★★★★☆
2014年特集8枚目。Andy Stottはダブ・テクノ系の音楽プロデューサー兼作曲家。最も注目(注耳?)すべきは2曲目Violence。音自体は簡単なシンセとTR-909のドラム。なんだけれど、それにディストーションを主とした激しいエフェクトを掛けまくることで、大化けする。それに囁くだけの女性ヴォーカルを加えることで、本年度No.1の鬱テクノの出来上がり。後半にかけてのダウナーさは随一。トリッキーのOvercomeを彷彿とさせるような下げ下げサウンドだ。
ただこのエフェクト、くどい。5曲目No Surrender、7曲目Damageと多用されるとさすがに疲れるし、飽きる。2曲目だけで止めてくれればよかった。8曲目表題曲Faith In Strangerも落ち着いているだけであまり迫ってこない。もうひと押し欲しかった。
<電子音楽>
Aphex Twin – Syro(2014)
★★☆☆☆
テクノ界の巨匠、13年ぶりの新作。みんなが待ちに待ったAphex Twin。2014年内のエレクトリック系CDの中でも断トツの人気トップ。期待高まる。
でも、、ごめんなさい。私、この人の作る音が苦手なの!昔からそうなの!Selected Ambient Worksも、Richard D James Albumも、なんか受け付けないの!このアルバムも例外じゃないの!
1曲目の冒頭のビートで少しドキドキするも、シンセ音、パーカッション、ベース、それらの音の使い方が神経に合わない。2曲目XMAS_EVET10も10分間拷問の思いでした!辛うじて聴けるのは、ヒップホップと融合した3曲目Produk 29、わりとポップな9曲目タイトルチューンSyroぐらいか。ラストのピアノ曲Aisatsanaも哀愁そして優しさ成分が弱すぎ!に感じた。リンク先でレビューの人の言ってる「わずか数分の間にこれほどの情報量をもちこみ、かつそれらの膨大な要素が違和感なく溶けあっているよう」とか「独特の匂ってくるようなハーモニーセンス、そして強烈な牽引力を持った曲展開力」とか「精神の機微の様なものが感じられる」とか全然わからなかった。わたしゃ感性が死んでるのかね。
Clark – Clark(2014)
beatmania IIDX 21 SPADA ORIGINAL SOUNDTRACK Vol.2 (2014)
★★☆☆☆
2015年になったので、しばらくの間2014年の話題盤、気になった盤を中心に聴きます。
同作のボス曲と移植曲が中心の2枚目。アニメ声のヴォーカル曲も少量含まれるものの、ハードな曲が中心で非常に好ましいのだが、パンチのある曲がぜーんぜんない。新規アーティストに魅力を感じられない。そこそこ聴けるのは古参の人の曲ばっかり。
Eagle – Hypersonik ※序盤の空気感といつも通りの上手な展開
Vivian – Shattered control ※薄まった現代音楽の香り、ピアノ次第でもっと化ける
劇団レコード – Pharaoh ※昭和ダサ
sampling masters MEGA vs 青龍 – VOX UP ※CS版の昔の曲の再録
DJ TECHNORCH – 廿 (Extended 甘 Version) ※Vol.1にもある
L.E.D. – EXTREME MACH COLLIDER-FULL SIZE MIX- ※Vol.1にもある
以上を除いて、すべて残念賞。がっかり。音ゲー漬けだった昔の追憶と、日本のアーティストの電子音楽を聞きたい、という2点から、時々思い出したようにチェックしていたけど、自分が随分と変わってしまった。いい年なので音ゲーのCDを手に入れるのはやめにしよう。もう恥ずかしくて買えない。
しかしアニメ声ってどれも同じだよな。なんで若い子はあれが好きなんだろう。いつも同じだと安心するのかな。「俺の…戻ってくる場所がある…ここが俺のベストプレイス」と思えるんだろうか。私が戻れる場所があるとしたら昭和(自分が生まれるより前)のダサい曲とドイツ(自分が生まれる2世紀前)のダサい曲だな。
Amon Tobin – ISAM(2011)
★★★★★((((・ิ(・ิω(・ิω・ิ)ω・ิ)・ิ))))
前作Foley Roomは中途半端な印象を受けたが、このアルバムは、針が右側触れ切ってとんでもないものができてしまっている。決まった形、お決まりのパターンの繰り返しとしてのビートは、完全に姿を消してしまった。前作で取り入れつつあった自然音は、なんと反転させられ、自然音をベースとした電子音として我々の耳に届くのであった。。音圧アゲアゲのド迫力、かつ、不定形な電子の怪物。新世界のサウンドだ。
1曲目Journeymanでまず衝撃を受ける。不穏なカサカサした電子虫の後から電気的オーロラが見えるよ!3曲目ダブステップ風のGoto 10も全く聞いたことのないサウンド。シュールで破壊的だ。5,11曲目は混沌の中に哀愁が見える。9曲目Kitty Catはヴォーカル?曲ながら意味不明の中に優しさが見える名曲、12曲目Dropped From The Skyも遊んでるくせに音圧高すぎの極太サウンドという変な曲だ。
文句なしの最高傑作。自分的には、今年聴いた電子音楽ではぶっちぎりの1位だ。しかしアメリカAmazonでの評価は低い。なんでやねん。
Amon Tobin – Foley Room(2007)
★★★★☆
リズム番長Amon Tobinが別人になった。今まで多用していた他人の曲、音のサンプリングをやめ、自分でサウンドをすべて組み立てたと思われる。サンプルされている音は水道の音やトラの声、虫、機械、弦楽器、多岐に渡る。特に水回りの音で構成された5曲目Kitchen Sink、フライパンやガラスや食器をたたく音で構成された7曲目Foley Roomは新しいビートの可能性を探求した面白い作品だ。ただ今までのTobinさんの作品に存在した、不気味なエネルギー、破滅を感じさせる気持ち悪いうねりがこのアルバムにはあまり感じられない。音がクリーンすぎるのだ。機器の制約のせいか今までローファイ寄りのサウンドだったのが、このアルバムでは高音寄りになって、ビートを重ねても清浄な響きになってしまい、どこかで聞いたような既聴感?を感じさせインパクトが弱まってしまった。
Amon Tobin – Chaos Theory: Splinter Cell 3 Soundtrack(2005)
★★★★★
なぜに洋ゲーのサントラ!?
PCゲームレビュー「SplinterCell: Chaos Theory」
謎のメタルギア系のゲームに提供するには惜しい楽曲ばかり。過去最高密度のドラム群、いままでの楽曲の不気味成分を絞り出して濃縮したような背筋も凍る恐怖サウンド、特に1,2,9,10がすごい。1曲目Lighthouseのお化けベースと幽霊ストリングスに棺桶ビート、2曲目Ruthlessの最初から最後まで鳴ってる高音とゾンビ的ベース、ぐっちょドラム。開始2曲で大きくダメージを受けた。いずれも今までになかった曲調。こんなのゲーム中に流してたら気が変にならないか?9曲目Hokkaidoは北海道って言うより網走番外地だな。絶望しかない。ラストThe Clean Upはドラムやりすぎ。
Amon Tobin – Out From Out Where (2002)
★★★★★
4枚目。前作からの一番変わったのは、音質が格段に向上したこと。特に前半はヒップホップ風の曲もありやや明るく、夜中の2時が夜明け前の4時くらいになった。デジタル音の割合が増し、アナログ的な音を食っている。4曲目Searchersの印象が強烈だ。喉の詰まったような謎の笛なのか何かの音、突然入るストリングス、バックで流れている得体の知れないベース音と何考えてるかわからないドラムで気持ち悪さでは今までの曲の中で群を抜いている。ここからまた真っ暗闇の不気味なハイウェイぶっ飛ばし曲が増えていく。9曲目El Wraithも儀式めいていて怖い。毎回劇的に変貌するAmon Tobinさんの楽曲は次はどんな姿を見せてくれるのか。
Amon Tobin – Supermodified (2000)
★★★★★ ∩(・ω・∩)
リズム大魔神の3枚目。前作よりまた一段とパワーアップしてます。ビートの手数の次は中毒性が大いに増していて、曲自体もジャズ風味のテクニカルなサンプリング魔法が作り出すハイクォリティ。前2作同様アナログな音、デジタルな音が混在しており、アナログ的な音が余計に不気味さを掻き立てる。まず5曲目のGolfer vs Boxerが一つの山で、一貫して酔いそうなベースがうねる中を一度聴いたら忘れられないドラム旋風が吹き荒れる。意味不明シンセ、気味の悪いパッドなども手伝って緊張したまま突っ走る。6曲目Deoも泣きのアナログ音の中に高速ドラムンが駆け巡る印象的な曲だ。7曲目Precursorはボイスパーカッションだけでドラムが構成されている新機軸、8曲目Saboteurは木の音?のようなアフリカ風の打楽器で萌える。さらに10曲目Rhino Jockeyが素晴らしい。中東の香りと頭の悪いベースを漂わせながらサイとラクダの群れが行進してる様なパーカッションを何重にも重ねて、時々フルート?の音で調子をとって目を覚ますという壮大なようなアホなような押し出しの勝ち越しという感じの曲。
アルバムの度にうんと進化しているAmon Tobinさんに今後も注目だ。
Amon Tobin – Permutation (1998)
★★★★★
2年連続の2作目。
前作と比べて音質、ジャズ成分、薄気味悪さが大幅にアップした上に、ビートの破壊力が前作の2倍以上になっている。よくもまあ時間軸と波の高さしかない2次元のビートをこれほどまでバリエーション豊かに展開できるものだと思う。12曲全曲リズム萌えのできる非常に素晴らしいアルバムだ。今回のビートは野菜からスナック菓子へと粒状感もアップしている。さらにリズム隊以外の楽曲部もパワーを増しており、全曲を通してえも言われぬ緊迫感に包まれている。
どの曲もよいが、まず2曲目のBridgeが耳を引き付ける。サンプリングされているのは殆ど生ドラムだが、こいつが縦横無尽に延々暴れまわる。それでいて何故か後ろのジャズ音源と完全にマッチしている。爆音で聞けば爽快間違いなし。さらに4曲目Sordid、ただのビッグビートだと思ったら大間違い、後半に行くにしたがって何層にもわたるドラム捌きが展開されてゆく。7曲目Switchの冒頭部分はこの当時の音とは思えない意味不明の音が鳴っており、さらに9曲目Sultan Dropsも非常にインパクトの強い楽曲だ。曲名通り中東風だが、何か世界観が壊れていて、赤黒いどん底に押し付けられているような気になる。
非常にレベルの高いアルバムだと思う。リズムの王様だ。