★★★★★
なぜに洋ゲーのサントラ!?
PCゲームレビュー「SplinterCell: Chaos Theory」
謎のメタルギア系のゲームに提供するには惜しい楽曲ばかり。過去最高密度のドラム群、いままでの楽曲の不気味成分を絞り出して濃縮したような背筋も凍る恐怖サウンド、特に1,2,9,10がすごい。1曲目Lighthouseのお化けベースと幽霊ストリングスに棺桶ビート、2曲目Ruthlessの最初から最後まで鳴ってる高音とゾンビ的ベース、ぐっちょドラム。開始2曲で大きくダメージを受けた。いずれも今までになかった曲調。こんなのゲーム中に流してたら気が変にならないか?9曲目Hokkaidoは北海道って言うより網走番外地だな。絶望しかない。ラストThe Clean Upはドラムやりすぎ。
CDレビュー
King Crimson – The Power To Believe(2003)
★★★★☆
バンドは解散してないけれど、事実上の最終作。近代的なデジタルドラムを混ぜ、ミクスチャー化した最終進化形のクリムゾンサウンド。Linkin Parkの手法とも似ている(サウンドは異なる)。Level Fiveは典型的なデジタルビートとの混合で、非常にヘビーで良いがドラムとギターが交互に掛け合う場面の若干タイミングがあってないのが気になる。ここが決まれば完璧だった。Eyes Wide Openは残念ながらデジタルなしの前作の方が良かった。。7曲目The Power To Believe IIは前作Shouganaiの発展バージョンで、これは本アルバムの勝ち。9,10曲目のHappy With What You Have To Be Happy With〜The Power To Believe IIIにかけての展開も悪くないがやっぱり前作のLarks〜IVには敵わないか。
1970年代にデビューしてから長い時が経っているとはいえ、最後まで変化、進化し続けるところは好感が持てる。人は変化するものだ。変化を受け入れるのも人間だ。初期のサウンド、後期のサウンドいずれも一長一短があり、気に入るかどうかも聞き手の感性次第だ。私は泣かせられる曲もダサい曲も美しい曲も破壊的な曲も大好きだ。しかしへヴィー路線に進むのであれば、もう少し、もう少しだけパワーが欲しかった。
次回からは以前から気になっていた Allan Holdsworth さんのアルバムを聞いてきます。
King Crimson – Happy With What You Have to Be(2002)
★★★★★
最終作 The Power To Believeに先駆けてのミニアルバム。30分程度と非常に短いが、5曲目Eyes Wide Openが透明さの際立つ名曲、6曲目Shouganaiもよい。ちなみに日本版タイトルはなぜか「しょうがない」。そしてこのアルバムの目玉は9曲目Larks’ Tongues In Aspic (Part IV)。なんだよ前作の再録かよ〜と思ったら、ドス重さが5倍、ギターの爆裂度合いも激しく増し、前回のへぼいFuckin電子ドラムもなくなり重厚ドラムに切り替わっており、2000年代のクリムゾンでは最高の曲なのではないか。あとはThe Power To Believeのみ。期待膨らむ。
The Rough Guide to the Music of Kenya and Tanzania(1996)
★★★★★
前半がケニア音楽と思われる。4小節程度の繰り返しをベースに、暑い国特有の雰囲気ののんびりした曲調が中心。どの曲もベースが上手い。標準的なロックミュージシャンやジャズミュージシャンより遥かに上手い。これはケニアという土地のせいなのか?マラソン速いのと関係あるのか?低音は体全体に響くので、非常に心地よい。後半がタンザニアと思われる、8曲目Tanzania Yetuでやられた!木のポコポコで萌え!激萌え!そこでさらにタンザニアヘイヘヘーーーイーーホワワワワーーーキリマンジャローーンゴロンゴローーウォォセレンゲーティーーーーヨロレイヒーーーと言われたら燃えるに決まってるではないですか!9曲目Wagogo Initiation Danceも曲名通り激アツの儀式音楽!最高!
Ahmad Jamal – It’s Magic(2008)
★★★☆☆
Disques Dreyfus | Dreyfus Jazz – 20 Years の2枚目。うーん、これも微ハズレか?大丈夫かこのシリーズ。
古株のピアニストAhmad Jamalさんのかなり新しいアルバム。80歳を過ぎた今でも積極的にアルバムをリリースしているのはすごいです。でも、1,2,3曲目がひどい!リズム感なさすぎ!決めなきゃいけないところで全然決まらないよ!ピアノも時々バカみたいな大きな音を出すし!もう聞くのをやめようかと思った。4曲目からピアノソロになり、(リズム隊が目立たないから)若干持ち直すも、7曲目Arabesqueもまた8分音符連発が決まらない。ベターっとしたフレーズになってしまう。たぶんジャマルさんが年配特有?の演歌調のずれをやってしまうんだろう。8,9曲目が良かったので、最後まで聞いてよかったけれど、もっと高揚させてくれよぉ。
Sonny Rollins – Saxophone Colossus(1956)
Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No. 30-32(CD12)
★★★★★∩(・ω・∩) (∩・ω・)∩
名曲しかない。。
まず切ない切ないメロディーで始まる30番。第1楽章、中盤からは曲調が変わり実質の2楽章目、いつものベートーヴェン節が大炸裂し、チャーラチャンチャンとダサさも完備。第2楽章は長大で10分超、しかも曲調がコロコロ変わる。しっとりとした前半から打って変わって後半は押し寄せる渓流奔流、まるで木曽川。7分半くらいでまた変わり、対位法堅苦しいゾーン+ダサゾーンを抜けて長大階段へ、、美しい。
31番は第1楽章がフラペチーノ、いやキャラメルマキアートか?というくらい甘い。後味を残したまま、またまた超ダサの第2楽章スケルツォ。マイムマイムみたい。繰り返しと謎のメロディー、激しいのかそうでないのか掴みきれない変わった曲。第3楽章は暗い歌風味のメロディーからフーガで盛り上がった後また歌、そして感動のラストへ。ラストがオケもびっくりの壮大さ。
32番は前評判通り、最高傑作といっていいと思う。第1楽章は原点回帰かと思うような激しい曲、俺たちのベートーヴェン的ダサメロ、無限回廊、激情、爆音、強烈テクニック、いままでのベートーヴェンの総結集といった曲になっている。そしてベートーヴェンが新世界の神となった第2楽章、なんとこの曲には、中盤にスウィングが登場する!!この曲ができたのは1821年なので、文字通り100年早い!しかも天にも昇るような完璧な曲で!信じられない。ウソだろって思った。マジであんたすげぇよ。スウィング地帯を抜けた後は、高音とトリルを主体とした気持ちの高揚をずーっと保つかのような流れが続いて、11分過ぎにトリルが途切れ、着地する。この着地した、と思われる感覚が、並じゃない。ラストの静寂にも驚く。この曲は、他のピアノソナタのどの曲とも違う。でも、ベートーヴェンの曲とすぐに分かる。
wikipediaを見たら参考文献に「『ジャズの起源はベートーベンにある』(田幸正邦 / 東京図書出版会 / ISBN-10: 4434020315 / ISBN-13: 978-4434020315 2002年)」って出てるし!!
グルダさんもずるいです。初期中期は、わざとなのか、爆音演奏を量産していたというのに、後期になったらタッチに憂いをもたせるのだもの。引き込まれるに決まっている。ピアノソナタを全部聞いてみて、ベストはこの、最後の1枚。時点で最後から2番目。とにかく後期の演奏が素晴らしい。前半はやや誇張しすぎなのではないかというくらい、派手でダイナミクスつけすぎだったけど、特に最後の3枚の演奏は意図的なのかバランスが取れておりしっくりくるし感動する演奏だった。
残りはピアノコンチェルト3枚。しかしこの演奏と量で3000円台ってのは出血大プライスだな。
Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No.28-29(CD11)
Amazon.co.jp: Ludwig van Beethoven, Horst Stein, Wiener Philharmoniker, Friedrich Gulda : Beethoven: Piano Sonata No. 1-32, Piano Concertos No. 1-5 – 音楽
★★★★★(σ゚∀゚)σ
まず28番。静かな第1楽章に続き、付点リズムでずーと踊ってる第2楽章が印象的だが、第3楽章が久しぶりに中盤の神がかったメロディー&付点付き超ダサメロディー&強烈な盛り上がり、とこれまでのベートーヴェン風味を凝縮したような濃い曲になっていて、しかも物寂しげなスパイスまでついているというこれまたすごい一曲。
そして29番ハンマークラヴィーア。これは最高傑作といっていいと思います。第1楽章は爆音ド派手派手、そしてひたすら手数が多いピアニスト泣かせの曲。箱根駅伝でいうと2区。第2楽章は何故かこの曲だけ短いスケルツォで、短いといえども中盤〜終盤にかけて意味不明ゾーンがあり気が抜けません。第3楽章はプログレもびっくりの約14分の超大曲。弾く人によっては20分にもなるらしい。これのどこが緩衝曲なんじゃと思うような押し殺した感情が延々と続きます。疲れます。終盤では押し殺しきれず時々激情がほとばしってます。箱根駅伝でいうと4区。
最後の第4楽章がやばい。やばすぎる。グルダさんこの曲だけ弾けてない。人間がやるもんじゃない。まさに山登りの5区。序盤の静謐で引いて引いてこちらが待ちきれなくなったところで、対位法の右から左からの旋律、執拗なトリル、頻発するオクターブまたぎ、あちこちから音が10分間にわたって責めてくる新感覚ピアノ曲でした。無限回廊、無限階段。どこまでいっても階段。それが精密機械よりも完璧に組み立てられている、キングオブわけわからんピアノ曲。普通の人間が弾いたらブレーキ間違いなし。なぜ駅伝に例えたかというと、はじめて、ピアノ曲を聞いただけでマラソンを走ったみたいに疲れるという経験をしたから。
しかし、wikipediaには
>現実には、作曲後20数年でクララ・シューマンやフランツ・リストがレパートリー化して、各地で演奏した。
って書いてあるんだよなぁ。人間ってすごい。
Beethoven, Friedrich Gulda(pf): Piano Sonata No.23-27(CD10)
Amazon.co.jp: Ludwig van Beethoven, Horst Stein, Wiener Philharmoniker, Friedrich Gulda : Beethoven: Piano Sonata No. 1-32, Piano Concertos No. 1-5 – 音楽
★★★★★
ピアノソナタも終盤戦、あと3枚。いきなり23番「熱情」で始まる。素晴らしい演奏です。右から左から奔流が走る、ちょっと早すぎるかも。特に最終第3楽章のシメの16分和音連打ゾーンは今聞いても衝撃だ。24番からは一変して非常に優しい雰囲気の曲に変わる。グルダさんダイナミクスつけすぎなくらいですね。25番は第3楽章が短いながらも躍動感があって好きです。
26番も有名な曲らしい。「告別」と自分でタイトルを付けたそうだ。第1楽章のオクターブ+下降のところが神メロディーでめちゃんこ心にしみる。第2楽章は単なる踏み台でそのまま超軽快な第3楽章へ。2分前と3分半くらいのところの右手オクターブのフォルテッシモからピアノ?に代わって跳ね回るところがすげぇです。この曲はピアノなのにドーパミンが出まくる。すごい。
27番もマイナーながら第1楽章は異様に激しいわ第2楽章は大きく包み込むようでいて中身の熱さが見え隠れする名曲。
Faust – Faust IV(1973)
★★★★★( ゚д゚ )彡
斜め上ロックチャンピオンの4枚目。またもジャンル分け、分類を拒む曲たち。執拗な繰り返しと意外性、期待を絶対に裏切ってやるという執念、でも曲として破綻していない上にエネルギーも感じられるという不思議な40数分間だった。ギターは(意図的に)コピー用紙みたいな音だし、ドラムも上手いわけじゃないのに、なぜか引き込まれてしまう。4曲目で下痢みたいなシンセもあるが悪くない。特に1曲目Krautrockの塊のようなサウンド、3曲目Jenifferや8曲目It’s a bit of Painの意味不明ギター、5曲目Picnic on a Frozen Riverのイントロと激しく乖離してずっこける歌部分と後半、はすさまじいものがある。過去の3作品と比べると、尖鋭性と演奏感が程よく合わさっているこのアルバムが個人的にはベストか。