エレコムのマウスはすぐ壊れる

格安マウスを使い倒しています。マウスには大金をはたく気になれず、1000円を超えるマウスを一度も使ったことがありません。

 

まず秋葉原でUSBメモリが刺せるという思いっきり怪しいマウスを数百円で購入してしばらく使っていました。

USBポートが節約できる!便利!

と思って買ったのですが、USBメモリを指すと本体が熱くなってマウスが使えないという最大の欠点がありました。仕方なく無難にマウスとして使いました。

USBポートにエネルギーを吸われている本製品はマウス本体の作りがちゃちく、1年も経たないうちに左クリックが効かなくなってしまいました。

 

次はこれ。

ELECOM 光学式マウス USB接続 EU RoHS指令準拠 簡易パッケージ ホワイト M-M2URWH/RS

ELECOM 光学式マウス USB接続 EU RoHS指令準拠 簡易パッケージ ホワイト M-M2URWH/RS

 

 

小さくて使いやすい!のですが7か月でクリックがダブルクリックになり、ドラッグするとすぐにドラッグがキャンセルされるようになりました。今では故障時の緊急用です。

 

次にこいつ。

 

ELECOM BlueLEDマウス 有線 3ボタン Mサイズ 1.0mケーブル  ブラック M-BL17UBBK

ELECOM BlueLEDマウス 有線 3ボタン Mサイズ 1.0mケーブル ブラック M-BL17UBBK

 

近くのヤマダで格安だったので飛びつきましたがこいつは半年で左クリックの音が弱くなり時々クリックできなくなる、さらに1か月たつとマウスポインタが消える、windowsに「デバイスが認識できない」と言われるという怪奇現象が起き完全に故障しました。

 

今日、4代目のマウスが届きました。

 

マイクロソフト 有線 マウス L2 Basic Optical Mouse Mac/Win Sesame Black P58-00069

マイクロソフト 有線 マウス L2 Basic Optical Mouse Mac/Win Sesame Black P58-00069

 

 

レビュアーには5年半たったけどまだ使えるという猛者もいます。一体このマウスは何か月まともに使えるのでしょうか。


書籍レビュー: 辰濃先生と名文鑑賞会だ! 『文章の書き方』 著:辰濃和男

★★★★★

著者の辰濃和男さんは、天声人語の元筆者です。私は文章が上手ではないのでこういう本にはつい手が伸びてしまいます。でも著者紹介を見てちょっとがっかり。天声人語はエリート意識の強い文が多くあまり好きではないので期待していませんでした。しかし読んでみるといい意味で期待を裏切ってくれました。

テクニックよりも心構えを説く

本書では「1文の長さを適切に」などのいわゆるテクニックも若干収録されていますが、大部分は文章を書く前提となる、自分の日常の過ごし方にあてています。例えば「広い円」では毎日の情報収集、思考、実践の重要性を伝えています。そうして大きな円を作っておかなくては深い文章を書くことはできない、と述べるのです。私もその通りだと思います。100インプットしてようやく10書ける、いや1かもしれないと考えています。

池波正太郎は何十年間も毎日食べたものを日記に書き留めました。たぶん彼の趣味です。で、その結果できたのが次の文章です。

冬に深川の家へ遊びに行くと、三井さんは長火鉢に土瓶を掛け、大根を煮た。

土瓶の中には昆布を敷いたのみだが、厚く輪切りにした大根は、細君の故郷からわざわざ取り寄せる尾張大根で、これを気長く煮る。

大根が煮あがる寸前に、三井老人は鍋の中へ少量の塩と酒を振り込む。

そして、大根を皿へ移し、醤油を二、三滴落としただけで口へ運ぶ。

大根を噛んだ瞬間に、

「む……」

いかにもうまそうな唸り声をあげたものだが、若い私達には、まだ、大根の味が分からなかった。

ただの大根の輪切りを煮るだけの描写ですが私は腹が減って仕方がなくなりました。趣味を何十年も煮詰めれば達人の表現が可能になるということは、次の投稿が示しています。彼も天才の一人です。

「遊び」はちょっと、、

敗戦直後の記者には人があふれ、はちきれ、窓ガラスはたいてい、破られていた。ある窓には板が打ち付けられてあった。誰かが落書きを書いた。「こんな窓に誰がした」

そのわきに小さくこう書かれれていた。「大工がした」

面白いですかこれ!?出典が書かれていないので著者が書いたようです。残念ながら辰濃さんにお笑いのセンスはありません。遊びについては若い人の方が感受性などの面で優れているようです。引用文には面白いものもあります。

買いか

買いですね。収録されている文章は超が付くくらい素晴らしいものばかりです。著者のセンスが垣間見られます。また、著者の人柄の良さもあちこちににじみ出ています。この本買ってよかったな。折に触れて読み返そうと思える本でした。

文章本はまだいくつかストックがあるので今後も読みます。

 


フィスコレポートを読む 7837アールシーコア、7447ナガイレーベン、3804システムディ

時間が取れそうになくなってきたので株の記事を今週から縮小します。ちょっとした市場の動きなどはtwitterにアカウントを作ったのでそちらに書きます。

 

日曜日も時間が取れず、書ききれなかったフィスコレポートの記事を今日加筆して更新します。

先週分は英語版をスキップすると3企業しか紹介されていませんでしたが、いずれも濃い企業でした。

7837 アールシーコア

この企業だけフォーマットが違います。本文は見やすいような見づらいようなちょっと微妙な形式ですが、ラストに会社の5年間の決算情報や定量的データが網羅されているのはうれしいですね。

主に自然派個性住宅を販売する会社で、ログハウスの国内最大手(シェア55%)です。

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商品ラインナップ|ログハウスのBESS

なかなか洒落てますね。私の住んでいる土地でも数件、ログハウス風の家を見ます。

公式資料から算出した1棟あたりの平均単価は1125万円です。大部分は100平方メートル程度で建築しているようです。これは高いのか安いのかよくわからないので比較資料を探しました。

注文住宅の平均坪単価

これによると神奈川県の平均坪単価は70万円ですので、100平方メートルで2310万円。山梨県なら1944万円。ログハウスはかなりお得な物件と言えますね。

肝心の業績内容は、住宅ですので景気と消費税に大きく左右されます。前期決算は減収減益。政権と一心同体の業績になってしまうようですね。また従業員が10人減っているのがすごく気になります。営業の扱いがブラックなのでは。

アールシーコア RECRUITING SITE

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宗教じみていて怪しい感じです。典型的な、社員を洗脳して安く使い倒す仕組みに見えます。でもこうすると利益率は飛躍的に上がります。ゼンショーを思い出してください。This is the 資本主義

チャート画像

株の方も今日の出来高が41単元だけと超薄板、チャートもさえません。

7447 ナガイレーベン(おすすめ)

白衣のナガイレーベン

医療用白衣・靴などの手術衣メーカーです。原料の調達・製造・販売までワンストップで全部行い、白衣という高機能性が求められる独自性、圧倒的シェアトップ(国内60%)を占める、物流も完璧でコストダウンにも成功、などなど様々な要素を複合させ、物販なのに空前の営業利益率30%超を継続的に達成するという非常に強固なビジネスを持ちます。

DVxと同じく円安でダメージを受けるはずの業態ですが、徹底したコストダウンにより営業利益率の低下はなんとわずかに-0.3%。素晴らしすぎます。今後のコストダウン余地はは生産拠点への海外移転で行うそうです。まるで白衣のユニクロですね。白衣は更新需要がありますから実質的なストックビジネスであることもレポートから分かります。。

次に気になるのは成長性です。まず実績。売上の伸びはゆっくりですが着実に伸びています。

http://www.nagaileben.co.jp/ir_img/ir_graph_plan2.gif

ナガイレーベン株式会社|株主・投資家のみなさまへ|財務情報

今後も高齢化により看護・介護人口が激増することが予想されますので、最低10年間は大きな成長が見込まれます。また同社は西日本でのシェアが低く、ここに営業による販路の拡大余地があります。調べれば調べるほど魅力的な銘柄ですね。

 

予想はしていましたが残念ながら株価が上がり切っており、PER28.47倍とかなりの高水準です。押し目があれば買いたいですが押し目なんてあり得るのでしょうかこの銘柄。。

チャート画像

チャイナショックのときに買えば2割以上上がってるんですね。すごい。

3804 システムディ(おすすめ)

業種特化パッケージの株式会社システムディ

パッケージソフト開発会社です。それだけだととても単純ですが、決算説明会資料から読み取れるこの会社の特性は「ターゲットの絞り込み+カスタマイズ性を前提とした基本システム開発」です。レポートにはありませんが、私は優れたモデルであると感じました。

同一の基本システムを作成することで、完全オーダーメイドのシステムと比べて経費の大幅削減が可能です。また、カスタマイズ性を前提とすることで、サポートが容易になりユーザーの多種多様な要望に応えやすくなります。マニュアルを充実させておけばなお一層完璧です。

具体的には同社は私立大学を中心とした「学園ソリューション」、フィットネスクラブなどのシステム「ウェルネスソリューション」、文章・契約書管理システム「ソフトウェアエンジニアリング(変な名前)」、調剤向けレセコン「薬局ソリューション」の4つが柱です。これに成長産業として新事業が2つ、小中学校向けクラウド対応公務サービス「公教育ソリューション」、自治体向け会計ソフト「公会計ソリューション」があります。

私はこのような地味なソフトウェア企業が大好きなのですが、業種を見ていてすべてのソリューションに共通するのは、

・マーケットの拡大余地があるのに、景気に左右されない特性を持つソフトウェアばかり

・しかもストック的な要素が大きく導入後の保守で稼げそう

ということです。カスタマイズが容易ならば保守に係る金額は安く、売上が上がるほど利益率が伸びていく仕組みですので、中期計画では営業利益率が10%を大きく上回る目標を立てています。

チャート画像

直近でかなり下げていますね。「明日買え」と言われているかのようです。PERは12.32倍と今後の成長性を考えるとかなりお買い得と思われます。明日買うことを検討します。


CDレビュー: Wes Montgomery – The Incredible Jazz Guiter of Wes Montgomery (1960)

★★★★☆

ジャズの100枚。の18枚目です。ウエス・モンゴメリーはすでに1枚聞いてますね。

スロー曲中心の超スタンダードアルバム

1曲目を除いてゆっくり目の曲が連続します。スタンダードなジャズの中に、サックスが入ってくると思ったらウエスのギターがソロを奏でます。彼のギターは落ち着きます。サックスのように息ドバー演奏ブシャーというのとは異なり、しみじみ歌い上げるナンバーが多いように感じました。一度聞けば彼の演奏と分かる、ちょっと音程を上げる?ようなコブシが効いています。ギターの上手下手は私にはまだ分かりませんが、聞いていて不安になるようなことは一度もありませんでした。安心安定の1枚と言えます。

リンク先ではみなさんベタ褒めですが、私にはまだ彼の境地が分かるほど頭の中が耕作されていません。。

 

 

ジャズの他のCDレビューはこちらです。


書籍レビュー: 原作を凌駕するクズ達による魅力的な 『NHKへようこそ!』 漫画: 大岩ケンヂ 原作:滝本竜彦

★★★★★

数年前にこの漫画を読んで何カ所か衝撃を受けました。いま読み返してみると、細かい点で気になるところはあるけれど、優れている。何が優れているのか自分なりにできるだけ解釈していきます。

ダメ人間のためのひきこもり漫画

大学を中退して引きこもること2年の佐藤達弘の前に、エホバ(明言されていません)の勧誘おばちゃんが現れます。エホバはふつう2人組で行動し、先輩が後輩に布教のお手本を見せるのが典型です。その2人目として、本作のヒロイン中原岬が現れます。佐藤は岬を可愛いと思いますが、錆び付いたコミュニケーションスキルのせいでおばちゃんに挙動不審な態度を取り、自己嫌悪に陥る。しかし数日後、岬は佐藤を「プロジェクト」に抜擢したと告げ、2人の関係が始まる。。

脱線すると私は2年間ほどエホバの人の話を真面目に聞いていたことがあります。しかしエホバの資料は押しつけや曲解、こじつけに満ちていて、エホバ版聖書も日本語が破綻しておりどうしようもなく引っ越しを機に関係を絶ちました。しかしキリスト教への関心は今でも潰えていません。まともな新共同訳新約聖書は一通り読破しました。福音書は箴言に満ちておりとても面白かったです。

話を戻します。断っておくと、ひきこもりやそれに近い精神状態になったことがない健全な精神の持ち主は、この漫画を読むと「岬ちゃんなんかいねえよ!キモい、不健全、何のカタルシスもないつまんねぇ物語」と評価するでしょう。その通りですし、正しい。岬ちゃんは現実にはいません。健康的で何の問題もない感想だと思います。

登場人物が極端に駄目化

小説版、アニメ版と比べて登場人物の設定が大きく変更されています。まず主人公の佐藤は全体を通してほとんど成長しません。親絡みのいい話のあとも更生しませんし、思い人の柏先輩と綺麗に別れ成長したかと思いきや悪友の山崎が行方不明になっても放っておいてパチンコをしている。ラスト8巻で岬と一緒に崩れゆくアパートの屋根裏に立てこもる最高の見せ場で、一人で逃げる!最高のクズです。

ヒロインの岬も性格が歪んでおり、佐藤を「引きこもり脱出プロジェクト」に引き入れるのは「佐藤が自分より劣るゴミムシであるから」という理由で、本当に脱出させようとは思っていません。サブキャラの委員長も兄が更生したら破綻してしまったので似たような性格です。

佐藤君は路傍の意志なんかじゃないわ。血も肉もあるダメ人間だもの!私、初めて見つけたんだよ。あたしよりよっぽどクズなゴミ人間だもの。野良犬よりもみじめなヒッキーなんだもの…だから私には、絶対佐藤君が必要なんだもの!(2巻)

思い人のはずの柏先輩も結婚生活がうまくいかなくなると「変わらない佐藤を見て安心したい」という理由で佐藤に近寄ってくるクズです。この漫画には基本的にクズしか登場しません。劣等感からオタクに走っただけの山崎が一番常識人でしょう。

佐藤達弘の魅力

私は佐藤が好きです。佐藤の過剰なまでの自己愛が転じた自己嫌悪、そこから逃げるために費やすエネルギーの強さ。数年前は佐藤に嫌悪をもって読んでいましたが、今読むと嘘くささがなく最も人間的であると感じました。

 怖いから全てから逃げる。20年間以上全力投球で逃げてきたので、筋金入りになっています。「佐藤もげろ!」と言いたくなるくらい岬が近寄ってきても逃げる。感情が湧かない。感情を発生させることからも逃げているから。極限まで逃げを追求すれば人格が摩耗し、委縮し、ついには0になることは必至です。だから何をやっても気力がわかないのです。それでも生きていかなければなりません。

本当はここにはなにもねーんだよ!あるとすればそれは幻想だ!混乱だ!だとしても俺たちは死ぬわけにはいかない…!だろ!?(8巻)

最初から最後まで佐藤はこのような台詞ばかりです。

8巻ラストで佐藤ははじめて逃げることをやめます。人生を自分で選択し、自分の意志で岬を好きになろうと決心します。ただし、それは「NHKの陰謀に負けないため」という、敵を作って戦うという媒介に支えられてのもの、ですが。NHKは自分ではない意志の象徴であり、無意識的な概念を決定する漠然とした大きな存在を表しています。佐藤は、自分の意志で生きていくことが、責任を全て自分で引き受けることであると明言しているわけではありませんので、また逃げに走ってしまうことは十分考えられますが、これまでの経緯を考えるととてつもなく大きな一歩だと思います。数年前はここで感動しました。

数年たって読み返してみて、なんでこんなに佐藤に嫌悪感を感じつつも魅力的に見えたのかを考えてみるとごく単純で、佐藤の姿が完全に自分と重なっているからでした。思考パターンも行動パターンもびっくりするくらい自分と同じです。逃げ、責任を人に押し付け、心に侵入されると激しく拒絶し、そのくせ自分のことについて何も考えないし、いつまでもクズのまま。5巻のハイパーセルフプレジャーのくだりなんか涙なしでは見られません。プライド転じてどん底に落ち込むとマジでこういう思考パターンになりますよ。漫画版の作者もそうだったに違いありません。

アンチ物語である

8巻ラストこそそれなりに頑張って綺麗にしていますが、山崎と奈々子の結末は最高に後味悪いですし、柏先輩と城ケ崎さんの結末も未来に不安しか見えず正直言って疑問だらけです。極めつけは岬の扱いで、原作とアニメ(アニメは見てませんがあらすじだけネットで少し見ました)では母親が早くに無くなり酒浸りになった父に暴力を振るわれるというリアル不幸な設定でしたが、漫画ではその設定が佐藤に対する虚言として使われます。岬は可哀そうでも不幸でも何でもなくただ性格が故障しているだけという設定です。漫画版は物語を綺麗にせず意図してひっくり返しているように見えます。健全な物語に対するアンチとして書いたんじゃないかと思うほどです。

まとめ

それなりに思い入れのある物語ですが正直、いまいちな点も多いです。元も子もないですが岬や柏先輩のような出会いは存在しません。引きこもりは親の庇護という前提のもとに営まれる自己崩壊と自己維持のプロセスですので、そこに他人は入り込まないものです。1-3巻はエンターテイメント性が強く、今の私には響きませんでした。4巻後半からが勝負です。妄想が多く完全に男性視点です。女性にはお勧めできません。実はラストの岬の姿にも私は納得していません。どうせなら、自分に自信をもってもっとはみ出せばいいのに、、と思いました。

それらを差し引いてもやはり愛着のある作品です。登場人物、とりわけ佐藤が描き出す生の人間性が好きなのだと思います。今後も生の汚い人間の心理が抉り出される作品を読んでいきたいです。

 

 

 

なおこちらにも素晴らしい感想があるので一読をお勧めします。


書籍レビュー: きっと、楽になれる 『ひとを「嫌う」ということ』 著: 中島義道

★★★★★_(┐「ε:)_

ひねくれた哲学者による「嫌い」論

著者の中島義道(1946-)さんは、ドイツ哲学者?です。しかし彼は学者という言葉が嫌いで、反社会的な面の強い異端な人です。それもそのはず、大学を卒業するのに12年かかる、東大助手から何故かぶっ飛んで電通大の教授に収まる、などとても変わったキャリアの持ち主なのです。ここら辺の経歴は彼の膨大な著書の中に書いてあるでしょうからまた読んでみようと思います。

「嫌う」ことは自然である

本書で繰り返し繰り返し主張されることは「嫌う」ことの自然性です。

私はまず、われわれは誰でも他人を嫌うこと、しかも――残酷なことに――理不尽に嫌うということを教えたい。

嫌うことは誰にでも当たり前に生じる、ある意味精神的に健全なしるしです。これを大人が「人を嫌ってはいけない」という道徳をもって説き伏せることにより、我々には嫌うことへの絶対的禁止が植えつけられます。人を嫌う奴は人間失格だ、カスだという観念が浸透します。しかし嫌うということは自然に生じるので、われわれは罪悪感を感じ精神的に引き裂かれます。著者に言わせればこんなものは欺瞞です。大人は、まず「嫌う」ことが当然であるということを教えるべきだと主張します。書いていて気づきましたが人を嫌う奴が人間失格だというのも「嫌う」ことですから矛盾してますね。

「嫌う」ことは本質的に不合理

本書では嫌うことの段階を8つに分け、最後に「相手に対する生理的・観念的な拒絶反応」というレベルを設定しています。嫌うということは雪だるま式にどんどん自己増殖していき最終的に「その人だから嫌う」という段階に至ります。ここまでくると嫌うことをやめることは一生不可能です。しかも、「その人だから嫌う」と、具体的な理由がないので不合理です。しかし私たちはこのようにして人を嫌います。人間の感情なんて元来不合理なものです。でもそこから逃れることはできません。いかにして「嫌い」と付き合うのか、それを一生かけて考えるのが健全である、と著者は主張しているように思います。

自己嫌悪=自己愛

自己嫌悪と自己愛は表裏一体である。これは自分でも自覚していたことなので中島さんに指摘してもらってとてもうれしいです。自己嫌悪と自己愛については明日別の本の書評で書きます。

個人的なこと

この本は、友人Aとのあるやり取りの中で「嫌う」ということを議論した(議論したのは生まれて初めて)ことにより興味がわき、つい手に取ってしまいました。議論の内容は私にとっては感動的なものでしたが、プライバシー保護のため詳細は控えます。私たちは会話の末、「嫌う」ことはいけないことで認めたくないことだが、どうしようもない止められない。相手にぶつけてしまうか、距離を置くかいずれかしか解決方法はない、、という結論に達しました。今思えば我々は「嫌ってはいけない」という紋切り型の観念に囚われていたことになります。

友人に本書をプレゼントしたいと思っています。そうすれば、彼はきっと、楽になれる。

終わりに

本書は著者の個人的な、家族に嫌われるという経験に端を発していると思われます。そして「嫌う」ことの原因を追究し、まとめあげ、心の安定を得ます(完全に安定するわけではないですが)。物凄く個人的で、わがままな動機です。そして彼は、自分でも自覚しているように自尊心が高い。何もかも言わずにはいられない、表現して他人に読んでもらいたい。表現者とはみなそのような傾向がある、と著者は自ら話します。その通りだと思います。しかしそのような表現者によって我々は多くの知見を得、救われ、糧にすることができるのです。とてもありがたいことです。

 

あとがきのオチで私は感動してしまいました。

 

 

関連書籍

 

人生を「半分」降りる―哲学的生き方のすすめ (ちくま文庫)

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ラ・ロシュフコー箴言集 (岩波文庫 赤510-1)

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エチカ―倫理学 (上) (岩波文庫)

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恋愛論 (新潮文庫)

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軽蔑 (1965年) (至誠堂新書)

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留学 (新潮文庫)

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CDレビュー: Ola Gjello – Northern Lights(2012)

★★★★★

若手音楽家による合唱曲集

オーラ・ヤイロ(1978-)はノルウェー生まれの若手音楽家です。ノルウェー国立音楽学院、イギリス王立音楽大学で学んだ後、アメリカに渡りジュリアード音楽院で作曲の修士号を取得するという輝かしいリッチ野郎(いけすかねぇ!)です。

本作品は彼の合唱曲集という位置づけで、オケや弦楽カルテットとの共演もありますがメインは人間の声オンリーの曲です。彼は敬虔なキリスト教徒のようで、そのほとんどの副題がKyrie EleisonやAgnus Deiと宗教曲なのです。

人間の声の偉大さで魂を揺さぶる

人間の声オンリー曲がどれも素晴らしい。声は様々な周波数を含んだ複雑な音ですが、これが多重になると、みんなに共通する音の部分が丸く重厚なパイプ?土管?のような基盤になりつつ、共通しない部分が合唱団独自のスパイスとなって振りかけられるわけです。演奏によって一つとして同じ音とはならないでしょう。これらがまた和音になるんですよね。静かな音も美しいし、5重にも6重にも重なってしかもこれが幻想的美しい和音だったりするともうブルブルしちゃいます!特に表題曲 Northern Lights が最も素晴らしい。特に後半の不思議な和音とその後の静寂にかけての流れが最高です!当たり障りのない言葉でしか表現できないのがもどかしい。

彼のアルバムはもう1枚Amazonで出てるので、こっちも聞いてみようかな。。

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


1000冊読みたい

私は30を超えるまでほとんど読書してきませんでした。

正確にいうと全く読んでいなかったわけではありませんが、30になるまでに読んだ本はせいぜい100冊に満たないと思います(漫画や参考書などを含まない)。一般的にどうなのか分かりませんが年齢に対して相当少ない方だと思います。

私は他人より言語的成長が遅く、国語のテストだけいつも点数が悪かったことを覚えています。記述式の問題となると特にガクッと出来が悪くなり、足を引っ張っていました。他人の会話が早くて聴き取れないし、自分から発信する言葉は支離滅裂で筋が通りません。これは自閉症スペクトラムのせいもあるのでしょうが。

とりわけ、あらゆる作品に対してとか、出来事に対しての感想を持つことができませんでした。これは自分の中に言語的世界が全く存在しないため、その世界に働きかける存在であるはずの作品や出来事が、自分に対して何等の喚起を引き起こさなかったためであると理解しています。暖簾に腕押しです。

20代になったころは引きこもり生活を送ったこともあり頭は以前よりもパーになっていました。今思い出すとゾッとするくらいアホです。しかし20代前半、何とか社会復帰して働いたり他の人間と関わっていく中で少しずつ言語的世界が自分の中にできていくようになりました。自分の頭の中の膿が取れ少しずつクリアーになっていくのが実感できました。

30を過ぎてやっと、本を読むための頭の素地ができたと感じています。たぶん、以前だったら読んだところで理解できず通り過ぎ、何の作用も及ぼさず糧にもならなかったことでしょう。ふつう、読書は10代~20代特に学生時代にインテンシブに行うものであり、私は10年以上のハンディキャップを背負うことになりました。しかし今からでも決して遅くないと思っています。いろんな本を読んでいろんなことを感じたい。疑似体験したい。さまざまな国・立場・生き方をもつ人の無数の考え方を知りたい。自分がいかに物知らずだったか思い知ってみたい。そして自分がどのように変わっていくのか、それとも変わらないことを発見するのか、いずれの結果になるのかわかりませんがそれを観察してみたい。

さしあたり目標を設定することにしました。まず1000冊です。1000冊と言うとホリエモンが刑務所で読んだ数と一緒ですね。彼の本に対するスタンスは「情報のコンパクトな塊」に過ぎないので私は好きではありませんが、彼の本も何か感じるところがあるでしょうから読もうと思っています。それは置いておいて、1000冊読むには1冊2時間として大体2000時間かかります。とても長いように感じますが、司法試験に受かるためには10000時間かかることを思うと大した時間ではありません。私が味方につけるのは時間です。我々サラリーマンはどうあがいたって1日に確保できる時間は1時間程度です。ゆっくり金持ちになりなさい、というバフェットの言葉を信じます。年月をかければよいです。1日1時間読書すれば5年弱で1000冊達成できます。当面の目標とします。速読は嫌いなのでじっくり味わって読みたいです。

ここにすんばらしい読書ブログがあります。私も読者です。彼のような超立派な書評を書くことはできません。しかも彼が評しているのは新刊書ばっかりです。なんでそんなにポンポン見つけて買ってしかも1日1冊くらいのペースで更新できるのか不思議です。

いわゆる名作、古典の類を私はほとんど読んでいません。まずこれらから手を付けます。新本屋に並んでいる目を引くような新刊書はたまには読みますがしょっちゅうは読みません。というか周りに本屋がないので無理です。Amazonでは手に取れないし、外れたら嫌だし。したがってセレクトする書籍は基本的につまんねえものになるでしょう。

読書の時間を増やせばトレードオフで何かを削らなければいけません。株の記事を書く頻度を減らします。週末限定か決算などの大きなイベントのときだけになるでしょう。イナゴ情報は調べていて面白かったけど根本的にはOakキャピタルみたいな糞会社によって嘘IRを出したり相場をめちゃめちゃにしてるだけなのですから非生産的です。それより企業分析が面白くて仕方ありません。のでフィスコレポートは今後も継続して読みます。いろんな企業がいろんなことを考えて面白い商売を考え実行し試行錯誤する様こそが面白いのです。経営者や企業・起業に関する本も読みたいです。ファーストリテイリングの柳井氏とかソフトバンクの孫氏とか。人間的には嫌ですが彼らの思想や行動は面白いに違いありません。日本中読みたい本で溢れています。困った困った人生が足りないよ。