ジョージ・ソロス – ソロスは警告する(2008)


★★★★★
ジョージ・ソロスという人間に興味があったので読んだ。2008年前半、すでにサブプライムローン危機が表面化しリーマンショックに至る直前の著作で、彼は構造的で長い不況に至るであろう原理を自身の「再帰性」を論拠に粘り強く説明する。再帰性理論は人間の可謬性を基礎としている。人間は真理に到達することは不可能で、必ず不完全な知識に基づいて行動する、という信念のことだ。これは実感として非常に納得のいくものであり、感動した。さらに認知機能と操作機能の区別についても、半年ほど前に読んだ三木清氏がしきりに「人間は環境に働きかける生物である」「人間は世界を変革する生物である」と述べており、彼と全く同じ事を言っているので腑に落ちた。金融市場は彼の理論が展開されるのにもってこいだ。金融商品の価格を決めるのはまさに私たちなのだから、操作機能が即時に市場に反映される。価格を解析するための認知機能も複雑に発展している。認知機能と操作機能が相互作用し、極端な正のフィードバック(バブル)や負のフィードバック(恐慌)が起こる、という主張を核に据えた直感的にも極めて確からしい明快な書であった。彼の著作は全部読むべきだと感じた。また金持ちになりたければ経済と歴史と哲学の勉強が必要であることも痛感した。ああ十数年棒に振ってたよな。まだ間に合うかな。


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