今回のロック枠ではイングランド出身のドゥーム・メタルバンド、エレクトリック・ウィザードのアルバムを順に聴いていきます。ドゥームとは「遅くて重い」ぐらいの意味で解釈しています。1993年結成、現時点でアルバムを10枚発表しています。2014年発表の”Time To Die”が最新作品です。以前”Black Mass”という曲を聴く機会があり、こいつらやばいんじゃねと記憶していたので聞いてみることにしました。
遅い重いだるい、内臓に物を詰め込む音楽
1枚目の1曲目Stone Magnetからもうダウナー炸裂です。イギリス的ロックを踏みつけた上に墨を塗りたくったようなこのバンドを選んだのは間違いではなかったと確信しました。後半もともと気怠いのにさらにテンポを落として仕事も何もかも嫌んなっちゃうような雰囲気に突入します。歌詞も”No hope, no future, no fuckin’ job, yeah”と今書いた気持ちそのまんまでしたビックリ
Higher and higher, through the cosmos we had tripped Seeing stars turned inside out, we thought our minds had flipped Colors swirling, sounds are drifting, thinking we were dead The wizard turned and spoke to us and, this is what he said
何がいいって1曲も妥協が無いところです。4、7曲目はバラード要素が入っているものの決して軟派じゃないしきっちりぶっ飛ばしてます。特に7曲目The Unforgiven III は、Unforgivenシリーズは好きじゃないのになんでまた第三弾なんか作ったのかねバカねーと思ったら後半が全然別物になっていていい意味で裏切られました。
インストのレベルが前作よりも飛躍的に上がりました。特に先頭の1,3,4曲目に関しては非常にレベルが高い。1曲目Deephoundsは得意の音圧ゴリ押しの成功例。3曲目The Tower and The Snakeはリズム隊も私好みに爆裂しており本アルバム中で最も好きです。4曲目Soulsも小刻みなイントロがワクワクさせてくれる上にゲストのJamie Blakeさんの超透明な歌声がカンフル剤となり楽曲に華を添えます。
やはり心に残る曲は少ないです。1曲目Fuelでは「イエッヘー」なんて言っちゃって今回もちょっとはじけ過ぎです。5枚目Metallicaで見せたスローの中にも硬派魂の見える作風はどこに行ってしまったのか、気が抜けてダルいだけのナンバーが延々と続きます。このだるさも7曲目Carpe Diem Babyくらい弛緩していればそれなりに聴けますが、残念ながら中途半端な曲が多いですね。
1曲だけ良い曲がありました。9曲目Where The Wild Things Areです。「かいじゅうたちのいるところ」とは関係ないようです。他の曲が凡庸なメタルとポップの中間くらいの領域から出ないのに比べて、この曲はかなり浮いています。ダルダルをそのまんま幻想的かつ退廃的な水準までパラメーターを振り切った名曲ではないでしょうか。シングルカットもされないマイナーな曲のようですが何故でしょう?
他にも3曲目My Own Worst Enemy、4曲目Monkeys、5曲目Insomniaの後半もゴリ押し系です。7曲目Walking Like A Manの後半のリバーブ歪みかけ過ぎ押せ押せゾーンも嫌いじゃありません。10曲目Notes Of Remembranceも同様に歪ませ過ぎゾーンがありますね。ヘッドホンで聞く分には良い音響効果を出しています。
このアルバムから出たシングルは、いくつか聞き覚えがありました。昔、小学生のときにCATVで見ていたビデオクリップを流す番組に、Mama SaidやKing Nothing、Until it Sleepsが流れていました。これを聴いて懐かしい気持ちがしました。でも、でもダサいよう。。それもワクワクしない意味でださいよう。懐かし恥ずかしいすごく複雑な気持ちです。
5曲目Daten、8曲目The Flareはリズム隊が一風変わっていて楽しめます。11曲目Twisted Maple Treesも悪くありませんが展開が5、8と同じギタードラムの音量上げ過ぎのごり押しで胸に強引に音を乗せまくる展開でやはりワンパターンかなぁ。こう書くと金縛りみたいですね。夜目が覚めると体が動かない、胸の上に幽霊が、、ってやつ。
まず1曲目Enter Sandmanで感じた第一印象は「彼らも大人になったんだなぁ」ということでした。過去最大級の骨太サウンドに、安定感を増したジェームスのヴォーカルが印象的です。ロックとは伝統的に反体制かつ中二病的なものですが、この曲からはロールプレイとして中二病を楽しんで演じているような雰囲気が感じ取れます。前作から精神的に大きく成長したのだと思います。3曲目Holier Than Thouでも同じことを感じました。
当アルバムはいわゆるハイスピードでぶっ飛ばすスラッシュ的な曲はありません。4,8曲目のような軟派なバラード曲もあります(8はちょっと気に入りません)が、あとは全て硬派なスローで重めの曲で占められており、全てクオリティが高い。特に7曲目Through The Never, 12曲目The Struggle Withinは重さが最高潮に達しており独特の爽快感が味わえます。