうか。

ちなみに私の最近のヘビロテはVingt Regards sur l’Enfant-Jesusです。

 

いっきょくめ。ぬめぬめして死ぬ

www.youtube.com

 

 

ジャズの他のCDレビューはこちらです。


書籍レビュー: システム化しまくれ!『自閉症スペクトラム入門―脳・心理から教育・治療までの最新知識』 著: サイモン・バロン=コーエン

★★★★★

自閉症スペクトラムの最新知識が欲しかったのでこの本は読んでみたかったです。ようやく手に入れました。さまざまな医師の間で必ず話題に上る著者サイモン・バロン=コーエンさんの日本語の書籍の中では一番新しいと思われます(でも2011年出版、原著は2008年)

内容はまず実例を提示したのちに、自閉症の概念の歴史や測定方法、心理学・生物学的な考察と最後に介入(支援)まで幅広く浅く、でもポイントはバッチリおさえてある良書といえるでしょう。

アンドリュー君に共感

つい先ほど食料についての記事の続きを突然思い立って投稿したのですが、これは実例に出てくるアンドリュー君のエピソードを読んで触発されたからです。

自閉症スペクトラムの例として出てくるアンドリュー君はかなり優秀な部類で、イギリスの学校(中学校相当?)を退学した後、独力で大学に入りました。自然科学の能力が非常に高いのに、雑談はできないし教師を質問攻めにしたり同級生と衝突してイジメにあったりしていたそうです。

彼は常に同じものを食べる。それは全粒粉のビスケットとミルク。彼は、健康を維持するために必要なすべてが補給でき、極めて経済的である彼独自の食事方法を守っている。彼は、彼自身の視点だけでしか考えないので、自分の奇妙な味覚を人がどう思うか全く気にしない。

これを読んで、うわやってること自分と全く同じじゃん!と衝撃を受けたのでした。うんうん。やるよねーそういうこと。

私の現在の主食は玄米です。玄米は、一般的には不味くて食べられないと不評ですが、私は玄米だけ食べれば生きていけるのなら、玄米以外には何もいらないと考えます。ごはんがススムくんを筆頭としてふりかけ、タクアン、梅干し、卵と醤油などなどご飯に添えるものは数多くあります。これはごはんだけだと一本調子で退屈するから人類が編み出した舌へのオーケストレーションと言えるでしょう。でも私はご飯だけでいくらでも食べられます。おかずすら必要ないと思えるくらいです。同様の理由で、食パンにバターやマーガリン、ジャム、マヨネーズ、シナモンなどをかけずとも、むしろトーストせずともいくらでも食べられます。小麦粉ももしかしたらそのまま食べられるかもしれません。でもアルファー化してないから消化悪くてダメかな?

共感化ーシステム化仮説

自閉症の原因を説明するものとして、5つの仮説があるそうです。本書では5つとも説明されていますが、サイモン・バロン=コーエンさん「共感化ーシステム化仮説」を一番推しています。これは以前読んだ広沢先生の本とほぼ同じ見解です。広沢先生がバロン=コーエンの書籍にかなりを負っているので当たり前と言えば当たり前なんですけれど。ただし、広沢先生は患者の一人が語っていた「タッチパネル」という概念にインスピレーションされて、独自の解釈をされています。

共感化ーシステム化仮説とは、文字通り社会化を「共感」「システム化」という2つの概念に分類し、自閉症スペクトラム者を「システム化」に特化したものとして見るという立場を取る仮説です。

「システム化」とは、分析と規則性への希求です。抽象化のシステムなら言語の文法(大好き)、数的なシステムなら時刻表(大好き!アプリケーションも作った)、自然のシステムなら天気のパターン(毎日チェックしてる)、収集のシステムなら石の種類の分類(CD集めてます)、などなどが例として挙げられています。規則性・ルールに注目してそれらを組織化し、システム化することが大好き!ということです。これらは細部の注意に向けられがちですので、一般化、ざっくりとした理解が難しいということだそうです。

自閉症スペクトラム者は「共感」のシステムが遅れがちということですが、残念ながらシステム化への機能の集中によってなぜ共感が遅れるのか、については記述がありません。ページ数の都合だと思います。

少し前に読んだ「心の理論」が欠如しているとする仮説「マインドブラインネス仮説」も5つの仮説のうちの1つです。

「マインドブラインネス仮説」と比べて「共感化ーシステム化仮説」が優れているところは、自閉症スペクトラムを「欠如・欠陥」ではなく「目的の違い」としてとらえていることです。更に言えば「システム化」は時間をかけていくらでも拡大することが可能ですから、「共感」を獲得することすら可能である、という非常に希望に満ちた概念であるとともに、私の実感とも合致するものです。「欠陥」ではなく「違い」とみなすなんて素敵じゃないですか!

日本人が有利な点と不利な点

「マインドブラインネス仮説」は共感が苦手であることを説明する点では優れていますが、1点変だなと思うことがありました。それはP91の「成人版 視線からの心の読み取りテスト」です。

画像が無いので苦しくも文字で説明します。西洋人の目だけ抜き出した写真が載せられていて、これは「すまないと思っている」「うんざりしている」「興味がある」「ふざけている」のどれを表しているのか、という問題でした。このほかにもう1問ありましたが、私は正解しました。日常だと実感として人の心が全然読めないというのに、です。

ここで一つ思いついた仮説があります。日本は漫画文化が栄えています。私も沢山読みました。漫画は感情を写実的に表し、登場人物がそれを社会通念に合わせて解釈する、しかも売らなければいけないメディアとしての性質上、非常に分かりやすいという特徴があります。このおかげで、私は静的な表情をパターン化しシステム化することに成功したんじゃないのか、と考えました。

ところが日常生活の表情は動的で、0.1秒で変化してしまいます。漫画のように解釈を待ってくれません。しかも日本人は表情に乏しい。西洋人のボディーランゲージや表情の豊かさは少しドラマや映画を見りゃ分かります。したがって、表情を読む機会に大きく欠けます。

ということは私に欠けている能力は西洋人のドラマや映画をたくさん見れば補えるのか?という疑問が生じます。これはやってみないとわかりません。箱の中の世界が現実に結びつかないような気もします。

静的な画像処理能力はきっとマンガを読めばつきます。たくさん漫画を読みましょう。これを応用して動的に処理できればいいんですが、実際にどうしたらいいのかわかりません。今後の課題です。

簡易チェックテスト

巻末に自閉症スペクトラム指数(AQ)の測定テストが収録されています。50点満点で32点以上だとアスペルガー・高機能自閉症が疑われます。私は41点でした。平均は女性で15点、男性で17点だそうです。

ここにも同じものがありますので、興味のある方はテストしてみてください。ちなみにこのテストはあくまで「目安」ですので、32点以上だからと言って必ず自閉症スペクトラムというわけではありません。医師の診断は必要です。とはいえ、高得点ならかなり蓋然性が高いと思います。

 

 


食品コストパフォーマンス調査 Ver.2

前回の記事

 

一体何を食べるとコストを抑えつつ健康的に生きることができるのかを追求するのが人生の目標の一つです。

コンビニやスーパー、ドラッグストアに寄る用事があったり折り込みチラシを見たりする度に価格や栄養価を調べ、前回の記事に比べて若干の改良を加えました。

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細かくなってしまいました。クリックで多少大きくなります。

食品コスト調査: 六帖倉庫 エクセルファイルもアップロードしました

改良点はいくつかの食材の追加、炭水化物コストの追加、出所の表示、チラシや調査による価格のアップデートです。

追加した食材のうち健闘しているのが煮干しです。このタンパク質コスパの高さと脂肪のなさは特筆すべきものがあります。欠点は塩分が多いことです。かつおのたたきはカロリー比コストが悪いものの、脂肪ほとんど0というヘルシーな食材であることも発覚しました。

炭水化物コスパが最も良いのは当然ながら白米、次点が玄米、3位がパスタでした。穀物軍団は強いです。

さらに価格のアップデートで、穀物類ほぼ全てのコストが劇的に下がりました。穀物大勝利。特に食パンは近所のドラッグストアで見切り品として毎日ゴミのような値段(税込63円)で売られているのを発見したため、一躍上位陣の仲間入りとなりました。食パンは焼いたら何かかけないと口の中が渇いて食べられませんので、生が一番よいです。美味しいし飽きないし、光熱費も0円です。マヨネーズなんかかけたら脂肪の塊に早変わり、動脈硬化まっしぐらです。ただでさえ貧民の油たるマーガリンが入ってるのに。

また、大豆はカナダ産という反則的な商品を発見したため、タンパク質コスパが誰にも追いつけない領域に突入してしまいました。2位のパスタの約半額、玄米の1/3以下、和牛の約1/50です。これは邪道とみなし1位扱いしていません。

卵は「先着100名105円」みたいなチラシが良く入ってますが、こんなものはオバチャンたちが買い占めてしまうでしょうからまず買えないでしょう。それに卵の特売は客寄せの役割に過ぎず「1000円以上買うこと」が条件になっている店ばかりです。1000円も買いませんよ。ただし、仮に買えたとするとタンパク質コスパが大豆並みの2位に上昇しますので、動物性タンパク源としては最も優れた食材となるでしょう。ただ脂肪の割合が豚肉並みに多いのが欠点です。

外食中食部門ではスリーエフのスティックパン(税込み100円)が圧倒的勝利を納めました。腹が減ったらこれを買うのがよいです。ちなみに食パンは1斤あたり150円払ってもこれよりコスパが良いので、外で食べる勇気があればこちらの方が得です。

価格破壊の帝王サイゼリヤも組み込んでみましたがカロリー比でセブンイレブンのチナマヨおにぎりにすら負けます。しかも油まみれ。やっすい油でカロリーを稼いでるんじゃどうしようもないです。ツナマヨおにぎりは脂肪分が最も少なく、この点においてのみ優れています。白米が主成分だから当たり前ですが。

 

実際にこれらを食べて暮らすことは諸事情でできないのですが、このような調査は一生かけて行っていこうと思っています。主食とタンパク源は調べ尽くしたので、次は野菜ですかね。


CDレビュー: Oliver Messiaen Complete Edition – Vingt Regards sur l’Enfant-Jesus (CD3, 4)

★★★★★=͟͟͞͞(✹)`Д´)

 

3,4枚目は「幼子イエスに注ぐ20の眼差し」という邦題です。メシアンは作曲家であるとともに神学者ですので、超敬虔なキリスト教徒でキリストが主題の曲も沢山作曲しています。なにしろ彼への眼差しを想像するだけで2時間に及ぶ大曲を作ってしまうほどなのですからその信仰の深さたるやどれほどのものでしょう。

20曲の邦題は次の通りです。

1. 父の眼差し
2. 星の眼差し
3. 交換
4. 聖母の眼差し
5. 子を見つめる子の眼差し
6. それに全ては成されたり
7. 十字架の眼差し
8. 高き御空の眼差し
9. 時の眼差し
10. 喜びの聖霊の眼差し
11. 聖母の初聖体
12. 全能の言葉
13. 降誕祭
14. 天使たちの眼差し
15. 幼子イエスの接吻
16. 予言者たち、羊飼いたちと博士たちの眼差し
17. 沈黙の眼差し
18. 恐るべき感動の眼差し
19. 我は眠っているが、私の魂はめざめている
20. 愛の教会の眼差し

イエスの誕生日と言われているクリスマスに何となくノリでクリスマスソングをかけたり、「聖夜」のイメージだけでイチャイチャしたりそれに嫉妬したりするライトユーザー日本人から見るとドン引き間違いなしのタイトルが勢ぞろいです。

しかし欧米人の多くの人にとっては神が存在するかどうかは死活問題ですから、これくらい真面目に考える方が健全なのです。イエスのことを思って思って苦しみぬき絞り出した慈愛に満ちた曲がこれらと考えました。言い換えるとイエス好き好き大好き俺どうにかなっちゃうぜという曲です。

理解不能な生の迫力

内容は、、意味が分からないがすごい!!音楽理論はまったく理解できませんがそれだけ全体に漂う愛と死と迫力だけが生々しく伝わってきます。むしろ耳に馴染みのある音がほとんど排除されてますので、それらから生じる経験的な観念がノイズとなって邪魔をせず、彼の伝えたいこと(具体的には「イエス愛してる!イエス偉大!イエス見守ってるよ!」)がダイレクトに耳に入ってくるのかもしれません。音楽だけに言葉で伝えるのがあほくさい。単に前衛的なだけだったら以前に聴いたドナウエッシンゲン音楽祭のボックスセット(一番下のリンクから飛べます)のように乱雑過ぎて感想も抱けないようなめちゃめちゃな曲ばっかになりますが、それらとはまた質が大きく異なる曲集でした。

10分程度の長めの曲がどれもこれも優れています。6,10,14,15,19,20曲目あたりです。特に最終曲「愛の教会の眼差し」は久しぶりに音楽を聴いていて涙が出ました。クラシック部門だと最も感動した曲にランクインです。なぜって言われると理由は答えられませんわかりません。演奏者の気迫によるところも大きいように思います。

 

最終曲。ボックス収録と同じピアニストだけど録音は違うっぽい

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ピアニストはイエス好き好き人間なんでしょうか。

 

イエスの曲のはずなのにところどころ鳥の鳴き声を入れるメシアンさんパネーっす。っていうか、ここまでの鳥へのこだわりようは異常です。たぶん少し自閉症入ってると思います。だから余計自分にマッチしたのかもしれません。なお13曲目の原題は「Noel」ですからこれはクリスマスそのまんま、なんとクリスマスソングでした!!まじか

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Great Pianists of the 20th Century Vol.9 – Daniel Barenboim (CD2)

★★★★★

 

2枚目はピアノソロがリストで4曲、これはオマケ扱いでメインはブラームスのピアノ協奏曲1番です。

堅焼きせんべい

先頭3曲はリスト「巡礼の年 第2年:イタリア」から4~6曲目のペトラルカシリーズの抜粋です。リストにしては珍しく静かめ(5曲目の中盤除く)で、彼の甘ったるいロマンチックな曲調を堪能することができます。

次はワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」から「イゾルデの愛の死」をリストがピアノアレンジしたものです。何つー大げさなタイトル、と思いますがタイトルに違わぬ美しさでメロディーラインは完璧。いや憎いっすね。リストがアレンジしただけあってクライマックスは低音バリバリの超ド派手編曲です。おすすめ。

ここまでは実はオマケで、CDの2/3を占めるのがブラームスのピアノ協奏曲1番でした。ブラームスの曲はいくつか聞いてますがこの曲も他と同じくクソ真面目でお前は忠君な武士かっつーの、ってくらい堅い。でも超かっちょいいです。第1楽章の2/3くらい進んだところで現れるオケ3連符連発ゾーンなんか十字軍の大量の槍に突き殺されそうなイメージがします死ぬ。この前後でピアノがトリルに入り損ねてぶっ飛んじゃってますがこれはこれで熱が入り過ぎている感じが出ていてよいです。

第3楽章も堅すぎて死ぬ。ベートーヴェンとはまた違った方向のダサカッコよさです。美しいんですがどことなく角が出て筋張っている。これは何だろう?堅揚げポテト?堅焼きせんべい?ブラームスは「武骨萌え」という新たなジャンルを私にもたらしました。やっぱり武士とか中世の騎士とかのイメージですね。例えるなら王宮戦士ライアンです。ドラクエ4です。すばらしい

 

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動画あがってました。千手観音突きな三連符ゾーンはyoutubeに飛ぶと見られる続きの2本目の動画の6分ちょいくらいのところです。

 

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Great Pianists of the 20th Century Vol.9 – Daniel Barenboim (CD1)

★★★★☆

 

ダニエル・バレンボイム(1942-)はアルゼンチン出身のユダヤ人ピアニストです。またユダヤ人!金持ちと音楽家はみんなユダヤ人ですね。

20世紀代表のピアニストですが70歳を超えた今でも新譜が出続けています。

ブラームス:ピアノ協奏曲第1番&第2番

ブラームス:ピアノ協奏曲第1番&第2番

  • アーティスト: ドゥダメル(グスターヴォ)バレンボイム(ダニエル),ブラームス,ドゥダメル(グスターヴォ),バレンボイム(ダニエル),ベルリン(シュターツカペレ)
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2015/08/19
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る
 

2014年録音。72歳で長丁場のブラームスのピアノ協奏曲を弾いてる。。体力あり過ぎ

 

彼は指揮者としても有名で大量のCDを出しています。またイスラエルに国籍を移し在住していますが、ガザに侵攻しまくる政府には批判的な立場を取る知識人でもあります。そういえば以前朝日新聞にイスラエルを批判するインタビューが出てました。

上手だが無難な印象

本CDは1967年の録音ですので25歳のときの演奏ですね。1枚目はモーツァルトのピアノ協奏曲25番とベートーヴェンのピアノ協奏曲1番です。

モーツァルトの方は非常に軽快にキラキラキラリンコと弾いていて華麗なのですが華麗で終わってしまうような感じで、儚いですが胸には迫りませんでした。もちろん大半は曲調のせいです。それにしても25曲目って作り過ぎですよね。協奏曲なんて1曲作曲したら精根尽き果てそうなもんですが。全部で27曲もあるそうですよ。

ベートーヴェンの1番は1794年作、ピアノソナタ1番と同じ時期くらいで交響曲1番よりも先に作られているだけあって、まだ彼の革新性がそれほど出ておらずモーツァルトの曲に似ています。といっても第3楽章のテーマは後のダサカッコ路線の萌芽が見られ、ラストはやりすぎなくらいの盛り上げで度肝を抜かれます。2枚目にも期待します。

 

youtubeに同じ録音がありました。ベートーヴェンのピアノ協奏曲1番第3楽章です。

www.youtube.com

 

Tracklist:

Wolfgang Amadeus Mozart
1. Piano Concerto No. 25 In C, KV 503: 1. Allegro maestoso
2. Piano Concerto No. 25 In C, KV 503: 2. Andante
3. Piano Concerto No. 25 In C, KV 503: 3. Allegretto

Ludwig van Beethoven
4. Piano Concerto No. 1 In C, Op. 15: 1. Allegro cno brio
5. Piano Concerto No. 1 In C, Op. 15: 2. Largo
6. Piano Concerto No. 1 In C, Op. 15: 3. Rondo. Allegro scherzando

 


フィスコレポートを読む セレクト 4726ソフトバンク・テクノロジー、2405フジコー、7164全国保証

4726 ソフトバンク・テクノロジー

ソフトバンク・テクノロジー株式会社

デジタルマーケティング、プラットフォームソリューション、システムインテグレートの3事業を擁する総合IT企業です。ソフトバンクの名前がついていることから分かるように、ソフトバンク向けの製品を開発していますが売り上げに占める割合は3割以下で、親会社に大きく依存するモデルではありません。

注目は流行のIoT分野で、特に成長を期待されているのがデジタルマーケティング事業に属するデータアナリティクス分野です。アクセス解析や広告効果測定サービスなどが主製品で、継続する顧客が多くかなり大きなストックビジネスです。今が旬ですね。今投資中のユニリタともちょっと被ってます。

他にもプラットフォーム事業はその性質上サポートが多くストック割合が2/3程度を占めること、またシステムインテグレート事業にはoffice365を売りつける謎事業マイクロソフトソリューションが急成長していることなど、プラスの要素がいくつか見受けられます。

売上高

売上高のグラフ

純利益

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売上は安定増加中ですが、純利益にはブレがあります。変動費用に予測不可能な要因が多数あるようです。こうすると株価としてはあまり安定しないので、低迷期を狙うのがよさそうですね。現在の株価はPER11.1倍のPBR1.13倍とかなり低水準です。出来高も非常に少なく不人気株と言えます。

2405フジコー(大化け期待?)

フジコーは建設廃棄物の中間処理やバイオマス発電を手掛ける会社です。地味な割に利益率は高く前期決算の実績で13.3%を記録しています。

ここの目玉は2点。産廃という絶対に無くならない市場に裏付けられた安定性と、2016年5月に稼働する森林発電事業です。ここの決算は6月ですので、森林発電事業の収入は来期には2か月分しか組み込まれません。来年の決算発表時に、ドカンと予想売上が上がると思われます。

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暴落時の500円割れのときに買っておけばよかったなあ。

7164 全国保証(成長期待!)

全国保証株式会社

住宅ローン保証大手です。仕組みは単純で、住宅購入者から保証料を受け取り、貸し倒れしたときに金融機関に同社が保証する、という仕組みです。

同社の成長ストーリーは提携金融機関の増加を中心に書かれていますが、私はもう一つのストーリーを考えました。私は賃貸在住ですが、引っ越しのたびに家賃保証会社を毎回利用しています。連帯保証人を立てられないからです。今後中間層の没落と共に連帯保証人を立てられない人間は急増していくと思われます。

今後人口減と共に住宅の新規着工数は減りますが、非正規労働者の増加と共に保証会社を利用したい人間がさらに増えると予想されます。同社のシェアは5%しかありません。不況が来てデフォルトに陥る人間が増えても、保証料を上げれば済むことです。同社の保証料が一括前受であるということも大きな強みです。というのも、こんなこと言っちゃなんですがいざというときに利益に振り替えることができる、保険を効かせておくことができるからです。

非常に魅力ある企業ですので購入を検討します。

営業収益(単位:百万円)27,039百万円 8.0%増 (前期比)営業利益(単位:百万円)13,773百万円 28.3%増 (前期比)経常利益(単位:百万円)15,509百万円 36.5%増 (前期比)当期純利益(単位:百万円)9,381百万円 37.8%増 (前期比)

業績もイケイケですね。

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短期的には低迷してますが素晴らしいチャートです。

 

今週は全国保証が注目銘柄となりました。なんだか成長期待株って金融系ばっかりですね。

来週の注目決算

10/5 3148 クリエイトSDホールディングス 1Q

10/7 4745 東京個別指導学院 2Q

10/7 9414 日本BS放送 本決算

10/8 3382 セブン&アイホールディングス 2Q

10/8 8908 毎日コムネット 1Q

10/9 4668 明光ネットワークジャパン 本決算

 

決算期になり気になる企業の発表が増えてきました。

日本BSは主力株ですのでドキドキです。毎日コムネットはもう売ってしまいましたが学生相手の商売がどこまで成り立っているのか気になります。セブン&アイは小売業界の動向を、東京個別指導学院と明光ネットワークはビジネスモデルの有効性が保たれているのかが知りたいですね。クリエイトSDは単に近場にあるからという理由だけです。