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Q&Aという形式をとって、セクシャル・マイノリティの人が、社会生活を送るために具体的にどのような困りごとがあるのか、どう対応していけばいいのか、ということを主に法律家の立場から解説する本です。
セクシャル・マイノリティと謳っていますが実際にはほぼLGBTの人たちへの情報集でした。「LGBTの人が、マジョリティのために作られた社会制度の上にどうやって乗っかっていくか」がメインとなっています。例えば、
- 心の性別と体の性別が違うときにはどのような手続きを取ればよいか?
- 修学旅行のとき寝室をどうしよう。。
- 自分が死んだときパートナーに財産を残すにはどうしたらいい?
といった、LGBTが日本で送る生活の中で必ずぶつかるであろう、社会的圧力や法的障害に対応するためのアドバイスが書かれています。ぼくはいまパートナーと法的にいえば事実婚状態なのですが、財産や任意後見制度、信託など事実婚についても適用できるアドバイスも多く、参考になりました。
途中にLGBT当事者によるコラムが挟まれていますが、彼らに共通しているのは、周りがみなバカにしている・異常だと思われる・誰にも相談できないことによる疎外感です。性別違和を感じニューハーフとなった後、男性学に出会いそのまま大学→修士まで修めてしまった宮田りりぃさんのコラムが一番面白かったです。
華やかな夜の都会で働く人々とのかかわりを通して、魅力的な女性/男性のイメージや恋愛関係が意図的・計画的に演出されていく様を間近で見ることが面白くてたまらないという感じでした。
本書に書かれているアドバイスはどれも個別で具体的なものですが、どのQ&Aにも執筆者さんの根底に「相談者さんの人格を大事にしたい」という思いが感じ取れます。それは、序盤の概論で次のように書かれている箇所に凝縮されていると思いました。
仮にマジョリティの人たちの方が多いとしても、多いからといって、それが「正しい」とか「普通」だとか「自然」だということにはなりません。人が、自分のことをどの性別だと思うか、また、誰を好きになるかということは、その人にとってとても大切なことです。そして、その人がどう生きるかといった、その人の人間としての尊厳(人間が人間らしくあること)に大きく関係することです。ですので、そのことについて、周りの人たちが「正しくない」とか「変」とか「不自然」だといったり、「こうあるべき」と決めつけたりすることは許されません。(P11)
マジョリティ側からかけられる圧力は、彼らの習慣に基づいたものに過ぎません。自分と他人の習慣が異なると、自分を否定されたようにに感じる人が多いので、数をたのんで「正しくない」だの「変」だのとマイノリティを攻撃して自分を保つ、という構造をよく見かけます。
誰一人同じ人間なんていないんだから、お互いを尊重できればそれでいいのにね。