★★☆☆☆
取材とインタビューを交えつつ日本の農業を憂う
著者の原剛さんは1938年台南市生まれ、元毎日新聞論説委員です。あとがきによれば毎日新聞に執筆した社説、記者の目、特集などに加筆して作った本だそうです。
新聞がベースだけあって、IPCCのバート・ポリン前議長、ワールドウォッチ代表のレスター・ブラウン、インド緑の革命の主導者モンコンブ・スワミナサンなど世界的に有名な方々とのインタビューも掲載されています。
読みにくい!
この本の第一印象です。文章が独りよがりで、分かりにくいです!例えば次の文。
たとえば1960年当時、フィリピン高地の森林地帯を切り開いた農地面積は58万ヘクタールだったが、89年には390万ヘクタールに広がった。雨や風で農地の表土は浸食されていく。森林のままであれば、その量は年間2トンにとどまるが、開墾地は122トンから210トンと絶望的である。
まず何が2トン?と首をかしげました。少し戻って、浸食された土の量であるようだと分かりましたが、390万ヘクタール(九州の面積くらいです)の農地からたった210トン(お風呂1000杯分くらいです)流出したら絶望的なの???
210トンと言うのは漁船7台で捕れるサンマの量くらいのようです。
http://www.maff.go.jp/tohoku/nouson/sigenka/tyousa/pdf/tamen_6-7.pdf
このPDFを見ると土壌侵食量は『トン/ヘクタール』で測るようなので、2トンとか210トンとかは、おそらく年間の1ヘクタール当たりの土壌侵食量なのであろうと推測されます。自分ではわかったつもりなのでしょうけれど、不親切ですね!
具体的に場所を思い出せないのですが、日本語的に間違っている個所もあと2つほどありました。新聞記者なのに。。
内容そのものは悪くないが、平凡
地球温暖化の進行(私は懐疑的です)、大規模工事への怒り、中山間地域の農業の担い手不足、人口増と食糧不足への警告、既存の貨幣価値に縛られない価値転換など、内容はありきたりです。基礎的な知識を復習するのには良いかもしれませんが、目新しさは全くありません。
Amazonではデータしかないとのレビューがありますが、著者は農家に直接所得補償をしろとか、市民農園を発展させろとか、定住者に有利な税制を設けよ、など明確に意見表明をしています。私も一部賛成できる点はあります。
またご高齢の方に良く見受けられるのですが、私はあれをやったこれをやったと言いたがるのは何故なんでしょう。今の自分に不満があるのかなと心配になります。
買いか
買わなくていいです。これは新聞のまとめ本ですから、新聞の情報で十分です。