CDレビュー: Gary Peacock – Now This(2015)

★★★★☆

ゲイリー・ピーコックはアメリカ合衆国のジャズベーシスト(80歳!)。創作欲旺盛で、ECMからのリリースはなんと40枚目なのだそうだ。脳みそ刺激系の大展開を広げる曲は皆無で、全曲渋い。渋すぎる。ジャケットのせいで想起される宇宙に比べて私たちちっぽけすぎる感が充満しており、特にタイトル曲と思われる3曲目This, 4曲目And Nowで顕著である。目の前で演奏しているようなドラムスが気持ち良い。

 

 

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CDレビュー: Hecq – Mare Nostrum(2015)

★★★☆☆

前作が割と良かったので、2枚目として聞いてみた。

a large glass box and a loud hum fill the nave of the deconsecrated chapel. inside the box is marenostrum, the largest computer in spain. from the outside, the only sign that it is alive are the blinking lights and the noise from its ventilators. but marenostrum can say much more – it just needs someone who can hear it.

スペインにある最大のコンピュータ、marenostrumを使って作曲したそうだ。CDの限界80分近くまで電子音を詰め込むわ詰め込むわ。そこから出てくるのは絶望の海か暗黒の夜明けか。。聴いていると滅入る。1曲19分は長すぎで、私には体力が続かなかった。

ジャケットから飛べるリンク先で視聴できます。

こちらのブログで未収録の5,6曲目が紹介されています。

 

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CDレビュー: Read Gainsford & Richard Spece – Music for Clarinet and Piano (2014)

★★★★☆

クラリネットはどことなく間抜けのようで、実は度量が広くて暖かい音を出す不思議な楽器だ。作曲者はいずれも20世紀の現代音楽家で、不安定なメロディーラインを特徴とする。現実と虚構、秩序と錯乱のあいだを行ったり来たり。これをクラリネットが演奏すると、ふざけているのか優しいのか狂ってるのか大真面目なのか全く判然としないのに、聞き手の気持ちはモヤモヤしない。何故かすっきりする。何度聞いても不思議な音色だ。

個人的には3番目のHamiltonさんの4番勝負が動きが大きく構成もアゲアゲだったり諧謔効かせまくりだったりで、一番好き。

 

 

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CDレビュー: ai kuwabara trio propject – Love Theme(2015)

★★★★★

桑原あいさんは1991年生まれ、ヤマハエレクトーンのコースから中学校時にピアノに転向、洗足のジャズピアノ専攻からデビュー。顔が地味。このアルバムは4枚目だそうだ。

 

 

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Hecq – Conversions (2014)

★★★★☆

リフレッシュのため、いつものローテーションと違うジャンルのアルバムを聞く。久しぶりに電子音楽が聴きたくなった。電子音楽はほとんどジャンクフードのようなものだ。毎日聴くには耳が持たないのに、時々無性に聞きたくなる。ラーメン二郎に似ている。

HecqはドイツのBen Lukas Boysenによるソロユニット。本アルバムは他人の曲のリミックスなのだそうだが、原曲は一つも知らない。

彼の作風は大きく二つに分かれ、1のZum Griefen Nah, 10のFinal Sleepのように比較的静かなアンビエント風のバックにエフェクト的な電子音を流し込むタイプと、2のHawa, 5のGodspeed、8のThirteen Acresなどリズムバキバキで暴れまわるタイプがある。後者についてはセンスが良い。Amon Tobinに次ぐ優秀なリズム作成マシーンだ。しかしアンビエント風の曲にはいまいちパンチが足りない。もっとこう、グッと来てギュッとならんもんかね!?ただし1曲目は例外で、ラストで余韻を大いに味あわせる構成に感銘を受けた。

 


Metallica – Ride The Lightning (1984)

★★★★★

2枚目。ラストのThe Call Of Ktuluだけでも、このアルバムを買う価値があると考える。9分近くの大曲を、シンセなし・ギミックなし・なんとヴォーカルもなしのストロングスタイルで起承転結を付けて飽きさせない展開が作れるロックバンドは早々ないと思う。お見事。

スラッシュスラッシュと言われるがこのアルバムの方向性は速さではなく、王道をゆくロックそのものだ。前作のような演奏を見せつける要素もないし、ストレートに勝負する任侠のようなものを感じた。メジャーを意識しているのか4曲目Fade To Blackのような少し軟弱な曲も入っている(でも後半が良い)。7曲目Creeping Deathのような変わった拍子の曲もよい。ギターは上手!


75 Jahre Donaueschinger Musiktage 1921-1996 (CD10) Pierre Boulez, Karlheinz Stockhausen

★★★☆☆

ブーレーズ先生全然わかりませんよ。。1曲目は初出1958年という早すぎたノイズ音楽。異様、という感想しかつけられない。残りは意味不明!!音楽っていったいなんなんじゃろうねぇ。

Track List:

     1     
Poésie pour pouvoir, for 5-track tape and 3 orchestra groups
Pierre Boulez
                
    2     
Structures, Book II, for 2 pianos
Pierre Boulez
                
    3     
Structures, Book II, for 2 pianos
Pierre Boulez
                
    4     
Structures, Book II, for 2 pianos
Pierre Boulez
                
    5     
Kontra-Punkte, for 10 instruments
Karlheinz Stockhausen

 


CDレビュー: Yes – Drama (1980)

★★☆☆☆

えー。

うっそー!!!全然ドキドキしないよ!!!!どうしたんだYes!!!

このアルバムはヴォーカルのジョン・アンダーソンとキーボードのリック・ウェイクマンが脱退した後に作られたそうだ。ジョン・アンダーソンはYesの天から降ってくるような音の要であり、リック・ウェイクマンはクラシックの素養があるということなので、彼の魅力的な演奏も失われてしまった。私の大好きなパイプオルガンは彼が弾いたものだったのだろう。この二人が抜けたらあとはギター野郎しか残ってないんだから、そりゃーだめだ。ピューと吹くジャガーさん風に言えば「カラッカラのペランペランだ!」

 

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The Rough Guide To Native American Music (1998)

★★★★☆

以前聴いた

The Rough Guide to Australian Aboriginal Music (1999) – diary 六帖

と同じで、侵略者にぶち壊されたアメリカ先住民の文化の悲哀を感じる1枚だ。2曲目Cherokee Morning Songや10曲目Are You Ready for W.O.R? なぞアメリカ文化に染まり切って堕落してしまっている。なんたることだ。

一方、7曲目Basket Danceや13曲目Victory Danceのようなトラディショナルな曲は燃える。そして極め付きは14曲目のこれ。

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ひたすらMickey Mouse!!! Minnie Mouse!! Pluto!! イエァァァ---Super Star !!!と叫んで踊るこの曲は、アメリカ文化への怒りと投げやりな気持ちにあふれている。必聴。


Anthony Braxton – Composition No.173 (1994)

★★★★★✌(‘ω’✌ )三✌(‘ω’)✌三( ✌’ω’)✌

Amazon.co.jp: Anthony Braxton : Complete Remastered Recordings – 音楽

このボックスもとうとう8枚目。散々訳わからん曲を聴かされたが最後の最後でとんでもないアルバムが収録されていた。ダントツの最高傑作だ。

ジャケットもやばいが内容もやばい。主な構成は、BGMに即興の演奏のかけらみたいなものを流しつつ、4人がドライブしながら様々な「音」についての議論を繰り広げ、「そうそう、XXXXXXXXYYZZZ××ーーー、こういう音!」と誰も思いつかないような擬音語(英語)を交えて力説する。力説中はオーボエやサックスのソロが擬音に合わせて「音」を表現する。これがイントロとアウトロを除く30分以上に渡って続く。ドナウエッシンゲン音楽祭もびっくりな超前衛的体験だった。擬音に合わせて吹けるソロアーティストもすごいが、4人の演技力もすさまじい。そして演奏者をよく見てみるとAnthony Braxton氏は演奏していない。。なんと conductor、って指揮者かよ!この内容で指揮者いるんだ!!二重に衝撃を受けた。

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本番は16分以降。