Amon Tobin – Out From Out Where (2002)


★★★★★
4枚目。前作からの一番変わったのは、音質が格段に向上したこと。特に前半はヒップホップ風の曲もありやや明るく、夜中の2時が夜明け前の4時くらいになった。デジタル音の割合が増し、アナログ的な音を食っている。4曲目Searchersの印象が強烈だ。喉の詰まったような謎の笛なのか何かの音、突然入るストリングス、バックで流れている得体の知れないベース音と何考えてるかわからないドラムで気持ち悪さでは今までの曲の中で群を抜いている。ここからまた真っ暗闇の不気味なハイウェイぶっ飛ばし曲が増えていく。9曲目El Wraithも儀式めいていて怖い。毎回劇的に変貌するAmon Tobinさんの楽曲は次はどんな姿を見せてくれるのか。


King Crimson – The ConstruKction of Light(2000)


★★★☆☆
5年ぶり12枚目。何があった、と言いたくなるくらい音が変わっている。ヘビィなのはいいが、中途半端だ。FraKctured、Larks’ Tongues in Aspic-Part IV といった、以前の曲の焼き直しも、ヘビーなはずが以前よりも衝撃度がない。何がまずいってやっぱりドラムがスッカスカなところかなぁ。全然ドキドキしない。思い切りのいい ProzaKc blues と The World’s My Oyster Soup/Kitchen Floor Wax Museum は好きです。現時点で手に入るクリムゾンのオリジナルアルバムは、あと1枚。最後は、どんな音を聞かせてくれるのか。


The Rough Guide To Irish Music (1996)


★★★★★
アイルランド音楽。これはいいよ!これこそ牧歌的、と言えるサウンドが多いものの、ポップなものも、ダンス的なものも、地元賛歌のカントリー曲も、あらゆる要素が詰まっている。ダンス的なものはやはり繰り返しが多く、楽器も、ギターとフィドルがベースだけれどインド風打楽器もあるしバンドネオンもあるしケーナ?のような笛もあるしもう何でもありだ。一番燃えたのが4曲目のOn Horseback。ギターとベースで現代的な要素を混ぜつつノリノリ超人フィドル+右側の萌え打楽器というどストライクな編成に、新幹線もビックリな新快速超快速な楽曲。こんな爽快な曲があるなんて!youtubeに楽曲があった。'On Horseback' ~ Eileen Ivers – YouTube
14曲目のHand Me Down The Tackleも単純ながら高揚する。足音も掛け声もイカしてる。


Michel Petrucciani – Solo Live(1998)


★★☆☆☆
古めのジャズと並行して最近のジャズも聞いておこう、ということで、ボックスセット “Dreyfus Jazz 20 Years” 20枚組を順に聞いていきます。
1枚目。非常に独特なタッチで有名らしい、ミシェル・ペトルチアーニのソロピアノCD。打音が非常に強く、それだけではなく、1音1音が異常に長い。ピアノロールでいうとすべての音のタイムラインが全部重なっている感じ。したがって、全く飛べない。言わば、地を這うジャズ。地底ジャズ。私には、合いませんでした。これも強烈な個性の一つなんだろうけど、この長ーい地面を掘り進む音は、疲れます。ごめんなさい。もっと老人になってから聞きます。とどめは10曲目caravan。海底火山でも掘り当ててしまったかのような絶望しかない音色。でも、アンコール前の”I remember one more!(もう1曲あるんだった!)”という一言が、すごーくかわいい。


Bill Evans – Waltz for Debby(1961)

★★★★☆

ジャズの100枚。 – 「ジャズの100枚。」シリーズ全100タイトルセット – UNIVERSAL MUSIC JAPAN
のシリーズが安いので、1枚ずつ聞いていくことにした。まず1枚目。定番中の定番らしい。透明なピアノ、もやの向こう側にいて見えづらいドラムス、うなりの強いベース、特にベースの演奏は今まで聞いたことのないくらい歌っている。エヴァンスさんの演奏はキレイすぎてなぜかいつも落ち込む。ライブの収録みたいなんだけれど、編集の都合か売り手の都合か、拍手がすぐにフェードアウトするのは良い印象を受けない。余計なものを一切省いたスタンダード中のスタンダード、といった演奏は素晴らしいんだけど、自分の精神が、まだこの曲が体に浸透するに至るまで発展していないようで、いい演奏なのはわかるけれど、いま一つ足りなく感じてしまう。通り過ぎてしまう。BGMになってしまう。力技や技巧、目まぐるしい展開や独創性、そういったものに飽きて、いずれこのCDに戻ってくると気が来るのかもしれない。時々、自分に語り掛ける目的で聞いてみるといいのかな。


Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No.18-22(CD9)

Amazon.co.jp: Ludwig van Beethoven, Horst Stein, Wiener Philharmoniker, Friedrich Gulda : Beethoven: Piano Sonata No. 1-32, Piano Concertos No. 1-5 – 音楽
★★★★☆
小品揃いの1枚。18番の4楽章が三連符ダサ爆発曲となっており、かなり暑い。19番、20番は突然地味になるが、それもそのはず、この2曲だけは出版される9年前に作られたものらしい。
このCDの胆は21番「ヴァルトシュタイン」。グルダさんの演奏はとにかく速い!速い!まるでジェットコースターだ。笑っちゃうくらいだ。この映画のテーマ曲だったのでよく覚えているが、こんなに速くなかった。この速度のせいで、手数で分散しがちな楽曲が一つの大きな塊になっているようだ。曲の大局を支配する大波小波はよく表現されており、このシリーズの名演奏の一つに数えてよいと思う。第2楽章は第3楽章のおまけで、3楽章目もシンプルながら心に響く主題、そして後ろで鳴ってるジェットコースターその2が印象的。
22番は地味。


Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No.15-17(CD8)

Amazon.co.jp: Ludwig van Beethoven, Horst Stein, Wiener Philharmoniker, Friedrich Gulda : Beethoven: Piano Sonata No. 1-32, Piano Concertos No. 1-5 – 音楽
★★★★★
何故か「田園」の副題がついた15番。言うほど牧歌的ではないです。むしろ宮廷的。1楽章目にあまり肩の力が入っておらず安らかに聞けます。2楽章目が演歌炸裂、クサメロが出てきてそのままメタルにでもできそうでたまりません。3-4楽章とまるで交響曲のような構成。3楽章はwikipediaに農民的な響きって書いてあるけど農民的ってなんだ?上流階級の踊りっぽいけどなぁ。
16番の第1楽章は非常に変わっていて、右手と左手がほんの少し(16分?)ずれてます。ずれ部分の直後の同一主題を小さく弾くところがかわいい。激しい部分と可愛い部分を交互に挟む名曲。さらに第3楽章がダサい主題なのに非常に熱いダサアツの一曲、走って走って最後に意外な結末になる、という優れた曲でした。
17番は「テンペスト」として有名らしいです。1楽章目はやはりダサアツ、さらにラストが静かという点で16-3と共通しています。ただし今回のダサには泣き成分がかなり強めに含まれていて、しかも激しい。3楽章目は非常に有名ですがこの6/8の泣きメロの嵐は素晴らしいですね。グルダさんのやや誇張気味で腕力あふれたダイナミック演奏が実に良い効果を生んでいて、心が終始かき回されてどうにかなってしまいそうです。文句なしのMVP。


Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No. 11-14(CD7)

Amazon.co.jp: Ludwig van Beethoven, Horst Stein, Wiener Philharmoniker, Friedrich Gulda : Beethoven: Piano Sonata No. 1-32, Piano Concertos No. 1-5 – 音楽
★★★★☆(13番の2が汚いので減点)
Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No. 7-10(CD6) – diary 六帖の続きです。ピアノソナタ、中盤戦。比較的無名の11-13番の後に、「月光」の副題で有名な14番が続くという1枚。11番は3-4楽章がよいです。グルダさんの演奏はダイナミクスの幅が非常に大きいのが特徴で、ここではその良さが良く発揮されています。4楽章の16分ゾーンも燃えます。12番は1楽章を静かに始める、という初めて聴く構成。wikipediaにも載ってましたがここからベートーヴェンは古典的なソナタの形式を無視し始めます。なんで形に縛られなきゃならない、俺はやりたいようにやるぜ!というロックな思想が見えてきました。第3楽章は「葬送」の名がついてるらしく、交響曲7番2楽章を思わせるような旋律をさらに重ったるく荘厳ぶってダサオーラをまき散らすベートーヴェンらしい名曲です。4楽章も初めて聴くような形式で、ベートーヴェンの俺様道の幕開けを感じます。下降スケールの3連符が可愛いです。13番も名曲揃いで、特に第2楽章は短いくせに超絶美しい旋律が華やかに…と思ったらうるさいよ!強く弾きすぎで汚い!!!これはいただけません。曲がめちゃんこ良いのでもったいなすぎる。彼のダイナミクスの激しさが悪い方に作用している例になってしまった。このシリーズ、熱の入った演奏は異様に音が大きくなるので、グルダさんの思い入れがあったということなのかもしれないけれど、この演奏はやりすぎ。4楽章はよいです。最後に突然盛り上がって終わるところなんか一人オケって感じでよいですね。
で、間髪入れずに14番月光へ(なぜ間を空けないのか?)。私は月光の1楽章だけは弾ける、という人はいるのでは?意外にも2楽章がキュートでよいですね。3楽章目は有名すぎて語ることが何もないです。演奏もパーフェクト。


Faust – The Faust Tapes(1973)


★★★★★ヽ(゚∀゚)ノ
3枚目。あらゆるカテゴライズや意味付けを拒むかのような挑戦的な楽曲たちだった。楽曲と呼んでいいのかどうかも怪しい。期待を裏切ることしか考えてない。ガラクタの寄せ集め。考えるな。感じるんだ。というセリフが今まで聞いたどのアルバムよりも一番似合う。狙ってできるものではない。


Amon Tobin – Supermodified (2000)


★★★★★ ∩(・ω・∩)
リズム大魔神の3枚目。前作よりまた一段とパワーアップしてます。ビートの手数の次は中毒性が大いに増していて、曲自体もジャズ風味のテクニカルなサンプリング魔法が作り出すハイクォリティ。前2作同様アナログな音、デジタルな音が混在しており、アナログ的な音が余計に不気味さを掻き立てる。まず5曲目のGolfer vs Boxerが一つの山で、一貫して酔いそうなベースがうねる中を一度聴いたら忘れられないドラム旋風が吹き荒れる。意味不明シンセ、気味の悪いパッドなども手伝って緊張したまま突っ走る。6曲目Deoも泣きのアナログ音の中に高速ドラムンが駆け巡る印象的な曲だ。7曲目Precursorはボイスパーカッションだけでドラムが構成されている新機軸、8曲目Saboteurは木の音?のようなアフリカ風の打楽器で萌える。さらに10曲目Rhino Jockeyが素晴らしい。中東の香りと頭の悪いベースを漂わせながらサイとラクダの群れが行進してる様なパーカッションを何重にも重ねて、時々フルート?の音で調子をとって目を覚ますという壮大なようなアホなような押し出しの勝ち越しという感じの曲。
アルバムの度にうんと進化しているAmon Tobinさんに今後も注目だ。