CDレビュー: the HIATUS – A World Of Pandemonium(2011)

★★★★☆

 

ゴリ押しロック(と名付けました)のthe HIATUS、3rdアルバムです。

インストがより洗練されるも後半が残念

インストのレベルが前作よりも飛躍的に上がりました。特に先頭の1,3,4曲目に関しては非常にレベルが高い。1曲目Deephoundsは得意の音圧ゴリ押しの成功例。3曲目The Tower and The Snakeはリズム隊も私好みに爆裂しており本アルバム中で最も好きです。4曲目Soulsも小刻みなイントロがワクワクさせてくれる上にゲストのJamie Blakeさんの超透明な歌声がカンフル剤となり楽曲に華を添えます。

ところが残念なことに5曲目以降失速します。5曲目Bittersweet/Hatching Mayfliesはゴリ押しの本領発揮ですが音量全開の見せ場で私の苦手な裏声も全開なので残念。裏声って下手なJPOPアーティストがみんなこぞって使用するので、よっぽど歌が上手い人以外はどうしても彼らと同じ印象を抱いてしまうのです。6,8,9,10は凡庸。7曲目Flyleafは良いですが肝になるフルート様の音色が明らかに打ち込みなのが残念です。せっかくここまでやったら全部生音にしましょうよ。

 

これでHIATUSについては発売中のアルバムを制覇したことになります。まるで成長株のように1st~4thといい感じに洗練されていっていますので、次のアルバムに大いに期待したいと思います。

 

 

ロック等の他のCDレビューはこちらです。

 

 

レベルの高いインストを聴くにつけ、以前1回通しで聴いたAmetsubというアーティストの曲が聴きたくなりました。次の日本人枠では彼のアルバムを4枚ほど聴き直してみようと思います。最新作以外は最後に聴いたのが2年以上前ですので、今の自分とはずいぶん違います。一体どのような印象を持つのか楽しみです。

 

Linear Cryptics

Linear Cryptics

 

 

Surge

Surge

 

 

All is Silence

All is Silence

 

 

The Nothings of The North

The Nothings of The North

 

 


書籍レビュー: 嫉妬されると死ぬ 『ギリシア神話』 著: 中村善也・中務哲郎

★★★★☆

 

岩波ジュニア新書2冊目。ジュニアと言えど内容は普通の新書と全く変わりません。著者の一人中務哲郎(なかつかさてつお)さんは、どこかで聞いた名前だと思ったら放送大学(ここも中退しそう)で西洋古典文学の授業でギリシャ篇を担当していた方ですね。先生からはとてもいいお話を聞けました。

放送大学 授業科目案内 ヨーロッパ文学の読み方―古典篇(’14)

いまはradikoという便利なツールがありますので授業は誰でも無料で効くことができます。

Radikool – radiko録音ツール

こいつを使えばタイマー録音もできます。放送大学は良質な授業が揃っていてとても良い学習アイテムです。

昔話

ギリシャ哲学を学びたいという野望があるので、背景知識として必須と思われるギリシャ神話についてどうしても知っておきたくて読みました。本書はギリシャ神話を愛・罪と罰・生と死などのテーマからとらえるという構成になっていますが、単にぶつ切りにするのではなく導入~神~英雄~人間~各テーマというよく練られた構成となっており非常に読みやすかったです。

ギリシャ神話は我々いうところの「昔話」に相当します。しかし日本の昔話は民話の寄せ集めで、名前の固定した登場人物はいません。紀元後8世紀に古事記が成立してやっと固有名詞付きの昔話が出現します。ギリシャ神話は紀元9世紀には記録が残ってますから彼らの知恵には恐れ入りますね。

神大杉

ギリシャ神話には膨大な人物が登場します。適当に画像検索すると目の痛くなりそうな系図が見つかりました。

http://harmonyatsugi.web.fc2.com/kyusoku/016graecia.gif

パンドラの箱の謎

 

実際にはもっといます。これ全部覚えるのはすぐには無理ですので、少しずつ慣れていくしかなさそうです。

ギリシャ神話の「神」はほとんど人間と変わりません。旧約聖書では神が自分に似せて人間を作りましたがギリシャ神話においては人間の誕生については特に語られません(上の図ではプロメテウスが作ったことになっていますが、本書ではこの説が比較的新しい作り話であると懐疑的です)。どうやらギリシャ人が自分たちに似せて神話を作ったようです。神は恋もするし全知全能じゃないし不死ではありません。上の系図から分かるように唯一神ではなく大量に存在します。違うところと言ったら、有名なゼウスの雷をはじめとしてみな特殊能力が使えることくらいでしょうか。サイヤ人みたいなものと考えればいいかもしれません。それから生殖方法は異常です(後述)。

神増え過ぎ

ギリシャ神話は旧約聖書なんてレベルじゃないほど人や神が死んだり生まれたりします。まず上の系図でいうとカオスが自然発生します。キリスト教徒はえらい違いですね。カオスは我々が思い浮かべるカオス(混沌)とは違い、すべての発生元の大きな穴、むしろ「何もない」というくらいの意味と思われます。

ここからが恐ろしくて、ギリシャ神話の世界では必ず何かから何かが生まれます。即ちカオスからガイアがポンと生まれるわけですがまあこれは穴から出てきたってわけだからまだ分かります。次にガイアからウラノスやらポントスやらが生まれます。ここまでもまだわかりますが、さらにガイアがその子ウラノスと夫婦の営みをしてその右側の大量の訳わからんものが生まれたことになっています。一番下にはドラクエにもいるキュクロプス(サイクロプスとも読む)やFFにもいるヘカトンケイルやらの名前も見えます。

サイクロプス.jpg

モンスター/サイクロプス – ドラゴンクエスト モンスターパレード 攻略 Wiki

 

http://www.square-enix-shop.com/jp/ff-tcg/card/cimg6/6-052u.png

FINAL FANTASY ⅩⅢ | タイトル別カードリスト | ファイナルファンタジー・トレーディングカードゲーム(FF-TCG)

 

お前ら変なもの産み過ぎ。

 

また下ネタになってすみませんが、神の生殖能力は滅茶苦茶で、神がと交わってできた神すらいます。何だよ岩って!生物ですらない。他にもクロノスがウラノスのチンコを切り落としたらそこから泡が発生して生まれたアフロディテとか、そんな話ばっかりで現代人から見ると引きます。ちなみにアフロディテは美の神ですよ。チンコなのに。

最強の神として各地でシンボル化されているゼウス(私がまず思い出すのはスーパーゼウス)も超絶倫で、あちこちで子供を残します。シカになったり牛になったり、時には雨になるなどという謎の変装をして可愛い女の子を襲うのです。ゼウスが女の子に言いよる話はこの本だけで10回くらい出てきました。現代だったら確実にけしからん話ですがギリシャ神話には日常茶飯事。むしろ私たちの常識が間違っているんじゃないかと思わせられるほどです。神を通した生命賛歌と捉えるのが妥当かもしれません。

触らぬ神に・・・

なお旧約聖書と同様、人間が神に逆らうと大体死にます。ところがギリシャ神話の神は人間的だから余計にたちが悪い。例えば機織りの名手アラクネは女神アテネを機織りで打ち負かしたため嫉妬されて死にます。子供が多いことをレト神に自慢したニオベはレトに嫉妬され14人の子供全員を弓で射殺されます。すっげえ理不尽ですが、いずれも神に対する「傲慢」を突かれて罰を受ける、という共通点があるため、因果応報とみてよいのかもしれません。神に嫉妬されないように気を付けよう。

 

 

 

参考書籍

優れた本ですがやっぱり生の物語にはかなわない。紙面の都合で仕方ないですが物語をもっと引用しまくってほしかった。

 

 というわけで次はこれですかね。石井桃子さんですし外れるわけがない。

ギリシア神話

ギリシア神話

 

 

 さらに補強するならこれか。でも前著で十分な気もする。

ギリシャ神話集 (講談社学術文庫)

ギリシャ神話集 (講談社学術文庫)

 

 

これもよさそうなんだけどブルフィンチって人が作ったまとめだから生の物語はどのくらい収録されてるんだろう。。?

ギリシア・ローマ神話―付インド・北欧神話 (岩波文庫)

ギリシア・ローマ神話―付インド・北欧神話 (岩波文庫)

 

 

最終目標はこれ。

イリアス〈上〉 (岩波文庫)

イリアス〈上〉 (岩波文庫)

 

 

ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)

ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)

 

 

 本書のレビュー先で紹介されていました。これも読みたい。

神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 


書籍レビュー: プロセスとしてのリーマンショック『リーマン・ショック・コンフィデンシャル(下) 倒れゆくウォール街の巨人』 著: アンドリュー・ロス ソーキン 訳: 加賀山 卓朗

★★★★★

上巻のレビューから一か月も経ってしまいました。原書は1冊にまとまってるのですがこの本は記述量が半端じゃないので2冊に分けたのは賢明だと思います。

プロセスとしてのリーマンショック

下巻は役者が全員そろっているので上巻のようにエキセントリックな人物紹介はなく、登場人物が動き回りながらあちこちで巨大企業が倒れていきます。本書は上巻で述べたように、主として登場人物のとった行動に焦点が置かれていますので、構造的な問題は他の本で補わなければなりません。もしくは次のサイトを泣きそうになりながら読んでみようかとも思います。

サブプライム住宅ローン危機 – Wikipedia

本書から分かる範囲で簡単にまとめます。

サブプライム証券の価値暴落により破綻寸前のリーマン・ブラザーズに対して政府は政治的な理由で「助けてやんない。金融機関同士で何とかしな」とメッセージを出し、他の金融機関は株が暴落したリーマンを買おうとするも結局サブプライム証券の評価損の大きさが怖くてどこも手を出さず、リーマン・ブラザーズは2008年9月15日をもって破産します。

同様のサブプライム系証券に手を出していた大手保険会社AIGも破綻寸前までいきますがこちらはこれ以上危機を広げたくない政府による大量融資で80%が国有化(東電みたいな感じ)され、ギリギリのところで救われます。

大手投資銀行モルガン・スタンレーも資金不足となり死亡寸前までいきますがここはなんと三菱東京UFJが90億ドルの融資を決定し生き残ります。取引成立が祝日前だったので、三菱東京UFJはモルガン・スタンレーまで90億ドルの小切手(こわすぎ!!)を届けることで危機を回避しました。三菱東京UFJはいまでも22%の議決権を占める筆頭株主です。

金融機関が倒産するということは、経済の血液たる金の流れがストップするということです。リーマン・ブラザーズの倒産は内臓が一つオシャカになったことに相当します。例えば胃がんになったと言ったところでしょうか。AIG、モルガン・スタンレーが救われていなければさらに肺がんと肝臓がんがダブルパンチで襲ってくることに相当すると考えてよさそうです。まず死にます。間一髪で切除されて助かりました。

リーマンショックという出来事は、上手な人がまとめれば5行くらいで片付いてしまう出来事だと思います。本書は危機の端緒、フレディマックとファニーメイが国有化された2008年9月7日から、7000億ドルの不良債権を国が買い取る緊急経済安定化法案が成立する2008年10月3日までの話ですので、わずか4週間の出来事をこんな超分厚い本で語っています。

この本は歴史書だと感じました。まさに塩野七生さんの言うところの「プロセスとしての歴史」です。

すなわち構造的な理論書の補強として出来事を配置するのではなく、もっぱら出来事そのものを叙述することを目的とする本です。そこで必要となるのは、正確性と情報量の多さ、事実の多層性交錯性、登場人物の背景や性格、とった行動と彼らの思考です。著者の取材力には感心するしかありません。日本文で800Pくらいありますものね。

後知恵野郎はよく笑う

財務長官ヘンリー・ポールソンは今後長い間に渡って批判されるでしょう。なぜリーマンを救わず、他の金融機関は救ったのか、、と。しかしそれは結果論に過ぎません。リーマンを救うことは大きなモラル・ハザード(どうせ救われるんだから俺たちも無茶しちゃうぜーって他の金融機関が思うこと)に直結するというジレンマでポールソンは苦しんでいました。

ポールソンに限らずニューヨーク連邦準備銀行総裁ティモシー・ガイトナー、連邦準備制度理事会ベン・バーナンキも歴史の1点1点で彼らのベストを尽くし、できることを最大限にやり切ったのではないかと感じさせられます。

彼らを「あの時こうやればよかったのに」と、後知恵で非難することは簡単です。それは結果が分かっているからです。我々は現在を生きていて、未来を正確に予測することはできません。金融市場は大量の人間の意志という永遠に予測不可能な存在達の集合体です。非難する奴に言いたい「お前明日株が上がるかどうか分かるの?」

エピローグには、JPモルガンの代表ジェレミー・ダイモンのとても印象的な引用文が掲載されています。

重要なのは批評家ではない。ものごとを成し遂げるのに人がどこで躓いたか、どうすればもっとうまくできたか、そういう粗探しはどうでもよい。名誉はすべて、実際にアリーナに立つ人にある。その顔は汗と埃、血にまみれている。勇敢に戦い、失敗し、何度も何度もあと一歩で届かないことの繰り返しだ。そんな人の手に名誉はある。なぜなら失敗と弱点のないところに努力はないからだ。常に完璧を目指して現場で戦う人、偉大な熱狂を知る人、偉大な献身を知る人、価値ある志のためなら自分の身を粉にして厭わない人…結局最後に勝利の高みを極めるのは彼らなのだ。最悪、失敗に終わっても少なくとも全力で挑戦しながらの敗北である。彼らの魂が眠る場所は、勝利も敗北も知らない冷たく臆病な魂と決して同じにはならない。

――セオドア・ルーズベルト

 

私は感銘を受け、次の本を読みたくなりました。

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)

 

映画版を見たことがあります。1945年8月14~15日。天皇を崇拝しクーデターを起こして最終的にピストル自殺する畑中をはじめとして、結果を知っている現代の私達から見れば、彼らは一見滑稽に見えかねない思考で行動します。しかし彼らは決して道化でもないし馬鹿でもない。私はあの時間を極限まで凝縮して生きた人たちの生き方考え方を知りたいと思いました。

 

 

 

関連書籍

リーマンショック一番の功労者。彼がいなければ世界同時不況はもっと深刻になっていたかもしれません。いつか絶対読む。

ポールソン回顧録

ポールソン回顧録

 

 

 最近ガイトナーの回想録も出ました。超イケメン。これも絶対読む。

ガイトナー回顧録 ―金融危機の真相

ガイトナー回顧録 ―金融危機の真相

 

 

 ゴールドマン・サックスの本もある。これも読みたい。

訣別 ゴールドマン・サックス

訣別 ゴールドマン・サックス

 

 

でもこれらを読む前に基礎知識が必要です。次の本は図書館の入り口の無料譲渡本コーナーで手に入れたので近いうちに読みます。

金融入門 (岩波新書)

金融入門 (岩波新書)

 

 

これも必要

国際金融入門 (岩波新書)

国際金融入門 (岩波新書)

 

 

まずこれだけあれば十分かな?

入門 企業金融論: 基礎から学ぶ資金調達の仕組み

入門 企業金融論: 基礎から学ぶ資金調達の仕組み

 

 

 バーナンキが良さげな本を書いているので読みたい。

連邦準備制度と金融危機―バーナンキFRB理事会議長による大学生向け講義録

連邦準備制度と金融危機―バーナンキFRB理事会議長による大学生向け講義録

 

 


フィスコレポートを読む セレクト 6037ファーストロジック、4318クイック

 

6037 ファーストロジック(博打銘柄)

投資用不動産ポータルサイト「楽待」を運営する、今年上場したばかりの若い会社です。出来立てのためサイト上の情報量はとても少なくフィスコのレポートも1P半だけと全くやる気のないレベルです。仕事しろよ。

事業については株式売出届届出目論見書を読むのが最も良いです。

http://v4.eir-parts.net/Custom/public/parts/6037/ja/parts/pdf/mkr00.pdf

楽待は投資用物件を売る不動産会社とその顧客である会員をマッチングさせるサイトです。会員はなんと利用無料。収益はすべて不動産会社に依存します。

収益源は4つ。

  1. 物件掲載サービス・・・不動産会社が掲載する物件の数に応じて月額料金を徴収
  2. 提案サービス・・・会員が登録した条件に合致する物件を提案するメールを送付。不動産会社から提案数等に応じた月額料金を徴収
  3. 広告掲載サービス・・・サイト上の広告収入
  4. 査定サービス・・・会員の物件売却の仲介。不動産会社から手数料を徴収

サイトはこんな感じです。

f:id:happyholiday:20150913171315j:plain

東京都文京区 1棟マンション 1億8480万円 5.51% 築年 | 国内最大の不動産投資サイト楽待(らくまち)

マンションで土地66.47平方メートルってマジですか。私の住んでる田舎の住宅用売地は平均でこの2倍近くはありますよ。しかも鉄筋コンじゃなくて重量鉄骨。コスト減ですなあ。こんなクソみたいなビルでも2億円するんだから都心の収益物件は恐ろしいですね。

それは置いておいて、昨年末の時点の実績は会員数41292人、アクティブユーザー数は16730人、PV数は1228万/年(1日3.4万)とまだまだ発展途上、成長著しい段階と言えます。なお今年4月からYahoo!と提携し、PVは直近の3Q決算時点で1771万/年と飛躍的に伸びました。

f:id:happyholiday:20150913172431j:plain

(注:右端は1Qのみの成績)業績は急上昇中です。というのも緩和マネーで投資家は儲かってるので、消費増税を乗り越えてとてつもなく売上が伸びています。今期は売上868百万円、経常利益413百万円を見込んでいます。前期比50%の伸び、利益率47.6%。驚異の数字です。国内シェアは40%、寡占効果でまだまだ伸びしろのある企業でしょう。

f:id:happyholiday:20150913172932p:plain

ただし心配なのは株価です。最高値から40%の値段まで暴落しているのでチャートだけ見ればチャンスにしか見えませんが、未だにPER40倍なのが気になります。成長企業とはいえこの数字は全く看過できません。

リスクとしては、不動産だけに不況が訪れたら一気に成績がズンドコに落ち込むと予想されることです。当面は大丈夫でしょうけれど。

また、通期決算は明日14日に発表です。直近で「大家さんの味方」をオープンし、中身がまだまだ工事中であることを考えると今は投資期で力を蓄える時期に相当し、来期予想の数字は大幅な見た目の成長鈍化が予想されます。また昨今の不安相場から考えてもこの価格では手を出しづらく、明日買うのは大博打と言わざるを得ません。大幅に下がったら買いかもしれません。明日の決算に注目します。

 

4318 クイック(微おすすめ)

派遣から出版までを手掛ける総合的な人材サービス会社です。金融・製薬・建設・看護師といった専門職の人材サービスに特化しているところが特徴的です。出版事業では北陸地域でのフリーペーパーも発行しています。前身はリクルート傘下の広告代理店だったそうで、今でもリクルーティング部門でリクナビ・タウンワークといったリクルートの広告作成を手掛けています。人材そのものを取り扱うことで事業を拡大していったようです。現在はリクルーティング部門の占める割合は20%程度と少なく、売上の約半分が人材サービス部門です。

f:id:happyholiday:20150913175504j:plain

業績もとてもいい感じですね。中期目標はややバラ色に過ぎますが、実績でも営業利益率12.2%とそれなりに高収益で、事業拡大ペースも申し分ないです。さて株価は。。

 

f:id:happyholiday:20150913175711p:plain

いい感じに暴落してました!現在PER14.28倍、悪い数字ではありません。派手ではないですがそれなりに投資対象として検討してもいいレベルだと思います。

ただし景気敏感の建設部門の派遣を取り扱っているのがやや心配ですね。製薬、看護師なんかは安定してるのでここに特化していたら間違いなく買いなんですが。

 

 

今週はファーストロジックが面白い企業でした。フィスコは今週レポートに全然やる気がないですね。

 

さて来週も全然決算がありません。明日14日にエニグモ、ファーストロジックがあるくらいですね。最近は時間が無く持ち株以外の決算は全然見られていません。


書籍レビュー: 発達障害者が読むと人生変わるかも『成人の高機能広汎性発達障害とアスペルガー症候群』 著:広沢正孝

★★★★★(*’∀’人)

著者の広沢正孝さんは順天堂大の精神科医・教授です。専門は精神病理学・保健学。他に統合失調症関連の本も書いています。

発達障害者の精神構造を明らかにする目標で書かれた本

タイトルから一般向けの単行本的なものを想像していましたが内容はバリバリの医師向け医学書でした。でも最高に面白かったし、人生が変わるかもしれないほどの衝撃を受けました。いいですね医学書。もう医師にはなれないけど医師になるための勉強がしたくなりました。

この本はいわゆる「発達障害あるある本」とは一線を画します。まず発達障害者に対して一般の人間がどう接すればいいか、発達障害者はどのようにして社会に適応すればいいかという実践的な要素は皆無です。1冊かけて、発達障害者の精神構造を明らかにするための考察が膨大な参考文献とともに行われていきます。文献はほとんどが英語圏・ドイツ語圏のもので日本のものも精神医学系の雑誌が多く、医学書はみんなそうなんでしょうけれど著者の情報収集力の高さとそれを統合する力には驚嘆しました。

folk physicsとfolk psychology

書くべきポイントは大量にあってまだ自分の中で消化できていないので本書を貫く重要概念の2点に絞って書きます。1点目はである「folk physics」と「folk psychology」という概念です。これはBaron-Cohen(サイモン・バロン=コーエン)の提唱した概念だそうです。

これは脳が対象を認識する働きを2つの領域に分割して捉える考え方です。folk physicsは「庶民物理学」つまり対象が物質的存在としてどのような働きをするかということを捉える働き、folk psychology「庶民心理学」は対象を社会的存在としてとらえようとする働きを指します。大まかに言ってfolk physicsは分類し細部を突き詰める働き、folk physicsは共感し統合する働きです。

バロン=コーエンによれば、一般人は2つの働きをバランスよく発達させ、重なり合わせることで対象との適切な距離や二面性、多層性などを認識することができますが、発達障害者はfolk psychologyが障害されており物事をfolk physicsを使ってしかとらえることができません。物事は様々な観念の集合体としては捉えられず、バラバラのままです。

タッチパネル的自己

folk physicsへの偏りという仮説をベースにして、実際の臨床例から筆者が提示した理論が「タッチパネル的自己」です。これはある患者が次のように自己を認識していたことによるものです。

このころA氏は、主治医に以下のように述べた。「僕の頭はタッチパネルで、縦横に規則正しくアイコンが並んでいます。その1つひとつに重要な内容が入っていて、僕は必要な時に必要なアイコンにタッチするんです。そうするとそこにウインドウのように世界が開けていき、僕はそこを生きて、そこで仕事をするのです。それが社会人の僕です。つまりプログラマーの僕ですよ。先生もご存知のプログラマーってやつで生きている僕なんです。(中略)別の部分をタッチすると、そのウインドウにまた僕がいます。全体としてタッチする順番が決まれば、僕の1日は順調に流れます。でも今は順番が滅茶苦茶で、タッチパネルの情報もどこに入っているのかわかりません。これは危機です。」

A氏の自己イメージ図が添付されていました。HTMLで再現してみます。

6:30AM
朝の支度

7:12AM
電車通勤

8:23AM
駅から会社

8:45AM
仕事前

9:00AM-5:20PM
仕事

0:20PM-1:20PM
昼食

(予備)

(今日はパス)
SF活動

6:05PM
帰り道

7:03PM
電車通勤

7:55PM
駅から自宅

(今日はパス)
秋葉原

8:45PM
夕食

9:20PM
入浴

10:00PM
ブログ

(予備)

 

以上の2理論は衝撃的でした。なにしろこの2つから発達障害者にまつわる諸症状がほぼ全て演繹可能だからです。米田先生の著書の1点集中・極端なコントラスト理論では説明不足なところも補えそうです。

演繹例1

私の例を挙げます。私はきわめて受動的です。他人との関わり方は典型的にな積極奇異(積極的だが挙動不審だったり躁状態だったり変な感じのこと)で、話しかけるまでは時間がかかりますが一旦他人と関係を築くと自己が他人に取り込まれ、自己を喪失します。もうブログの存在がばれたって構わないので書くと、いま隣の部屋にいる元妻との関係が完璧にそうです。私は元妻に思考体系を依存し、子供からは「自分の考えが無い」と非難されバカにされました。

一方、私は自己喪失どころか過剰なまでの自己保持を表すことがありました。例えば私は大学休学後復学し1年通いましたがその時収入はありませんでした。ところがその時元妻がある事情で働けなくなり解雇されました。ところが私は収入が全くない状態で、1年間大学に通い続けました。お金は消費者金融で借金した後に破産して踏み倒しました。今思うとぞっとする行為です。生活が首の皮1枚で繋がっていた状態です。ふつうは収入が無ければ働きますが私は働くことを選ばず、それまでの世界であった大学を保持することを選びました。しかも収入もないのに帰りにゲーセンに寄っていました。私は音ゲー中毒者だったので、この世界を手放すこともできませんでした。さすがにキャッシング枠が無くなったので1年後は中退して就職しました。

以上の行為はタッチパネル的自己で説明が可能です。私の自己はタッチパネル風に分割されおり、「大学生の自分」「音ゲー奏者の自分」「夫としての自分」が独立して存在していて、統合されていません。したがっていとも簡単に「夫としての自分」を切り離して生活を顧みず大学に行ったりゲーセンに行ったりすることが並立して可能となります。

自己に一貫性が無いことが発達障害者の本質です。これは本当に衝撃で、いろんなことがひっくり返りそうな思いがしました。

少し前から発達障害と分裂病(統合失調症)との類似点を感じていましたが、本書では分裂病はあくまで一般人が自己を中心とした心的構造の保持ができなくなった状態、すなわち「定型発達者が陥る病気」であることが示され、すっぱり切り捨てられてしまいました。

一貫性が無いことから多重人格との類似もできそうですが、多重人格は幽遊白書の仙水忍の例からも分かるように、普通の人間がトラウマ的出来事から逃避するために自分の一部を隔離するものとして自らが生み出す適応的行為です。ところが発達障害者は先天的に一貫性が無いのですから話が違います。

様々な精神医学書を読んで示唆するところを得たいと思っていましたが、この知見によって「定型の人の話だし・・・」と一つのフィルターを感じながら読まなければいけなくなりました。できるのかな。

自動的に空気を読むJavascript、必死で空気を読むJava

プログラムの話です。JavaScriptは定型発達者言語、Javaは発達障害言語だと思いました。

JavaScriptは動的型付け言語です。定型人オブジェクトにはあらかじめ「常識」という一連のメソッドが備わっており、適当なメソッド名を与えると何らか「常識」に沿って動作することが期待されています。「常識」には明示的な宣言無しにつけたり外したりすることが可能です。定型発達者は2行で実装できてとても便利です。

var teikei = function(){};

teikei.prototype = 常識; //実装完了。うらやましいなおい!

var man = new teikei;

if(上司が来た)

{

 man.空気読め(); //軽快に動作

 man.率直に意見 = nothing; //動作しなくなる。正しい態度。

}

一方Javaは静的型付け言語で、オブジェクトのメソッドはあらかじめすべて定義しておかなければなりません。「常識」はすべて明確な実装がされている必要があります。一つでもなければ悲鳴を上げてエラーリターンするのです。

class PDD implements 常識 //PDDは発達障害の略語です

{

 public 空気読め()

 {

   if(一人でいるとき)

  {

    何もしないでいい;

  } 

  else if(二人でいるとき)

  {

    相手の気持ちを考える();

    会話を途切れないようにする();

   if(相手が怒ったら?)

   {

     どうしよう

   }

    etc…

  }

  else if(10人でディスカッション)

  {

    無理

  }

 else

  {

     想定外。パニック

  } 

 }

 public 率直に意見()

 {

   いつも通りに発言();

 }

}

interface 常識

{

 public 空気読め();

 public 率直に意見();

}

 

class 実社会()

{

  public static void main (String args[])

 {

   PDD man = new PDD();

  if(上司が来た)

  {

   man.空気読め(); //大変な条件判断。フリーズの恐れあり。

   man.率直に意見(); //消せない。

  }

 }

}

なんという冗長性。ちなみに私はJavaを使ったことはありませんが、類似言語のC#は毎日仕事で使っています。とても使いやすい原語です。書きながらJavaScriptを習得するのに手間取った理由もなんとなくわかりました。

発達障害者は適応するために大量の「常識」を実装する必要があります。これは私が大量に本を読みたい理由です。無数の言語による配線を張り巡らせておけば、何かどこかに引っかかるかもしれない、、という期待があるためです。

私が読む本はほとんどが図書館で借りた本ですがこの本ははじめて「買って定期的に読み直さなければいけない」と思わせる本でした。地味な本ですが全文暗記したいくらいの気持ちがします。だからといって何かが好転したりするわけではないのですが。

 

 

参考書籍

本書の基礎となったバロン=コーエンさんが書いた本。

自閉症スペクトラム入門―脳・心理から教育・治療までの最新知識

自閉症スペクトラム入門―脳・心理から教育・治療までの最新知識

  • 作者: サイモンバロン=コーエン,Simon Baron‐Cohen,水野薫,鳥居深雪,岡田智
  • 出版社/メーカー: 中央法規出版
  • 発売日: 2011/08
  • メディア: 単行本
  • 購入: 4人 クリック: 30回
  • この商品を含むブログ (4件) を見る
 

 

何回も引用されていた本。教師のため、って書いてあるけど中身は濃いみたい。

教師のためのアスペルガー症候群ガイドブック

教師のためのアスペルガー症候群ガイドブック

  • 作者: バルクミン,ギルスティーブンソン,ジュリアリーチ,Val Cumine,Gill Stevenson,Julia Leach,斉藤万比古
  • 出版社/メーカー: 中央法規出版
  • 発売日: 2005/03
  • メディア: 単行本
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これも何度も引用されていた。高い。分厚い。

総説 アスペルガー症候群

総説 アスペルガー症候群

  • 作者: アミー・クライン,サラ・S・スパロー,山崎晃資,フレッド・R・ヴォルクマー,小川真弓,徳永優子,吉田美樹
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2008/05/30
  • メディア: 単行本
  • 購入: 1人 クリック: 11回
  • この商品を含むブログ (5件) を見る
 

 

これも多数引用。発達障害者のほとんどは天才ではないが、何か得るものがあるかも。

アスペルガー症候群の天才たち―自閉症と創造性

アスペルガー症候群の天才たち―自閉症と創造性

 

 

 よく名前を聴く本。読んでみたい。

自閉症だったわたしへ (新潮文庫)

自閉症だったわたしへ (新潮文庫)

 

 

広沢先生の本。

統合失調症を理解する―彼らの生きる世界と精神科リハビリテーション

統合失調症を理解する―彼らの生きる世界と精神科リハビリテーション

 

 

これも引用あり。上の本と合わせて分裂病を知るために。

分裂病の現象学 (ちくま学芸文庫)

分裂病の現象学 (ちくま学芸文庫)

 

 

発達心理学。自分の発達過程がどのくらい一般とずれているのかを確認するのに有益。

ハヴィガーストの発達課題と教育―生涯発達と人間形成

ハヴィガーストの発達課題と教育―生涯発達と人間形成

  • 作者: R.J.ハヴィガースト,Robert J. Havighurst,児玉憲典,飯塚裕子
  • 出版社/メーカー: 川島書店
  • 発売日: 1997/12
  • メディア: 単行本
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CDレビュー: Metallica – Reload(1997)

★★★☆☆

メタリカ7枚目のアルバムです。前作Loadに続き76分とほぼフル時間での収録です。

1曲だけ大当たり

やはり心に残る曲は少ないです。1曲目Fuelでは「イエッヘー」なんて言っちゃって今回もちょっとはじけ過ぎです。5枚目Metallicaで見せたスローの中にも硬派魂の見える作風はどこに行ってしまったのか、気が抜けてダルいだけのナンバーが延々と続きます。このだるさも7曲目Carpe Diem Babyくらい弛緩していればそれなりに聴けますが、残念ながら中途半端な曲が多いですね。

1曲だけ良い曲がありました。9曲目Where The Wild Things Areです。「かいじゅうたちのいるところ」とは関係ないようです。他の曲が凡庸なメタルとポップの中間くらいの領域から出ないのに比べて、この曲はかなり浮いています。ダルダルをそのまんま幻想的かつ退廃的な水準までパラメーターを振り切った名曲ではないでしょうか。シングルカットもされないマイナーな曲のようですが何故でしょう?


Metallica – Where the Wild Things Are – YouTube

ビデオクリップを探してビックリしました。演奏風景一切なしでこれは退廃的なんてレベルじゃないですね。歌詞と完全に一致しているある意味直球な内容です。

ハズレが多いのでアルバム全体の評価は低くなりますがこの1曲はメタリカの表現力を大きく見せつけた曲と言えるでしょう。今後に期待です。

 

 

ロック等の他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Yes – Open Your Eyes(1997)

★☆☆☆☆

Yesの15枚目のアルバムです。このアルバムの前にライブアルバムであるKeys to Ascension 1Keys to Ascension 2 がリリースされていますが、飛ばしました。スタジオ新曲も入っているらしいですがとりあえずスキップです。

中途半端過ぎ。ひどい

なんと1曲も心に残る曲がありませんでした。前作で抱いた期待は一体どこへ行ってしまったのか。どの曲もふつー。ふつーすぎる。演奏は上手なんだけど、何も響いてこないよ!どうしたの!?

ラストSolutionはトラックに入った時23分47秒とわが目を疑う数字でどんな大作がやってくるのかと期待したけど、本編は普通に5分で終わってあとは環境音+たまにボーカルの超手抜きボーナストラックじゃん!もうダメダメ!書くことなし!

 

 

プログレッシブロックの他のCDレビューはこちらです。


ハーバード・クラシックス

生ゴミを出したんです。ゴミ置き場に。

そしたら立派な装丁の本が30冊くらいゴミ置き場に置いてありました。ゴミ置き場は二段構えで本は上の段にあったためゴミにまみれず無傷でした。背表紙は全部横文字だったので日本のものではなく海外のものでしかも全集的な何かのようでした。そういえば1階に初老の白人さんが半年くらいまえに越してきたのできっと彼が出したのかと。文学全集と言えば日本でも教養を見せびらかすために買って読まずインテリアと化していることがよくありますよね。部屋が狭くなったのでやむなくゴミに出したのだと判断し、これは勿体ないお宝だと思って私はヒイヒイ言いながら全部自分の部屋まで運びました。

持ち帰った私は今後読む時間があるかどうかもわからないし難しそうだけれどいつか読破してやるんだと気鋭に満ちていましたが本を確認するとカビまるけでモノによっては黒い虫っぽい者も沸いていてとても読めないし他の本に影響が出そうな有様でした。なんだ保存状態が悪かったのが捨てられた原因だったのかと暗澹たる気持ちで本を元のゴミ置き場に戻しました。私には暗い気持ちとバキバキの両腕が残りました。

 

背表紙に書いてあった「HARVARD CLASSICS」で検索をかけると、1909年に出版された全集であることが分かりました。

ハーバード・クラシクス – Wikipedia

内容を確認するとギリシャ喜劇や国富論、千夜一夜物語、ロウソクの科学、オデュッセイア、君主論、コーラン、孔子、シェイクスピアなどなど読みたいものばかりです。以前に読んだ「ソクラテスの弁明・パイドン」も入ってます。ああ釣り逃した魚は大きい。残念だ。。と思っていたらなんと全作品全文公開されていました!!!

Download The Harvard Classics – Harvard Classics 365

神!神過ぎる!GOD!!Dieu!!하느님!!よく考えたらどれも古典で著作権切れてるので無料で当然っちゃ当然なのですがでもデジタルデータになってるなんて感激!

 

本作品をセレクトしたハーバード学長のチャールズ・エリオットは「教養の基礎は、5フィートの本棚に収まる蔵書と、1日15分の読書により得られる」と言ったそうです。15分をどう作るかが勝負になりそうですが一生かけてでも読んでみたいと思います。


書籍レビュー: 先生ちょっと美化入ってます!『ぼくらの中の発達障害』 著: 青木省三

★★★☆☆

 

広汎性発達障害や関連する精神病・心理学については考えるヒントにするためたくさん読みます。

著者の人柄の良さがにじみ出てる

青木省三さんは精神科医です。専門は思春期青年期精神医学と精神療法です。ので、本書で引用されている例は思春期~20代前半くらいの患者が多いように見受けられました。

序盤の発達障害と定型発達は連続していて、切れ目がない→でも、その程度が強ければ異質なものとなりうる、という理論は腑に落ちました。だれでも大なり小なり精神疾患的な物を抱えています。色々な精神病の本を読んで参考にしようと思っていた私の考えが補強されました。

ちくまプリマ―新書というのは初めて知りましたがヤングアダルト向けの新書だそうですね。なので語り口調が「~してほしい。」とか「僕は~だ。」とかちょっとアツいです。苦手ですがヤングメンに合わせてくれてるのですからいい人なんだろうなぁと思いました。実例でも時には1か月何の反応ももたらさない患者の言い分を辛抱強く聴き、彼らの立場を理解し一緒に問題を考えて、わずかずつでも彼らに変化をもたらしていった青木さんのまごころには心打たれます。青木さんのおかげで頭を打ち付ける自傷行為などの二次障害を克服した患者さんも沢山いるようですね。

ちょっと美化しすぎでは

いくつか納得できない個所があります。

青木さんは発達障害者を「表と裏のない純粋な人」とラベル付けていますが、これはどうなんでしょう?発達障害者だって表と裏はあります。内面での葛藤についてはおそらく定型発達者と同じです。ただし思考の方向性やアウトプットが間違っているため、表と裏のつもりなのに裏と裏に見えるような発言をしてしまうのです。

また、次の記述には全面的に反対です。それは特別支援級の自閉症を持つ生徒がバスの中で誰彼敵わず毎日「おはようございます」と言ってピリピリしているバスの中の空気をやわらげた、というエピソードについての青木さんの感想です。

人に対して内面を隠すという「自閉」は定型発達と呼ばれる人の中にあるものであり、逆に広汎性発達障害で「自閉」を持つと言われる人の中にこそ、内面を隠さず人と繋がり情報を伝達する可能性があると、僕には思えてならない。

美化しすぎ!集団生活の秩序という観点から見れば、間違った情報やその場にそぐわない情報を伝達しまくる発達障害者は、トラブルの原因にこそなれ集団の雰囲気をよくすることなんてレアケースです。

例えばまたリーマンショックの例で申し訳ないですが経営が危ないという噂のある世界的な銀行の頭取が発達障害だったとして、記者会見で「経営は盤石です」と言わず「一週間で資金が尽きます。破産です」と言ったらどうなります?全世界で取り付け騒ぎが起きて経済大崩壊ハルマゲドン、長期ズンドコ大不況に陥ったのちに頭取は1年後の回想録で「俺は真実を伝えたんだ。。」と書きベストセラーになるに違いありません。というわけで発達障害は迷惑です。話はそれますが金融マンというのは発達障害者が絶対になれない職業の一つですね。トレーダーなら向いてますけど。

わたしは「発達障害者はリーダーにするな」とか「仕事をしないという選択肢も尊重されるべきだ」という米田さんの方が好みです。

青木先生は集団生活になじめない発達障害者をケアし、その菩薩のような人格で彼らを集団内にとどまらせる力を持ったすばらしい人間だと思います。でも個人的には集団なんか出ちゃえばいいじゃん。と思うのです。

それに根本的な問題として、周りにケアしてほしくありません。発達障害者にどう接すればいいか、なんて考えてほしくありません。配慮されるなんて屈辱です。

すっごくいい人なのにごめんなさい。

 

 

関連書籍

 

青木さんの他の著書で読んでみたいもの。

僕のこころを病名で呼ばないで―思春期外来から見えるもの (ちくま文庫)

僕のこころを病名で呼ばないで―思春期外来から見えるもの (ちくま文庫)

 
大人の発達障害を診るということ: 診断や対応に迷う症例から考える

大人の発達障害を診るということ: 診断や対応に迷う症例から考える

 

2冊目はあまりよくない言い方をすると「精神科医はどのように発達障害者を見ているのか」を知るために必要と思いました。


書籍レビュー: エヴァ好きが書いた一夜漬け用テキスト『グラフィック ミクロ経済学』著: 金谷貞男・吉田真理子

★★★★☆

 

私には野望があります。大学中退という負い目をバネに、あらゆる分野の知識について学部卒以上の知識をつけたいという野望です。ゼロからのスタートです。

そもそも大学で教えられている政治・経済・文学・歴史学・哲学・心理学・語学・物理学・化学・生物学・工学・医学などなどの学問は、興味のない分野など存在しません。どれも面白そうです。しかも、長いこと生きているとどの学問も自然と生きていく上での必要性を痛感する出来事にぶちあたります。不思議なものです。

まず経済学が必要になりました。個人的な金銭的行き詰まりのせいです。金を儲けたいので株や企業分析の勉強をしましたが、企業がどのように市況に影響を受けるのかわからない。それに新聞の経済欄で言っていることも全然わからない。なんでアメリカは利上げするの?中国はどうして在庫作り過ぎてバブルになったの?株安と円高がスパイラルで進行してるんだけど為替レートはどういう思惑で動くわけ?なんで株と連動してるのさ。未だに全く分かりません。いまリーマン・ショック・コンフィデンシャル(下)を読んでますが背景知識がないので面白さが半減しているような気がしてなりません。

というわけで経済学が必要です。株は短期的にはギャンブル要素が強いので学んだからといって儲けられるようになるわけではないのですが、長期的視点が欲しいことと、「なぜ」が分からないと気持ち悪くて仕方ないです。

 

さて経済学には大きく分けてマクロ経済学とミクロ経済学があります。ニュースでわけわからんのはほとんどマクロ経済学の話題っぽいのでマクロ経済学の本を買ってみました(読み終わり次第レビューします)。ところが目次に「マクロ経済学のミクロ的基礎付け」なんてものがあります。じゃあミクロ経済学先に勉強しなきゃダメじゃん。そこでブックオフで200円と投げ売られていたこの本を手に取ってみました。

わかりやすいが、役立つのかどうか全く分からない

非常に分かりやすいテキストでした。市場の基本的な理論にはじまって家計・生産・費用・独占・厚生のトピックに分けて、タイトル通りグラフを大量に導入して丁寧に説明してくれます。おかげで一通りの理論について「理解」することはできました。比較的短時間で読めるので、一夜漬けにぴったり、試験でもそれなりの点数を取ることは可能です。

ただし本書では明らかに不足です。何が不足かと言うと、例示が現実離れしており(後述)、グラフの意味を極めて分かりやすくするためだけの例に終始しています。おかげさまで理解は楽ですが、現実にどう適用していいのか全くわかりません。他にもっと詳しい本を買って補強する必要ができました。また経済学というのは限界生産性逓減の法則やら完全競争の前提やら情報の完全性やら現実に適用できるのかとても怪しい原理の上に成り立っていることもよくわかりました。あまり厳密に議論すると現実と乖離すること間違いありません。いまのところ、どの理論も話半分で「本当かどうか分からないけど覚えておく」くらいのつもりで理解しました。

エヴァマニア

投票者がシンジ君、レイさん、アスカさんの三人であるとしましょう・この三人が部屋に飾る花を投票によって選ぶとしましょう。・・・

とか

5000円の価格の時、アスカ水産の供給量は図1.10のC1(10尾)で示されます。また、カヲル漁業の供給量は図1.10のF1(2尾)で示されます。・・・

とか、登場人物名が全部エヴァンゲリオンです。また、本書で扱われる財はすべて伊勢エビと牛肉です。

このせいで理論は理解しやすいのですがどの例も現実離れして浮いてしまっています。イメージがわかないのが残念です。。

 

 

参考書籍

次はこれ。幸い、田舎な私の地域の図書館に何故か置いてあったので、長期で借りて読破するつもりです。

ミクロ経済学の力

ミクロ経済学の力

 

 

 でもこれも捨てがたい。4320円768ページ。分厚い。高い。

マンキュー経済学 I ミクロ編(第3版)

マンキュー経済学 I ミクロ編(第3版)

  • 作者: N.グレゴリーマンキュー,N.Gregory Mankiw,足立英之,柳川隆,石川城太,小川英治,地主敏樹,中馬宏之
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2013/03/22
  • メディア: 単行本
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ミクロ経済学の発展。

財政学 改訂版

財政学 改訂版

 

 

国際関係や貿易などはマクロ経済学を学んでからっぽいのでまた次の機会に。