言葉2

言葉は表象であり、媒介である。言葉自身は、物事そのものを表さない。ある物事にアクセスするためのキーとなるにすぎない。
自分が発した言葉を他人が聞いて、自分と全く同じものを思い浮かべることはまずありえない。それどころか、自分自身、ある言葉に対して抱くイメージは時と場所によって変化する。
しかし我々は自分と同じイメージを抱くであろうと期待し、またそのように努力して、毎日言葉を発する。

言葉は表現だ。他の人間に、自分の抱くイメージ、感情、抽象的概念、物語などを確実に伝えるために表現する。
ある物事を正確にとらえ、自らの意図したイメージを喚起するための言葉を丹念に選び、精巧に組み立て、発信する。素材となる言葉が不正確であったり構成が悪ければ、他人には伝わらない。誤解を招く。我々はみな職人であり、芸術家である。


言葉とイメージ

ある言葉から与えられるイメージは人によって質も量も異なる。例えば空、という言葉を見た・聞いたときに喚起されるイメージは千差万別だ。
イメージは絵、音、匂い、温度、言葉などで表現される。そしてそのイメージからまた言葉が生まれ、文章や会話が連鎖的に成立していく。イメージが貧弱なら、言葉はしぼんでいって尽きて終了する。
言葉からどれだけのイメージを引き出せるかは、言葉を発する・聞く人間の言葉の蓄積、イメージの蓄積に依存する。人間そのものが問われている。
会話は化学反応みたいなものかもしれない。ポテンシャルの高い人間同士がぶつかれば、爆発的に言葉が生まれるだろう。相手にとってふさわしくない言葉を選べば、有毒なガスが発生するだろう。