書籍レビュー: 私益から他益、公益に至る『ローマ人の物語〈9〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(中)』 著:塩野七生

★★★★★

 

カエサル特集の6冊中2冊目です。虚栄野郎ポンペイウス、カエサルが大き過ぎてつぶせない大口債権者クラッススと「三頭政治」を結んだカエサルは、最高権力者執政官に当選し数々の改革をしたのち、現フランス・スイス・ベルギーに相当するガリア地方の平定に向かいます。8年に渡るガリア遠征は彼が自ら「ガリア戦記」を記し、文学的にも一級品である一次資料となって現存しています。本巻と次巻は大部分が「ガリア戦記」を基にしているようです。

私益から他益、公益へ。などなど

気になった個所を引用していきます。

 だがカエサルという男は、「女」や「金」の項でも如実に示されたように、一つのことを一つの目的でやる男ではないのである。

 つまり、私益は他益、ひいては公益、と密接に結び付く形でやるのが彼の特色である。なぜなら、私益の追及もその実現も、他益ないし公益を利してこそ十全なる実現も可能になる、とする考えに立つからである。

この一説は最も感銘をうけました。現代に我々ができる私益から公益の実現とは、積極的な経済活動に他なりません。消費意欲が減退すれば貨幣の流通速度が落ち、不景気となり雇用も賃金も減ります。カエサルはビジネスをやって借金をチャラにし、しかも南仏の経済活動を活性化させてローマの商人に力を付けさせたでかすぎる男でした。

本書とは関係ありませんが、私もそう思います。一千万くらいお金を貯めたら、何かビジネスをやってみたいものです。

 私は、諸々のことをくっつけながらも、カエサルの叙述の仕方、ないし彼の肉声に、可能な限り近づこうと努めるだろう。なぜなら、私の書こうと試みているのは、カエサルという人間である。そして、人間の肉声は、その人のものする文章に表われる。

私の書く文章は、どのような人間性を他人に与えているのでしょうか。

 敵地で闘う総司令官にとって最も直接的な課題は、戦闘指揮とほとんど同じ比重をもつ重要さで、兵糧確保がある。戦争は、死ぬためにやるのではなく、生きるためにやるのである。戦争が死ぬためにやるものに変わりはじめると、醒めた理性も居場所を失ってくるから、すべてが狂ってくる。

この観点から行けば、神風特攻隊は最も不合理な戦闘方法だったことになります。実際、彼らの命中率は1割に満たなかったと言います。そりゃあ兵士は生きたいです。私が戦地に行ったとしたって絶対に生きたい。

 ローマ人は、その中でもローマ人であることを強く意識するカエサルは、誓約をことのほか重要視する。多神教のローマ人だから、神との契約ではない。人間同士の制約である。たとえ異人種でも対等の人間と認めるがゆえに、交わされた誓いを信ずるのである。武士に二言はない、という言葉を持つ日本人の方が、一神教的な契約になれた欧米人よりも、ローマが重要視した人間同士の誓約にこめられた心情をよりよく理解できるのではないかと思う。

確かに神のもと平等、というよりも人間と人間が平等であるとした方が、日本人としては理解しやすいです。しかし、お互いの精神の高潔さが要求されるという欠点があります。戦国時代なんか裏切りの連続ですし、ヨーロッパが人間の上位概念である神を必要としたことにはそれなりに合理性があるんじゃないかな、とも考えます。

現に、カエサルは裏切りに厳しく、裏切ったガリア人の部族を全員死刑にしたり毎回厳罰に処しています。人間と人間の誓約はきびしいものです。

 カエサルは、プロパガンダの重要性を、当時では他の誰よりも理解していた男だった。なぜなら、「人間とは噂の奴隷であり、しかもそれを、自分で望ましいと思う色を付けた形で信じてしまう」からである。

きをつけます。

「あの人が、金の問題で訪れた連中相手にどう対応するかを目にするたびに、わたしの胸の内はけいいでいっぱいになるのだった。それは、あの人がカネというものに対してもっていた、絶対的な優越感によるのだと思う。

 あの人は、カネに飢えていたのではない。他人のカネを、自分のカネにしてしまうつもりもなかった。ただ単に、他人のカネと自分のカネを区別しなかっただけなのだ。あの人の振る舞いは、誰もがあの人を支援するためだけに生まれてきたのだという前提から出発していた。わたしはしばしあ、カネに対するあの人の超然とした態度が、債権者たちを不安にするよりも、彼らにさえ伝染する様を見て驚嘆したものだ。そういうときのあの人は、かの有名な、カエサルの泰然自若、そのものだった」

旧東ドイツの劇作家ブレヒトによる作品中「カエサル氏のビジネス」におけるセリフです。まるで経営者がこうあらねばならないという理想形を示しているようです。

もしカエサルが現代に降臨していれば、ITベンチャー企業からグローバル大企業に成長するグーグル、フェイスブック、アップルのような企業を作ったに違いありません。

今回の紹介は引用ばかりでした。単行本版の1/3の量しかないというのに、感銘を受けた記述の多かった1冊でした。

 

 

関連書籍

つーわけで原著も読んでみたいですね。

ガリア戦記 (講談社学術文庫)

ガリア戦記 (講談社学術文庫)

 

 

 リーダーシップについて。

龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

 

 

残念ながら彼とビジネスを関連付けた本はブレヒト氏のものしかないようですね。 しかも貴重書で高い。図書館にもないようです。

ユリウス・カエサル氏の商売 (1973年) (モダン・クラシックス)

ユリウス・カエサル氏の商売 (1973年) (モダン・クラシックス)

 

 

おお、洋書かつkindleなら安いぞ!来年発売だけど、買っちゃおうかな。。

The Business Affairs of Mr Julius Caesar (Methuen Drama)

The Business Affairs of Mr Julius Caesar (Methuen Drama)

 

 


次女が発作

次女は私や親の悪いところばかりを受け継いで生まれたため、自閉症と境界性障害(躁うつ病?)の症状が見られます。感情の起伏がめちゃめちゃです。

私は出ていくと決めてから家族のことに関わらないようにし、同時に関わらされないようにされてきましたが、今日は次女が風船で遊んで躁になった後に反動で気分が荒れ、ものを傷つけたり嫌がらせをするようになったので、明日朝早く出かける必要のある家族は困り、対処を求められました。

私の作業部屋に連れていこうとしましたがいやがるので、隣に何もしないで2時間ほど座っていました。次女はじきに落ち着き、そのあとはカーテンの内側に隠れていました。いまは押し入れの中にいます。まるで猫のようです。彼女は何もしないことを一番望んでいたと分かりました。でも物を傷つけたりすることは、明らかに「自分を見てくれ」というメッセージです。ここにソローと同じ二面性があります。手前味噌ですが引用します。

著者がソローについて、全く同じ点を指摘しています。彼は一貫して孤独を好みますが、一方で自分について知ってほしいという願望も読み取ることができるというのです。確かに「森の生活」を出版したこと自体がそうです。私がブログ上で文章を書くのもそうなのです。

書籍レビュー: ソローを取り込みたい『作家たちの秘密: 自閉症スペクトラムが創作に与えた影響』 著: ジュリー・ブラウン – 六帖のかたすみ

彼女の内面は私やソローと同じなのでしょう。自分のことに関わらないでほしいけど、自分のことは知ってほしい。自分から相手への一方通行のコミュニケーションと、それへの同意だけが欲しい。わがままです。でもどうしようもないです。わがまま、子どもっぽさ、は自閉症スペクトラムの人間にとって一生逃れられない問題でしょう。

私は自分のわがままで来月上旬に家を出ますが、久しぶりに次女と何もしないとはいえ長時間二人きりになり、ああもうこの子の支えになることはできないのだと思うと、号泣してしまいました。家族は次女を不憫に思ったのかと聞きましたが、違います。「私が」次女と離れるのが嫌なのです。自分勝手です。出ていく相談をする時、次女は引き取りたいと言いましたが、秒速で却下されました。仕方ありません。私のわがままなのだから。

 

今日はもう少し振り返りに時間を取りたかったのですが、上記理由で中断しました。忘れられない日になりそうです。

 

(追記)これを書いている時に2回目の発作が起きました。押し入れの扉を蹴りまくり、お腹痛いお腹痛いと自家中毒を起こしていました。落ち着くと腹痛はケロッと治りました。


振り返り 高1~2

前回記事

 

田舎の公立トップ校に入りました。東大に年間1ケタ合格する程度で、首都圏の日比谷浦和湘南などから見ればしょぼいレベルの高校です。トップ校に入ったことは長期的に私を無意識下で尊大にしていきます。そもそも高校に入ってすぐ大人が「君たちはリーダーになる存在だ」と言い続ける、純粋無垢タブララサな若者たちを勘違いさせる土壌がある学校でした。もちろん地元では、そこに行く人間は高校の名前を背負うだけで一目置かれるのです。田舎ってやーねー。大学進学で東京に出た人間もなぜか半分くらいは地元に戻るようで、井の中の蛙の拡大再生産が行われます。

『ヨーロッパ思想入門』で紹介されていたロールズの「お前の才能はお前のおかげで獲得できたものじゃないだろ」という思想はとても好きです。おそらくこの思想は、聖書によく出てくる「お前が偉いんじゃない、神のおかげ(気まぐれ?)なのだ」という思想が根底にあるのでしょう。我々無神論な日本人にとっては、神を介さなくても十分に納得できる理論です。投資に勝つことと同じように、自分の能力や進路、獲得したものなどすべてまぐれにすぎません。当時の私にそのような謙虚な考えがあればよかったのに。

しかし私の高校での成績を大きく減退させる出来事が高校入学前にありました。音ゲーと出会ってしまったことです。高校受験も終わり春休み、皆で街のゲーセンに遊びに行ったときのことです。当時はbeatmania complete mixやDance Dance Revolution 2nd mixが稼働中で、音ゲー大ブレークの時期とちょうど被っていました。私は完全にこれにハマってしまっいました。

音ゲーというのは、心理的駆け引きや工夫の求められる格ゲーと違ってほとんど才能が必要ありません。トップランカーであるためには才能も必要ですが、たいてい練習量だけが全てです。時間をかけさえすれば誰でも上達できます。音ゲーはDDRは矢印4つ、beatmaniaはボタン5つ+スクラッチしかなく、複雑性に乏しくパターンが決まりきっています。少ないボタンの組み合わせのパターンを覚え、小さい動きを正確に繰り返すことだけが重要なゲームです。私はこのゲームに向いていたため上達が早く、ゲームの苦手意識が払しょくされるとともに中毒になる原因となりました。PC上で動作するビートマニアもどきBM98の登場により、自宅で練習できるようになったことも事態を悪化させました。私は小遣いのほぼ全額をゲーセンに注ぎ込み、時間も注ぎ込みました。

さらに追い打ちをかけたのが、高校1年前半に彼女ができたことです。私は精神年齢が足りなかったので同じ高校の人間とはあまり人づきあいが無く、ゲーセン繋がりで知り合った別の高校の子でした。仮にAさんと呼ぶことにします。当時はTo HeartやらKanonやら泣きゲーという名の心理的補償をもたらすギャルゲーが流行しており、私も例外なくプレイしていた重度のオタクでしたので、女の子なんぞ世界の外側だと思っていました。ところがAさんにより世界が逆転しました。古代西洋人は地球が平らだと思っていましたから海の果てには断崖があり、その外側には出られないと信じていました。私もモテ世界のことをそう思っていました。ところが断崖の向こう側が突然現実世界になったのです。

Aさんは家庭に問題のある人でした。母親は出ていってしまい、父親は外に女がいました。彼女は父親の両親と同居していました。住居はたぶん市営住宅だったと思います。父親は色ボケだし、祖父母も年なのにハッスルしている人でした。あのじーさんたちきっと、こういうの飲んでたに違いない。ですのでAさんは変態でした。私の初体験はほとんど逆レイプでした。包茎を強引に剥かれ、ただ痛かっただけ、快楽0でした。私はAさんに感化されどんどん変態になりました。

苦手だったことやコンプレックスに思っていたことが解消されると、人間はうれしくなって極端に走りやすくなるものです。私はAさんとのことを積極的に口外しました。ラブホで撮った写真を見せたりしました。周りの人間は間違いなくドン引きだったでしょう。私は勉強しなくなりました。高校でも中学と同じ系列の塾に入っていましたが、じきにサボりがちになり、2学期ごろには辞めました。成績は安定して最下位1割をキープしていました。進学校ですのですべてのテストで順位が出ます。やめてほしいよあれ。今でも、数学の連立方程式を解くテストで

yを消去してxの解を求めよ

y=x^2+x+3

x+y=2

のような問題で、yを消去の意味が分からないので字面だけ見て x+y=2からyを消去してx=2 と回答したことを覚えています。このテストは15点、40人中39位でした(誰が最下位だったんだろう)。

冬になるとAさんに振られました。近くに住んでいる男が好きになったからだということでした。私は当時携帯を持っておらず、ゲーセンしか会う場所が無かったから飽きられたようです。私はまた断崖の向こう側に行かなければいけなくなると思うと苦しく、2日間ものを食べられなくなり、十二指腸潰瘍になりました。潰瘍自体は大したことありませんでしたが、担当した医者が藪医者だったので、胃カメラで苦しくて死ぬかと思いました。ガスで腹をパンパンにしますし、カメラがでかすぎて常に嘔吐感がする、窒息する死ぬ、と思いながら検査を受けました。最近もう一度胃カメラをする機会がありましたが全く苦しくなかった!あいつら絶対ヤブ!でもその診療所は「×××市消化器医療センター」と病院に名前を変え大発展してやがりますので、医療は儲けたもん勝ち、でかい病院だからよい医療であるとは限らないことがわかりました。

Aさんから医者への文句に脱線してしまいましたが、一連の出来事で今後しばらくの人生の力学が決まりました。モテ世界の断崖の向こう側とこっち側への引力です。なんとかして崖の向こう側に戻りたい私はその後相当キモかったと思います。なにしろAさんのせいで変態が染みついてしまったからです。ある先輩に突っつかれたのが原因で、もっと突っついてほしいので告白した、とか訳の分からない行動を繰り返していました。あと2件くらいあった気がしますが詳細を忘れました。

Aさんは今どうしているかわかりません。私の想像では、20代になるころにはヤンママになり地方やドンキによくいるジャージ姿で買い物するような人になったのではないかと思っています。

2年生に上がる直前、ぼんやり過ごしていると同じ中学出身の友人に演劇部に入れと誘われました。私は幼稚園時代のいやな記憶がありますので演劇なんてとんでもない、やだ、と言っていましたがいつのまにか不可逆に演劇部に入らされてしまいました。この部活に入ったことが今後の運命を左右します。

演劇部では舞台に立ちたくないので音響を担当したかったのですが、キモいキャラクター(と明確に言われてはいませんが、たぶんそうだと思います)を買われてマッドサイエンティストな役を担当することになりました。台詞が少ないのでなんとかできましたが、私はアドリブが全くできないこと、新しいアイデアや解釈を生み出せないことが日に日に明らかになっていくため苦しかったことを覚えています。この2つの要素が強く要求される即興劇は苦痛で、発表中に全く動けなくなってしまったこともありました。私はショックでその日学校の屋上入口にひきこもっていました。ハルヒがキョンを最初に引っ張って連れて言った所みたいな場所です。

部活の同級生の男子は私を含めて3人。私以外の2人ともよくモテました。彼らに共通しているのは即興性やギャグのセンス、コミュニケーション能力が高いこと。私は小学校時代中学校時代に引き続き、この2人に劣等感を持ち続けることとなります。また私は行動が変ですので、2人によくいじられました。私はクラスと同様同級生とはあまり打ち解けませんでした。その代り部活に1年生が入ってくると1年生とはよく話しました。精神年齢が1つ遅れていたのだと思います。

そんな風にして2年生のうちは部活に明け暮れて過ぎました。音ゲーは続けていたので成績は相変わらず低位です。このころ、ゲーセンの帰りに閉店した百貨店の脇を通り抜けていたらカツアゲに会いました。細長くて弱そうだったからだと思います。3人で囲まれ羽交い絞めにされましたが、なんとか振りほどいて逃げました。失ったのは強引に引きちぎったコートのボタン1個だけでした。でもゲーセン通いは続けていました。Aさんに振られた日もDDR 3rdmixをプレイしてから返ったほど中毒していました。

夏に演劇の地区大会があり、なぜかそこで他高校の1つ上の人と意気投合し、そのまま付き合うこととなり束の間向こう岸に渡ることになりました。仮にBさんとします。私の当時の精神年齢は相当低かったのですがBさんも同じくらい低かったと考えられます。BさんはAさんほど変態ではありませんでしたがやはり変な人でした。プライドが異常に高く、私が間違いを指摘すると話をしなくなります。私は相手に合わせることを覚えました。彼女の言うことに従い自分は耐え忍ぶということを学びました。そして冬になると使い捨てられたように連絡が途絶えました。私は冬が苦手です。Bさんは寮のある大学校に進みましたがその後どうしているか分かりません。

 

一度切ります。このあとは高3~浪人です。

 

次記事


CDレビュー: Oliver Messiaen Complete Edition – Apparition de l’Eglise Eternelle, La Nativite du Seigneur(CD8)

★★★★★

 

8枚目からはオルガンです。メシアンはパリ高等国立音楽院でオルガンも専攻したオルガニストでもありました。教会のパイプオルガン向けの作品ですのでみな神をたたえる曲ばかりです。本CDの収録曲の邦題は「永遠の教会の出現」「主の降誕」です。ものものしいですね。

パイプオルガンと言えば私の年代で馴染みがあるのはFF6のタイトル画面の曲です。この曲、とても好きでした。

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この曲をめちゃんこ豪華にしたのが1曲目の「永遠の教会の出現」です。ぜひ大音量でお楽しみください。

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いや~これ生で聞いたら悶絶するな。荘厳過ぎ。

 

CDの大部分は二曲目の「主の降誕」が占めています。こちらは組曲で、

  1. 聖母とみどり児
  2. 羊飼いたち
  3. 永遠の摂理
  4. 御言葉
  5. 神の御子たち
  6. 天使たち
  7. イエスは苦しみを受けたもう
  8. 東方の三博士
  9. 神はわれわれのうちに

というわかりやすいキリスト誕生の物語になっています。西洋人の神フリークっぷりには毎回頭が下がる思いです。ラスト「神はわれわれのうちに」が一番起承転結がハッキリしていて面白いと思います。

Messiaen – Dieu parmi nous (Organ @ Rouen,France) – YouTube

うまく貼れないのでダイレクトリンクです。

 

残りのオルガン曲もみごとにみなキリスト賛歌ですね。教会で弾くから当たり前っちゃ当たり前ですが。次回も楽しみ。

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


書籍レビュー: 第三の思考!?『自閉症の脳を読み解く―どのように考え、感じているのか』 著:テンプル・グランディン

★★★★★( ✧Д✧)パターン!

 

テンプル・グランディン(1947-)さんの本は初めて読みます。

彼女は最も成功した部類の高機能自閉症者です。動物学博士号持ちの学者さんで、家畜が苦しまないようにという思いで「締め付け機」を開発し、北米の肉牛は彼女が開発した装置で処理されているそうです。この機械にはかなり思い入れがあるようで、本書でもあちこちで断片が登場します。彼女の著書は邦訳本だけでもかなりの数が出版されていますし、映画も出ています。

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この本を読んで彼女のファンになったのでいずれ絶対に見ます。

本書はタイトル通り自閉症を脳科学を中心に語る本ですが、彼女の自伝的な記述や、自閉症の歴史、自閉症者がどのようにして発達していけばよいか、などその話題は多岐に渡ります。

精神分析から脳科学へ

自閉症診断については、ここ数十年で大きな変化がありました。カナーとベッテルハイム(特に後者)が自閉症の権威者であった20世紀中~後期は、自閉症の原因の半分くらいは「親の愛情不足」が原因とされていたそうです。その背後にはなんでも親のせいにしてしまいがちな精神分析論があったようです。ベッテルハイムに至っては親が子供を虐待すると自閉症になるとまで言っていたそうです。

しかし精神分析の大家フロイトは、精神分析はいずれ生物学的分析にとってかわられると予言していたそうです。彼は

「われわれの心理学的な暫定仮説はすべて、いずれは有機的担体という土台の上に基礎づけられるべきであることを、想い出さねばならない」

なんて言ってたそうです。精神分析は科学が進歩するまでの一時しのぎに過ぎないと彼は考えていました。そして、脳科学の発展の現時点での成果が、本書に記されています。

2008~2010年にニューヨーク市コロンビア大学医療センターの機能的MRI研究センターにて、上側頭回(じょうそくとうかい、発話の音を意味のある言語に処理する聴覚系の部位)の機能的MRIスキャンを受け、その活性化を測定しました。その結果、自閉症の被験者15人+対照群12人のうちから、14人を自閉症と判定することに成功したそうです。まだ精度は100%ではありませんが、脳を検査することで自閉症の「バイオマーカー」を見つける技術は、すでに発明されているそうです。

グランディンは典型的な視覚優位の人で、建物を見ただけで設計図を書くことができてしまうそうです。彼女は脳をスキャンした結果、さまざまな領域を繋ぐ白 質錐体路というところの接続が過剰であり、視覚野に繋がる回線の数が多いため視覚記憶が優れている証明されました。しかし過剰はどこかの欠乏とトレードオフです。彼女は左側側室が右側側室よりも50%以上長いため、頭頂葉が圧迫され、作業記憶(ワーキングメモリ)が妨害され、身体の動作や同時に作業をこなすことが苦手だそうです。自閉症患者は大抵の場合脳の大きさがアンバランスであるため、脳の検査によって自分の特性を正確に知ることが期待されます。

自閉症者と感覚処理問題

テンプル・グランディンさんは「予想していない大きい音」が突然聞こえることに弱かったそうです。例えば、いつ割れるか分からない風船。これを読んで、私がRPGをプレイできなかったことと全く同じである、と知り大変驚きました。

そういえば風船は苦手でした。想い出せば他にもあります。私は雷が苦手です。いつ光るか分からないからです。小さい頃は雷が鳴ると必ず布団や座布団を顔にかぶせて目をつむっていました。今は目をつむるほどではありませんがやはり苦手です。

携帯電話の着信音やバイブレーションも苦手です。特に、メールを送信した後、必ず短い時間の間に返信が返ってくることが分かっている場合です。近いうちにおきる、大きな音や皮膚への刺激が嫌なのです。なので私はメールを送信した後、必ず携帯電話を離して置いたり鞄に突っ込んだりします。現在の話です。

出会った人の中には、耳に入ってくる音がだんだん大きくなったり小さくなったりして、接続不良の携帯電話で話しているように聞こえたり、花火の大音響のように聞こ えたりするという人がいた。体育館に行きたくないのは、スコアボードのブザーの音が板だからだという子供もいた。母音しか口に出せない子供もいたが、おそらく子音が聴き取れなかったのだろう。こういう人々のほぼ全員が自閉症で、蓋を開けてみれば、自閉症の人の10人中9人が、1つ、あるいはいくつかの感覚処理問題を抱えている。

残念ながら感覚障害はほとんど研究されておらず、脳のどの部分が関わっているのか、自閉症だとなぜ感覚障害がおきるのかはほとんど研究されていないそうです。しかし、自閉症者に感覚障害、特に視覚や聴覚の過敏、アンバランスが存在することはほぼ間違いないらしく、グランディンは興味深い持論を展開していきます。第四章に詳しく書かれています。

個人的には感覚過敏はとくに精神的に不安定な時期に一層過敏になるという実感があります。ごく小さい頃と、最も危機的だった20代前半にひどく炊飯器から発せられる電子音も我慢できないほどでした。逆に、過敏であることが精神的に不安定さをもたらすのかもしれませんし、研究が待たれるところです。

第三の思考「パターン思考」

もうひとつ面白い仮説がありました。「3種類の思考仮説」です。一般的には、思考は「言語思考」「視覚思考」の2パターンがあると考えられています。言語が左脳、視覚は右脳が担当するということはよく言われますね。グランディンは先に述べたように視覚思考の人間です。しかし彼女は自閉症の研究を続けるうちに、もう一つの思考パターンがあるのではないかと考えました。それは「パターン思考」です。

例えばプログラミング。

シリコンバレーのあるIT関連企業で講演をした後で、どうやってコードを書くのか社員の何人かに尋ねた。プログラムのツリー構造全体を実際に思い浮かべ、それから、頭の中でそれぞれの枝にひたすらコードを打ち込むという返事が返ってきた。パターン思考者だ。

私はプログラマーですが、まさにこの通りです。一度プログラム構造さえ考えついてしまえばあとは単純作業ですので、音楽やら外国語リスニングやら「ながら」で作業することも楽々なのがプログラマーのいいところです。バグが出たときは構造の考え直しですので無理ですけど。

円周率を22514桁暗唱したダニエル・タメットは外国語の習得も得意だったそうです。

タメットは、たとえば、ドイツ語を独学で学んでいる時には、「小さくて丸いものは『Kn』で始まることが多い――Knoblauch(ニンニク)、Knopf(ボタン)、Knospe(つぼみ)――」ことに気づいた。長くて薄いものは「Str」で始まることが多く、たとえばStrand(海浜)、Strasse(道路)、Strahlen(光線)がある。パターンを探していたというのだ。

ドイツ語は私も鋭意勉強中ですので、大いに参考にします。そういえば、私は「試験」が得意でした。いずれ振り返りで書くつもりですが、「試験」というパターンが私に「合って」いたのです。大学入試では明らかに他人よりも少ない時間の学習で簡単に高得点を取ることができ、のめりこみました。ただしそれは今思えば、問題のパターンを覚えていったにすぎず、学問の本質など全く理解していませんでした。ただ闇雲に問題の数を解きさえすれば、本質が分からなくたってテストで点数を取るのはカンタンでした。今思えば、この表層的なパターン抽出への過剰適応が、大学に入った後に矛盾を起こしてしまうことになったのだ、と本書を読んで結論付けることができました。これはまた後日考察と共に詳述するつもりです。

社会スキルも大事だよ!!

グランディンは自閉症の特質をうまく生かせば、活躍の場は開けていると述べます。なんとも希望の持てる内容ですが、そのためには脳の特性を早期に知り、適切な教育を受けることが必要であると言っています。さらに、就労のためには他人とうまくやるスキルは必須ですので「言い訳をしない」「人と仲良くする」「感情をコントロールする」「マナーに気を付ける」などの基本的社会スキルは大事であるとも語ります。きびしいです。でも彼女の意見に耳を傾けることは、自閉症者にとって大きな力となることは間違いありません。他にも大量の興味深い話題がありましたが面白くてあっという間に読めてしまいました、とても面白い一冊でしたので、彼女の他の著書も読んでみたいですね。

 

 

関連書籍

グランディンさんの本

自閉症感覚―かくれた能力を引きだす方法

自閉症感覚―かくれた能力を引きだす方法

  • 作者: テンプルグランディン,Temple Grandin,中尾ゆかり
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2010/04
  • メディア: 単行本
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我、自閉症に生まれて

我、自閉症に生まれて

  • 作者: テンプルグランディン,マーガレット・M.スカリアーノ,Temple Grandin,Margaret M. Scariano,カニングハム久子
  • 出版社/メーカー: 学研
  • 発売日: 1994/03
  • メディア: 単行本
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動物が幸せを感じるとき―新しい動物行動学でわかるアニマル・マインド

動物が幸せを感じるとき―新しい動物行動学でわかるアニマル・マインド

  • 作者: テンプル・グランディン,キャサリン・ジョンソン,中尾ゆかり
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2011/12/21
  • メディア: 単行本
  • 購入: 5人 クリック: 40回
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 数字が得意なタメットさん

ぼくには数字が風景に見える (講談社文庫)

ぼくには数字が風景に見える (講談社文庫)

 

 

本書で紹介されていた、言葉を話さない自閉症少年の話です。読みたいけど和訳が無いので仕方がないから洋書。

How Can I Talk If My Lips Don't Move?: Inside My Autistic Mind

How Can I Talk If My Lips Don’t Move?: Inside My Autistic Mind

 

 

 


CDレビュー: Horowitz In Moscow (DG111 CD24)

★★★★★

DG111シリーズの24枚目です。ウラジミール・ホロヴィッツ(1903-1989)というと名前を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。彼は天才的ピアニストで、定番のユダヤ人です。

彼のアルバムは何度か聞いたことがありますが、ものすごく失礼ながら爆音お笑い系ピアニストだと思っていました。いや本当に笑っちゃうくらい音でかかったんですよ。

このアルバムは1986年の録音ですので、83歳。すげえですねこの年で弾けるなんて。爆音はさすがに鳴りをひそめ瞑想の向こう側と言った音を出してます。でも時々爆発する。すごい。

2~4曲目のモーツァルトのキラキラ曲が妙に情感豊かです。誰にも真似できない表情の付け方。

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後半のダイナミックな曲もいいですが、1曲目のスカルラッティのソナタのような簡素なもいいです。ライブ映像付き。手デカすぎ。

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クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Hilary Hahn(Vn), Bach – Concertos (DG111 CD23)

★★★★☆

DG111シリーズの23枚目です。珍しく比較的最近のアルバムでした。2003年発売。

バイオリニストのヒラリー・ハーン(1979-)さんはドイツ系アメリカ人。ユダヤ人ではありません珍しい。演奏当時は20代前半とかなりの若手ですね。曲は全部バッハです。バッハのアルバムは今仕事中に無限ループしてますので今日まで通った歯医者のBGMがバッハだったりするとそれだけで燃えるくらい好きです。

ハーンさんのバイオリンは上手ですね。氷の上を滑っていくような音を出します。バッハの個人的なことについては全然知らないので想像で書くしかありませんが、彼は神に何百曲もの大量のカンタータをささげるような人間ですのでこれらの曲にも宗教的敬虔さが籠められているはずです。なのでこんな透明に演奏すると熱狂的とか一途さとかそういうことからは離れているように思います。近代都市的清潔さ、環境音楽的に楽しんで聞く分には優れていますが、自分としては、もうちょっと狂ったようなって言うか、パッションがほしいなあ。これはこれでありなんだけれども。

 

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やっぱ曲から受けた印象通り、雪の女王って感じでしたね。

 

 

 

ドイッチェグラモフォンのベスト盤であるこのボックス、2009年に出たものなのですが今年の12月に再販されるされるみたいですよ。

111 the Collector's Edition

111 the Collector’s Edition

 

ボックスセットは良いです。1枚当たりの単価が安いしいつまでも聞き続けられます。今のペースだと5年くらい聞けるんじゃなかろか。このシリーズ、当ブログで1枚目からずっと取り上げていますがおおむね好評価です。

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Ametsub – All Is Silence (2012)

★★★★★◖ฺ|´⌣`*|◗·˳♪⁎˚♫

 

Ametsubさんの最新作です。これまでの特徴である斬新な繰り返し+切ない音場という要素を極限まで洗練させ、自然音などのサンプリング音を多用するようになってさらに北の果てまでぶっ飛んで行った感のあるアルバムです。音のセンスが良すぎる。壊れやすそうなのに大胆です。

おすすめは3曲目Blotted Out。曲調はどんどん移り変わっていきますが中盤~ラストにかけてキンキンに冷やされること間違いなしです。

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10曲目Over 6633も好きです。自然音(風?)が大幅に取り入れられた実験的な、迫力のある曲です。

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また新譜出してほしいですね。楽しみです。

 

 

さて日本人アーティストのストックが切れたので、次はこのシリーズをさかのぼって聞いていこうと思います。わたしは邦楽を知らなさすぎるので、日本語のものも聞いていきたくなりました。90年代以降?しりません

青春歌年鑑 1990

青春歌年鑑 1990

  • アーティスト: オムニバス,JITTERIN’JINN,久保田利伸,JUN SKY WALKER(S),チェッカーズ,高野寛,UNICORN,B.B.クィーンズ,米米CLUB,たま,PRINCESS PRINCESS
  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2000/11/22
  • メディア: CD
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このシリーズ、昭和1桁まであります。すごいです。

 

 

電子音楽の他のCDレビューはこちらです。


書籍レビュー: 野菜を食うか、食わないか。。『栄養素の通になる―食品成分最新ガイド』 著:上西一弘

★★★★☆

読みやすいが公平性に過ぎるか

新生活を始めるにあたってどうしても調べておかなければいけないのが栄養素。いままで家族に任せきりでしたので、一人になるにあたって意地でも不足させたくない要素の1つです。

少し前にこれを読みました。上の本は栄養素だけでなく加齢や乳幼児、病気のことなど幅広いトピックが紹介されており、栄養素も詳しかったので、栄養素の機能としては、本書からはこれと言った新しい知見をほとんど得ることができませんでした。

絵入りで読みやすいのですが、全栄養素についてほぼ等しくページ数を割いているため、情報の過不足があります。ミネラルの紹介のほとんどが「多くの食物に含まれており欠乏はほとんどない」ということで、ページ数を浪費しているように見えます。三大栄養素にもう少しページ数を割いてほしいです。

本書を読んでも食事は玄米+大豆のコンボを中心とすることに変更なさそうなのですが、一番気になっていた、玄米や大豆に含まれるフィチン酸は「鉄の吸収を阻害することが知られていますが、体に良い働きもあるのであまり気にしない方がよいでしょう」「亜鉛は日本の食事で欠乏することはなく・・・考えられるのは・・・穀物や豆類に多いフィチン酸・・・は亜鉛の吸収を妨げる」と気にしなくていいのかするべきなのか分からない記述にとどまりました。亜鉛は全粒穀物、大豆自体にもそこそこ含まれてますので、あまり気にしないでよいかもしれません。

役に立つのは各種栄養分が多い食品をリストしてくれていることです。もうすこしバラエティが欲しいところですが、イラスト入りでは仕方ないでしょう。

貧乏生活に供えていっそ大豆と玄米と少量の野菜だけにするか?とも考えましたが、本書を読んで考えなおしました。大豆に多いn-6系脂肪酸が悪玉コレステロール(LDL)だけでなく善玉コレステロール(HDL)も減少させてしまうことがわかりましたので、脂肪分の補給の必要があります。リスクヘッジのために、乳+卵も摂っておいた方がよさそうです。概算で月+1000円の出費となりますが仕方ないですね。

ビタミンで不足しそうなのは予想通りA、B12、C、そして意外にもB2でした。Aはニンジン又は葉物野菜必須、Cはジャガイモ+ピーマンでいきましょう。本書によると果物の含有量が割と少ないです。ただし、これらは調理なしで食べられるため吸収率が良いということなのでしょう。でも果物は高いので泣く泣くカットします。B12は毎日味噌汁を作る予定ですので、これに煮干しを入れてカバー。煮干5gで1日の必要量を摂取できます。あと海苔。B2は少ないと口内炎になるそうです。私は口内炎は小さい頃しょっちゅう苦しめられてきました。含有量が多いのは乳・卵ですのでやはり外せません。

 

データを補完しながら読む必要がありましたが、これでおおざっぱな食事計画を立てることができました。全粒系穀物はビタミンB群とミネラルに富んでいて助かります。

 

 

関連書籍

巻末で紹介されている中で欲しいものをリストしました。

 

原典。やっぱいりますかねこれ。

日本食品標準成分表〈2010〉

日本食品標準成分表〈2010〉

  • 作者: 文部科学省科学技術学術審議会資源調査分科会
  • 出版社/メーカー: 全国官報販売協同組合
  • 発売日: 2010/12
  • メディア: 単行本
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 いずれ買います。

イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版 (Lange Textbook シリーズ)

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サプリメントも検討しています。バカみたいに安いから。ビタミンA、Cなんか激安です。野菜抜きにして人体実験したい欲望もあります。

サプリメント栄養管理―Nutrition Care with Supplements

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例えば、ビタミンA2500日分 1899円 一粒で10日分 0.76円/日

 

 ビタミンC10000日分 1680円 0.17円/日

【1kg】高品質ビタミンC粉末100%(L-アスコルビン酸)(計量スプーン付)

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両方足して1日1円に満たないですね。さすがに腐りそうですけど。どうしよう野菜やめようかな


書籍レビュー: 変身!『ギリシア神話』 訳・編:石井桃子

★★★★★

ここで関連書籍として紹介した「ギリシア神話」です。石井桃子さんは2008年に亡くなった有名な児童文学者・翻訳家です。101歳まで生きてます。

原著はイギリス・アメリカの子供向けギリシア神話本です。

Favorite Greek Myths

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すげーなamazonに在庫あるのか

 

つまり、二重翻訳ということになります。しかし石井さんは文学者の重鎮ですので日本語に全く乱れがありませんさすが。小学校高学年がターゲットとのことですので一気に読めます。

岩波ジュニアの方で解説されていた、頭から誰を生んだだの吐き気がしそうな神々の誕生秘話は根こそぎカットされ、種々の神々や英雄を主人公とした短いお話がてんこ盛りです。富山妙子さんによる必ず横向いてるのが特徴なギリシャ風の挿絵もとてもいい雰囲気を出しています。

ギリシア神話はいわゆる「むかしばなし」ですのでよくある典型的なクエストものの話が多いです。例えば勇敢なヘラクレスを妬んだエウリュステウス王がヘラクレスに12の無理難題を言い渡し、ヘラクレスがあちこちバケモノ退治をして歩く話なんかまんまドラクエとか、ジョジョ第三部みたいな構成です。女神アプロディテの怒りをかったプシュケがあれ取ってこいそれ取ってこいといくつもの難しい仕事を押し付けられるのも、珍しい贈り物を次々と要求するかぐや姫的です。嫉妬、傲慢、勇気、不条理、昔話には物語のテンプレがつまっているようです。

いちばん印象に残った話はエコーとナルキッソスの話です。

エコーはおしゃべり好きなニンフ(女妖精)で、口が滑ってゼウスの妃である女神ヘラに失礼なことを言ってしまいました(何て言ったのか気になる)。ヘラは怒り、エコーを他人が喋った言葉の最後を繰り返すことしかできないようにしてしまいました。エコーはかなしくなって森の奥に姿を隠しました。

あるとき森の中にイケメン・ナルキッソスが現れました。エコーはドキリンコ。この後の物語を石井桃子役でお楽しみください。

ある日、ナルキッソスは、森の中で、友だちとはぐれてしまいました。耳をすますと、木のあいだで、なにかサラサラという音がします。

「だれだ、そこにいるのは?」

と、ナルキッソスがさけびました。

「そこにいるのは?」

と、エコーがこたえました。

「わたしは、こっちだ。おいでよ。こっちへ来る?」

と、ナルキッソスがいいました。

「こっちへ来る?」

と、エコーはこたえました。

そして、エコーは、木のかげからそっと出ていきました。ナルキッソスは、出てきたのが、友だちではなくて、知らないニンフだとわかると、びっくりして、いそいでにげだしました。

エコーは、それからというもの、出あるくことも、人にすがたを見せることも、二度としないようになりました。そして、かなしみのために、からだがだんだんやせほそって、消えてなくなり、とうとう、声だけになってしまいました。

うそーん。

かなしすぎ。

こうしてエコーは英語のechoと同じ存在、山びこになってしまったということだそうです。

さらにこの後、ダブルパンチでナルキッソスの話が続きます。ナルキッソスはナルシスト野郎の語源の通り水面に写った自分の顔に惚れる野郎ですが、実はこれ彼のもともとの性質ではありませんでした。かわいそうなエコーから逃げてしまったことに対して他のニンフ達が腹を立て、復讐の女神に訴えて、ナルキッソスに罰を与えたのです。ナルキッソスには、池に写る自分の姿が、一度も見たことが無いような美しいニンフの姿に見えるようになってしまったのです。

「美しい水のニンフさん、どうか、へんじをしてください。」

ナルキッソスは、たのみました。けれども、水のなかの顔は、けっしてナルキッソスにこたえませんでした。いつかのエコーとおなじように、ナルキッソスの心も、はじめてかなしむことを知りました。あんなに美しかったナルキッソスは、やがて、やせて、あおざめ、見るかげもなくなりました。

エコーの友だちのニンフたちは、それを見ると、ナルキッソスがかわいそうになって、

「女神さま、どうか、あの若者を、もう、ゆるしてやってくださいまし。」

と、また、おねがいしました。

このねがいは、ききいれられました。銀のようにきよらかな池のそばに、ある朝、一りんの花が咲いていました。かなしみにやせほそったナルキッソスは、消えてしまったのです。そして、美しいキズイセンの花になったのでした。

ええー。また悲しみによる変身+喪失。これを読んだときの寂寥感と言ったらなかったですよ。マジで悲しい。現代ドラマやら小説やらではやたらに人を殺して喪失感を演出するわけですが、ここに古代ならではの変身をぶちこまれると喪失にいろどりが加えられて一層引き立ち、心をしめ殺しにかかられます。現代で変身と言って思いつくのはFF4で石になって主人公たちを助けたパロム・ポロムくらいですかね。つってもこいつら復活するしありがたみが全然ないですね。類する話が思いつかない。。

 

他にもホメロス二部作「イリアス」「オデュッセイア」の読みやすい要約版も入っておりこれ1冊で生きたギリシア神話を概観することができます。おすすめの一冊。こども向けではあるものの私がこの本を借りたら出版から8年経っているというのにめちゃんこ綺麗でした。紐しおりも初期状態。つまり誰も読んでいない。これ、全国各地の図書館でホコリを被っているだけの本だと思います。皆さんどうぞ借りてあげてください。そうすれば、この本の中で生きている神々も大喜びすることと思います。

 

 

 

関連書籍

つぎは原著を読もう。

イリアス〈上〉 (岩波文庫)

イリアス〈上〉 (岩波文庫)

 

 

オデュッセイアは彼の10年にわたる帰国譚ですが、これもジョジョ第三部的に次々現れる敵スタンドを倒していく話でした。DIOは自国民です。

ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)

ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)