CDレビュー: Clark – Feast/Beast(2013)


★★★★★
エレクトリック魔人Clarkさん。この人は天才であると思う。1曲として似たような曲がない。自分の好きな音を重ねていったらこんなんできちゃいました、と思われる29曲(他人の曲も数曲入ってるけど)。狂気と哀愁と静謐と押しの強さが全部同居している。

Disk1はどちらかというと静。6曲目 Glow は何が起きてるのか分からんが中毒性がある。10曲目Peterのようにこっちに迫ってくる曲はダメージが大きい。さらに11曲目Untitledで底まで落ち込んだ心を12,13曲目のBibioさんのリミックスが救ってくれる構成に驚いた。1枚目は深入りするとマズそうな曲が多い。

Disk2は動、テクノ系ビートが多め。2曲目My Machinesのような変態シンセはどうやったら作れるんだろうね。3曲目D&T、6曲目Let’s Get Clinicalもやばい。原曲一つも知らないけど、きっと目茶目茶になってるんだろうなぁ。11曲目Siberian Hootyはこれは一体リズムがどうなってるの?12曲目Hammersmashedが一番このアルバムで破壊力大きい。最初から最後までわけわかめの狂気尽くし。いや、ちゃんと曲の体裁は整ってるんだけど、わかるようで何やってるのか全然分からない。で、ラストThe Galactic Tusks、珍しいパッド重ねまくりのアンビエントで荘厳に全く救いがなく終わってしまう。

バカ高い技術と常人には真似の出来ない音の配置を2時間程度たっぷり堪能できる素晴らしいアルバムでした。
この人の曲で初めて聞いたHerr Barの衝撃はいまだに忘れられない。ビデオは初めて見たけれど、相当キテるね。これを作ったR James Healyという人の精神を疑う。

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CDレビュー: L.E.D. – 電人K (2008)


★★★★☆
だいぶ前の作品。beatmania5鍵盤時代からいるアーティストさんの1stアルバム。はじめてGENOM SCREAMSをプレイしたときはびっくらこいたな。こんな難しいの叩けないよ!と思ってたけれど、あっという間にレベルのインフレが起こって12段階の7程度の中堅曲になってしまい、IIDXになり7鍵盤になって、時代が進んでいった。。

で、このアルバムはレベルが高い!1枚目はERaSeR EnGinE DistorteD、SOLID STATE SQUAD、STEEL NEEDLEがゲーム版を超えており、2枚目のリミックスも総じて外れが少なく、特に2,3のTHE SHINING POLARIS-kors k mix-、ACID VISION-Allotropy Artcore Mix-が原曲を凌駕している。
bemani系では一番のおすすめです。

昔を振り返ってbemani系を聞いていたけれど一旦中断します。

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CDレビュー: beatmaniaIIDX 21 SPADA Original SOUNDTRACK Vol.1


★★☆☆☆
いまいち。前作よりパワーダウンしている印象を受ける。

以下良いな、と思った曲です。好きな順。

1.ジャカルタファンクブラザーズ – INSOMNIA
今作ではダントツでよい。初っ端の超重低音、突飛な音ネタ、全体的な意味不明の空気、終盤のダサいメロディーどれを取っても好き。

2.L.E.D. – EXTREME MACH COLLIDER
乾いた四角い金属テクノならこの人。

3.猫叉Master+ – Funny Shuffle
なんというアシッドジャズ。。こんな曲をIIDXで聞けるとは思ってもなかった。前作に引き続き脱帽しました。

番外.youhei shimizu – mnemonic
鼻血が出るくらい懐かしい曲。これは当時自宅からかなり離れたところにあるゲーセンにしかないbeatmaniaIIIという筐体に収録されていた曲で、当時気に入っていただけに、ゲーセンに一緒に通った友人たちのことが思い出されてならない。みんな元気でやってるだろうか。2000年のゲームなので、なんと14年前だ。

以上4曲以外は、いまいち。このサントラにはデフォルト曲しか収録されておらず、隠し曲やボス曲は8月に出る第2弾のサントラに収録されるそうなので、そちらに期待するしかない。

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CDレビュー: Verve Jazz Masters 50 : Sonny Stitt


★★★★☆
スタンダードなジャズでグッと来たのは初めてかもしれない。このシリーズは色んなアルバムから寄せ集めた(と思われる)ごちゃまぜなベスト盤といった趣で、ステレオだったりモノラルだったり録音が突然荒くなったり順番もめちゃめちゃ。そんな統一感のないアルバムだけれど、一人のアーティストの演奏をざっと知るにはうってつけだ。05 Walkinのように鼻で吹いてるような軽快な演奏から03 Sonny’s tune(モノラル)のようにはっちゃけたり06 Do Nothin’Till You Hear From Meのようなしっとり演奏もこなす(でもちょっと軽いかも)。

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CDレビュー: 上原ひろみ – Alive(2014)


★★★☆☆
ジャズピアニスト上原ひろみの最新作。ここ最近の3作はいずれもピアノ+エレキベース+ドラムのトリオであり、ジャズというよりは殆どロックに近いスタイルの楽曲が特徴。上原さんのこなれた曲作りはさすがと言わざるを得ないが、何かが足りない。このアルバムはドラムの下手さが際立つ。特に3曲目Dreamerはひどい。序盤にピアノとベースが半拍ずれてドラムがシンコペーションになるところでずれまくりで、がっくりとくる。期待が高かった分がっくりも大きい。1曲目の後半のドラムラッシュもよく聞くとピアノと激しくずれている。のれない。8,9曲目は良かったので残念。

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CDレビュー: 猫叉Master+ – Backdrops(2009)


★★★☆☆
IIDX trocoroの氏の猫叉Master+名義の曲が良かったので、期待して聞いた。プラス名義を使うときは冒険する曲が多いらしく、2曲目being torn the skyはヴォーカル+猫叉節+サビの前の溜めが上手く非常に良かったが、その後パンチの効いた曲がなかった。唯一、11曲目Crackはサックスソロとブレイクビーツをぶつける意欲作だと思ったが、肝心のサックスソロに破壊力が足りず「き・・・きかぬ きかぬのだ!!」と涙するラオウのような気分になった。ゲーセン現役時代にプレイした曲が6曲も入っていて感慨深かったが単一の楽曲として聞いてみるともうひとひねり欲しかった。

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CDレビュー: Giacomo Puccini, Rome Opera Orchestra, 1959 – Turandot (RCA Living Stereo Collection CD49,50)


★★★☆☆
トゥーランドットはイタリア語の勉強の事始めとして教材に使っていたもので、大学の音楽論の講義でも使われていたこともあり思い出深い。

プッチーニさんの楽曲はとにかくド派手。オペラなのに登場人物がみなキャラ立ちしていて魅力的で、特にピン・ポン・パンの大臣三人衆が好き。一番好きな個所は、第一幕ラストの鐘を3回鳴らすまでの部分。登場人物が掛け合いながらクライマックスに向かうこの場所は何回聞いても鳥肌が立つ。

この演奏は海外では評価が高いようだけれど、個人的には声が埋もれてるし迫力も薄いので残念だった。初めに衝撃を受けたこの演奏の方が好み。日本語字幕のついたDVDもある。このDVDは超豪華な舞台装置、小林幸子もびっくりなトゥーランドット姫の衣装など見どころも満載で、おすすめ。

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CDレビュー: King Crimson – Larks’ Tongues in Aspic


★★★★★
5thアルバム。
まず1曲目から衝撃の表題曲Larks’ Tongues in Aspic, Pt. 1。冒頭に流れてる爪で金属の板をはじく楽器、良く行く雑貨屋で流れてて好きなんだけれど名前は何て言うんだっけ?(追記:カリンバです)

と考えてたらギターが流れてきて、あとは即興の嵐。アルバム全体に流れている民族楽器とロックが程よく調和している。3曲目Exilesがまたツボにハマる構成で泣ける。和音や弦も素晴らしいが何よりドラムが泣かせる。スネアロールだけで泣けてくる。何なんだこの人。

5曲目The Talking Drumもドラムが主役。6曲目Larks’ Tongues in Aspic, Pt. 2も後半部のドラムが神がかっていて戦慄した。このアルバムの邦題は「太陽と戦慄」って言うらしいけどなんか間違ってないか?最初から最後までドラムばかり聞いてしまうアルバムだった。

調べてみるとこのアルバムで打楽器担当のジェイミー・ミューアさんは、収録後アルバム発表前に仏教修行のため脱退してしまったらしい。惜しまれる。

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CDレビュー: beatmania IIDX 20 tricoro ORIGINAL SOUNDTRACK vol.1

(ちょっと恥ずかしい)
★★★☆☆
昔ハマっていたゲームの第20弾サントラ。自分はまともにプレイしたのが13くらい、17以降は触ってもいないので、とうとう20も出たか、と思うと感慨深い。
回を追うごとにターゲット層が低年齢化していって、硬派な曲がどんどん少なくなっていって気持ちも離れて行ってしまった。前回Lincleのサントラが非常にイマイチだったこともあり、このサントラには期待していなかったが、どうしても気になるので効いてみた。いつも通りボーカル曲はほぼすべて量産型女性ボーカルなので飛ばしてしまったが、それ以外の曲のクオリティは高い。ほとんど、常連の作曲者ものだけれど。。

・気になった曲Top5

1.DJ MURASAME – 仮想空間の旅人たち
一番ツボに入ったのはこの曲。非常に不思議な音の使い方をする。ダサい一歩手前のガケを行ったり来たりする。メロディーも全然予測できない動きをする。古臭いような定番のようなでも一風変わっているアルペジオ。それらが全体的に組み合わさって曖昧で宙ぶらりんな浮遊感を形成している。4分もあるのでおかしいなと思ったら、なんとSPとDPで1曲を構成しているのだとか。プレイ末期はDPerになっていた自分としては嬉しい仕掛けだ。

2.yu_tokiwa.djw – rumrum triprets
好きだった曲 murmur twins + Linus のリアレンジバージョン。やっぱりいい曲でした。

3.Eagle – S!ck
流行りのダブステップを一応取り入れてみたものの、それの向こう側に駆け抜けてしまっている姿勢が素晴らしい。展開が慌ただしくごちゃ混ぜなのも非常に良いです。

4.ユニバーサル度胸兄弟 – Thor’s Hammer
ジャニーズ的存在のイケメンであると同時に天才ピアニストとして有名なリスト様が作曲した超絶技巧の代表曲ラ・カンパネラをIIDXで叩かせようとする意欲作。最初から最後まで爆音のクライマックスのまま進んで終わるので始め聞いたときは笑ってしまいました。

5.猫叉Master+ – portal
氏の曲は独特の哀愁コードを必ず使用していてそれはとても良いのだけれどワンパターンになりがちであまり得意ではありませんでしたが、この曲では独自性を保ちつつ6/8+4拍子混在など斬新なリズムパターン、今までにないメロディーなど新たな境地を見た気がします。

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CDレビュー: Charles Koechlin – Quintettes

★★★★★

[Youtube]同CDの後半、Quintette pour piano et cordes, Op.80

20世紀前半、フランスの作曲家ケクランの室内楽。弦楽4本+ピアノのクインテット。
以前NHKで「クインテット」という番組をやっていた。宮川彬良さんと人形4体がコントや歌、そして本格的な演奏会をする素敵な番組だった。彬良さんのアレンジが優れていることもあって、とにかく演奏がすごい。ピアノと弦が4本あれば、オーケストラに負けない音楽的宇宙が表現できることに毎度感動しながら見ていた。そして、このCDでクインテットの持つ力を再認識した。

音楽史に疎いことを断ってから書くと、20世紀前半に作られた曲は、新しい表現を探すために調性をぶっ壊している過渡期であるためか、崩壊と調和の狭間をさまよっている曲が多いように感じる。調性から外れると秩序から外れるので不安になる。この時代より下ると外れっぱなしで不安なまま終わって意味不明、心にもなかなか訴えかけないのだが、このあたりの時代の作曲者(特にフランス系の人たち)は最後に必ず調和をもたらしてくれるので、自分はそのギャップのせいか、いたく感動する。

後半のOp.80は、1-3曲目ははっきり言ってわけわかめだ。しかし最後の4曲目が素晴らしい。タイトルの”La Joie”という言葉通り、演奏を聴いている間も聞き終わった後も、体の中が喜びで満たされることこの上ない。

別アーティストによるOp.80の演奏。

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