CDレビュー: Great Pianists of the 20th Century Vol.8 – Wilhelm Backhaus(CD1)

★★★★★(*´ω`*)

ヴィルヘルム・バックハウス(1884-1969)は、ドイツ出身のピアニストです。

なんとベートーベン→ツェルニー→リストの直系、師匠はオイゲン・ダルベールというリストの弟子ということでこりゃ音楽的に純血のピアニストと言えますね。そんな彼が一番有名なのは無論、ベートーヴェンのピアノソナタの録音です。

天才ピアニストが一生を賭けて目指した境地

1枚目はベートーヴェンのピアノソナタから4点、第8番「悲愴」、第17番「テンペスト」、第26番「告別」、そして第32番。どれも有名なものばかりです。

第8番はのっけから彼の非常に特殊な歌い方を味わうことができます。とにかく溜める溜める。うねってうねって竜巻でも起こっているかのような演奏です。第17番も今まで聴いたどんな演奏とも違う弾き方です。

圧巻は26番の第3楽章と32番全部です。ベートーヴェンのピアノソナタは、以前にこのボックスで全曲通して聴いた(全部レビューを付けました)ことがあります。後期になるほど技術的にはもちろん高度な精神性が必要とされると感じました。バックハウスの演奏は、技術的にはよくとちるのですが、精神的には完璧に弾きこなしています。26番の第3楽章はピアノの間から光でも漏れてくるかと思いました。

32番は現時点、すべてのピアノ曲の中で最高傑作だと思っています。このCDでも強く感じました。第一楽章は全ベートーベンまとめとも言うべき密度の濃い曲ですが、奏者の脳血管切れるんじゃないかとくらいの熱演です。ベートーヴェンのどんな作曲家にも真似のできないダサカッコパワーとその美しさには与える言葉が見つからないほどです。第二楽章は中盤のスウィング部分が胸が張り裂けんばかりに美しく、ジャズの発祥という人までいるほどの宇宙を感じさせる異次元ピアノ曲です。やっぱりこの曲が最強だな。

backhaus beethovenで検索をかけると32番がまずヒットしました。やっぱりこれなんですね。

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収録日が2年違うので、このCDとはまた別録音のようです。彼は活躍した時期が20世紀前半であるため録音が軒並み古いのが残念です。しかし、古さを超えてお腹にずっしりと響く演奏でした。このCDに収録されているのは1954年の演奏。つまり70歳のときの録音です。すげぇ。ピアノだけに打ち込んだ天才が、70年かけて辿りついた境地と言えましょう。

 

 

ここにすんばらしい紹介文があります。もっともっとピアノ曲を聴いて、全身で味わえるようになったらここで紹介されているアルバムを聞いてみたいです。

このバックハウスの『最後の演奏会』の模様は録音されて残っており、CDとして聴くことができる。人生の最後の瞬間まで演奏家として生きた感動的な記録で あると同時に、音楽が肉体を飛び越えてしまった稀有な演奏として僕には響いてくる。鍵盤の獅子王も晩年になるとミスタッチが見られるが、それ以上に曲と戯れているような優しさが演奏から感じられるのである。
とりわけ、シューマンの「夕べに」と「なぜに」はもはやこの世の音楽とは思えない。辞世の歌である。

 

最後の演奏会

最後の演奏会

  • アーティスト: バックハウス(ウィルヘルム),ベートーヴェン,シューベルト,モーツァルト,シューマン
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1997/09/10
  • メディア: CD
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Track List:

Ludwig van Beethoven

1. Piano Sonata In C Minor, Op.13 ‘Pathetique’: 1. Grave – Allegro di molto e con brio
2. Piano Sonata In C Minor, Op.13 ‘Pathetique’: 2. Adagio contabile
3. Piano Sonata In C Minor, Op.13 ‘Pathetique’: 3. Rondo. Allegro
4. Piano Sonata In D Minor, Op.31 No.2 ‘Tempest’: 1. Largo – Allegro
5. Piano Sonata In D Minor, Op.31 No.2 ‘Tempest’: 2. Adagio
6. Piano Sonata In D Minor, Op.31 No.2 ‘Tempest’: 3. Allegretto
7. Piano Sonata In E Flat, Op. 81a ‘Les adieux’: 1. Das Lebewohl. Adagio – Allegro
8. Piano Sonata In E Flat, Op. 81a ‘Les adieux’: 2. Abwesenheit. Andante expressivo, 3. Das Wiedersehn. Vivacissimamente
9. Piano Sonata In C Minor, Op.111: 1. Maestoso – Allegro con brio ed appassionato

10. Piano Sonata In C Minor, Op.111: 2. Arietta. Adagio molto semplice e cantabile

 

(リンク先の曲リストは間違っています)

 

 

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