書籍レビュー: 歴史は紀元前から繰り返している 『ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上)』 著: 塩野七生

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歴史を学びたい

私は世界史が苦手でした。高校時代の私は想像力なんてものがからっきしでしたので、人物と出来事を羅列されるだけの授業は退屈極まるものでした。進学校でしたので定期テストの全教科に順位がついて返ってくるわけですが世界史はいつもビリかビリ2でした。

しかし最近のギリシャショック・中国ショックに関連して国際情勢などを調べるにつけ歴史を知らないと国際関係の問題が全く理解できないことを痛感しました。これらの国々が一体どのような経緯で今の状況に至ったのか、歴史的な立場からこの国はどのような動きをすることができるのか、さっぱりわからないのです。

また直近で読んだ「経済学大図鑑」から、すべての経済論理は歴史と密接に関係していることもわかりました。また「ソロスは警告する」でジョージ・ソロスも「金を儲けたければ哲学と歴史は必須」と言っていました。歴史と哲学の必要性は高まるばかりでした。

そこでまず近場の図書館にずらっと並べてあった本書を手に取ってみた次第です。

意外にも極めて簡潔な文体

本シリーズは塩野七生氏のライフワークといえる大著で、単行本版全15巻、文庫版全43巻+別冊と非常に壮大です。私は著者の創作力をもって物語を詳述していったら膨大に膨れ上がってこの量になったのだと想像していました。しかし事実は違いました。一つ一つの出来事は極めて簡潔に書かれており、歴史自身が膨大であったことがすぐに判明しました。この調子で43巻のボリュームになるのかと思うと胸が高まります。

既に現代の歴史が繰り返されている

第1巻ではローマの建国から王政を経て共和制に移行するまでと、隣国であるギリシャのあけぼのが描かれます。およそ紀元前5世紀までの物語です。

一番衝撃を受けたのはローマではなくギリシャのトップランナー、アテネの話でした。何故アテネでポリスという民主制度が興ったのか。紀元前6世紀のアテネは、貴族政が敷かれていました。小作人付きの土地所有によって基盤づけられている貴族たちが権力を持っていたのです。ところがアテネでは商業が大きく発達し、富を得た商人たちは新興勢力となっていきます。しかし商人には国政への参加権がない。また小規模な自作農たちも貴族が幅を利かせていて土地をたくさん持てませんから、富が少なく借金地獄に陥りやすい。この2つの階級が、貴族に反発して民主制度を打ち立てていくのです。

どこかで聞いた話です。ああこれはフランス革命と同じだと思いました。経済学大図鑑でも読みましたが、フランス革命も貴族に対する商人たちの反抗でした。金の力を付けた商人たちの権利要求が、民主政治を作ったのです(だから民主政治は本質的に金を持ってる奴が強いに決まっていると考えてます)。そしてそれが紀元前7世紀(!)に既に起こった出来事なのです。

人間が今の形に進化してきた時間の長さを考えれば頭の中身が数千年スパンくらいで変わるもんじゃないでしょう。歴史は繰り返すことを義務付けられていると大きく実感しました。断言できます。歴史は力になると。

 

2巻以降も楽しみです。こればっかり読むわけではないので今のペースだと1年以上かかりそうですが。。

 

 


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