CDレビュー: Paul Motian Quintet – Misterioso (1987)

★★★★★

ドラマーPaul MotianのComplete Remasteredシリーズ、3枚目です。

ぼやぼやフリーダム

1曲目Misteriosoのインパクトがまたも強いです。ぼんやりぼやぼやしているようで何か狂っています。2曲目Abacusも気持ち悪い。ボックス2枚目のJack Of Clubsにも参加していたビル・フリーセルが演奏する、亡霊のように宙に浮いている形容しがたいギターが冴えています。と思えば4曲目Gang Of Fiveのような純粋にかっこいい曲もあるし、一体何を考えているのかわからない人たちです。

10曲目Danceが最もフリーダムかつ強烈で、中央に浮かぶギターのせいでわけわからなさが大幅に増しています。中盤のベース→ドラムソロゾーンは必聴。うーんかっちょいい。

 

ライブ版のMisteriosoです。ベースが無く本CDよりもほのぼの感が漂ってます。


Paul Motian Trio ~ Misterioso – YouTube

 

 

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CDレビュー: Ray Bryant – Ray Bryant Trio (1957)

★★★☆☆

ジャズの100枚。シリーズもようやく20枚目となりました。レイ・ブライアント(1931-2011)はアメリカのジャズピアニスト・作曲家です。ジャズメンとしては珍しく長生きですね。

良くも悪くもクセのない演奏

バラードからアップテンポ、ピアノソロと一通りそろったアルバムです。彼のピアノは流麗で癖が少なく、かすかな哀愁を漂わせつつタバコの煙のように流れていって、あまり後に残りません。

そう、印象が薄いんですね!どういう感想を書こうかとても迷うアルバムでした。Djangoは好きな曲なんですがあまりにもスタンダードすぎて、安心して聴けるんだけどそれ以上のものではないのです。

聞き流すのには最適かもしれませんが、私はまだ耳が成熟していないので、もっと創造的な演奏を期待してしまいます。。

 

 

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CDレビュー: Paul Motian – Jack Of Clubs(1985)

★★★★★

ジャズドラマーPaul MotianのComplete Remasteredシリーズの2枚目です。

ピアノなしで自由度の高い作品、ギターが独自の世界を作る

1曲目Jack Of Clubsからいきなりフリーダム!モチアンさんはこの手の曲を好むのでしょうか。ドラマーにしては珍しく、2作連続で自分自身があまり目立たない演奏です。サックスが2本好き勝手に吹いています。真ん中にビル・フリセールのエレキギターが入り、不思議な空間を作ります。

2曲目Cathedral Songで一息ついた後、3,4曲目が素晴らしい。まず3曲目Split Decisionはベースがウォーキングしドラムがライドシンバルを4分打ち+スイングで、、ってこれ普通のジャズじゃん!?ところが普通のジャズではありません。真ん中にエレキギターが浮遊霊のように常にぼんやり位置取ることで独特の緊張感というか気味悪さのようなものを浮かび上がらせたまま疾走していきます。

4曲目Hide And Go Seekが本作で一番好きですね。ロックかと思うようなギター一人のイントロで始まり、ドラムは高音域だけ、サックス2本がミニマル的な繰り返しでもって幻想的な空間を作っています。

他にも7曲目Drum Musicという直球なタイトルのイントロも聴きごたえがあります。ギターと融合したジャズも面白い!

 

 

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CDレビュー: Thelonious Monk – Brilliant Corners (1957)

★★★★★

ジャズの100枚。  の19枚目です。セロニアス・モンクのアルバムは2枚目。

モンクのピアノに合わせて周りもエキセントリックに。。

彼のピアノはとっても癖があり、堅めの音と時々鳥や動物の鳴き声のような逸脱の即興を混ぜるスタイルが特徴です。この印象は前回聞いたときと変わりません。

 

しかしこのアルバムは1曲目Brillian Cornersから全員が普通のスタイルを逸脱しています。なにこのダルダルなサックス。しかも2本。これがモンクのピアノとうまい具合に溶け込み、彼の変なピアノを上手に引きたてていると感じました。

2曲目Ba-lue Bolivar Ba-lues-areはダルデレな雰囲気はそのままピアノが目立ちます。ブキーボキーと悲鳴を立てるようなピアノも聞き苦しさは感じさせません。ダルさが洗い流してくれているのでしょう。

3曲目Pannoicaはさらにグロッケンが入り大きく萌え化します!鉄琴のあの音って胸がきゅんとしませんか?このタイミングでピアノソロの4曲目I Surrender, Dearが入りますが萌え萌えしている私の耳はカタブツだと思っていた彼のピアノもかわいく聞こえてしまいます。

セロニアス・モンクは不器用可愛い。と知ることのできたある意味衝撃的な1枚でした。

 


CDレビュー: Enrico Pieranunzi – Seaward (1995)

★★★★★(TωT)

ピエラヌンツィさんのComplete Remasteredシリーズで聴き忘れがあったので、聴きました。次のボックスの5枚目です。

胸を切り裂くピアノ

切ない!切なすぎます!これを聴き忘れてたなんてもったいない!心に傷が無くても傷を負い、傷があればカサブタを開いてくるくらい胸に痛いピアノです。1曲目Seawardの出だしの1音からもう苦しくて苦しくてたまらない。

5曲目The Memory Of This Nightが一番破壊力が高いです。序盤は普通のスローバラードのようですが後半になるとピアノが突然釣り針とか猛禽類の鉤爪のようになって襲ってくるのです。鋭い。引っかかる。いたたたた。ピエちゃんもう勘弁してください。

気持ちが張りつめて張力で張り裂けそうになったところを刺す。一発ノックアウトです。意味の分からない観念論になってしまいましたが6枚の中で一番印象的なアルバムでした。

ベース、ドラムも完璧。歌声もあり

8曲目This?ではHein Van de Geynさんのベースが長時間にわたって歌う見せ場があります。彼のベースはとても暖かく優しいのでひと時の休息を味わうことができます。Andre Ceccarelliさんのドラムも目立たないものの完璧な安定感で気持ちの増幅に一役買っています。

本CDでは歌声が多く聞こえます。誰が歌っているのかわかりませんが演奏に興が引かれている証拠です。

ジャズセッションというのはそれぞれの持ち場で上手いこと役割を果たしつつ時にはアドリブを混ぜて相手のミュージシャンと作り出す音の会話であると理解しています。ジャズの音楽理論は難しいのでしょうが一通りマスターしてしまえば彼らはその文法を自在に操って詩を生み出すように音を生み出していくことができます。それはとてもとても気持ちのいいことなのだと思います。

音楽はその組み合わせと線形性をもって何故だか分かりませんが我々に快などを始めとする数多くの感情を生み出します。これらに身を任せてつい歌声が出ちゃうほど音楽的な空間の中に手を任せて音を職人的に組み立てて面白い作品をいくらでも作れちゃうなんて羨ましいなぁ、素敵だなあといつも思いながらジャズのCDを聴いています。

 

 

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CDレビュー: Wes Montgomery – The Incredible Jazz Guiter of Wes Montgomery (1960)

★★★★☆

ジャズの100枚。の18枚目です。ウエス・モンゴメリーはすでに1枚聞いてますね。

スロー曲中心の超スタンダードアルバム

1曲目を除いてゆっくり目の曲が連続します。スタンダードなジャズの中に、サックスが入ってくると思ったらウエスのギターがソロを奏でます。彼のギターは落ち着きます。サックスのように息ドバー演奏ブシャーというのとは異なり、しみじみ歌い上げるナンバーが多いように感じました。一度聞けば彼の演奏と分かる、ちょっと音程を上げる?ようなコブシが効いています。ギターの上手下手は私にはまだ分かりませんが、聞いていて不安になるようなことは一度もありませんでした。安心安定の1枚と言えます。

リンク先ではみなさんベタ褒めですが、私にはまだ彼の境地が分かるほど頭の中が耕作されていません。。

 

 

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CDレビュー: Paul Motian – The Story Of Maryam(1984)

 ★★★★★

Complete Remasteredシリーズです。このボックスを聴くのは3回目です。安く過去の名盤がリマスター込みで手に入るのはとてもうれしいです。今回は、ドラマーのPaul Motian(1931-2011)のボックスを聴いていきます。手に入れてから気が付きましたが6枚目Flux And Changeがエンリコ・ピエラヌンツィのボックスとかぶっているのが痛いです。。

ポール・モチアンはジャズドラマーです。ビル・エヴァンスやセロニアス・モンク、ポール・ブレイ、キース・ジャレットなどと共演し、50-60年代に活躍しました。70年代以降はリーダー作を作るようになり、このアルバムもモチアンがリーダーです。

またインプロ!

6枚組の1枚目となるThe Story Of Maryamはいきなりインプロだらけの抽象性が強い1枚です。前回アンソニー・ブラクストンのボックスもインプロだらけで苦しい作品が多かったのですがこのアルバムも相当なものです。何故かエレキギターも入っており訳の分からなさに拍車をかけていますが、このエレキギター、上手だし妙に美しいのです。Bill Frisellというギタリストらしいですね。

特に前半は退廃的で、テキサスの荒野に放り込まれて置き去りにされたような気持ちになります。

5曲目の破壊力と6曲目の切なさのコントラストでハートを掴む

5曲目Look To The Black Wallがやばいです。最初から最後まで7分近く全員全力で演奏を続けます。コード進行や8ビート16ビートというような秩序だったものは全くありません。濁流を流し込むようなサックス2本と真ん中でうねるギター、何やってるのかわかんないけど気合だけ伝わってくるモチアンの爆裂ドラミングが一体となって、台風(アメリカだからハリケーンか?)がやってきたような目茶目茶な演奏を奏でます。

そしてラスト6曲目タイトルチューンThe Story Of Maryamだけ秩序がありしかもしっとり切ないチューンです。5曲目と落差がありすぎます。このコントラストのせいでいつまでも胸を締め付けられるような感覚が残るというわけです。上手に構成してます。なお、Maryamというのはアラビア語でキリストの母マリア様のことだそうです。一体どういう気持ちで演奏していたのでしょう。。

 

 

 

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CDレビュー: Hampton Hawes – Trio Vol.1 (1955)

★★☆☆☆

ジャズの100枚。の17枚目です。

ハンプトン・ホーズ(1928-1977)はアフリカ系アメリカ人のジャズピアニストです。例に漏れずドラッグ中毒であり、早死にです。

こんなこと言うとジャズ好きの方に怒られると思いますが、全く良さが分かりません。雑です。雑すぎます。酔っぱらいの音楽です。トム・ウェイツのようにその酔っぱらい加減が味になるアーティストもいますが、この人の演奏は自分のタンパク質が拒否します。全体を通して演奏が悪い意味で崩れており、音が固く肌にペチペチと当たる感覚がしてノれません。爽快なはずのグリッサンドすらも耳に立ちますし、いいところが見当たりません。9曲目 The Foolish Thingsもいい曲なのに、石でも投げられるような適当なラストで幻滅してしまいます。

 

タンパク質と言えばうちには「タンパク質の音楽」という本がありました。以前飛ばしながら読んだことがあるだけなので、このモヤモヤした気持ちを解消させてくれるかもしれません。今度読んでみようと思いました。

 

 

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CDレビュー: Dave Weckl Acoustic Band – Of the Same Mind (2015)

★★★★★(๑˃̵ᴗ˂̵)و 

Dave Wecklさんはアメリカのジャズドラマーです。昔はチック・コリアのバンドで有名だったらしいですが、私は彼がソロになってからのアルバムしかまだ聞いたことがありません。この人の演奏は異常に手数が多い上に正確で安定していて好きでした。最近新作が出たというので、早速聴いてみました。

えーと、1曲目What Happened To My Good Shoesからもう何も言うことがありません!最高です!Daveさんもう55歳なんですね。かつての力押しの演奏ではもはやなくドラミングに味がついてます!Tom KennedyさんのエレキベースもCool!全く非の打ち所がありません。ピアノは小曽根真さんなんですね。私の大好きな不安定と安定の中間で弾きまくるスタイルですね。Gary Meeksさんのサックスは軽く往年のジャズとは毛色が違いますがこの曲調ならむしろ軽い方がよいです!

3曲目Songo Mikeleなどラテン系の曲がいくつかありますね。ドラマーはラテン系の曲が好きです。それは叩く楽器の数が増えるからです。右側でポコポコしたカウベルを延々叩き続けているのにハイハットが左からいつまでも聞こえそんな状態でタムタムやドラムロールを通常運転で叩いてます。いつ聞いても腕が4本あるんじゃないの?と思わせる演奏です。

ドラムセットの要塞化はすさまじく、こんなドラムセットを構えている人もいます。

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テリー・ボジオが明かす巨大ドラム・キットの秘密:Fuck The Fuckin’ Fucker !:So-netブログ

Daveさんもすごいですよ。

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Dave Weckl – Biography

ベースの見せ場は7曲目Pacific Groove Fogの中盤。小曽根さんのローズピアノに乗せて卒倒しそうなベースを長時間堪能できます。ラストAll Bluesにもいい聴かせ処があります。

圧巻は5曲目Koolzです。ドラマーのDaveさんがメインのバンドなので、比較的長い「デイブゾーン」とでも呼ぶべきドラムソロがアルバム中何度も登場しますが、この曲のソロはすごいです。ラスト2分がほとんど独壇場です。彼のプレイには正確さだけではなく美しさがあります。メタルのような激しさはありませんが、美しいドラムを聴きたい人にはうってつけの1枚と言えるでしょう。

 

※日本では7/22に発売予定です。15.5$とクレジットカードがあれば公式サイトでダウンロードできます。

Dave Weckl: Of The Same Mind

 

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CDレビュー: Miles Davis – Relaxin'(1956)

★★★★☆

ジャズの100枚シリーズ16枚目。不動の名作だそうです。マイルス氏は息を大量に使った入魂のトランペット音を出しているアルバムが多いですが、この作品はタイトル通り肩の力が抜けている珍しい演奏です。

1曲目 If I Were Bell が特に優れていると感じました。amazonのレビューを見ると伝説の作品なのですね。印象通りでした。

私はジャズを語る言葉を全然持ちませんので、どこがどう優れていて何がすごいのか描写できませんが、彼らがノリに乗って楽しそうーーに演奏していることはCD越しでも伝わってきます。

 

 

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