書籍レビュー: 何だよ自分やっぱりアスペルガーじゃん『アスペルガーの人はなぜ生きづらいのか? 大人の発達障害を考える』 著: 米田衆介

★★★★★(ノ≧ڡ≦)てへぺろ

 

著者の米田衆介氏は明神下診療所の院長です。実はこの人、8年ほど前に私にアスペルガー障害であると診断を下した医者です。自閉症・アスペルガー関連の書籍を探していたらなんと明神下診療所の院長が本出してる!けしからん!これは読まなければ!と全面対決する気持ちで手に取ったわけですが、、結果は完敗でした。

アスペルガーの3つの特性

米田さんは一般的によく使用される自閉症の「三つ組み」仮説、すなわち

・社会的相互交渉の障害(他者と上手く関われない、興味が無い)

・コミュニケーションの障害(会話や意思の伝達の困難)

・想像力の障害(空気が読めない)

は、現実に表れている症状を分類したことに過ぎず原因そのものではないと述べ、いくつかの仮説を並べた後に次の三点にまとめられる「情報処理過剰選択説」を現場で使用していると述べます。

・シングルフォーカス特性……注意、興味、関心を向けられる対象が、一度に一つと限られていること

・シングルレイヤー思考特性……同時的・重層的な思考が苦手、あるいはできないこと

・ハイコントラスト知覚特性……「白か黒か」のような極端な感じ方や考え方をすること

げー。全部当てはまるじゃん。。私は愕然としました。

というのも、私は8年間、アスペルガーなんてラベルに意味はない、私は私だ。人とまともな人間関係を構築することも頑張ればできるだろうし、想像力だって豊かになれるはずだ、だからいわゆる「定型」の人の考え方身の振り方を努力して身に着けるんだ、だからそんなラベル貼るなよ!!!という思いで頑張ってきたつもりでした。アスペルガーはその言葉が新聞で出回るようになって以来、ぜーーったい悪い意味で使われると思っていたらやっぱりその通りになりました。

しかし私の努力は方向性が悉く間違っているため失敗し努力は水の泡となり、絶望感やいじける気持ちやらが募るばかりでした。方向性が間違っているということも田さんは以上の特性の帰結の一つの例として挙げています。

で、この本を読んだわけですが完敗です。間違いなくこの3つの特性を私は備えてます。ああやっぱり、逃れられないね。自分の特性の一つとして受け入れるしかないね。受け入れた上で自分に何ができるか、考えるしかないね。

臨床例1000件は伊達じゃない

正直言ってこの本はきついです。アスペルガー者(と呼ぶことにしたそうです)はできることは少ない、あれはできないこれができないといろいろ述べられますが、実感としてすべて正しいです

正直に言って、アスペルガー者に高度なマネージメントや、創造的なプロジェクトを任せるのは、その本人にかけがえのない才能があって、他の人間ではどうしても目的が達成できないような場合や、古いシステムを徹底的に破壊して合理的な新しいシステムを廃墟の上に立ち上げる必要な創造的破壊を狙う場合以外には、職場にとっては利益が無いのではないかと推測されます。

正しい。

「働くのをやめる」という環境庁性もあるということを、忘れないことです。働くのがうまくいかないのですから、働かないという選択肢もあっていいはずです。

正しい。

このあたりの内容は絶望的で当事者の反発を受けること必至でしょう。私も反発していました。でも正しい。

私はアスペルガーであると診断を受けたもののだからと言って特別な支援が受けられるわけでもありませんでした。8年かけて、周りと合わせる努力は無駄、摩擦が起きるのは仕方がない、改善されることはなさそうだ、だから周りとの関係をできるだけ希薄にするしかないね、という結論に達しつつありました。この本はその結論を大きく後押しすることとなりました。

感情、共感、想像力って一体なんだよ

この本の優れているところは特にラストの3章です。アスペルガー者は「想像力」「感情」「共感」が無いと言われますが、著者は「じゃあ共感とか想像力っていったい何さ?」といういう疑問を投げかけます。

実際には、共感という言葉はあまりにも曖昧に使われすぎていて、それが正確に何を意味するのか、科学的に意味のあるやり方で定義することができないという問題を無視するわけにはいきません。

私は「感情が無い」と言われたことがありますが決してそんなことはありません。感情はあります。共感もできます。ただし、著者の言うように『質が違う』のです。

定型発達者(本書では「健常者」と呼ばれています)は共感も感情も無意識のうちに勝手に湧くものですが、私は意識しないとそれができないのです。これは先の「情報処理過剰選択説」の「シングルフォーカス特性」および「シングルレイヤー思考特性」で十分に説明できます。すなわち話を聞いたり目で見たときに健常者はまるで2コアCPUのように情報を並列処理し同時に感情やら共感やらが湧くわけですが、アスペルガー者は1コア、シングルスレッドCPUしか持てないわけです。話を聞くか感情を動かすかどっちかしかできません。これも、訓練すればwindowsのようにミリ秒単位で動作を切り替えまくる疑似マルチタスクができるようになるんでしょうけど、切り替えにエネルギーが食われて非効率になることは必至です。そういえば私はここ1年で10kgも痩せてしまいましたがエネルギーを使い過ぎているのかもしれません。

 

この本には★10くらいつけたい気持ちです。米田先生ありがとうございます。生きるのが10倍楽になりそうです。8年前、注意不全で水筒のお茶をぶちまけてカーペットに染みを付けてしまってごめんなさい米田先生!もうカーペットは取り換えたのでしょうか!?

 

自分がアスペだと思う人は明神下診療所に行く前に本書を読んでください。超おすすめです!

 


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