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ぼくは自分の気持ちを伝えることが苦手です。言語表現能力が足りないことも理由の一つですが、もっと深刻なのは「言ってはいけないのではないか」という思い込みがあることです。例えば体調が悪くても「心配させてはいけないから言わない」という選択肢を選んでしまうことがあります。
これは間違っていました。
本書に登場する概念「アサーティブネス」とは、「相手も自分も大切にして気持ちや意見を伝える(P10)」ことです。
アサーティブネスの「4つの柱」として、本書では次の4つが挙げられています。
①誠実であること……自分の気持ちに嘘をつかず、いやなことはいや、うれしいことはうれしいと、自分で認めてもよい、と考える。気持ちにフタをしない。「私はどう感じたか」を伝える。
②率直であること……伝えたいことを相手に伝わるように伝える。相手にわかるように伝えるためには、「もっと家事を手伝ってほしい」と曖昧にではなく、「ゴミは、改めて頼まなくても毎朝外に出してほしい」のように、具体的に話す。
③対等であること……誰に対しても、目上でも目下でも、社会的立場が強い人にも弱い人にも、対等に話す。自分を卑下しない。③は、アサーティブネスがアメリカの公民権運動や女性解放運動から生まれたことに由来します。
④自己責任を持つこと……言葉と行動を一致させる。できないと思ったら「できない」、途中で気持ちが変わったら「気持ちが変わった」と、率直に言う。
「体調が悪いことを言わない」のは、アサーティブネスに照らすと①(つらいのにつらいことを隠す)③(心配させない、のは相手を対等と思っていない)の2点に違反しています。
アサーティブネスは権利と責任をコインの裏表に例えています。「責任を取る覚悟ができた上で、初めて権利は行使でき」、「自分に『まちがう権利』を認めるのなら、まちがえたあとの責任をどうとるかを考える必要があります(P34)」。自分で考え、正しいと思った権利を行使して、その結果も正当なものとして引き受け、自分も相手も尊重しながら次のステップに進める、クリエイティブで健全な姿勢だと感じました。
この本には感心しましたが、よくよく考えるとパートナーが毎日実践していました。見習います。