★★★★★
全然ジャズじゃなかったけど素晴らしいアルバムです。ほとんどがブルースやらカントリーやらアメリカ南部の香りのする曲で占められていて、で、それがこのニーナ・シモン(シモーヌ?)さんのスケールのデカ過ぎる声によって唯一の他に類のないような曲になってます。例によってライブ盤もスタジオ録音も新旧さまざまごったまぜですが全曲名曲。
このシリーズも次で最後ですねぇ。60枚目はベスト盤なので、飛ばします。
<ジャズ>
Verve Jazz Masters 57 – George Shearing
★★★★☆
イギリス生まれのピアニスト、最近まで生きていたジョージ・シアリングさん。基本的にはピアノ・ビブラフォン・ベース・ドラムのカルテットビブラフォンが入っているととてもかわいらしいサウンドになっていいですよね。1曲目Pick Yourself Upはギター入りで、アップテンポなのに超可愛い。5曲目Manbo Innはミニチュア世界にでももぐりこんでしまったようでももも萌えです。一番の聞き所は8曲目Summertime。何故かピアノがあまり目立ってないこのアルバムの中で異彩を放ちます。有名曲だけれどあまり他のアレンジでは聞かない、切なさを凝縮させまくったアレンジ・演奏になっていて心を締め付けます。全体を通して音はよくないけれど、音質なんて二の次で、魂を感じられれば十分。リンク先のレビュアーに言われるまで音質のことはまったく気にしてなかった。
Paul Bley – The Nearness Of You(1989)
★★★★☆
ジャズピアニスト、ポール・ブレイの標準的なピアノトリオのアルバム。スタンダードナンバー中心の楽曲でありながら、時々かなりぶっ飛んだ表現がチラチラ覗く。全体を通してブレイさんはずっと歌ってます。ノリノリだ。まず1曲目This Can’t Be Loveはふつーーに始まるもののピアノが時々とんでもないフレーズを自然に混ぜてくる、後半の4小節ごとのドラムソロパートでは弾けまくりでかっちょいい。このドラムの人はBilly Hartというらしい。不思議なドラムだ。静かに目立たないながら実はとんでもない技巧と切なさをミックスしてるように聞こえる。ラストはなんじゃこりゃーという終わり方。2曲目表題曲The Nearness Of Youも静かなんだか激しいんだかわからない。6曲目Lullaby Of Birdlandは超有名曲なんだけれどメインテーマからの脱線振りがすごく、またやっぱり静かなのに激しい不思議なドラムに心奪われる。ラストTake the A-Trainもやはり有名曲だけどなんだこの冒頭は!!!爆笑してしまった。やりすぎ!40秒目くらいから何事もなかったかのように路線に乗っかってまた激しく脱線していくのが面白い。あくまでスタンダードの枠の中に留まりつつも実は全員が好き勝手に暴れまわっているという不思議な調和のアルバムだった。ドラム燃え燃え。
Verve Jazz Masters 56 : Herbie Mann
★★★★★(^^)
ジャズフルート奏者ハービー・マンを特集したアルバム。ジャケットはタモリみたいですが彼は生粋のアメリカン、ブルックリン生まれのユダヤ系です。ジャズにフルートなんて合わないんじゃないかと思ったらこれが合うんです。クラシックにおける音色とも異なり、インプロも高速フレーズもこなし、フルートという楽器の限界に挑戦しているかのようなサウンドです。
が、このアルバムで特筆するべきは打楽器類のバリエーションの多さ、そして萌え萌えのカリブ系アフロ系ビート。このアルバムで、私はパーカッション萌え、リズム萌えであることがよーーくわかりました。世の中にはミカサの腹筋萌え、廃墟萌え、工場の夜景萌え、100メガショックネオジオ萌え、0系ひかりの丸いボンネット萌えなどさまざまな萌えがありますが、私は打楽器萌えです。
1曲目St.Louis Blues がオードソックスなジャズだったので油断しましたが2曲目Baiaのボサノバビートに始まりほぼ最後まで変わった打楽器ばかり登場します。コンガボンゴが多いですね。3曲目Evolution of Mannや5曲目The peanut Vendorのチャカポコぶりにニヤニヤしたあと、8曲目Todos Locosで悶絶しました。萌え死ぬ。キューバンアフロにフルートとビブラフォンがこんなに合うとは知らなかった。これはお菓子ですね。コンペイトウみたいな曲。こちらで聞けます。9曲目Cuba Patato Chipもそのままアフロな曲でこちらもキューティーももも萌え。11曲目The Amazon Riverもたまりません。チャカポコチャカポコ。12曲目Caravanはスタンダードなナンバーですが彼にかかれば信じられないような民族色溢れたナンバーに変化します。これはすごい。
現時点今年最高の1枚。Herbie Mannの名前をよく覚えておこう。
Verve Jazz Masters 55 : Harry James
CDレビュー: Stéphane Kerecki Quartet – Nouvelle Vague (2014)
ジャケ買い。音楽の内容は全く見ずに、この構図にひかれてしまった。買ってみるとジョン・テイラーさんがいたりそれなりに有名なカルテットのようだ。Nouvelle Vague というのは1950-60年代くらいのフランス映画で、このアルバムは映画音楽のジャズアレンジ、ということらしい。バンドリーダーのステファン・ケレクキさんはウッドベース担当で、かなり渋い音を聞かせてくれる。
1曲目Charlie Et Lenaはインプロが激しくわけわかめ状態だが、2曲目以降は全員が異様なくらい透き通った音を聞かせてくれて、ちょっと怖いくらいだ。オーボエのようなソプラノサックスの歌い上げがせつなく、上手に歌ってるんだけれど全く前面に出ないドラム、時々いることに気付くくらい目立たないが全体をバッチリまとめてるピアノ、ベース。この均衡が時々崩れ、そこでドキッとさせてくれる。
まず最初の山が3曲目Ferdinand。原曲の出典pierrot le fou「気狂いピエロ」はハンターハンターに念能力名で出てきた。映画のタイトルだったのね。聞いていると落ち込む。死にたくなる。映画は見たことないけど間違いなく鬱になる作品だろう。さらに4曲目La Chanson De Maxenceも序盤がダメージ高い。歌声と演奏とどちらも透明すぎる。
10曲目はなんとベートーヴェン交響曲第7番第2楽章のアレンジ。映画「王様のスピーチ」の見せ場でかかる曲なので記憶にある人も多いのでは。この曲の後半の展開部もすばらしい。
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CDレビュー: Verve Jazz Masters 54 : Woody Herman (1996)
ビッグバンドのリーダーにしてクラリネット&サクソフォン奏者のウディ・ハーマン特集。ジャケットではクラリネットを吹いてるけどCD内はサックスが主で、クラリネットはあまり出てこない。ビッグバンドにクラリネットはよく合う。高田馬場に仕事で通っていたとき、よくパチンコの宣伝をしているチンドン屋のクラリネット奏者が非常に上手だったこと、なんかを思い出した。
バンドにみなぎるエネルギーの量が尋常じゃない。どの曲もスピーカーやイヤホンが熱暴走しそうだ。ハーマンさんの音は癖が少なく落ち着いていて、ソロパートは常にぶっ飛ばし気味の演奏の中の一つの清涼剤となっているようだ。実際、バンド内のトランペットやトロンボーンのソロはアクが強く、こいつらをまとめるのは大変なことだろうなと思う。
例にもれずごった煮の曲順だがライブ音源が非常に多い。どの曲もよいが、特におすすめするのは、冒頭のベースがカッコよくラストが一風変わった3曲目Camel Walk、超高速で初めから最後まで心臓なりっぱなしの7曲目Caldonia、モダンジャズと上手に融合したラスト13曲目Dear John C。ビッグバンドジャズの超優良アルバムとして自信を持って薦められる1枚だ。
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CDレビュー: Verve Jazz Masters 53 : Stan Getz – Bossa Nova –
サックス奏者スタンゲッツ。他の奏者とは明らかに違った音が出ています。ワイルドなブヒブヒ音を立てることは全くしません。静かでハスキー、それでいてスケールの大きな音を出します。音が小さいわけではなく、息を大量に使って音を出しているらしいです。彼の音の出し方はおそらく天才肌に属するでしょう。そしてジャズメンの常、麻薬常習の強化人間です。最強。後年は麻薬はやめてアル中になったそうです。それじゃ一緒じゃん。
このアルバムは彼の大好きな?ボサノヴァだらけのCDとなっていて、最初から最後までダルダルのデレデレです。相変わらず突然ライブ音源が入ったりとごたまぜの構成です。6曲目Samba De Uma Nota So、14曲目Samba Tristeあたりはボサノヴァに他の要素を混ぜたような曲で変わっていておすすめですが、極めつけはラストのThe Girl From Ipanemaでしょう。アルバム中何曲かサックスを吹かずに歌ってることがありますが、この曲はライブということもあってか歌がぶっ飛んでます。声が澄み切ってるというか、普通の意味の澄んでいるのとはまた違った、自我が没入していてそこの世界に強制的に引きずられていくような、要はイッちゃってる、ということなのですが、ちょっと怖いです。
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CDレビュー: Enrico Pieranunzi – Stories(2014)
★★★★★
最近のものも聞いてみたいので、モダンジャズから1枚。ピアノ・ベース・ドラムのスタンダードなトリオ。エンリコ・ピエラヌンツィさんのアルバムは、初めて聞いた。1949年生まれだからもう御年65歳、それでいてこの情感あふれる美しく熱のこもった演奏ができるなんて。こんな老人になりたい。
1曲目No Improper Useは、いきなりロックの香りが感じられるしかし曲調のコロコロ変化する流れの速い川のような曲。
この変化の具合が絶妙で、ある小節を境にぱっと変化するのではなく、数小節かけてじわじわと変化していく。スティーブ・ライヒのフェーズ・シフトを思わせるような漸次的な変わり方で、印象に残った。この変わり方は後のWhich Way Is UpやFlowering Stonesでも使われている。
2曲目Detras Mas Allaはラテンの魂を帯びたエネルギーにあふれた曲。3人とも全力出し切ってるのではないか。
4曲目The Slow Geneは静かな曲ながらドラムがすごい。静かなのにこれでもかというくらい叩いていて、かつ3人の和を乱さない。主張しすぎない。ドラムはこのアルバム全体を通して手数が非常に多い。動の曲でも静での曲も数も音色も多く、かつ正確だ。それでいて魂も込められており、所々ドキッとさせるリフを叩いてくる。Antonio Sanchezという人らしい。この人もチェックしておかなければ。
一番の山が7曲目Flowering Stones。静かで妖しく始まり、中盤以降はテーマを保持しつつ盛り上がっていく、最も好みの構成の曲です。
非の打ちどころのない素晴らしい演奏でした。
Cam Jazzのサイトでアルバム全体を試聴できます。太っ腹だなぁ。
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CDレビュー: Verve Jazz Masters 52 : Maynard Ferguson
★★★★☆
トランぺッター、メイナード・ファーガソンのごたまぜアルバム。新しい曲から古い曲まで。甲子園から見える青空のように明るい、明るくて眩しい音です。情緒や苦悩、気だるさといったものは全くありません。元気ですかーっ!
余裕があるときに聞くと頭を射抜かれたように心地いいですが、疲れたときに聞くと、うるさい勘弁してくれと思わせてしまう諸刃の剣です。
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