★★★☆☆
電磁気を一度学んだことがある人の復習用としてはよくできたテキストです。電気、磁気に限らず、ベクトル解析や電磁波、電気回路までカバーする範囲は広いです。図も豊富です。が、よくまとまっているものの説明が超少ないので、初めて学ぶ人には全くお勧めできません。未習の電磁波の部分はまったく意味が分かりませんでした。章末問題は豊富ですが、解答しかついていません。残念。
★★★☆☆
物理と化学の他に、生物を受け持てる教科に加えたいので読みました。
ぼくが大学入試を受けたころは「生物ⅠB」「生物Ⅱ」でしたが、いまは「生物基礎」「生物」に分かれているそうです。「生物IB」の内容がかなり無印の「生物」の方に移ってしまったようで、「生物」の教科書は450Pありますが「生物基礎」は160Pしかありません。ペラペラです。
センター試験も変わり、国公立大学を受験する生徒でも文系なら「~基礎」でも受験できるようになりました。ただし50点満点なので、2教科とらないといけません。
絵を入れたり章のはじめにイントロの見開きを作ったり、読みやすくするための工夫をしていますが、余計に読みにくくなっている印象を受けました。本文は可もなく不可もなく。入試問題はここに書いてあることからしか出ないそうです。
一通り読んでから巻末のセンターチャレンジ問題をやったら38/50点取れました。いいんですかこんなんで。次は無印の生物です。
★★★★★
大学時代は熱力学の単位を落としたので苦手意識がありました。
本書は易しく読めます。いきなりフェルミ熱力学なんか読まないでこれを読んでおけばよかったです。2008年の本なのに学生役の女性がなぜか80年代ボディコンワンピを着ていたり、エントロピーΔS>0の図として学生がシワシワになった絵を載せている所は?と思いましたが、そこだけ目をつぶれば説明はわかりやすいし式は省略してないからわかりやすいし、良い本でした。
・温度Tは分子の運動エネルギーそのものである((1/2)mv^2=(1/2)kt)こと、したがって内部エネルギーは温度だけに依存すること
・熱力学第一法則「dQ=dU+dW」だけ覚えればほとんど説明できてしまうこと
・運動方程式F=d^2x/dt^2は時間を逆向きに流しても成立する(!)ので時間を説明できないが、エントロピー増大の法則を用いると時間を説明できること
が面白かったです。時間とは何かに踏み込んでいる点で。熱力学は哲学とも関係していることが分かりました。
天才カルノーさんの著書です
★★★★★
下巻は反応速度、中和滴定、溶解度、電気化学、無機・有機・核化学がテーマです。
反応速度定数や溶解度積の定数である K について多くのページが割かれており、非常に理解しやすいです。無機化学についての解説も充実しており、高校の知識だけだと遷移元素は隣り合った原子番号の元素の性質がなぜ似ているのか全く理解できませんでしたが、本書では電子軌道論を導入して、遷移元素は最外殻電子じゃない電子から埋まっていくからなんだよと説明がされていてなるほどーと納得しました。
上下合わせて大学受験の参考書としても申し分ありませんし、わかりにくい高校生向けの参考書を読むよりずっとためになりますが、有機化学の記述が40Pしかなく薄すぎるのが欠点なので、ここだけ補充する必要があります。
次はこれを買ってみようと思います。Amazonレビューを見ていると、中途半端なものを買うよりもこれくらい分厚い方がいいらしいです。
★★★☆☆
化学を生徒さんに教えるときの参考用に、図がきれいだったので読んでみました。
チョイスを失敗しました。「よくわかる」系の本はたいていよくわからない、の法則に本書も当てはまっていました。
図は豊富で直感的に理解できそうに思えるのですが、肝心の論理的な説明がばっさりカットされていて、全然納得できません。キャラクターに「圧力と温度が一定ならば、体積は分子数に比例するんだ!」と言わせてわかりやすさをアピールしているっぽいですが、そんなの隣のグラフ見りゃわかるわ!と思うし、逆に「だから仕事量を同じにすると、|Q2´|>|Q2|が成り立つんだ!」と言われてもええー全然わかんねえよ、、と思うし、キャラクターが全然意味をなしていませんでした。
既習分野の総まとめ的な使い方をするのには、よくまとまっていて優れていると思いますが、この本で1から勉強しようとしてもさっぱりぷーです。量子化学や気体分子運動論はブラディ化学上で一度学んだのでそれなりに楽しく読めましたが、熱力学は未習なので何が書いてあるのか全く分かりませんでした。ブラディ化学を読んだ方がよさそうです。
★★★★☆
生徒さんから電磁気の質問を受けることが増えたため、波・熱力学の2巻は飛ばして3巻から読みました。1巻・力学の世界は見えるものを扱うため想像しやすくすっきり読めましたが、電磁気は見えないもの、「場」の世界を扱うので、頭がついていかず読むのが大変でした。
ところが電磁気力、特に静電気力はこの世の中に存在する力のほとんどを占めているそうです。何しろすべての物質は正電荷を持つ陽子と負電荷をもつ電子の混合体で、人体の電子が1%多ければ地球すら持ち上げられるほどの力になるそうです!(P1)。
訳者ができる人のようで、ところどころ注で「ファインマン先生、ここは間違っているよ」というツッコミが入っています。
全体的に「マクスウェル先生は偉大」、「4つの方程式
http://www.maroon.dti.ne.jp/koten-kairo/works/transistor/Section2/momentum2.html
こそが偉大」ということを300頁にわたって説明された印象を受ける本でした。難しかった。
★★★★★
大学編入用の化学を学びたくて購入しました。化学未履修の人向けの大学1,2年生で講義する内容だそうです。高校の化学よりも取り扱う範囲は広いです。上巻では、モル、電子構造、化学結合、溶液、気体、熱力学などを扱います。
全体的に、知識の詰込みよりも「なぜそうなるのか」を言葉で説明することに重点を置いた教科書でした。ファインマン物理学とも類似しています。アメリカ発の教科書はみんなそうなのかもしれません。極性分子と無極性分子が混ざらないのはなぜか、分子間力(ロンドン力)が働くのはなぜか、やエンタルピー、エントロピーとは何か、などなど分かりやすく解説されていました。
数々の化学理論が出てきますが、著者は理論については謙虚な姿勢を取っています。
おのおのの理論は、同じ物理現象を表そうとしている…どの理論をとっても完璧なものではない。もし、完璧な理論があれば、その理論だけを習得すればよい。おのおのの理論には、一長一短がある。(P185)
大学受験用の化学の参考書としては化学の新研究が有名ですが、ぼくはこの本を大学受験に使用してもよいと思いました。電子軌道論まで説明がないと、遷移元素が典型元素と反応が違う理由が分かりませんし。暗記ゴリゴリで進めると必ず納得ができない箇所がでてきますから。
ただし難関大学への3年次編入を目指す場合は、シュレディンガー方程式の解の求め方などがバッサリ省略されているなど、この本だけでは不足でしょう。物理化学の本を他に読む必要があります。
★★★★★
リチャード・ファインマン先生による講義をテープ起こしして、さらに物理学者が再編集したテキストです。訳者は地球物理学者の坪井忠二さん。
数式は最小限に抑えられていて、かつ物理未履修の人でも理解できるよう、代数や微積分、ベクトルの解説もされています。ほとんどが「言葉による説明」であることがこの教科書の最大の特徴です。授業は脱線するし、そもそも第一講が原子の話から始まってます。
この教科書には「これについてはわからない」という記述が何度も出てきます。
「じっさい、我々の知っていることは、すべてなんらかの近似である。というのは、我々はまだすべての法則を知り尽くしているのではない」(P2)
「エネルギーとは何だろうか。それについては、現代の物理学では何も言えない。」(P50)
「自然界を記述するには…いろいろなものごとが不確定だということは、すべて取り除いてしまうことができると直観的に信じている。しかしこのことに成功した人は、まだ一人もいない」(P88)
ファインマン先生は分かることと分からないことにはっきり線を引いています。相対性理論や不確定性原理を考慮に入れると、時間とは、空間とは、確率とは何かという問題に必ず行きつくので、これらについてもページをずいぶん割いてあります。一回読んだだけでは分からないのでもう一度読んでみたいです。
読んでいて面白いし、サクサク読み進められる良い教科書でした。物理学を始めて学ぶ方におすすめです。ぼくは大学時代全く理解できなかったベクトル解析やポテンシャル関数、相対性理論の考え方をこの本で理解できるようになりました。
ただし具体的な力学の問題については、演習問題が章末に解説なしで載っているだけなので、これ1冊ではどうしようもありません。問題集は別途必要です。
ちょっと前にファインマン物理学のまとめ本?を読みましたが、読む必要はありませんでした。原書の方が刺激的でずっと面白いです。
★★★★☆
物理を生徒さんに楽しく教えられたらいいなあ、という想いで読みました。
著者のウォルター・ルーウィンさんは1936年オランダ生まれの物理学者で、MITの教授です。彼の物理未修者向けの講義はユニークな実験を必ず交えており、世界中にファンがいます。
例えば次の動画を見てください。15kgの鉄球を振り子の先に付けて手を放し、鉄球が戻ってきても元の高さを超えることはない、というエネルギー保存の法則を体を張って証明しています。
「私はエネルギー保存の法則を100%信じている。鉄球の速さが0にならなければ、これは私の最後の講義となる」
↓
「物理学は正しかったので私は生きているぞ!じゃまた来週!」
すごい人です。このような実験がどの講義でも行われているというのですから、MITの人は恵まれていますね。
「あの人は教壇で爆発するんですよね。…あの疾走感は今でも首の後あたりに残っています」(P17、教え子談)
本書は前半で、講義の内容をまとめたと思われる、ニュートンの4法則や電磁気、音など物理学の基礎にまつわるトピックが豊かに記述されています。ウォルター先生は虹が好きで、虹のできるメカニズムや作り方、白い虹や二重虹について熱く語る第5講が特徴的でした。
後半はウォルター先生の専門分野であるX線宇宙物理学についての話で、東京ドームより大きな気球を飛ばしてX線を検出したり、星が終わるとき何が起こるのか、重力崩壊から中性子星を経てブラックホールになる過程の詳述など、スケールが大きすぎて頭がおかしくなる話がいっぱいでした。
ブラックホールについては
・ブラックホールの中心には、体積がゼロで密度が無限大の「特異点」なるものがある
・ブラックホールを観測する人間から見ると光の速度が遅くなって波長が長くなるので、ブラックホール付近にいる人は赤く見える。ブラックホール付近にいる人からは外部が青く見える。
・ブラックホールにもっと近づくと赤(赤外線)を通り越して可視光を外れ、透明人間になる
・ただし透明人間になる頃には、重力で体が引きちぎられる。これをスパゲッティ現象という
という怖い知識が身に付きました。
ウォルター先生はユダヤ人で、一族をホロコーストで半分亡くしています。第1章には彼の壮絶な過去も描かれています。ホロコーストを笑い飛ばす映画である『ライフ・イズ・ビューティフル』には不快感を覚える、という記述を読んで、そーだよな、ごめんなさい、と思いました。
内容はすばらしいし、ウォルター先生の講義もすばらしいのですが、本書には2点欠点があります。1点目は図が少ないこと。物理学の本なのになぜか縦書きということもあり、イメージが湧きにくく読むのに労力が必要です。2点目は、訳が雑なこと。特に要のはずの物理用語周りの訳が読みにくく、「光が大気圏を通り抜ける間に空気分子を『飛び散らせる』」(P24)という明らかな誤訳もありました。残念です。
彼のことを知りたければ、講義を視聴するのが一番だと思います。
https://www.youtube.com/channel/UCliSRiiRVQuDfgxI_QN_Fmw
力学、電磁気学、波動についての講義や子供向けの講義など、約100件の講義が無料で公開されています。英語ですが字幕も付いていますので、ちょっとだけ英語が読める人なら十分ついていけます。ぜひご覧ください。
一点、忘れないようにしたいことを引用しておきます。
質問があるたびに忘れずにこう言った「すばらしい質問だ。」教える者が何より避けたいのは、学生は愚かで自分は賢いという驕りを、学生たちに感じさせてしまうことだ。(P385)
★★★★★
全国の高専で使われている数学の教科書です。Ⅰが高校の数Ⅲ+α(テイラー展開など)に相当し、Ⅱは理系大学1・2年の微積分の範囲をカバーします。
説明は簡潔かつ的を射ていて、理解しやすいです。計算が確実にできるようになることが重視されており、「実戦で使える数学」としては最強の教科書だと思います。大学で指定される教科書は証明や記述が回りくどかったり分かりにくかったりすることが多く挫折した経験があるので、大学ではじめにこの教科書を使ってくれればよかったのに、と思うほどです。
さすがに終盤の微分方程式では紙面が足りず、難しい公式が天下りに振ってくることもありますが、ページが数式で埋まることなく進むのでむしろ都合が良いです。もっと学びたい人は理論を他の本で埋めてください。