CDレビュー: MAN WITH A MISSION – Tales of Purefly(2014)

★★★☆☆

次の記事で日本の曲を聴く必要性を感じたので、日本のアルバムもローテーションに入れて聴いてみることにしました。

 

MAN WITH A MISSIONは日本のロックバンドです。オオカミの被り物が特徴的です。ジャケットを見て私はまず次のバンドを思い出しました。

http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/74/30798928c33f4d8ea75a54a11ff6f890.jpg

よくまとまった音作りをしていて、スマートな印象を受けます。そのためロックとしては若干パワー不足です。日本人好みのアレンジを加えたお醤油ロックと言ったところでしょうか。ロックは日本用にリプログラミングすると、ゲーム音楽に近いような音になるのですね。

ヴォーカルは2人いるようですが、サブヴォーカルの人の方が味があって好みです。メインの人はビジュアル系的な声の使い方が耳に立ちますし、最高音で裏声に変える歌唱法は苦手です。。サブの人が全部歌ったらかなり印象が変わったと思います。

5曲目vitamin 64の後半と9曲目When My Devil Risesは良いです。ただし、ドラム好きの私としてはどうしてもドラムのスカスカさが気になります。もっと耳を引くパワーが欲しいです。

不満点は多いですがコンビニやスーパーで流れている頭が悪くなりそうなJPOPと比べれば天と地ほどの差があります。しかしまだまだ、日本人を相手とした商業用量産音楽のレベルを超えられていない印象です。せっかくロックをやるならもっともっと尖った音を出してほしいですね。

 

ロック等の他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Metallica – Master Of Puppets (1986)

★★★★☆

最高傑作と名高いアルバムですが、個人的にはやや期待外れでした。

哀愁からバリバリのメタルにすんなりと入ってゆく1曲目Battery, 意外性のある変拍子とメリハリ・上手な構成によって中毒性を生み出すタイトル曲Master Of Puppetsは素晴らしいです。3曲目The Thing That Should Not Beも私の好きな直線クレッシェンドでメインテーマに繋がる構成でとても良いです。

しかし後が続きません。4,5といまいちな曲が続き、7曲目純インスト曲Orionがよくないのです。。単調で迫力がありません。8分の無駄遣いです。前作のThe Call Of Kturuは見事な構成だったのに。

せっかくドラム、ギターみんな上手なのに曲で損しているアルバムと感じました。今後メタリカはガラッと作風を変えていくとの前評判がありますので、いったいどうなることやら。

 


CDレビュー: 75 Jahre Donaueschinger Musiktage 1921-1996 (CD11) Igor Stravinsky, Bernd Alois Zimmermann, Heinz Holliger, Helmut Lachenmann, Andreas Raseghi

★★★☆☆

CDが進むごとに難解になっていきます。2曲目は弦で遊んでいるようにしか聞こえないし、3曲目は音階ゼロの雰囲気だけで押しきる曲、4曲目は長いだけ。1、5~7曲目のみ既存の音楽受容の枠組みでなんとか「音楽」として聴ける(それでもすごく苦しい)範囲の楽曲でした。

いったい音楽に「形式」や「パターン」は必要なのでしょうか。これらを取り去ると音は我々の認識からかけ離れたものに変化します。一定の秩序を与えて私たちは音楽を聴くことが可能になります。今までに聴いたことのある音の組み合わせをもって、我々は「快い」と感じます。しかしそれはただの慣習なのではないでしょうか。慣れ親しんだ一定の文法規則をなぞっているだけではないのでしょうか。そう考えて、現代音楽家は誰も聞いたことがない曲の発明に熱心に取り組んだのだと思います。

その結果、人間に理解不能な音がたくさん生まれました。ハッキリ言って聴くのが辛いです。「快」を感じられません。しかしこのような曲にまた「慣れる」ことで新しい音楽文法を体得できるのではないかと考えます。しかし「慣れて」しまったら彼らの試みは原理的に失敗するのかもしれません。そんなことを考えながら聴いていました。音を素直に聴くのは難しいです。

 

4曲目は米国amazonで視聴できます。評価高いです。全く分かりません。

 

Track List:

1     
In Memoriam Dylan Thomas, dirge-canons & song for voice, string quartet & 4 trombones
Igor Stravinsky
                
    2     
Sonata, for solo viola
Bernd Alois Zimmermann
                
    3     
Pneuma, for orchestra
Heinz Holliger
                
    4     
Schwankungen am Rand, for orchestra
Helmut Lachenmann
                
    5     
Kammerquartett
Andreas F. Raseghi
                
    6     
Kammerquartett
Andreas F. Raseghi
                
    7     
Kammerquartett
Andreas F. Raseghi  

 


CDレビュー: Yes – 90125 (1983)

★★☆☆☆

アメリカンポップスになってしまいました。。。。。。。

いやアメリカンポップスは嫌いではないんです。しかし、使われている音がダサい!ダサすぎる!!悶絶ダサいのではなく純粋にダサい!!1曲目ロンリーハートのイントロ後のギター・ドラムパートで本当にがっくり来て、その後のチンケなシンセとギミックでとどめを刺された気持ちになりました。歌詞も陳腐になってるし。amazonのレビューはみんなベタ褒めで★5か4しかないけど全然信じられない!!!!ヴォーカルはジョン・アンダーソンに戻ったらしいですが全然爽やかじゃない!!魅力ない!!!最終曲Heartsのみややマシです。それでも中盤は迫力不足ですが。

!ばかりで品がないですがそれくらいショックでした。例えば3作前のGoing For OneのParallelsなんかもポップなんですが涙が出るほど素晴らしかったです。そういう楽曲が1つもないのです。。

 


CDレビュー: The Rough Guide to Tango (1999)

★★★★★\( *ω*)┓

2連続で個人的にヒットしました。

タンゴとは主にアルゼンチンやウルグアイで演奏されるダンス曲です。必ずバンドネオンの演奏があり、ほぼ例外なく泣き系のマイナー調です。

以前から家に↓のアルバムがあり、ピアソラのことは知っていました。

ピアソラの曲は好きでしたが、この Rough Guide に収録されている Tres Minutos con la Realidad は段違いです!悶絶するほど素晴らしいです!

バージョンが違いますがyoutubeでも聞けます。泣きと激情と不安定と和音のレインボーが全部混じった超名曲です。

www.youtube.com

フラメンコと同じく、伝統的タンゴは踊るだけではありません。歌も重要な要素です。これがまた情緒出し過ぎのベトベトでとても良いのです。聴きながらずっと何かに似てるな、、と思っていましたがこれはまさに演歌ですね!マイナーで演奏される情念たっぷりの歌と言えば!心のドロドロを表すための音楽形式が大陸を超えて共通しているというのは面白いことですね!

演歌と言うよりはちょっと古い昭和の歌謡曲やムード歌謡に近いかもしれません。昭和歌謡によくみられるマイナー→サビでメジャーに変えて気持ちが明るくなるパターンの曲もありました。私は昭和生まれですので昭和的展開が体に沁みついているようです。以前知り合いに薦めてもらった日本ロックで昭和的展開に悶絶しそうになった経験もあります。

www.youtube.com

日本の曲も聴かないといけないことが分かりました。今後ローテーションに加えようと思います。


CDレビュー: Dave Weckl Acoustic Band – Of the Same Mind (2015)

★★★★★(๑˃̵ᴗ˂̵)و 

Dave Wecklさんはアメリカのジャズドラマーです。昔はチック・コリアのバンドで有名だったらしいですが、私は彼がソロになってからのアルバムしかまだ聞いたことがありません。この人の演奏は異常に手数が多い上に正確で安定していて好きでした。最近新作が出たというので、早速聴いてみました。

えーと、1曲目What Happened To My Good Shoesからもう何も言うことがありません!最高です!Daveさんもう55歳なんですね。かつての力押しの演奏ではもはやなくドラミングに味がついてます!Tom KennedyさんのエレキベースもCool!全く非の打ち所がありません。ピアノは小曽根真さんなんですね。私の大好きな不安定と安定の中間で弾きまくるスタイルですね。Gary Meeksさんのサックスは軽く往年のジャズとは毛色が違いますがこの曲調ならむしろ軽い方がよいです!

3曲目Songo Mikeleなどラテン系の曲がいくつかありますね。ドラマーはラテン系の曲が好きです。それは叩く楽器の数が増えるからです。右側でポコポコしたカウベルを延々叩き続けているのにハイハットが左からいつまでも聞こえそんな状態でタムタムやドラムロールを通常運転で叩いてます。いつ聞いても腕が4本あるんじゃないの?と思わせる演奏です。

ドラムセットの要塞化はすさまじく、こんなドラムセットを構えている人もいます。

bozzio.jpg

テリー・ボジオが明かす巨大ドラム・キットの秘密:Fuck The Fuckin’ Fucker !:So-netブログ

Daveさんもすごいですよ。

http://www.daveweckl.com/bio/weckl2002.jpg

Dave Weckl – Biography

ベースの見せ場は7曲目Pacific Groove Fogの中盤。小曽根さんのローズピアノに乗せて卒倒しそうなベースを長時間堪能できます。ラストAll Bluesにもいい聴かせ処があります。

圧巻は5曲目Koolzです。ドラマーのDaveさんがメインのバンドなので、比較的長い「デイブゾーン」とでも呼ぶべきドラムソロがアルバム中何度も登場しますが、この曲のソロはすごいです。ラスト2分がほとんど独壇場です。彼のプレイには正確さだけではなく美しさがあります。メタルのような激しさはありませんが、美しいドラムを聴きたい人にはうってつけの1枚と言えるでしょう。

 

※日本では7/22に発売予定です。15.5$とクレジットカードがあれば公式サイトでダウンロードできます。

Dave Weckl: Of The Same Mind

 

ジャズの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Miles Davis – Relaxin'(1956)

★★★★☆

ジャズの100枚シリーズ16枚目。不動の名作だそうです。マイルス氏は息を大量に使った入魂のトランペット音を出しているアルバムが多いですが、この作品はタイトル通り肩の力が抜けている珍しい演奏です。

1曲目 If I Were Bell が特に優れていると感じました。amazonのレビューを見ると伝説の作品なのですね。印象通りでした。

私はジャズを語る言葉を全然持ちませんので、どこがどう優れていて何がすごいのか描写できませんが、彼らがノリに乗って楽しそうーーに演奏していることはCD越しでも伝わってきます。

 

 

ジャズの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Great Pianists of the 20th Century Vol.6 – Claudio Arrau III (CD2)

http://ecx.images-amazon.com/images/I/41MBPD5XECL.jpg

★★★☆☆

1曲目の邦題は「巡礼の年・オーベルマンの谷」。スイスへの旅で感じた印象を曲にしたものです。旅にしては一体何があったのかと思うほどドラマチックで激しい曲ですが、これは「オーベルマン」という小説からヒントを得て、リストが苦悩などを表現した結果であるためです。リストらしく大胆でぶっ飛んだ表現が印象的です。

2曲目以降は、曲は悪くないのですが私がアラウさんの演奏に飽きてしまいました。ポロポロと軽く弾くのはよいのですが、全然胸に染みないのです。この2枚組でアラウさんの演奏は終わりですが、正直他のピアニストに早く変わってほしいとさえ思ってしまいました。ごめんなさい。

Track List:

1 Franz Liszt: Années de Pélerinage Première Année: Suisse: 6 Vallée d’Obermann 14:59
2 Franz Schubert: Moments Musicaux, D.780 – No.1 in C 5:48
3 Franz Schubert: Moments Musicaux, D.780 – No.2 in A Flat 6:45
4 Franz Schubert: Moments Musicaux, D.780 – No.3 in F Minor 2:03
5 Franz Schubert: Moments Musicaux, D.780 – No.4 in C Sharp Minor 5:57
6 Franz Schubert: Moments Musicaux, D.780 – No.5 in F Minor 2:43
7 Franz Schubert: Moments Musicaux, D.780 – No.6 in A Flat 7:47
8 Claude Debussy: Images, Book2 – 1 Cloches à Travers les Feuilles 5:23
9 Claude Debussy: Images, Book2 – 2 Et la lune Descend sur le Temple qui Fut 6:10
10 Claude Debussy: Images, Book2 – 3 Poissons d’or 4:31
11 Wolfgang Amadeus Mozart: Fantasia in C Minor, KV475 12:59

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Great Pianists of the 20th Century Vol.6 – Claudio Arrau III (CD1)

★★★★☆

前半はショパンの前奏曲集。正直なところ、はじめの14曲はいまいちでした。。アラウさんは決して汚い音を出しません。こんなこと言うと世界的ピアニストにすごく失礼なのですが、現代音楽に毒されている私にはメリハリがなく飽きてしまいました。ところが15曲目の「雨だれ」以後は激しい曲が増え俄然面白くなってきます。ラスト24曲目は初めから終わりまで積乱雲でもかかっているような不安定さで落ち着きませんが、締めくくりにfffという最強音をぶつけてきます。彼はなんとここに強弱をつけてきました。いいですね。

前奏曲集は12音階+長調短調を全て使用した画期的な曲集です。私なんかよりずっとエレガントな解説がこちらにあります。読んでみてください。

ショパン・前奏曲(プレリュード)〜作品解説・難易度・演奏法〜

30曲目のリストによるアイーダ」から神前の踊りと終幕の二重唱、は全体的にかわいらしく、なのに悲劇的要素も威厳に満ちたフレーズも備わっている不思議な曲です。これもよいですね。

Track Lists:

Frederic Chopin

1. Preludes, Op. 28: No. 1 In C
2. Preludes, Op. 28: No. 2 In A Minor
3. Preludes, Op. 28: No. 3 In G
4. Preludes, Op. 28: No. 4 In E Minor
5. Preludes, Op. 28: No. 5 In D
6. Preludes, Op. 28: No. 6 In B Minor
7. Preludes, Op. 28: No. 7 In A
8. Preludes, Op. 28: No. 8 In F Sharp Minor
9. Preludes, Op. 28: No. 9 In E
10. Preludes, Op. 28: No. 10 In C Sharp Minor
11. Preludes, Op. 28: No. 11 In B
12. Preludes, Op. 28: No. 12 In G Sharp Minor
13. Preludes, Op. 28: No. 13 In F Sharp
14. Preludes, Op. 28: No. 14 In E Flat Minor
15. Preludes, Op. 28: No. 15 In D Flat ‘Raindrop’
16. Preludes, Op. 28: No. 16 In B Flat Minor
17. Preludes, Op. 28: No. 17 In A Flat
18. Preludes, Op. 28: No. 18 In F Minor
19. Preludes, Op. 28: No. 19 In E Flat
20. Preludes, Op. 28: No. 20 In C Minor
21. Preludes, Op. 28: No. 21 In B Flat
22. Preludes, Op. 28: No. 22 In G Minor
23. Preludes, Op. 28: No. 23 In F
24. Preludes, Op. 28: No. 24 In D Minor
25. Prelude In C Sharp Minor, Op. 45 – Chopin
26. Prelude In A Flat, Op. Posth. – Chopin
27. Nocturnes, Op. 48: No. 1 In C Minor
28. Nocturnes, Op. 48: No. 2 In F Sharp Minor

Enrique Granados:
29. Quejas O La Maja Y El Ruisenor (From: Goyescas)

Giuseppe Verdi(arr. Franz Liszt)

30. Aida: Danza Sacra E Duetto Final 

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Joseph Achron(comp), Michael Ludwig(vn), Alison d’Amato(pf) – Music for Violin and Piano

★★★★★(๑•̀ㅂ•́)و✧

久々のクラシック部門大ヒット!

ジョゼフ・アクロン – Wikipedia

作曲者のジョゼフ・アクロン(1886-1943)はユダヤ系ポーランド人のヴァイオリニスト兼作曲家です。ユダヤ人の天才ミュージシャンの例に漏れず、後年はアメリカに渡ります。

ヴァイオリニスト兼作曲家と言うと、まずパガニーニが思い浮かびますね。アクロンの曲はパガニーニほどテクニカルではありませんが、ユダヤの伝統音楽を下敷きにした情熱的で覆いかぶさるような迫力のある曲が多いと感じました。本アルバムはほとんどがユダヤ関連の曲で占められています。

まず耳を引き付けるのは2曲目Hebrew Piecesの1曲目Hebrew Dance。現代のダンス曲であるEDMはパターンと仕掛けが意図的かつ単純すぎて正直辟易ですが、ユダヤのダンス曲は違います。緩急も泣きも激情もヒステリーも静寂も全部詰まっています。後半の3連符畳みかけゾーンを聞けば胸にパッションの波がきっと湧き上がって来ますよ。

11曲目、Suite No.1の1曲目はJSバッハとパガニーニを足して2で割ったようなピアノVSヴァイオリンの対位法掛け合いの応酬に、8分+アルペジオを基調として上昇下降を見事に組み合わせた美しい曲です。これも素晴らしい。

17~19曲目のStempenyu Suiteは元ネタがユダヤ人のヴァイオリニストを主人公にした小説だそうです。3曲目の構成はどこでも聞いたことが無いようなユニークなものです。高周波も出していてとても楽しいですよ。CD中2番目のお気に入りです。

アクロンが活躍した時期は20世紀前半ですが、伝統に忠実に堅実な音作りをする作曲家であると感じました。当時活躍したバルトークやドビュッシーと比べて冒険的な曲は見当たりません。私はどちらも好きですが、アクロンの曲は当時ほとんど売れなかったそうです。

ヴァイオリンとピアノのペアって心にぐっときますよね。ヴァイオリンはもともと音程と音量を微妙にコントロールできる表現の豊かさ、直接脳に響いてくる共振性の強さなどから心をつかみやすい楽器ですが、それがしっとりとしたピアノと同時に聞こえてくると、特徴がより引き立ちます。久しぶりに体に染み入る曲を聴くことができました。ありがとうございました。

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。