CDレビュー: ai kuwabara trio propject – Love Theme(2015)

★★★★★

桑原あいさんは1991年生まれ、ヤマハエレクトーンのコースから中学校時にピアノに転向、洗足のジャズピアノ専攻からデビュー。顔が地味。このアルバムは4枚目だそうだ。

 

 

ジャズの他のCDレビューはこちらです。


Anthony Braxton – Composition No.173 (1994)

★★★★★✌(‘ω’✌ )三✌(‘ω’)✌三( ✌’ω’)✌

Amazon.co.jp: Anthony Braxton : Complete Remastered Recordings – 音楽

このボックスもとうとう8枚目。散々訳わからん曲を聴かされたが最後の最後でとんでもないアルバムが収録されていた。ダントツの最高傑作だ。

ジャケットもやばいが内容もやばい。主な構成は、BGMに即興の演奏のかけらみたいなものを流しつつ、4人がドライブしながら様々な「音」についての議論を繰り広げ、「そうそう、XXXXXXXXYYZZZ××ーーー、こういう音!」と誰も思いつかないような擬音語(英語)を交えて力説する。力説中はオーボエやサックスのソロが擬音に合わせて「音」を表現する。これがイントロとアウトロを除く30分以上に渡って続く。ドナウエッシンゲン音楽祭もびっくりな超前衛的体験だった。擬音に合わせて吹けるソロアーティストもすごいが、4人の演技力もすさまじい。そして演奏者をよく見てみるとAnthony Braxton氏は演奏していない。。なんと conductor、って指揮者かよ!この内容で指揮者いるんだ!!二重に衝撃を受けた。

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本番は16分以降。


Joe Pass – Virtuoso (1973)

★★★★★

ジョー・パスはアメリカのジャズギタリスト。録音がいいのか彼の演奏が上手だからなのか、目の前に演奏者がいるような迫力のある音がする。ギターの細かいことは知らないが1曲目のNight And Dayでぶったまげた。ギターってこんないい音したっけ!?一人しか弾いてないのにどんどん引き込まれていく。5曲目How High The Moonもいい。弦を弾く音が耳にペチペチ当たるのが心地よく、これが中毒性を増すのではと感じた。心の底から楽しんでくる様子がこっちまで伝わってくるので聴いていて楽しい。おすすめです。


Anthony Braxton With The Northwest Creative Orchestra – Eugene (1989)

★★★★★

即興演奏サックス奏者アンソニー・ブラクストンのボックス

Amazon.co.jp: Anthony Braxton : Complete Remastered Recordings
の7枚目で、8曲79分にわたるライブ版。どの曲も “Composition No. 112” のように意味のないタイトルが付けられていて、見た目は情緒が全くないように思える。またブカブカ訳わからんインプロが続くのかと思ったら、3曲目で衝撃を受けた。単純な拍子のベースが1本入っただけで、突然ストーリー性が附加されたのだ。曲全体に1つの筋が通り、一見目茶目茶なようで分かりやすくなる、不思議な体験をした。

ここから考えると、曲の体をなしていないようなインプロ曲は、てめーが聴きながらバックグラウンドを想像しろ、音が発せられるコンテキストは自分で考えるんだ、というメッセージなのではないかと思った。奏者にも創造力が求められるが、リスナーにも想像力が求められる。通りで聞くのが苦しいと思ったよ。

同様の体験は7曲目でも起きた。こちらはドラムが恒常的にリズムを刻んでいるため、そこから我々に蓄積されたドラム体験が喚起され、曲のイメージを大幅に膨らませてくれる。なので他と比べて聴くのがとても楽だった。

普通の曲とインプロ曲の関係は、漫画と小説の関係に似ている。漫画は視覚イメージを絵に固定する。この人物はこういう顔、この場面ではあんな表情、、そのため我々に残されている想像力の余地が少ない。一方、小説には視覚イメージが用意されていない。そこに書いてあるのは概念の集合体で、具体的なイメージは全くない(ラノベは除く)。そのため我々の想像力を使わなければ読むことが不可能である。同様に、普通の曲はコードもメロディーもサビも、歌なら歌詞も用意されている。視覚的イメージはないが聴覚的イメージはすべて用意されている。しかしインプロ曲はこれらがほとんど欠けている。我々のいままでの音楽体験を総動員して、想像力で音の背景、意味、これらを補完して聴かなければならない、ということが分かった1枚だった。ありがとうブラクストンさん。


Shelly Manne & His Friends – My Fair Lady (1956)

 ★★★★★ヽ(•̀ω•́ )ゝ✧

アメリカっぽさが臓に染み渡るようなアルバム。映画は見たことないけれど、1曲目のウォーキングベースとドラムのノリっぷりを聞けば誰もが上機嫌になれるはず。7曲目With A Little Bit Of Luckは泣けるピアノ大炸裂だし、ラストの I Could Have Danced All Nightも燃えること間違いなしの優れたナンバー。クラシックな堅苦しさは全くなく、幅広いリスナーを獲得できしかも演奏が優れているというすごい1枚。レコード時代のものだから仕方ないが、もっと長く収録してほしいなぁ。


Dizzy Gillespie, Charlie Parker and other – Concert in Toronto (2010)


★★★★☆
Amazon.com: The Quintet: Jazz At Massey Hall (OJC): Music
↑の完全版。ライブ版で音がとてつもなく悪いのが欠点。巨匠が5人も揃っているが個人的には↑に収録されている6曲が終わった後、サックスとトランペットが抜けてトリオでの演奏となるEmbraceable You、Sure Thingがすごく好き。ピアノがこの上なく生き生きしている。マックス・ローチの爆裂ドラムソロ、ラストBass-Ically Speakingのベースプレイも悪い録音を補って余りある演奏。


Anthony Braxton – Six Monk’s Compositions (1987)


★★★★★
相変わらずインプロでピロピロしまくってるけれど、このアルバムはベース、ピアノ、ドラムとフルで稼働しているため、彼のピロピロがうまく吸収され、絶妙な味付けに昇華されている。ラーメンで例えると、もやしがタワーになっていて見た目迫力があるけれど、麺とスープが正統派の味付けであるために全体として美味しいラーメンである、という感じだ。Four In Oneが一番の当たり曲。


Kenny Dorham – Quiet Kenny(1959)


★★★★★
1曲目のイントロがすごい!!ベースのPaul Chambersさんの技が光る、かっちょいいーー。イメージとしては、川崎の港沿いのうらびれたスナック街。いい意味で気が抜けているトランペットの音のせいだ。続く2曲目My Idealも悶絶するほどあったかい名曲。派手でも奇抜でもないが、何度も繰り返し聞きたい1枚。


Anthony Braxton – Six Compositions (1984)


★★★★★
強烈インプロ管楽器吹き、アンソニー・ブラクストン。ボックスの3枚目もはっちゃけていて、特にピアノの練習のようなスケールに乗せてめちゃくちゃする1曲目の印象が強い。3曲目もテンポの激しい振りが効いていて、演奏が大変だがみな楽しんでやっているようだ。彼はクラリネット、サックスが主な使用楽器だが4曲目はなんとフルートを吹いている。wikiによるとピアノもできるらしい。5曲目は一聴するとクラリネットソナタなのか?と思わせる抒情を見せる、でも崩れてる。これほどまでに曲に意味がなくかつ演奏が楽しいアルバムって珍しいよな。
ここで視聴できます。3枚目。