Verve Jazz Masters 56 : Herbie Mann


★★★★★(^^)
ジャズフルート奏者ハービー・マンを特集したアルバム。ジャケットはタモリみたいですが彼は生粋のアメリカン、ブルックリン生まれのユダヤ系です。ジャズにフルートなんて合わないんじゃないかと思ったらこれが合うんです。クラシックにおける音色とも異なり、インプロも高速フレーズもこなし、フルートという楽器の限界に挑戦しているかのようなサウンドです。
が、このアルバムで特筆するべきは打楽器類のバリエーションの多さ、そして萌え萌えのカリブ系アフロ系ビート。このアルバムで、私はパーカッション萌え、リズム萌えであることがよーーくわかりました。世の中にはミカサの腹筋萌え、廃墟萌え、工場の夜景萌え、100メガショックネオジオ萌え、0系ひかりの丸いボンネット萌えなどさまざまな萌えがありますが、私は打楽器萌えです。
1曲目St.Louis Blues がオードソックスなジャズだったので油断しましたが2曲目Baiaのボサノバビートに始まりほぼ最後まで変わった打楽器ばかり登場します。コンガボンゴが多いですね。3曲目Evolution of Mannや5曲目The peanut Vendorのチャカポコぶりにニヤニヤしたあと、8曲目Todos Locosで悶絶しました。萌え死ぬ。キューバンアフロにフルートとビブラフォンがこんなに合うとは知らなかった。これはお菓子ですね。コンペイトウみたいな曲。こちらで聞けます。9曲目Cuba Patato Chipもそのままアフロな曲でこちらもキューティーももも萌え。11曲目The Amazon Riverもたまりません。チャカポコチャカポコ。12曲目Caravanはスタンダードなナンバーですが彼にかかれば信じられないような民族色溢れたナンバーに変化します。これはすごい。
現時点今年最高の1枚。Herbie Mannの名前をよく覚えておこう。


Verve Jazz Masters 55 : Harry James


★★★★☆
またまたトランぺッターにしてビッグバンド・ジャズのバンドリーダーのハリー・ジェームズ。このCDも曲が非常によく、2曲目Wakin’や6曲目End of Town Bluesはでっかーい音のトランペットが暴れまわり、7曲目Hommage Swee Peaがトロンボーンとの掛け合いが見事、10曲目Frensiはメロディーが素敵、12曲目The Jazz Conoissuerはハイテンポで最高潮、15曲目Rosebudがこのアルバムの肝か、後半の妖し〜〜いピアノのあたりから色めき立ってくる流れが大好き。


Spain (RCA Living Stereo Collection CD 55)


★☆☆☆☆
ファリャ、アルベニス、グラナドスの3人のスペインの作曲家たちの特集。このうちファリャの「三角帽子」は自分にとって懐かしい曲だった。中学校時代、住んでいた場所はど田舎でCDショップなんぞ近くになかった。吹奏楽部の準備室にはCDが数十枚置いてあり、これまたCDショップにもあまり数のないクラシック曲が収録されたものばかりで、そこそこ値の張りそうなミニコンポも置いてあったので、時々友人とそこでCDを聞いたり、自分たちの演奏や他の学校の演奏の入ったデモテープを聞いたりしていた。「三角帽子」は入部2年前くらいに吹奏楽アレンジをして自由曲として演奏したものらしく、これもCDが置いてあった。たぶん、東京佼成ウインドオーケストラのこれじゃないかな?でも1996年発売って書いてあるから、当時はまだ発売されてないよな。するとクラシック版だったのかもしれない。で、そのCDを借りて家に持って帰って聞いて、衝撃を受けたので今でも覚えている。それまでクラシック音楽なんて眠くなる曲としか考えてなかったので、熱気と狂気に包まれているこの曲には本当に驚いた。あれから20年近く経っているので、細部が削ぎ落とされて理想化されたクオリア?だけが残っていたはずだ。
なので三角帽子の最終曲終幕の踊りのイントロがかかっただけで寒気がした。のに、その後聞いていったら、、展開がだめ!なんちゅうか、これは狂気っていうか、、トムとジェリーじゃねえか!!!!いくらアメリカの楽団だからって、これはないよ。テンポが速くて流れるようにあっちへこっちへ駆け抜けて行って情緒もへったくれもない。中盤の盛り上げ部分もボヘボヘーンって感じで拍子抜けするし、これじゃあ感動できんです。
他の曲についても、前半戦のファリャの「恋は魔術師」も全然ダメ。ソプラノははずすし、全体的にもわっと決まらないし、ストリングスが時々がっくりするくらいずれる。最終曲アルベニスの「Iberia Book4」も楽曲のポテンシャルの高さは感じられるものの金管もストリングスもずれまくり、ラストはトライアングルがあり得ないタイミングで入ってもうがっかりイリュージョンだ。800円分のがっかりだ。
特に三角帽子が許せないのでレビューを書き始めて以来はじめて最低評価の★1つとしました。リンク先のamazon.comは”VIVA! BRAVO! AND OLE, FRITZ REINER” “A magnificent disc. ” などなど絶賛レビューで埋め尽くされているがわたしゃ信じないよ!


Julian Bream – Popular Classics for Spanish Guitar (RCA Living Stereo Collection CD 54)


★★★★☆
クラシックギタリスト、ジュリアン・ブリームのソロアルバム。このCDはスペインの曲を11曲まとめたものとなっている。ギターは一人で多重奏ができるため技術の上限には限りがなさそうだ。よく伴奏とメロディーと同時にできるよな。スペインという土地柄なのかマイナーで物寂しい曲が多い。コンサートホールで演奏しているというよりは、川や海のそばの港町のショットバーにいるような雰囲気だ。8曲目のアルベニッツ、スペイン組曲の2つめは、伴奏が激しすぎて倍音が響きまるで弦楽の重奏のような音が何度も聞こえる。渋い1枚。


Dalhous – Will to Be Well(2014)


★★★★☆
イギリスの電子音楽アーティストDALHOUS(だろうす?)の2ndアルバムらしい。これも適当にジャケットを見て選んだので、事前知識なし。アンビエント・ノイズ・テクノ・ビッグビートなどを全部混合させた、特定のジャンルに囚われない独創的な音が全アルバムに渡って展開する。diskunionの紹介ページによると、スコットランドの精神科医のロナルド・D・レインから影響を受けたらしい。そのせいか時々精神的にきつい曲がある。序盤は大人しいが5曲目Lovers of the Highlandsは曲全体の雰囲気が、その次の6曲目Four Daughters By Four Womenは時々混じるヒステリーな音色がお腹をムズムズさせる。ここら辺が一番きつく、その後は10曲目Someone Secure、12曲目Abyssal Planeのような落ち着いた曲が続き、一番のキモが14曲目DSM-III、という直球なタイトルの曲。メインで流れている音は静かだが後ろでずーっと削り出すようなビートが鳴っていて、これは精神科医対患者ってことなんでしょうか。でもそうだとすると患者のビートはずいぶんと規則的なので、精神病というよりは自閉症なんじゃないか。
オウテカやエイフェックスツインなんかは電気の主張が強すぎるのと展開の乏しさからどうしても馴染めなかったけれど、この人の音は流転し展開し自己完結しないので好みだ。


Kraftwerk – Autobahn (1974)


★★★★☆
元祖テクノポップ。当時のシンセサイザーはまだそれほど多重発声ができないせいか、音数が非常に少ない。音質も、スーファミに毛が生えた程度。ドラムマシンに至ってはファミコン並み、時々ずれるので手動でたたいてるのかもしれない。しかしこの音を1974年に出していたということは刮目すべきだ。ファミコンは1983年発売、スーファミなんて1990年発売なんだから、いかに当時前衛的であったろうか。使われたシンセはミニモーグだったそうで、こいつは今でもさまざまなアーティストが現役バリバリで使っている。。ちなみに当時は、フォルクスワーゲンと同じ値段だったらしい。
表題曲AutobahnはYMOを思わせる、いやYMOがパクったと思われる8ビートで22分40秒も延々走り続ける曲。ボコーダーもまんまYMOが模倣してるやないけ。おいおい。もちろんクラフトワークが4年も先行してます。所々に工場勤務のお兄さんが呟いてるようなヴォーカル(?)が入りずっこけかけるが、これも愛嬌か。中盤の車の音はよく大昔のシンセで出せたなぁとおもう完成度。
他の曲ではラストのMorgenspaziegangが良い。うにうにしたシンセの中に気が抜けたリコーダーが入り、非常にシュールな雰囲気を出している。MOTHER2(1994年発売)でこんな感じの曲があったな。20年も先をいっていたということか。


CDレビュー: Testament – First Strike Still Deadly(2001)


★★★★★

ベテランのスラッシュメタルバンド、テスタメント。このアルバムは1stアルバムと2ndアルバムからチョイスしたリメイク版で、デビューから20年近く経って脂の乗り切った彼らの演奏が凝縮されて詰まっている。ただのスラッシュメタルではない。所々メロディアスなギターを織り交ぜヘビメタバンドとしても十分通用する演奏をする。

特に1,6,7,11曲目がすごい。1曲目表題曲First Strike is Deadlyはいきなり音速ドリフトイニシャルDという感じで、ラストのメロギター→ツーバス地帯への流れが見事です。6曲目Burnt Offeringsはメタル要素を全部注ぎ込んだ会心作で、退廃的なイントロから爆裂リフ炸裂ドラム、重い重い6/8拍子を経て超速の後半戦へ、、この曲が一番好きです。7曲目Over The Wallもリフギターが超かっちょいい。10曲目Alone In The Darkはおそらくこの曲だけヴォーカルが違うと思われる、この曲のおかげで何故スラッシュメタルが以前から好きだったのか、がわかった。ゴアトランスと共通していることが多いのだ。和音や調整を拒んでヴォーカルは単音と半音か全音の上下くらいしかせず、音階を無視した爆速フレーズとリズムで押して押して高揚させる一種の形式美、が好きなんだな。そういえば何カ所かで中東風のギターの旋律も聞こえてきた。ラスト11曲目Reign Of Terrorも6曲目に引き続き神がかり的なドラムがすごい。イントロも力入りすぎ。

歌詞を何曲か読んだところよくある「破壊!殺戮!死ね死ね!」のようなものではなく、いや大体そうなんだけど、The New Orderなんか核戦争後のヒャッハーな世紀末世界観だし、でもBurnt Offeringsで”Won’t die!”と何度も叫んでいたり、Over The Wallでは”Restart my life or self destruction” “Holding the quest for freedom that beckons me” のようにそんな破滅的世界の中でもあがいて抵抗して闘え!というメッセージを感じた。歌詞読んでみてよかった。

ここのところヒット作が多く豊作です。
そもそもスラッシュメタルを聞き始めたのは都心に通勤していた時期にコンビニで必ず立ち読みしていたこの漫画の影響のせい。ゴートゥーDMC。で、いったいどんな音楽なんだろうね、と思って評判の高いSlayer – Reign in Bloodを聞いておらびっくらたまげただ。今度スラッシュ四天王のアルバムも集めてみようかな。

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CDレビュー: Stéphane Kerecki Quartet – Nouvelle Vague (2014)


★★★★★

ジャケ買い。音楽の内容は全く見ずに、この構図にひかれてしまった。買ってみるとジョン・テイラーさんがいたりそれなりに有名なカルテットのようだ。Nouvelle Vague というのは1950-60年代くらいのフランス映画で、このアルバムは映画音楽のジャズアレンジ、ということらしい。バンドリーダーのステファン・ケレクキさんはウッドベース担当で、かなり渋い音を聞かせてくれる。

1曲目Charlie Et Lenaはインプロが激しくわけわかめ状態だが、2曲目以降は全員が異様なくらい透き通った音を聞かせてくれて、ちょっと怖いくらいだ。オーボエのようなソプラノサックスの歌い上げがせつなく、上手に歌ってるんだけれど全く前面に出ないドラム、時々いることに気付くくらい目立たないが全体をバッチリまとめてるピアノ、ベース。この均衡が時々崩れ、そこでドキッとさせてくれる。

まず最初の山が3曲目Ferdinand。原曲の出典pierrot le fou「気狂いピエロ」はハンターハンターに念能力名で出てきた。映画のタイトルだったのね。聞いていると落ち込む。死にたくなる。映画は見たことないけど間違いなく鬱になる作品だろう。さらに4曲目La Chanson De Maxenceも序盤がダメージ高い。歌声と演奏とどちらも透明すぎる。

10曲目はなんとベートーヴェン交響曲第7番第2楽章のアレンジ。映画「王様のスピーチ」の見せ場でかかる曲なので記憶にある人も多いのでは。この曲の後半の展開部もすばらしい。

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CDレビュー: Verve Jazz Masters 54 : Woody Herman (1996)


★★★★★

ビッグバンドのリーダーにしてクラリネット&サクソフォン奏者のウディ・ハーマン特集。ジャケットではクラリネットを吹いてるけどCD内はサックスが主で、クラリネットはあまり出てこない。ビッグバンドにクラリネットはよく合う。高田馬場に仕事で通っていたとき、よくパチンコの宣伝をしているチンドン屋のクラリネット奏者が非常に上手だったこと、なんかを思い出した。

バンドにみなぎるエネルギーの量が尋常じゃない。どの曲もスピーカーやイヤホンが熱暴走しそうだ。ハーマンさんの音は癖が少なく落ち着いていて、ソロパートは常にぶっ飛ばし気味の演奏の中の一つの清涼剤となっているようだ。実際、バンド内のトランペットやトロンボーンのソロはアクが強く、こいつらをまとめるのは大変なことだろうなと思う。

例にもれずごった煮の曲順だがライブ音源が非常に多い。どの曲もよいが、特におすすめするのは、冒頭のベースがカッコよくラストが一風変わった3曲目Camel Walk、超高速で初めから最後まで心臓なりっぱなしの7曲目Caldonia、モダンジャズと上手に融合したラスト13曲目Dear John C。ビッグバンドジャズの超優良アルバムとして自信を持って薦められる1枚だ。

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CDレビュー: Verve Jazz Masters 53 : Stan Getz – Bossa Nova –

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★★★★★

サックス奏者スタンゲッツ。他の奏者とは明らかに違った音が出ています。ワイルドなブヒブヒ音を立てることは全くしません。静かでハスキー、それでいてスケールの大きな音を出します。音が小さいわけではなく、息を大量に使って音を出しているらしいです。彼の音の出し方はおそらく天才肌に属するでしょう。そしてジャズメンの常、麻薬常習の強化人間です。最強。後年は麻薬はやめてアル中になったそうです。それじゃ一緒じゃん。

このアルバムは彼の大好きな?ボサノヴァだらけのCDとなっていて、最初から最後までダルダルのデレデレです。相変わらず突然ライブ音源が入ったりとごたまぜの構成です。6曲目Samba De Uma Nota So、14曲目Samba Tristeあたりはボサノヴァに他の要素を混ぜたような曲で変わっていておすすめですが、極めつけはラストのThe Girl From Ipanemaでしょう。アルバム中何曲かサックスを吹かずに歌ってることがありますが、この曲はライブということもあってか歌がぶっ飛んでます。声が澄み切ってるというか、普通の意味の澄んでいるのとはまた違った、自我が没入していてそこの世界に強制的に引きずられていくような、要はイッちゃってる、ということなのですが、ちょっと怖いです。

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