CDレビュー: Great Pianists of the 20th Century Vol.7 – Vladimir Ashkenazy(CD1)

★★★★★ʕ→ᴥ←ʔ

 

ウラティーミル・アシュケナージ(1937-)はソ連出身のユダヤ人ピアニストです。ユダヤ人は音楽家にいったい何人いるのでしょうね。

ご存命で、70年代以降は指揮者としても活躍しています。このジャケットでは繊細そうな若者ですが、今の姿もナイスですよ!

http://medias.medici.tv/artist/vladimir-ashkenazy_c_jpg_681x349_crop_upscale_q95.jpg

Medici: ウラティーミル・アシュケナージ

ショパンとリストで別人に

ボックス1枚目はショパンとリストを取り上げています。彼のピアノは弾き分けがうまく、7曲目までと8曲目以降はまるで別人です。ショパン曲は暗く重苦しい気持ちにさせてくれます。7曲目バルカローレ(舟歌)なんか傷心旅行で川に揺れながらいったいどこまで落ちぶれていくのかもうどん底って感じです。

リストが神々しい

対照的に、リスト曲は天井の彼方まで連れ去ってくれます。8曲目超絶技巧練習曲(すごいタイトル)が始まった途端天井から大量の光が漏れてくるようです。超絶技巧と銘打ってますが、リストの過剰なまでの壮大な曲構成力が背骨を支え、さらに指が15本くらい必要そうな大量の音を流し込むことで他では聞けないようなド迫力の演奏が繰り広げられます。特に11, 12, 13曲目は胸の奥がぐぐーと押されたり広げられたりして聴いている方も大変です。13曲目がいちばんすごい。大河が押し寄せる様子や大きな山々、宇宙の彼方などとにかく大きな大きなものが想像されます。美しい。。このCDを聴いて自分ってリスト大好きなんだな、と再認識しました。

 


Ashkenazy plays Liszt Harmonies du Soir – YouTube

楽譜で見てみるとオタマジャクシの群れにしか見えないですね。

 

自信をもってお勧めできる1枚です。

 

Tracklists

 

Frederic Chopin:

1. Scherzo No.4 In E, Op.54
2. Nocturne In B, Op.62 No.1
3. Mazurka In A Flat, Op.59 No.2
4. Trois nouvelles etudes, Op. Posth.: No.1 In F Minor
5. Trois nouvelles etudes, Op. Posth.: No.2 In A Flat
6. Trois nouvelles etudes, Op. Posth.: No.3 In D Flat
7. Barcarolle In F Sharp, Op.60

Franz Liszt:
8. Etude d ‘execution transcendante:: 1.Prelude (Presto)
9. Etude d ‘execution transcendante:: 2.Molto vivace
10. Etude d ‘execution transcendante:: 3.Paysage (Poco adagio)
11. Etude d ‘execution transcendante:: 5.Feux follets (Allegretto)
12. Etude d ‘execution transcendante:: 10.Allegro agitato molto
13. Etude d ‘execution transcendante:: 11.Harmonies du soir (Andantino)
14. Etude d ‘execution transcendante:: 8.Wilde Jagd (Presto furioso)
15. Mephisto Waltz No.1

 

 

 

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CDレビュー: the HIATUS – Keeper Of The Flame (2014)

★★★★★

the HIATUSは日本のオルタナティブ・ロックバンドです。細美武士という人が中心のバンドで、日本ではそこそこ売れているようです。

センスの良さに裏打ちされた丁寧な音作り

最も耳を引き付けるのがブレイクビーツの使い方の上手さです。私はリズム大好き人間なので、センスよくビートを重ねてくれるアーティストは大好きです。

シンセの使い方も上手です。オルタナというとカッチョ悪い電子音が入ると全てをぶち壊しにしてしまうおそれがあるので怖かったのですが、例えば3曲目Unhurtや7曲目Roller Coaster Ride Memoriesでは下側からうまいことシンセを潜らせて効果を上げています。実に丁寧な音作りをしていると思います。5曲目Sunset Off The Coastlineの序盤、水族館の洞窟型プールから光が漏れているような空間作りも上手ですね。

ラスト2曲が特に優れています。10曲目Don’t Follow The Crowdはリズム萌えと心を煽るカタルシスを融合させた良曲、ラストBurn To Shineは空気感と音圧で押しまくる盛り上げ昇華系燃焼ソングです。

ヴォーカルの湿り気をサウンドで覆い尽くす

正直なところヴォーカルの声は醤油的な上に線が細くてちょっと苦手です。裏声も苦手。ただし本作は良質なサウンドがカバーしてそれほど目立ちません。次はヴォーカル抜きのアルバムを作ってもらいたいですね。

期待よりも良かったので過去の1~3枚目も聞いてみようと思います。

 

 

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CDレビュー: Metallica – …And Justice For All (1988)

★★★★☆

メタリカ4枚目です。

メタルとしての構成力は4作中最もよい

本作はほとんどの曲が6分を超えており9分超えも2曲と大作揃いで、かといって単調ではなく展開が上手で飽きさせません。特に表題曲…And Justice For All は見事です。幹線道路のような太い芯を通しながらも次々と曲調を変化させ気が付くと9分46秒経っています。言うなれば環八ロックですね。

8曲目To Live To Dieも純インストの長編曲ですがこれも構成がよくできていて、やはり多摩ニュータウン通りのような巨大な背骨の先頭や最後にトンネルを付けたり車窓からマンションだらけの無機質な街を映してみたりする曲です。イメージが道路ばっかりですね。それも夜に限ります。自然破壊を伴っているところが特徴です。

本作は2, 3枚目で見られた若干軟派気味な曲はほとんど存在せず、4曲目Oneの前半だけにしか見られません。といってもこの曲、後半は6連符連発の超硬派に変わります。じゃあ全編硬派ですね。いわば超合金Zメタルです。メタルだけに言葉が重なってしまいました。

爆音のミキシングが仇に

本作で誰もが印象的に感じるのは変わったミキシングでしょう。ベースが聞こえません。そのことを批判する人は少なからずAmazonのレビューにもいらっしゃいます。私はベースについては気になりませんでした。これはこれでアリだと思います。ただし、ドラムを思いっきり強調していますがこれは失敗です!ドラムがヘタクソなのがこの上なく強調されてしまい、そればかり気になって数多くの曲が台無しになっています。特にバスドラムがひどく、…And Justice For All は見事と書きましたが実はバスドラが高速で入るたびにグチャっとなり、演奏へののめりこみ度が一歩引いてしまいます。よく出来た曲なのに本当に残念です!

 

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CDレビュー: 75 Jahre Donaueschinger Musiktage 1921-1996 (CD12) Olivier Messiaen, Elliott Carter, Wolfgang Rihm, Johannes Kalitzke

★★★★★

1,2曲目に注目

1曲目はオリヴィエ・メシアンという作曲家で、たまたま次の現代音楽の試聴ターゲットにしようと思っていた人です。

この人は絶対音感と共感覚の持ち主で、あらゆる現象を音に還元できるすっごく変な人です。さらに無類の鳥マニアで、鳥に関連する曲を大量に作ります。鳥の声を全て12音階に落とし込むのです。1曲目Réveil des oiseaux, for piano & orchestraは、最初から最後まで鳥が鳴きまくるというとてつもないカオスに包まれた曲となっています。

参考映像:この映像は10分ですが当CD版だと21分あります。

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2曲目エリオット・カーターによるオーボエ協奏曲も好みの曲です。オーボエという存在感があるような無いような楽器を主役に添え、周りの弦も安定しているような全然していないような不安定なまんま延々突き進みます。一般的なクラシックに存在するクライマックス、最終的な解決もカタルシスも調性もありません。最後は静寂で終わります。

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4曲目Nachtschleifeもかなりキテます。全編声だけで構成されてますがプシャーとかブシーとかデデデデとか擬音語たっぷりです。ふなっしーもびっくり。残念ながら参考映像はありませんでした。

12枚聴き終えた。。なぜ私たちは音楽を快いと感じるのか

初演の現代音楽しか演奏しないドナウエッシンゲン音楽祭のボックスということで、常に時代の最先端、Leading Innovationな音楽が上演されていたチャレンジ精神あふれる曲ばかりでした。現代音楽は既存の価値観と再構成、パラダイムシフトを追及する音楽ですので、聞き手の意識変革も必要となります。いかなる意味不明な音が流れてきてもそこには作曲家の思想が込められています。訳わかんないよ、と異質なものをシャットアウトするのではなく、俺様が意味を理解してやる、くらいのエンタープライズ心がないととても最後まで聴きとおせません。何回聴くのをやめて投げ出したくなったか分かりません。なんとか最後まで聴きとおせたことで、もうどんな曲がやってきても聴き続けられる自身が付きました。

私達が音楽を快いと感じるのは何故でしょうか。音は物理的な波、空気の疎密の揺らぎに過ぎません。我々が音に意味を付け、その意味を発展させることで音楽が生まれます。つまり我々は音楽を聴くことを通して音楽を作っているのです。音楽は言語と同じような位置づけにあると言えます。口語も音ですから、主体が私達であることに変わりはありませんね。

言葉から快が生じるように、音楽からも快が生じえます。最も典型的なのは反復だと思います。以前に聴いた音の組み合わせをもう一度聞くと、「同じ音」という記憶の塊のような部分に電気信号が走り、それによって快感が得られる、という仮説です。現代ポップスの「サビ」「リフレイン」などはインスタントな反復装置を提供する仕組みです。中毒させることを意図したカタカナ語が他にあった記憶がありますが思い出せません。王道のコード進行パターンなんかもこれにあたると思います。

現代音楽は真っ向からこの反復に対抗します。新しい音楽は過去の反復であってはなりません。創造的な音楽は過去の反復遺産からの決別、離脱によって成り立ちます。そして創造は未来永劫やむことはなく、しかも我々に即効性のある「快」をもたらすことはほとんどない、という運命にありそうです。何故なら私たちがその音楽から反復による「快」を享受するとき、その音楽はもはや新しくないのですから。。

しかし新しい音楽からも突然「快」を得られることもあります。例えば3枚目の四分音を使った弦楽四重奏には衝撃を受けました。

私にとっては大きな「快」をもたらす音楽でしたが、これはどうして「快」と感じたのか未だにわかりません。今後も考え続けていこうと思います。そして、このような曲に巡り合うため、もっと多くの音楽を聴きたくなりました。

 

Track List:

   1     
Réveil des oiseaux, for piano & orchestra, I/40
Olivier Messiaen
                
    2     
Oboe Concerto
Elliott Carter
                
    3     
Frau / Stimme, for soprano & orchestra with second soprano
Wolfgang Rihm
                
    4     
Nachtschleife
Johannes Kalitzke

 

 

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CDレビュー: Yes – Big Generator (1987)

★★★★☆

前作90125でドキドキ感が完全に失われてしまったYesに私は失望してしまいました。Yesのアルバムを聴き続けるかどうか悩みました。聴き続けても音楽的な感動が全く得られないんじゃないか、残り時間の限られている人生の無駄遣い、金の浪費になるのではないか。

しかしYesというバンドを選択した責任は私にあります。選択した以上は最後まで付き合うのが筋です。音楽性の変遷、時代の流れ、メンバーの入れ替わり、期待、失望、すべてひっくるめて聴くのは示唆に富むはずであり長い目で見て今後の音楽体験に役に立つに違いない、と納得させるような気持ちで聴きました。

今後も1つのアーティストを追いかけるように聴いていくスタイルを続けます。

80年代サウンドの枠内だが所々光る音も

1曲目Rhythm of Loveのイントロが終わるや否や、案の上ださい音遣い、頭からどこかに抜けてしまうエフェクト付きのへにょドラムにがっくり来ました。しかし前作と違って全くドキドキしないわけではありません。所々に小さい仕掛けがあり微ドキします。

3曲目Shoot High Aim Lowで突然音の作り方が変わります。シンセがださくないし、私の好きなオルガンが入ってきて単純なポップとは毛色が変わってきました。

後半2曲で創作性が復活か

6曲目Final Eyes, 7曲目I’m runningが若干長めで起承転結・メリハリのある構成です。単純な8ビートも嫌いではないのですがどうしても心にしみてきません。この2曲は音に時代の影響があり昔の曲と比べるとパワーが落ちるものの、久々に創作性が感じられドキドキする曲を聴くことができました。

 

 

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CDレビュー: The Rough Guide To Music Of Gypsies(1999)

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ジプシー

ジプシーとは、Egipcienを縮めてgypsy、「エジプトからやってきた人」という意味です。「ジプシー」という表記は自称ではなく他称でしかも差別的な意味合いがあるそうなので、自称の「ロマ」と言い換えるのが適切と一般に言われているそうですが、このアルバムに限っては「ジプシー」という表記が正しいです。「ロマ」は特定の民族を表しますがこのアルバムはインド系のドム・バンジャラやギリシャ系・中東系など幅広い音楽が混じっているため、「ロマ」と一括りにできません。

シリーズ最高傑作

彼らは流浪の生活を経てきましたので、インド~中東~中央アジア~ヨーロッパのすべての音楽が混じり、さらにいかなる場所でも差別的待遇を受けてきたという過去から、どの音楽も楽観的・肯定的・底抜けの明るさの中に哀愁を感じさせるという特性を備えています。私の一番好きなタイプです。

まず衝撃を受けるのが2曲目Ussa Saです。聞いてみてください。

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うっつぁっつぁ~うっつぁっつぁ~

極めて中毒的です。バンドネオンとバイオリンのコンビはスペインとイタリアの影響を感じさせます。

3曲目Doina Si Balaseancaも爆速でブラスが騒音をまき散らす他にない音楽なのですがyoutubeにありません。同アーティストの類似曲を貼っておきます。何故かこのビデオは渋谷が舞台です。まだHMVが撤退していない頃で、90年代のギャルも出てきます。

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この必要以上の明るさと、根底にほんのりと流れる哀愁感。。たまりません。

5曲目Anguthiはなんと純インドを思わせる音楽です。一体どれだけの要素が混じっているんだこの人たち。。

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9曲目Jastar Amenge Durもすごいです。今までに聞いたことのない泣きの強いギター、そしてこの歌!酒焼けでかすれたような吠えるど太い迫力ヴォーカルです。あなたの心臓鷲掴み!

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おばちゃんかと思っていたらイケメンでした。表示されている通り彼はギリシャ人です。本当に守備範囲の広いアルバムです。

他にもいかにもイスラム的な7曲目Love Birds、独特のスウィングでぶっ飛ばす8曲目Cind Eram La’48、「ハッ!」と合いの手を入れるフラメンコの要素を強く含んだ16曲目Cigany Szinekなどプッシュしたい曲ばかりです。どの曲も心の底からノッている、魂を絞り出しているようなパワーが感じられる稀有のアルバムです。

ジプシーたちの音楽はRough Guideシリーズで他にも何枚かリリースされているので、他のアルバムも期待大ですね。

 

 

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CDレビュー: Paul Motian – The Story Of Maryam(1984)

 ★★★★★

Complete Remasteredシリーズです。このボックスを聴くのは3回目です。安く過去の名盤がリマスター込みで手に入るのはとてもうれしいです。今回は、ドラマーのPaul Motian(1931-2011)のボックスを聴いていきます。手に入れてから気が付きましたが6枚目Flux And Changeがエンリコ・ピエラヌンツィのボックスとかぶっているのが痛いです。。

ポール・モチアンはジャズドラマーです。ビル・エヴァンスやセロニアス・モンク、ポール・ブレイ、キース・ジャレットなどと共演し、50-60年代に活躍しました。70年代以降はリーダー作を作るようになり、このアルバムもモチアンがリーダーです。

またインプロ!

6枚組の1枚目となるThe Story Of Maryamはいきなりインプロだらけの抽象性が強い1枚です。前回アンソニー・ブラクストンのボックスもインプロだらけで苦しい作品が多かったのですがこのアルバムも相当なものです。何故かエレキギターも入っており訳の分からなさに拍車をかけていますが、このエレキギター、上手だし妙に美しいのです。Bill Frisellというギタリストらしいですね。

特に前半は退廃的で、テキサスの荒野に放り込まれて置き去りにされたような気持ちになります。

5曲目の破壊力と6曲目の切なさのコントラストでハートを掴む

5曲目Look To The Black Wallがやばいです。最初から最後まで7分近く全員全力で演奏を続けます。コード進行や8ビート16ビートというような秩序だったものは全くありません。濁流を流し込むようなサックス2本と真ん中でうねるギター、何やってるのかわかんないけど気合だけ伝わってくるモチアンの爆裂ドラミングが一体となって、台風(アメリカだからハリケーンか?)がやってきたような目茶目茶な演奏を奏でます。

そしてラスト6曲目タイトルチューンThe Story Of Maryamだけ秩序がありしかもしっとり切ないチューンです。5曲目と落差がありすぎます。このコントラストのせいでいつまでも胸を締め付けられるような感覚が残るというわけです。上手に構成してます。なお、Maryamというのはアラビア語でキリストの母マリア様のことだそうです。一体どういう気持ちで演奏していたのでしょう。。

 

 

 

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CDレビュー: Hampton Hawes – Trio Vol.1 (1955)

★★☆☆☆

ジャズの100枚。の17枚目です。

ハンプトン・ホーズ(1928-1977)はアフリカ系アメリカ人のジャズピアニストです。例に漏れずドラッグ中毒であり、早死にです。

こんなこと言うとジャズ好きの方に怒られると思いますが、全く良さが分かりません。雑です。雑すぎます。酔っぱらいの音楽です。トム・ウェイツのようにその酔っぱらい加減が味になるアーティストもいますが、この人の演奏は自分のタンパク質が拒否します。全体を通して演奏が悪い意味で崩れており、音が固く肌にペチペチと当たる感覚がしてノれません。爽快なはずのグリッサンドすらも耳に立ちますし、いいところが見当たりません。9曲目 The Foolish Thingsもいい曲なのに、石でも投げられるような適当なラストで幻滅してしまいます。

 

タンパク質と言えばうちには「タンパク質の音楽」という本がありました。以前飛ばしながら読んだことがあるだけなので、このモヤモヤした気持ちを解消させてくれるかもしれません。今度読んでみようと思いました。

 

 

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CDレビュー: J.S.Bach, Pierre Fournier(Vc) – Cello Suites (DG111 CD14, 15)

★★★★★(*´ω`*)

ピエール・フルニエ(1906-1986)によるバッハ無伴奏チェロ組曲集(全曲)です。2枚組138分とかなりのボリュームです。第一番の前奏曲は非常に有名ですので、聞いたことがある方は多いでしょう。私も昔テレビCMで聞きました。

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バッハの曲と言うと形式ばって堅苦しく取っつきにくい印象を持つものが多いですが、この曲は親しみやすさを感じました。というのも、ほとんどが舞曲であるため人間のリズムと調和しているからだと考えられます。

一本の楽器で演奏するとは思えないダイナミックな曲、フルニエさんの鳥肌が立つような気持ちの入れ方が際立つ演奏。いま↑の音声を聴きながらこの記事を書いていますが前奏曲のラストはお腹に響く歌いっぷりですよ。すごい。

他にはNo.2のジーグの快活なノリの良さ、No.3の前奏曲のアルペジオを引いているだけなのに大きな塊が迫ってくるような圧倒性にも驚かされました。No.5以降は突然趣向が変わり暗く重々しくなり長大になります。何があったのでしょうね。フルニエさんは全曲を通してとにかくタメるは歌うは全身全霊を賭けているような印象を持ちました。でも聞いていて疲れるわけではありません。不思議です。

チェロ組曲を通しで聴いたのはこれが初めてです。他にもヨーヨーマなど名立たるチェリストがこの曲を録音しているそうですが、フルニエさんと比べてどのような演奏をしているのかとても気になります。

 

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CDレビュー: Franz Schubert, Dietrich Fischer-Dieskau(Bar), Gerald Moore(pf) – Winterreise (DG111 CD13)

★★★★★

美しい!

シューベルトの歌曲集「冬の旅」は、ヴィルヘルム・ミュラーというドイツの詩集にシューベルトが歌を付けたものです。失恋した若者が死を求めながらクソ寒い冬の中さすらいの旅を続ける、という筋書きのためドイツ語が全く分からなくても冒頭からラストまでめちゃんこ暗いことが聴き取れます。また、シューベルト自身も体調を崩ししかも貧乏、さらに尊敬していたベートーヴェンが死ぬしもうどん底、死について深く考えていた時期であったことが暗さに拍車をかけています。そしてシューベルトは作曲した翌年に無くなります。後半12曲はシューベルトの死後に出版されたそうです。どんな気持ちで亡くなったのでしょう。

しかしながら、極度の絶望は転じて美しいものです。友達に絶望している人がいたら正直困りますが、作品の中で絶望しているのは美しく見えてしまうものです。人間とは無責任なものですね。

1曲目でいきなりマイナー→メジャー転調が出現します。少し前に聴いたタンゴ曲にも表れていた、日本歌謡曲黄金パターンの進行です。歌謡曲はシューベルトを参考にしていたのかもしれません。

フィッシャー=ディースカウさんのバリトンの歌唱も見事です。抑えて抑えて、ここぞというときに爆発させる私好みの歌唱法です。また歌では必須の要素ですが、声が良いです!魅力的。

それにしてもドイツ語が分からないのがもどかしい!絶対に勉強して詩を理解できるようになるのだ、という気持ちを奮い立たせる力のある楽曲でした。

 

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