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リチャード・ファインマン先生による講義をテープ起こしして、さらに物理学者が再編集したテキストです。訳者は地球物理学者の坪井忠二さん。
数式は最小限に抑えられていて、かつ物理未履修の人でも理解できるよう、代数や微積分、ベクトルの解説もされています。ほとんどが「言葉による説明」であることがこの教科書の最大の特徴です。授業は脱線するし、そもそも第一講が原子の話から始まってます。
この教科書には「これについてはわからない」という記述が何度も出てきます。
「じっさい、我々の知っていることは、すべてなんらかの近似である。というのは、我々はまだすべての法則を知り尽くしているのではない」(P2)
「エネルギーとは何だろうか。それについては、現代の物理学では何も言えない。」(P50)
「自然界を記述するには…いろいろなものごとが不確定だということは、すべて取り除いてしまうことができると直観的に信じている。しかしこのことに成功した人は、まだ一人もいない」(P88)
ファインマン先生は分かることと分からないことにはっきり線を引いています。相対性理論や不確定性原理を考慮に入れると、時間とは、空間とは、確率とは何かという問題に必ず行きつくので、これらについてもページをずいぶん割いてあります。一回読んだだけでは分からないのでもう一度読んでみたいです。
読んでいて面白いし、サクサク読み進められる良い教科書でした。物理学を始めて学ぶ方におすすめです。ぼくは大学時代全く理解できなかったベクトル解析やポテンシャル関数、相対性理論の考え方をこの本で理解できるようになりました。
ただし具体的な力学の問題については、演習問題が章末に解説なしで載っているだけなので、これ1冊ではどうしようもありません。問題集は別途必要です。
ちょっと前にファインマン物理学のまとめ本?を読みましたが、読む必要はありませんでした。原書の方が刺激的でずっと面白いです。