真山仁 – ハゲタカ


★★★★☆

経済に興味が出てから、以前ドラマ版を見たことがあったこの作品をどうしても読みたかったので手に入れて読んだ。日本人である鷲津を主人公に添え、彼によって日本人のバブル期の欲望が生み出してしまった巨大な負の遺産を総整理していく、というのが骨子。文章が上手なわけではなく文学的な価値はないのだが、とにかく取材が丁寧!まるでバブル崩壊後の90年代後半~2000年代前半を追体験しているような気になれる。日本企業がいかに腐っているか告発してるんじゃないかというくらい、政府と銀行に対する糾弾が垣間見える。またそのような歪みを見つけて行動することが莫大な利益を生むことに繋がる、という今まで何度も見聞きしてきた実例とも合致した。一週間くらいで一気に読み終えることができた。

なお一番描写が秀逸だと思ったのは、序盤の釣りのシーンだ。取材と技術に裏打ちされた、釣りのことは知らないけれどなんだかすごいような気にさせる、ヒカルの碁のような上手い手法だと思った。逆に鷲津がカッコつけるシーンはやや過剰演出。。マイルス聴きながら爆走できるか!?わたしゃできん。彼は精神を解き放つのではなく、トランぺッターの中でも稀な、感情を音に圧縮して外に出さない瞑想タイプの演奏をする人だから。


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